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プロローグ
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オレが獣人の国、ルーズベルトに転移して三年くらい前の夏の暑い日。新米冒険者たちに人気のシガリアの森で、モコモコモンスターニャッチに襲われていた、若い冒険者パーティを助け、珍しいと言われる回復魔法でケガを治した。
「君たち大丈夫か? 他にケガはしていない?」
「は、はい……大丈夫です。助かりました」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます、助かりました」
(この3人はオレよりも年下か? 種族はライオン、虎、豹か。オレよりも強くなるな。それに……高そうな装備、ということはこの子達は貴族か? 貴族にしちゃ、周りに見守りの大人の姿が見えない)
ここは新米がくる冒険者に人気な、討伐、採取もできるシンガリアの森。普段はなんてことない森だが。冒険者ギルドが決めた危険区域を超えると途端、強いモンスターの生息地に変わる。
(この冒険者子達は知らずに、危険区域の近くまできちまったのか?)
それとも腕試しに来たのか。
数ヶ月前に若い冒険者が知らず奥へ進み、命を落とした者もいるって、ギルドで聞いてことがある――仕方ねぇ。オレは危険区域の説明と、彼らに襲われていた、モンスターについて説明することにした。
手招きして、助けた3人を近くに集めた。
「君達、よく聞くんだ。あの木の枝に結ばれた赤いリボンが見えるだろう?」
3人が頷くのを見て俺は話を進めた。
「ここは危険区域近く、アレより先はS級以上の冒険者しか倒せないモンスターがいる。そして君たちが手こずっていた、あのモコモコモンスターニャッチは一見弱そうに見えるが。死ぬ間際に火事場の力を出すから、モンスターとの距離をとり、気を付けて戦わなくてはならない」
「……危険区域? え、死ぬ間際に火事場の力?」
「うわぁ、マジか……ありがとうございます、勉強になります」
「次から場所とモンスターに気をつけないと、いけないね」
「「わかりました!」」
冒険者たるもの。森の地理、森に出るモンスターの種類を知らないと、いとも簡単に命を落としてしまう。
「そうだ。地図でいうと、ここが危険区域。いまいる場所はニャッチ、ノボボーン、ドルドルが出る。ここで戦うのなら、強い冒険者を数名パーティーに入れて、あと、ポーションを数本持つか回復役がいるといい」
俺は持っていた携帯用の地図を広げ、彼らに説明した。これは冒険者ギルドの受付上に言えば、誰でも買えるシンガリア森の地図だ。この地図さえあれば森全体がわかり、モンスターの出没場所まで記された優れものだ。
「またこの森に来るのなら――地図を冒険者ギルドで買うといいよ。値段は銅貨2枚だ!」
「銅貨2枚。はい、わかりました」
「次からはそうします!」
「ありがとう、助かります」
少々、お節介かもしれないが。彼らは真面目で、素直に話を終わりまで聞きいてくれた。
「俺からの話はこれで終わり!」
地図を片付けるオレに。
「ほんとうに勉強になりました。私達の傷の手当てまでしていただき、ありがとうございます」
1番装備がいいライオンの子が下げ、他の子達も頭を下げた。
(名前を言わないとなると、訳ありかな? こっちから効くのも変か? それならオレも名乗らずいくか)
「オレもまだ新米冒険者だ、そんなに頭を下げられると照れるな。おい! もう頭を下げなくっていいって、オレたちは同じ冒険者仲間だろ? どこかでオレがピンチの時に助けてくれよ! それでチャラだ!」
その言葉に、彼らの瞳はキラキラ輝く。
「はい! 必ず、助けに行きます!」
「助けます!」
「頑張ります」
この子達を森の出入り口まで送ったとき、ブルっと体が震えた(マズイ、早く帰らないと)彼らに手を振り。
「またな。君達も遅くならないよう、家に帰りなよ」
「「はい!」」
急いで、家へと帰った。
⭐︎
「あの冒険者、回復魔法を使いましたね」
「ああ、使用したな」
「迎えを呼びますか?」
「そうしてくれ」
仲間の声に反応しながらもライオンの少年は、去っていく男の後ろ姿から目が離せなかった。僕達を助けてくれた黒ウサギの冒険者。彼が去るとき甘い香りがした。その香りでわかる……彼が僕の運命の番だと。
「君たち大丈夫か? 他にケガはしていない?」
「は、はい……大丈夫です。助かりました」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます、助かりました」
(この3人はオレよりも年下か? 種族はライオン、虎、豹か。オレよりも強くなるな。それに……高そうな装備、ということはこの子達は貴族か? 貴族にしちゃ、周りに見守りの大人の姿が見えない)
ここは新米がくる冒険者に人気な、討伐、採取もできるシンガリアの森。普段はなんてことない森だが。冒険者ギルドが決めた危険区域を超えると途端、強いモンスターの生息地に変わる。
(この冒険者子達は知らずに、危険区域の近くまできちまったのか?)
