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二
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しかし、男の表情は厳しい。
「さっさと答えろ! 貴様はどこから来たんだ?」
「日本から来ました」
「日本だと、聞いた事がないところだな?」
男は腰の剣にカチャリと手を掛けた。
「ますます怪しい女だ」
あれれ?
わたしと男の間には冷たい空気が漂っていない?
(小説と違う? 思っていたのと全然違う?)
わたしって、いまこいつに殺されかけてない?
そんなの、嫌だ!
恐怖におののき逃げようとしたけど、男の動きがいち早くみぞおちにキツイ、一発を食らった。
「……グハッ」
こいつ容赦ない。だって、女の子のお腹を本気で殴ったよ。
(わたしは聖女のはずなに、なんでこんな扱いなの?)
くっ、もうダメだ。意識が遠のく……ここで気を失ってはキケンだぁ……っ……しかし、わたしは気を失い男の腕の中に落ちた。
♢
高校に受かり入学の前に施設の室長に呼ばれた。いつも優しいお母さんのような彼女は厳しい目をしていた。
「ミカさん。これからあなたは高校生になるのだから、バイトなりして一人立ちの準備を始めなさい」
「一人立ちの準備?」
「厳しいようでけど、みんな通った道だからがんばりなさい」
みんなが通った道。そうか……高校生活が終われば就職して一人暮らしかぁ。
頭が良ければ奨学金で大学に行けるけど、出来のよくないわたしは頷くしかなかった。
寂しいけど平気だ、わたしは一人でも生きていける。
生まれた時から……わたしは一人だから。
(……っ)
少し前に室長と話したときの夢を見た……みんなはわたしを心配してくれてるかな?
それとも家出をしたと思われたかな?
(ん?)
ボソボソ、近くで声が聞こえる……近くで誰かが会話をしているようだ。
見つけたとか?
捕まえたとか? 話しているようだ。
その声に意識がはっきり、浮上してきたと同時にお腹に激痛が走った。
(くっ……いててっ、お腹が痛い)
そうだ。わたしはこの声の主にお腹を殴られたんだ。わたしは目を開けずに、この男の会話に耳を傾けた。
「……そうです。東側の大理石の廊下にて、変わった服装の女を見つけました」
『そうか……やはりいたか。直ちにこちらにその女を連れて来なさい』
(連れて来なさい?)
そう聞こえた。
この男はわたしを声の主の所に、連れて行くきなんだ。
「はい、わかりました父上」
父上? 声の主と男は親子。まさかわたし殺される?
ここから逃げようと、体を起こそうとしてお腹に激痛が走る。
「くうっ…いててっ、、」
「…気が付いたのか」
男の声が近くから聞こえるし、やけに、わたしの目線が高い? 目を開ければ、男に荷物の様に担がれていた。
「いやぁー! 下ろして…くっ、お腹痛い、お腹痛いよー。この暴力男! 殺される! 誰か助けて!」
「暴力男だと! 見た目が、不審者の貴様には言われたくない!」
わたしの見た目が不審者に見えたからこの人は殴ったの? 赤茶けに青い目のどこが変なの? 変か⁉︎
違う違う。
「わたしは不審者じゃない、離せ! 降ろせ!」
逃げようともがいたけど、たくましい男の腕はビクともしないし、平然としている。
『……どうした 騒がしいが何かあったのか?』
「いいえ、何もありません。では、そちらに連れて帰ります」
男は何事もなかったかのように、壁に掛かる丸い鏡に話しをかけていた。話を終わらせて、壁に手をかざすと鏡ごと消えていた。
「鏡が消えた! 何々、手品なの? マジシャン⁉︎」
「手品? マジシャン? なんだそれは……これは魔法だ!」
「魔法! やっぱりここには魔法があるんだ、もう一回見せて見たい、見せろ!」
「うるさい耳元でわめくな! いまからお前を父上がいる広間に連れて行く」
「広間! そこに連れて行って何をするきだ!」
「そこに、いけばわかる」
そこに連れて行って国王陛下とかが、小説の様にわたしを聖女さまとして迎えて「あなたに頼みがある」とか?「聖女様、魔王を倒してくださいと」か言われるの?
