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 ガリタ食堂の前には、今日も美味しい定食を求めて、港町からやってきて長い行列つくる。

「ルーチェちゃん、今日も一日元気に働くよ!」

「はい、女将さん」

 開店の時間。店の前で並んでいたお客さんがどっと店の中に入ってくる、ここからが戦場だ。

 おとずれるお客さんが増えて、ガリタ食堂のメニューは日替わり定食と一品料理だけになった。常にカウンター席もあわせた三十席は満員。

「いらっしゃいませ、何名様ですか?」
「ニ名様ですね、こちらの席にどうぞ!」

「お冷やとタオルです」

「日替わりとポテトサラダ二つ」
「はーい!」

 厨房から、ひっきりなしにコロッケを揚げる音が聞こえて、できあがった定食が厨房に並び。

 ニックの声が飛ぶ。

「お袋、ルーチェ、7、8、9番が上がったぞ!」

「あいよ!」
「はーい!」

 ニックの合図でガリタ食堂の日替わり。揚げたての牛肉コロッケ2つとコーンコロッケ、横にはキャベツの山盛り。
 大根と揚げの豆味噌のお味噌汁、白菜の浅漬けに山盛りご飯がトレーに乗る。

 次々とお客さんのところにできたでの料理を持っていく。

「ルーチェ、10番、11番」
「はい!」

 料理を運ぶと。入り口から右の奥の窓側の席にローブのフードを頭からすっぽり被ったお客さんがいた。そのお客さんの指には魔法使いの証、青い指輪が嵌められていた。
 
(魔法使いの青い指輪だ。このお客さんは水か氷の属性だわ)

「日替わり定食、お待たせいたしました。コロッケが揚げたてなので、ヤケドに気をつけてお召し上がりください」

「ありがとう、いただきます」

 揚げたてのコロッケに醤油をかけて、ふうふう冷まして口に運ぶ時、フードからさらりと黒色の髪が見えた。

(……黒髪だ)

 黒髪はこの国では珍しい髪の色だった。
 その懐かしい髪色に"二度と戻れない"とおい故郷を思い出した。私も昔は黒髪だったな……いまは転生して銀色の髪だけど。

「ルーチェ、次が上がったぞ!」

「は、はーい。いま行くね!」

 このお客さん。先輩とは指輪の色と髪色が違うけど、どことなく雰囲気が似ている気がして、目で追ってしまう。

(でも、先輩は火属性で私と同じ銀髪だったし、いまは王城の魔法省に勤めているはず)

 ……できれば、もういちど先輩に会いたかったな。
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