それとも腕試しに来たのか。
数ヶ月前に若い冒険者が知らず奥へ進み、命を落とした者もいるって、ギルドで聞いてことがある――仕方ねぇ。オレは危険区域の説明と、彼らに襲われていた、モンスターについて説明することにした。
手招きして、助けた3人を近くに集めた。
「君達、よく聞くんだ。あの木の枝に結ばれた赤いリボンが見えるだろう?」
3人が頷くのを見て俺は話を進めた。
「ここは危険区域近く、アレより先はS級以上の冒険者しか倒せないモンスターがいる。そして君たちが手こずっていた、あのモコモコモンスターニャッチは一見弱そうに見えるが。死ぬ間際に火事場の力を出すから、モンスターとの距離をとり、気を付けて戦わなくてはならない」
「……危険区域? え、死ぬ間際に火事場の力?」
「うわぁ、マジか……ありがとうございます、勉強になります」
「次から場所とモンスターに気をつけないと、いけないね」
「「わかりました!」」
冒険者たるもの。森の地理、森に出るモンスターの種類を知らないと、いとも簡単に命を落としてしまう。
「そうだ。地図でいうと、ここが危険区域。いまいる場所はニャッチ、ノボボーン、ドルドルが出る。ここで戦うのなら、強い冒険者を数名パーティーに入れて、あと、ポーションを数本持つか回復役がいるといい」
俺は持っていた携帯用の地図を広げ、彼らに説明した。これは冒険者ギルドの受付上に言えば、誰でも買えるシンガリア森の地図だ。この地図さえあれば森全体がわかり、モンスターの出没場所まで記された優れものだ。
「またこの森に来るのなら――地図を冒険者ギルドで買うといいよ。値段は銅貨2枚だ!」
「銅貨2枚。はい、わかりました」
「次からはそうします!」
「ありがとう、助かります」
少々、お節介かもしれないが。彼らは真面目で、素直に話を終わりまで聞きいてくれた。
「俺からの話はこれで終わり!」
地図を片付けるオレに。
「ほんとうに勉強になりました。私達の傷の手当てまでしていただき、ありがとうございます」
1番装備がいいライオンの子が下げ、他の子達も頭を下げた。
(名前を言わないとなると、訳ありかな? こっちから効くのも変か? それならオレも名乗らずいくか)
「オレもまだ新米冒険者だ、そんなに頭を下げられると照れるな。おい! もう頭を下げなくっていいって、オレたちは同じ冒険者仲間だろ? どこかでオレがピンチの時に助けてくれよ! それでチャラだ!」
その言葉に、彼らの瞳はキラキラ輝く。
「はい! 必ず、助けに行きます!」
「助けます!」
「頑張ります」
この子達を森の出入り口まで送ったとき、ブルっと体が震えた(マズイ、早く帰らないと)彼らに手を振り。
「またな。君達も遅くならないよう、家に帰りなよ」
「「はい!」」
急いで、家へと帰った。
⭐︎
「あの冒険者、回復魔法を使いましたね」
「ああ、使用したな」
「迎えを呼びますか?」
「そうしてくれ」
仲間の声に反応しながらもライオンの少年は、去っていく男の後ろ姿から目が離せなかった。僕達を助けてくれた黒ウサギの冒険者。彼が去るとき甘い香りがした。その香りでわかる……彼が僕の運命の番だと。
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