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十三

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 魔法省から準備ができたと連絡が入り。華やかな王の間を離れて、俺達は魔法省の塔へと、オッサンと副団長の案内でバラが咲く庭園を通り移動している。女子たちは綺麗なバラの花に見惚れて、瞳を輝かせ、頬を染め、周りをキョロキョロみまわす。

「ケッ! 食えねぇのに花なんか見て、何が楽しんだぁ?」

 獣人のチャ、他の男どもも花よりも団子のようで、それに反発する女子群。

「わかってないわね、綺麗な花を見れば心が癒されるの!」

「バラの香りを楽しみなさい!」
 
「こんなに綺麗なのに楽しめないなんて、かわいそう」

「癒されねぇーよ!」

 バラ一つでワチャワチャしだす。しかし、エンは相変わらずで、他の奴になぁ「そうだろ?」と聞かれても「そうか?」と興味なく答えていた。

 そのなか――俺はと言うと綺麗なバラに浮かれていた。

(スゲェ、バラって赤だけじゃなく、ピンク、白、黄色があるのか……綺麗だ。こんなバラに囲まれて昼寝したいなぁ)

 香りにつられてフラッとする。

「ローリス君、どこに行くのですか?」

 ちょっと近くのバラを見ようとしただけで、オッサンではなく、隣にいたサン先生に手を握られる。それを見た女子が反応した。あぁ、またか……どこの世界でも女性は男同士がくっつくと(迷子防止に手を繋いだけ)気になり、好きなようだ。

 いかついオッサンと副団長に時は普通だったのに。
 まあ俺はイケメンで、サン先生も負けずイケメンだからかな?


 ーーしかし、まー、なんていうか……その視線やめて。


 俺知ってる腐女子と言うんだろ? 普通にイケメンの友達と買い物、食事、旅行、部署が近くてコーヒーを飲みながらの立ち話。他の連中より少しばかり仲が良かっただけで……色々と訳のわからんことを聞かれたな……あれにはビビッたよ。

 ニヤニヤした瞳というか――にやけ顔?

『二人は付き合っているの?』

 突き合う? ……付き合う?

『……はぁ? やめてくれ……俺とアイツはふつうの男友達だ!』

 昔、その子らが言うにはモブ顔? だからか。よく、その手の女子によく話しかけられたーーその子いわく、イケメンとモブがいいのだと。

 ーーそんなこと、どうでもいい。



 庭園を後にして、さっきよりは飾りっ気のない質素な廊下を歩き。城の端、石垣造りの塔に着いた。オッサンは魔法省プレートが貼られたの木製の扉で足を止め、扉をノックして開けた。

 ――ウッ!

 鼻のいい獣人達が顔をしかめる。その後――俺達も部屋の中から香る、独特な香りに鼻を押さえた。魔法省の中は調合室のようで。右側の本棚から本というか魔導書が溢れて床にも散らかり、木の棚には青、赤、紫の液体が並ぶ。中央のテーブルには調合具が所狭しと置いてあった。

(魔法省って薬の開発もしているのか……隣に住んでいたばっちゃんが体にいいと作っていた、薬草スムージーの香りに似てる)

「ここが魔法省だ」

 オッサンの説明をするが。部屋の強烈なニオイに――フルーティーでスパイシーなバラの香りは消えて。庭園でバラの花を楽しんだ女子も、花より団子の男子も――みんな、この香りにゲンナリした。
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