新米錬金術師チロと冒険者シャル

ピッカリン鉱石⑦＋シャルの村を救え！①

　あの人――フォーリ王弟殿下は今頃。ピッカリン鉱石に研究が捗るって喜んでるだろうな。ボクよりも錬金術と魔法をこなし、新しい魔道具を作り上げる変人だけど、憧れの存在。

　フォーリ王弟殿下の魔導具つくりはベテラン級だが、特殊鉱石の採掘は出来ない。だから、ボクにご自身の使い魔（黒猫）を使い依頼してくる。

　ピッカリン鉱石を送ってすぐ、王弟殿下の使い魔――黒猫名前がルルナが報酬を持ってやってきた。ボクが受け取ったらルルナは、すぐに殿下のところへと帰るのかと思ったがナデナデを要求された。

「ルルナ、可愛い。モフモフだね」
「ニヤァ～ン。ニャァ～ン」

　おばあちゃんの研究室からルルナの声が聞こえたからか、扉が開きシャルが覗いた。そして台の上でボクに撫でられるルルナを見て。
　
「ああ、ルルばかりズルい！」
「ニャン！」

「むっ、ルル！　羨ましいだろうっていわないで！」

　シャルも頭を撫でて欲しいのか……でも黒猫と、人型でオオカミのシャルを撫でるのは、ちょっと抵抗あるなぁ。


　なでなでが満足したのか、ルルナは元の場所へと戻っていった。今回の依頼、ピッカリン鉱石の報酬はかなり良かった。まあ今回の依頼主が王弟殿下だったからだと言ってもいい、他の場所にいるおばちゃんの弟子達の依頼は安いけど。

　依頼品の鉱石を使った魔導具――ハジハジ鉱石を使用して作られた雨を避けるカッパ。ツルツル鉱石を使った美容液、石鹸。ホット鉱石を使用したシワ伸ばし。貴族しか持てない高価なものばかりを貰えるから、ボクにとってはありがたい。

「シャル着替えたら、ミルミル亭に夕飯を食べに行こう」
「やった！　分厚いステーキが食べたい」
「いいよ。報酬をたくさんもらったから、今日は奮発して何枚も食べていい！」

「あのステーキを半分じゃなくて、何枚も……いいの？」

　驚くシャル、無理もないだろう。シャルには報酬の額を教えていない。彼女にはボクを守ってくれるなら、家賃も生活費もいらないし。月に一度のお小遣いを渡して、彼女のいるものを買っている。

　近くの街の銀行に貯金もしているし、おばちゃんが残したお金もある――それは結構な額だ。ボクはもう少し大人になったら、ここを出て、のどかなところに店付きの家を建てたい。

　その時、側にシャルがいてくれると嬉しいな。

「あのさ。もしかして、チロはお金持ちなの？」
「まあ、歳の割には割と持ってる方だと思うよ」

「じゃ……助けてくれる」
「助ける？」

　シャルはボクの手を握り
　
「私の村に来て、みんなを助けて」

　と言った。