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 今日の正午過ぎ。フォルテがフォックスと城の訓練場で決闘する。この決闘は自惚れではないけど……オレの為なんだろうな。オレは止めたいと思ったが、フォルテの真剣な瞳に何も言えなくなった。

 ――だから、黙って応援することにした。

「ルテ、必ず勝てよ」

「当たり前だ――タヤに助けられたあの日から、私は騎士団と共に訓練してきた、あんな奴に負けたりしない」

「フフ、頼もしいな、俺の番は……」

 そうフォルテに伝えた後、恥ずかしくて顔を熱くしたオレをフォルテは優しく見つめ、愛おしさが募り引き寄せ唇を何度も奪った。吐いた吐息ごと奪われ、息が上がったオレはフォルテを涙目で睨んで。

「ルテ……ハ、ハァ、ハァ……キスし過ぎだ……」
 
「そう? 私はまだ足りない……タヤともっとキスしたい。いや、それ以上のことも……」

「おい! 今から勝負だって言うのに……終わった後なら……いいよ」

 約束だなと、フォルテは笑った。



 ♱♱♱



 昼食後、オレは訓練場の見学席で、木刀を握る2人を見ている。この決闘は国王陛下も知ることとなり、真剣での勝負以外は認めないと伝えられた。

 それもそうだろう、この国の王子と隣国の王子だ……いくら、真剣な決闘だからといって、双方に怪我をさせるわけにはいかない。

 ――陛下の本音はオレを賭けた戦いなんて、止めたかったよな。

 このオレの思惑は見事に外れる。これは正式ではないが番いを賭けた戦い、どちらかが再起不能になるまでの死闘となる故に……どちらも怪我だけでは済まされない。

 フォルテから報告を受けた国王陛下は焦った、だが止められないと分かっている為、木刀でのみの決闘を許したのだ。

 訓練場に現れた、フォルテの溢れんばかりの闘志を目にして、オレはそう思うしかなかった。
 
 しかし。相手のフォックスはフォルテとは違い、余裕があるのか。ニコニコ……いや、ニヤニヤ笑っている。

「フォックス、この場でもその表情か!」

 フォルテは木刀を構え、フォックスに言葉で噛みついた。だが、相手のフォックスは飄々とこたえる。

「この表情? ククッ!生まれ持った顔だよ。今から、フォルテ王子に勝って可愛いタヤを僕の元にできるのかと思うと、嬉しくてねぇ」

「馬鹿なことを申すな、タヤは私の番だ!」

 はい、はいと受け流すようなフォックスの態度は、フォルテをイライラさせる。だが勝負前に、フォルテは深く深呼吸して、気持ちを落ち着かせた。

 決闘の開始時間となったのか、訓練場に見届け役の騎士団が集まってきた。鎧と剣を腰にさした騎士団長と副団長らしい騎士が訓練場に現れ、他の騎士はオレと同じ見学席に座った。

「フォルテ殿下、フォックス殿下、準備はよろしいですか? もし、危険と判断した場合、この決闘をすぐに中止いたします!」
 
「わかった」
「いいよ」

 いよいよ2人の決闘が始まる。
 
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