1 / 47
一
しおりを挟む
毎日、出勤前に見る洗面所で俺は思う。
ーーできるなら、イケメンに生まれたかったな、と。
フツメンでは彼女ができても、優しい人と止まり。
「お前、いい奴だから、すぐにいい人見つかるって」
「ハハッ、イケメンのお前にだけは言われたくない!」
「そういうなよ。もうすぐ誕生日だろ? 仕事帰りにいい所に連れて行ってやる」
笑った顔がイケメンだし、気がきく、いい奴だ。
俺が女性だったら、惚れて、抱かれていたかもな。
後日、仕事の後、いい酒が飲める店に連れて行ってくれた。
さすが、モテるやつは違うぜ。
(お前ならすぐにいい人が出来るって! 可愛い彼女持ちのコイツに、何度おなじ言葉を聞いただろう?)
まあ、原因はわかっている――女性を前にすると緊張して、
面白く、気の利いた話と、スマートにエスコートできない。
――三十まで童貞だと、魔法使いになれるらしい。
そんなことを三十になる誕生日に、会社の同僚は笑いながら俺に教えた。
――嫌がらせだろうが、魔法使いはいいな。
――いっそうのこと、俺は魔法使いになってやる!
ってな、そんなアホな事を考えて、次の日の仕事終わりに。
発売日のライトノベルを本屋で買った帰り、信号無視、暴走した車が突っ込んできて、俺はあっけなく逝った。
おい、おい、おい、ち、ちょっ――――と、まってくれよぉ――!
△△△
気付いたら、赤ちゃんになっていた。
車にひかれて、俺は異世界に転生したのかと……さっき買ったライトノベルと同じで、ベタベタな展開だと。赤ちゃんベッドの上でグルグル回る、木製の玩具をみながら考えていた。
ーーお、誰かきた。
ベッドに近付く足音がして、グリーンの長い髪と瞳のイケメンがを覗いた。
「ローリスは元気にしていたか?」
「うあー(イケメンだなぁ)」
「そうか、元気か」
「ええ、よく食べて、よく寝て元気よ」
俺はローリスと言うのか……
おお、もう一人は壮絶美女! この二人とも耳が長い――これは森の妖精エルフなのか!
(うぉおぉぉ―――きたぁ、美男美女だとすると、俺は生まれながらにしてイケメンか!)
ぜってぇ、イケメンだ!!
ヒャッホウ!!
三十まで童貞だと魔法使い(エルフだけど)になるって、あの噂は本当だったんだな……
俺が生まれたのは、サンチェという大きな森のなかにある、サグラードというエルフの村だ。
そのサグラードの真ん中にはアルベロという樹齢何百年という、ぶっとい樹木が中央に生えている。この木の周りに螺旋階段のような階段が掘られていて、木のテッペンまで登れる。
樹木はエルフの象徴で、テッペンは見張り台になっていて、大人のエルフは交代でアルベロのテッペンで、夜な夜な見張りをしている。
ウチのラカ父さんも見張り番の板が回ってくると、樹木に登って見張りをする。五歳の時に一度だけ、樹木のテッペンまで連れて行ってもらった。
父さんは森を見渡しながら、
「ローリスも大きくなったら、ここで見張りをするだぞ」
「うん!」
美男美女の両親から生まれた俺はイケメン、エルフ。
そんな俺にも欠点があった……それは極度の方向音痴だ。
五歳までは両親と一緒にいたから、気がつかなかった。
六歳になりエルフの学校が始まってから、それはわかった。
六歳、一人で近くの森に遊びに行き、家に帰ろうとして森をさまよう。三日後、両親によって見つかる。
――コッソリ練習していた魔法(ウォーター)と、森の恵みで飢えを凌いだ。
七歳、一キロ先の先の獣人の村に着く……初めてみる獣人に驚き、その村の戦士にホクホク顔で手を引かれて帰ってきた。
――獣人もイケメン、美女が多かった。
八歳、エルフと仲が悪いとされるドワーフの洞窟に着く、ドワーフのおっちゃんと意気投合して、おもちゃの刀を貰い連れてきてもらった。
おかしい、ちゃんと家まで帰っているのに、気付けば別の場所にいるんだ……不思議だよね。
そんな俺を両親は心配した。
「あなた、ローリスがこのままだと、人間に捕まるわ」
「そうなると、不味いな」
方向音痴の俺に両親は悩み、首にローリス、サグラード村のエルフと、書かれた迷子札をかけられて、
「ローリス、明日から隣のミチちゃんが学校と家の、送り迎えしてくれるからね」
ーーそれはマジか。
こともあろうか両親はお隣の幼馴染で、一つ下のミチにお願いしたいた。学校の行き帰り、俺がはぐれないようにミチと手をつないでいる。
村のみんなが微笑んで、俺たちを見ている。
俺――外見は六歳だが、中身は三十のオッサンなんだよ!