「さっさと答えろ! 貴様はどこから来たんだ?」
「日本から来ました」
「日本だと、聞いた事がないところだな?」
男は腰の剣にカチャリと手を掛けた。
「ますます怪しい女だ」
あれれ?
わたしと男の間には冷たい空気が漂っていない?
(小説と違う? 思っていたのと全然違う?)
わたしって、いまこいつに殺されかけてない?
そんなの、嫌だ!
恐怖におののき逃げようとしたけど、男の動きがいち早くみぞおちにキツイ、一発を食らった。
「……グハッ」
こいつ容赦ない。だって、女の子のお腹を本気で殴ったよ。
(わたしは聖女のはずなに、なんでこんな扱いなの?)
くっ、もうダメだ。意識が遠のく……ここで気を失ってはキケンだぁ……っ……しかし、わたしは気を失い男の腕の中に落ちた。
♢
高校に受かり入学の前に施設の室長に呼ばれた。いつも優しいお母さんのような彼女は厳しい目をしていた。
「ミカさん。これからあなたは高校生になるのだから、バイトなりして一人立ちの準備を始めなさい」
「一人立ちの準備?」
「厳しいようでけど、みんな通った道だからがんばりなさい」
みんなが通った道。そうか……高校生活が終われば就職して一人暮らしかぁ。
頭が良ければ奨学金で大学に行けるけど、出来のよくないわたしは頷くしかなかった。
寂しいけど平気だ、わたしは一人でも生きていける。
生まれた時から……わたしは一人だから。
(……っ)
少し前に室長と話したときの夢を見た……みんなはわたしを心配してくれてるかな?
それとも家出をしたと思われたかな?
(ん?)
ボソボソ、近くで声が聞こえる……近くで誰かが会話をしているようだ。
見つけたとか?
捕まえたとか? 話しているようだ。
その声に意識がはっきり、浮上してきたと同時にお腹に激痛が走った。
(くっ……いててっ、お腹が痛い)
そうだ。わたしはこの声の主にお腹を殴られたんだ。わたしは目を開けずに、この男の会話に耳を傾けた。
「……そうです。東側の大理石の廊下にて、変わった服装の女を見つけました」
『そうか……やはりいたか。直ちにこちらにその女を連れて来なさい』
(連れて来なさい?)
そう聞こえた。
この男はわたしを声の主の所に、連れて行くきなんだ。
「はい、わかりました父上」
父上? 声の主と男は親子。まさかわたし殺される?
ここから逃げようと、体を起こそうとしてお腹に激痛が走る。
「くうっ…いててっ、、」
「…気が付いたのか」
男の声が近くから聞こえるし、やけに、わたしの目線が高い? 目を開ければ、男に荷物の様に担がれていた。
「いやぁー! 下ろして…くっ、お腹痛い、お腹痛いよー。この暴力男! 殺される! 誰か助けて!」
「暴力男だと! 見た目が、不審者の貴様には言われたくない!」
わたしの見た目が不審者に見えたからこの人は殴ったの? 赤茶けに青い目のどこが変なの? 変か⁉︎
違う違う。
「わたしは不審者じゃない、離せ! 降ろせ!」
逃げようともがいたけど、たくましい男の腕はビクともしないし、平然としている。
『……どうした 騒がしいが何かあったのか?』
「いいえ、何もありません。では、そちらに連れて帰ります」
男は何事もなかったかのように、壁に掛かる丸い鏡に話しをかけていた。話を終わらせて、壁に手をかざすと鏡ごと消えていた。
「鏡が消えた! 何々、手品なの? マジシャン⁉︎」
「手品? マジシャン? なんだそれは……これは魔法だ!」
「魔法! やっぱりここには魔法があるんだ、もう一回見せて見たい、見せろ!」
「うるさい耳元でわめくな! いまからお前を父上がいる広間に連れて行く」
「広間! そこに連れて行って何をするきだ!」
「そこに、いけばわかる」
そこに連れて行って国王陛下とかが、小説の様にわたしを聖女さまとして迎えて「あなたに頼みがある」とか?「聖女様、魔王を倒してくださいと」か言われるの?
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