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空森島
十六
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うーん、どうしよっ……ヌヌがここで働く。
いま、空森島に彼女の家が建てられているのだが。完全に男としてみられていないのか、それとも害がないと思われたのか。
――いちおう俺も男なんだよなぁ。そりゃ、無理に襲うとかはしないけどさ。
彼女がいるとサーチ魔法で魔王の攻撃がわかりやすい、ポーションの数も減る。そうなれば量産できてギルドにおろせる。
それに。ヌヌの事情もサン先生から聞いた、彼女は別れた妹を探したい。だからあの時――妹のためにと言ったのだろう。空森島で国のために働けば、妹を探すと言われたのだとか。
彼女にとって苦渋の決断だろうな――だって、男と一ヵ月もここにいるんだ。美味いもん作って癒そう、それしか俺にはできないし。
それなのに……まだ俺シャツ着てる。
「ローリス君、畑の手伝いきたよ」
「おお、サンキュー」
尻尾穴が空いたシャツだが――まさか、ワンピースとか持っていないとか? いや、空森島にくればいくらか支給してくれるし、給料を貰えて、生活用品は国持ちだ。
――聞いたほうがいいのか、余計なお世話か……わからん。
「どうしたの?」
「ん? 今日の昼なに食べようか考えてたんだ」
「お昼! なに作るの?」
お、ヌヌが嬉しそうだ。昨日は朝はピザパン、昼はキノコスパ、夜はハンバーグだったな。彼女も俺に引けをとらないくらいに食べるから、作っていて楽しい。
「玉ねぎとジャガイモのオムレツ、なんちゃってお好み焼き……煮込みうどんとか?」
「どれも捨てがたい! 煮込みうどんにする!」
「じゃーそれで決まりなっ!」
トマト、ベーコン、塩コショウ、コンソメ、チーズで作る洋風煮込みうどんを四人前作ったが。二人でペロッと完食した。ちなみに付け合わせのパンも。
後片付け中。
「はぁ、美味しかった、ローリス君がつくる料理って、全部おいしいから太っちゃう」
と笑う彼女。あれ、俺は彼女の胃袋掴んだのか?
「ローリスが作る飯はうまい!」
夕飯はエンも呼んで三人でとった。作ったのは野菜たっぷりのビーフシチューだ。パンを焼き、大鍋に作ったが……からっぽだ。いまはエール片手に漬け込んだ鶏肉をアテに焼いて食べている。
「そうだ、昼間のうどんが残ってる、焼きうどんも食うか?」
食べると言うので、作って大皿にだしたが食べきった。
「腹いっぱい!」
「お腹いっぱい」
「俺も、さてと、露天風呂の用意してくる」
先に、ヌヌにはいってもらい俺とエンは後片付け。あがったら交代して、俺とエンは露天風呂に向かった。
「フゥ、風呂は最高!」
「ローリス、またしばらく王都を離れ」
「はぁ? 二、三日に帰ってきたばかりだろう?」
近ごろモンスターが増えたと、エンが所属する竜騎士部隊、獣人部隊は遠征に出ることが多くなった。それは、勇者がいないからだといわれている。
勇者の力を受け継ぐ国王が早く亡くなった。
本来なら――勇者がいるだけでモンスターは減り、魔王からの怨念攻撃も抑えられるが。残された勇者の血を引く王子はまだ十歳――勇者の力が発動する成人まで、あと五年は待たなくてはならないのだ。
「エン……俺が作ったポーションを待っていけ、数はあまりないが役に立つだろう」
「いいのか? お前だって必要だろう?」
「俺はヌヌさんもいるし。また、作ればいい」
「そうか。ありがとう、ローリス」
「礼はいらん! 友のお前が怪我なく戻ってきてくるほうがいい」
いま、空森島に彼女の家が建てられているのだが。完全に男としてみられていないのか、それとも害がないと思われたのか。
――いちおう俺も男なんだよなぁ。そりゃ、無理に襲うとかはしないけどさ。
彼女がいるとサーチ魔法で魔王の攻撃がわかりやすい、ポーションの数も減る。そうなれば量産できてギルドにおろせる。
それに。ヌヌの事情もサン先生から聞いた、彼女は別れた妹を探したい。だからあの時――妹のためにと言ったのだろう。空森島で国のために働けば、妹を探すと言われたのだとか。
彼女にとって苦渋の決断だろうな――だって、男と一ヵ月もここにいるんだ。美味いもん作って癒そう、それしか俺にはできないし。
それなのに……まだ俺シャツ着てる。
「ローリス君、畑の手伝いきたよ」
「おお、サンキュー」
尻尾穴が空いたシャツだが――まさか、ワンピースとか持っていないとか? いや、空森島にくればいくらか支給してくれるし、給料を貰えて、生活用品は国持ちだ。
――聞いたほうがいいのか、余計なお世話か……わからん。
「どうしたの?」
「ん? 今日の昼なに食べようか考えてたんだ」
「お昼! なに作るの?」
お、ヌヌが嬉しそうだ。昨日は朝はピザパン、昼はキノコスパ、夜はハンバーグだったな。彼女も俺に引けをとらないくらいに食べるから、作っていて楽しい。
「玉ねぎとジャガイモのオムレツ、なんちゃってお好み焼き……煮込みうどんとか?」
「どれも捨てがたい! 煮込みうどんにする!」
「じゃーそれで決まりなっ!」
トマト、ベーコン、塩コショウ、コンソメ、チーズで作る洋風煮込みうどんを四人前作ったが。二人でペロッと完食した。ちなみに付け合わせのパンも。
後片付け中。
「はぁ、美味しかった、ローリス君がつくる料理って、全部おいしいから太っちゃう」
と笑う彼女。あれ、俺は彼女の胃袋掴んだのか?
「ローリスが作る飯はうまい!」
夕飯はエンも呼んで三人でとった。作ったのは野菜たっぷりのビーフシチューだ。パンを焼き、大鍋に作ったが……からっぽだ。いまはエール片手に漬け込んだ鶏肉をアテに焼いて食べている。
「そうだ、昼間のうどんが残ってる、焼きうどんも食うか?」
食べると言うので、作って大皿にだしたが食べきった。
「腹いっぱい!」
「お腹いっぱい」
「俺も、さてと、露天風呂の用意してくる」
先に、ヌヌにはいってもらい俺とエンは後片付け。あがったら交代して、俺とエンは露天風呂に向かった。
「フゥ、風呂は最高!」
「ローリス、またしばらく王都を離れ」
「はぁ? 二、三日に帰ってきたばかりだろう?」
近ごろモンスターが増えたと、エンが所属する竜騎士部隊、獣人部隊は遠征に出ることが多くなった。それは、勇者がいないからだといわれている。
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本来なら――勇者がいるだけでモンスターは減り、魔王からの怨念攻撃も抑えられるが。残された勇者の血を引く王子はまだ十歳――勇者の力が発動する成人まで、あと五年は待たなくてはならないのだ。
「エン……俺が作ったポーションを待っていけ、数はあまりないが役に立つだろう」
「いいのか? お前だって必要だろう?」
「俺はヌヌさんもいるし。また、作ればいい」
「そうか。ありがとう、ローリス」
「礼はいらん! 友のお前が怪我なく戻ってきてくるほうがいい」
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