最初は女の子と手を繋げる! とドギマギしていたが、歳をとるにつれて、ミチの嫌そうな顔と、周りの冷やかしも正直つらい。
俺が十歳になると、ミチは。
「もうやだ! 今日は友達と帰る」
そう叫び、ミチは友達と帰ってしまった。
そうなるよね……俺のせいで友達と遊べない、ミチも年頃の娘だ、女の子達と一緒がいいよな。
(俺も一人で大丈夫だ!)
家まで帰ろうとして何故か俺は、村一番高い、アルベロの見張り台に立っていた。
「…………ここにくる前に、気付かないのか、オレ!」
……ほんとう、嫌になるくらいの方向音痴だ。
ーーできるなら、イケメンに生まれたかったな、と。
フツメンでは彼女ができても、優しい人と止まり。
「お前、いい奴だから、すぐにいい人見つかるって」
「ハハッ、イケメンのお前にだけは言われたくない!」
「そういうなよ。もうすぐ誕生日だろ? 仕事帰りにいい所に連れて行ってやる」
笑った顔がイケメンだし、気がきく、いい奴だ。
俺が女性だったら、惚れて、抱かれていたかもな。
後日、仕事の後、いい酒が飲める店に連れて行ってくれた。
さすが、モテるやつは違うぜ。
(お前ならすぐにいい人が出来るって! 可愛い彼女持ちのコイツに、何度おなじ言葉を聞いただろう?)
まあ、原因はわかっている――女性を前にすると緊張して、
面白く、気の利いた話と、スマートにエスコートできない。
――三十まで童貞だと、魔法使いになれるらしい。
そんなことを三十になる誕生日に、会社の同僚は笑いながら俺に教えた。
――嫌がらせだろうが、魔法使いはいいな。
――いっそうのこと、俺は魔法使いになってやる!
ってな、そんなアホな事を考えて、次の日の仕事終わりに。
発売日のライトノベルを本屋で買った帰り、信号無視、暴走した車が突っ込んできて、俺はあっけなく逝った。
おい、おい、おい、ち、ちょっ――――と、まってくれよぉ――!
△△△
気付いたら、赤ちゃんになっていた。
車にひかれて、俺は異世界に転生したのかと……さっき買ったライトノベルと同じで、ベタベタな展開だと。赤ちゃんベッドの上でグルグル回る、木製の玩具をみながら考えていた。
ーーお、誰かきた。
ベッドに近付く足音がして、グリーンの長い髪と瞳のイケメンがを覗いた。
「ローリスは元気にしていたか?」
「うあー(イケメンだなぁ)」
「そうか、元気か」
「ええ、よく食べて、よく寝て元気よ」
俺はローリスと言うのか……
おお、もう一人は壮絶美女! この二人とも耳が長い――これは森の妖精エルフなのか!
(うぉおぉぉ―――きたぁ、美男美女だとすると、俺は生まれながらにしてイケメンか!)
ぜってぇ、イケメンだ!!
ヒャッホウ!!
