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 出来上がった、サンドイッチを騎士団用の箱に詰めていた。早朝から始まった準備も終盤をむかえた。

「タヤ、ここの手伝いはいいから、着替えてくるといいぞ」
 
「はい、着替えてきます」

 二階の部屋に戻り、冒険に出るときの軽服に着替えて、首に噛まれ防止の、サロンナ特性の魔導具の首輪を着けた。前日、シンギから騎士団の中にもアルファいると聞いた。ヒートは5日前に終わっているが安心はできない。

 騎士団の中にオレと相性が良く、オレのオメガの香りに誘われたアルファに、事故で首を噛まれないようにしなくてはならない。

 オメガはアルファに首を噛まれてしまうと、そのアルファと番になってしまう。オメガの番は一人だけど、アルファはというと複数のオメガと番えるらしい。
 
 オレは自分だけを愛してくれる人と番いたい。そのための準備はしっかりしないと。首の他に手首に匂い消しのブレスレットもつけた。
 
「これでよし」

 手伝いはするがなるべく騎士団に近づかない。騎士達の昼食準備のあと。シンギとマヤにギルドの昇級クエスト――ニャッチ討伐を手伝ってもらう。最後に愛用の剣を腰にさして準備は終わった。

「そうだ、念のために抑制剤も飲んでいこう」

 薬を飲んで店に降りていくと、ちょうど騎士団員が来たらしく、作った昼食を外に運んでいる所だった。

「お待たせしました、俺は何を運べばいいですか?」

 荷物を運び出しているシンギとマヤに声をかけた。着替えたオレを見て、マヤは持っていた荷物を近くのテーブルに置き、オレの服装を入念にチェックしはじめた。

 いまから騎士団と共に、演習場所まで移動するから心配したのだろう。

「よしよし。しっかり首元を守っているわね」
 
「おう! 念のために抑制剤を飲んできたし。サロンナばあさんから貰った、匂い消しの魔導具のブレスレットも付けた」

「ウンウン、用心に越したことはない。それなら安心ね」

 マヤさんと服装について話していた。そこに荷物を持ったシンギもやってきて、オレの服装を見ると、マヤと同じく"うんうん"頷いた。

「お、しっかり着替えたな。そんじゃ、タヤはマヤと一緒に飲み物を町の外に停まっている、幌馬車まで運んでくれ」

「わかりました」

 騎士団達の移動は幌馬車。マヤは紅茶ポットとカップを持ち、オレは寸胴に入ったコンポタージュを抱え、町の外に停まる騎士団の幌馬車の荷台に運んだ。

「これで荷物は全部積んだな」
「ええ、積んだわね」

 全ての荷物を運び終え御者席に騎士団員二人が座り、幌馬車の荷台に護衛の二人が乗り込む。

「熊クマ食堂の皆さん狭いですが、幌馬車の荷台に乗ってください。私たちの天幕までお送りいたします」

「それはありがたい、よろしく頼むよ」

 シンギ達と、幌馬車に乗り込んだ。




 騎士団の幌馬車に揺られて、二十分くらいで奥地の古代遺跡に着いた。徒歩での移動だと一時間はかかっていただろう。

 幌馬車の荷台から降り、焚き火をする場所に薪を組み、火をつけてポタージュスープが入った鍋をかけて、騎士団員達の昼食の準備を始めた。オレはシンギに頼まれて、近くの小川で紅茶用の水をポットに汲みに行き、焚き火にかけ沸かす。
 
 ある程度、昼食の準備が終わり。手の空いたオレは冒険者ギルドで受けてきたクエスト、ピピン草の採取をさせてもらっていた。話には聞いていたが――滅多に入れない奥までくるとピピン草の生え方が違うな。

 採取をするオレの近くを、訓練を終えた騎士団員たちが通っていく。その中に長身で金色の髪と耳、切れ長な青い瞳、長い尻尾の男性とオレは瞳がかち合う……

 すごく、イケメンだ……でも何処かで見たような気がする。こんなことを考えながら、オレはその男性から目が離せずにいた。

 相手の男性もそうだったのか、オレから目を離さない。森の中を、頬をなでる風が吹き、スパイスのような香りが漂った。――えっ。いきなりお腹の下辺りがじんわりして、体が熱を持った感じがした。
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