上 下
10 / 10

じゅう(最終話)

しおりを挟む
 ある日のラビットは驚きで目が点になった。
 なんと、ヒロイン――アルディリアが学園を退学になったということ。彼女は「私はヒロインなの」だと散々抗議した。
 しかし、彼女の日ごろなおこない、学園長、フォックスの一声で決まった。

 彼女の家――男爵家は商売の邪魔だと、いやがるアルディリアを修道院に送ってしまった。乙女ゲームとは真逆の結果となった。

 フォックス様がいうには「……なるように、なったんじゃないかな」格上の令嬢達への言葉遣いと嘘、狂言。
 婚約者がいる男性への接近……他の男性生徒を誘惑していた。
 
 彼女は攻略対象だけでは飽きたらず、イケメンな男性にかたっぱしに声をかけていた。
 その誘い文句が「私の獣化したを姿みる? 可愛いわよ」だった。

 ――自分のリス姿を婚約者でもない、男性に見せるなんてありえない。

 まさか、獣化から戻ったあとに、さらに誘う?
 結婚まえの令嬢なのに恥ずかしくない?

 ちまたの仮面舞踏会ではあたりまえで。
 なかには不倫、妾、愛人をもつとも聞いた。

 ――私はフォックス様だけだわ。

 

 それと、側近のアルには裏の顔があったの。
 彼はフォックスに魔法を教えた魔法使い、ならなぜラビットの側近になったのかというと――おもしろいから。
 彼なりに側近の仕事を楽しんでいる。

「魔法使いになってから人に怒られたのははじめてだ。でも、それがまたいい……かも」

 どうやら彼の未知の扉が開かれたらしい。
 
 そして、普段は落ちついたフォックスの、慌てる姿が一番おもしろい。だから、フォックスは近寄るなっていったのね。
 精霊獣ルフ様は国の宝で、私たちの国を守ってくださるお偉い方で、王城には王族しかはいれない特別なルフの部屋がある。

 そこで本来の姿で寛いでいるのだとか。

(私は王城の中を散歩中のルフ様と出会い、お茶をしたり、話し相手いをしていて仲良くなったのだけど……)

「ラビットのそばは気持ちいいにゃ」

 と言ってくださる。



 フォックス様とはあれからさらに仲良くなったの、だけど、彼はいつもイジワルをして獣化させる。

「フォ、フォックス様?」
 
「フフッ、ラビットが可愛いから仕方がない! 俺の仕事は終わらせたから、いまから昼寝しよう」

「ええ、私は王妃教育がまだです。あと二時間ほどお待ちください」

「待てないから、教育係に話をして休みにしたから、安心して」

「え?」

 ウキウキで、狐のフォックスに寝室に連れていかれる。

「アル、アル?」

「ごめん、ラビットお嬢様。フォックスを癒してください。僕は旦那様に怒ら……報告してきます」

 ――さいきんのアルは役に立たない。

 ルフ様はフワフワと飛んできて。

「アイツ、変態になったにゃ。ワシもいまから寝床にもどって昼寝するにゃ……後は、ラビットにまかせたにゃ」

 ルフ様?

「ラビット、みんなの許可がでた。今日は朝まで一緒な! ガジガジするって決めた」


「ふえっ……? まって、フォックス様、朝はまではまだ無理ぃ!」

「嫌だね」

 目を細めていじわるく、ラビットの好きな顔で笑っていた。
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

王子好きすぎ拗らせ転生悪役令嬢は、王子の溺愛に気づかない

エヌ
恋愛
私の前世の記憶によると、どうやら私は悪役令嬢ポジションにいるらしい 最後はもしかしたら全財産を失ってどこかに飛ばされるかもしれない。 でも大好きな王子には、幸せになってほしいと思う。

就活婚活に大敗した私が溺愛される話

Ruhuna
恋愛
学生時代の就活、婚活に大敗してしまったメリッサ・ウィーラン そんな彼女を待っていたのは年上夫からの超溺愛だった *ゆるふわ設定です *誤字脱字あるかと思います。ご了承ください。

変な転入生が現れましたので色々ご指摘さしあげたら、悪役令嬢呼ばわりされましたわ

奏音 美都
恋愛
上流階級の貴族子息や令嬢が通うロイヤル学院に、庶民階級からの特待生が転入してきましたの。  スチュワートやロナルド、アリアにジョセフィーンといった名前が並ぶ中……ハルコだなんて、おかしな

執着王子の唯一最愛~私を蹴落とそうとするヒロインは王子の異常性を知らない~

犬の下僕
恋愛
公爵令嬢であり第1王子の婚約者でもあるヒロインのジャンヌは学園主催の夜会で突如、婚約者の弟である第二王子に糾弾される。「兄上との婚約を破棄してもらおう」と言われたジャンヌはどうするのか…

【完結】悪役令嬢の反撃の日々

アイアイ
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。 「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。 お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。 「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

悪役令嬢ですが、どうやらずっと好きだったみたいです

朝顔
恋愛
リナリアは前世の記憶を思い出して、頭を悩ませた。 この世界が自分の遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気がついたのだ。 そして、自分はどうやら主人公をいじめて、嫉妬に狂って殺そうとまでする悪役令嬢に転生してしまった。 せっかく生まれ変わった人生で断罪されるなんて絶対嫌。 どうにかして攻略対象である王子から逃げたいけど、なぜだか懐つかれてしまって……。 悪役令嬢の王道?の話を書いてみたくてチャレンジしました。 ざまぁはなく、溺愛甘々なお話です。 なろうにも同時投稿

溺愛される妻が記憶喪失になるとこうなる

田尾風香
恋愛
***2022/6/21、書き換えました。 お茶会で紅茶を飲んだ途端に頭に痛みを感じて倒れて、次に目を覚ましたら、目の前にイケメンがいました。 「あの、どちら様でしょうか?」 「俺と君は小さい頃からずっと一緒で、幼い頃からの婚約者で、例え死んでも一緒にいようと誓い合って……!」 「旦那様、奥様に記憶がないのをいいことに、嘘を教えませんように」 溺愛される妻は、果たして記憶を取り戻すことができるのか。 ギャグを書いたことはありませんが、ギャグっぽいお話しです。会話が多め。R18ではありませんが、行為後の話がありますので、ご注意下さい。

【完結済】監視される悪役令嬢、自滅するヒロイン

curosu
恋愛
【書きたい場面だけシリーズ】 タイトル通り

処理中です...