三十まで童貞だと魔法使い(エルフだけど)になるって、あの噂は本当だったんだな……
俺が生まれたのは、サンチェという大きな森のなかにある、サグラードというエルフの村だ。
そのサグラードの真ん中にはアルベロという樹齢何百年という、ぶっとい樹木が中央に生えている。この木の周りに螺旋階段のような階段が掘られていて、木のテッペンまで登れる。
樹木はエルフの象徴で、テッペンは見張り台になっていて、大人のエルフは交代でアルベロのテッペンで、夜な夜な見張りをしている。
ウチのラカ父さんも見張り番の板が回ってくると、樹木に登って見張りをする。五歳の時に一度だけ、樹木のテッペンまで連れて行ってもらった。
父さんは森を見渡しながら、
「ローリスも大きくなったら、ここで見張りをするだぞ」
「うん!」
美男美女の両親から生まれた俺はイケメン、エルフ。
そんな俺にも欠点があった……それは極度の方向音痴だ。
五歳までは両親と一緒にいたから、気がつかなかった。
六歳になりエルフの学校が始まってから、それはわかった。
六歳、一人で近くの森に遊びに行き、家に帰ろうとして森をさまよう。三日後、両親によって見つかる。
――コッソリ練習していた魔法(ウォーター)と、森の恵みで飢えを凌いだ。
七歳、一キロ先の先の獣人の村に着く……初めてみる獣人に驚き、その村の戦士にホクホク顔で手を引かれて帰ってきた。
――獣人もイケメン、美女が多かった。
八歳、エルフと仲が悪いとされるドワーフの洞窟に着く、ドワーフのおっちゃんと意気投合して、おもちゃの刀を貰い連れてきてもらった。
おかしい、ちゃんと家まで帰っているのに、気付けば別の場所にいるんだ……不思議だよね。
そんな俺を両親は心配した。
「あなた、ローリスがこのままだと、人間に捕まるわ」
「そうなると、不味いな」
方向音痴の俺に両親は悩み、首にローリス、サグラード村のエルフと、書かれた迷子札をかけられて、
「ローリス、明日から隣のミチちゃんが学校と家の、送り迎えしてくれるからね」
ーーそれはマジか。
こともあろうか両親はお隣の幼馴染で、一つ下のミチにお願いしたいた。学校の行き帰り、俺がはぐれないようにミチと手をつないでいる。
村のみんなが微笑んで、俺たちを見ている。
俺――外見は六歳だが、中身は三十のオッサンなんだよ!
最初は女の子と手を繋げる! とドギマギしていたが、歳をとるにつれて、ミチの嫌そうな顔と、周りの冷やかしも正直つらい。
俺が十歳になると、ミチは。
「もうやだ! 今日は友達と帰る」
そう叫び、ミチは友達と帰ってしまった。
そうなるよね……俺のせいで友達と遊べない、ミチも年頃の娘だ、女の子達と一緒がいいよな。
(俺も一人で大丈夫だ!)
家まで帰ろうとして何故か俺は、村一番高い、アルベロの見張り台に立っていた。
「…………ここにくる前に、気付かないのか、オレ!」
……ほんとう、嫌になるくらいの方向音痴だ。
10
お気に入りに追加
83
あなたにおすすめの小説
【修正中】ハズレ勇者の鬼畜スキル 〜ハズレだからと問答無用で追い出されたが、実は規格外の歴代最強勇者だった?〜
水先 冬菜
ファンタジー
「こんなハズレ勇者など、即刻摘み出せ!!!」
某大学に通う俺、如月湊(きさらぎみなと)は漫画や小説とかで言う【勇者召喚】とやらで、異世界に召喚されたらしい。
お約束な感じに【勇者様】とか、【魔王を倒して欲しい】だとか、言われたが--------
ステータスを開いた瞬間、この国の王様っぽい奴がいきなり叫び出したかと思えば、いきなり王宮を摘み出され-------------魔物が多く生息する危険な森の中へと捨てられてしまった。
後で分かった事だが、どうやら俺は【生産系のスキル】を持った勇者らしく。
この世界では、最下級で役に立たないスキルらしい。
えっ? でも、このスキルって普通に最強じゃね?
試しに使ってみると、あまりにも規格外過ぎて、目立ってしまい-------------
いつしか、女神やら、王女やらに求婚されるようになっていき…………。
※前の作品の修正中のものです。
※下記リンクでも投稿中
アルファで見れない方など、宜しければ、そちらでご覧下さい。
https://ncode.syosetu.com/n1040gl/
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
ネコ科に愛される加護を貰って侯爵令嬢に転生しましたが、獣人も魔物も聖獣もまとめてネコ科らしいです。
ゴルゴンゾーラ三国
ファンタジー
猫アレルギーながらも猫が大好きだった主人公は、猫を助けたことにより命を落とし、異世界の侯爵令嬢・ルティシャとして生まれ変わる。しかし、生まれ変わった国では猫は忌み嫌われる存在で、ルティシャは実家を追い出されてしまう。
しぶしぶ隣国で暮らすことになったルティシャは、自分にネコ科の生物に愛される加護があることを知る。
その加護を使って、ルティシャは愛する猫に囲まれ、もふもふ異世界生活を堪能する!
異世界転生は、0歳からがいいよね
八時
ファンタジー
転生小説好きの少年が神様のおっちょこちょいで異世界転生してしまった。
神様からのギフト(チート能力)で無双します。
初めてなので誤字があったらすいません。
自由気ままに投稿していきます。
辻ヒーラー、謎のもふもふを拾う。社畜俺、ダンジョンから出てきたソレに懐かれたので配信をはじめます。
月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
ブラック企業で働く社畜の辻風ハヤテは、ある日超人気ダンジョン配信者のひかるんがイレギュラーモンスターに襲われているところに遭遇する。
ひかるんに辻ヒールをして助けたハヤテは、偶然にもひかるんの配信に顔が映り込んでしまう。
ひかるんを助けた英雄であるハヤテは、辻ヒールのおじさんとして有名になってしまう。
ダンジョンから帰宅したハヤテは、後ろから謎のもふもふがついてきていることに気づく。
なんと、謎のもふもふの正体はダンジョンから出てきたモンスターだった。
もふもふは怪我をしていて、ハヤテに助けを求めてきた。
もふもふの怪我を治すと、懐いてきたので飼うことに。
モンスターをペットにしている動画を配信するハヤテ。
なんとペット動画に自分の顔が映り込んでしまう。
顔バレしたことで、世間に辻ヒールのおじさんだとバレてしまい……。
辻ヒールのおじさんがペット動画を出しているということで、またたくまに動画はバズっていくのだった。
他のサイトにも掲載
なろう日間1位
カクヨムブクマ7000
異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~
イノナかノかワズ
ファンタジー
助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。
*話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。
*他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。
*頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。
*無断転載、無断翻訳を禁止します。
小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。
カクヨムにても公開しています。
更新は不定期です。
クラス転移したひきこもり、僕だけシステムがゲームと同じなんですが・・・ログアウトしたら地球に帰れるみたいです
こたろう文庫
ファンタジー
学校をズル休みしてオンラインゲームをプレイするクオンこと斉藤悠人は、登校していなかったのにも関わらずクラス転移させられた。
異世界に来たはずなのに、ステータス画面はさっきやっていたゲームそのもので…。
転生発明家は異世界で魔道具師となり自由気ままに暮らす~異世界生活改革浪漫譚~
夜夢
ファンタジー
数々の発明品を世に生み出し、現代日本で大往生を迎えた主人公は神の計らいで地球とは違う異世界での第二の人生を送る事になった。
しかし、その世界は現代日本では有り得ない位文明が発達しておらず、また凶悪な魔物や犯罪者が蔓延る危険な世界であった。
そんな場所に転生した主人公はあまりの不便さに嘆き悲しみ、自らの蓄えてきた知識をどうにかこの世界でも生かせないかと孤軍奮闘する。
これは現代日本から転生した発明家の異世界改革物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる