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あやかし横丁の事件①

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 シンヤは言った「環の病魔絵師の力を見て、欲しくなったのかな」と。

 環は困る。

「シンヤ君が一緒ならいいけど……一人では嫌だわ」
「だよな……狐塚との、いざこざも嫌だよな」

 ミハルの実家は大きい名家だ、シンヤと環とは違う。

「「ふうっ、面倒」」

 静かな学園の庭園に、二人の声が被る。

 環は本当に面倒だと思った、ただでさえ故郷を離れ一人暮らしで、学園、第三治療院にも慣れてきたのだ。
 あやかし横丁も気に入って、楽しく送る日々を邪魔されたくないし、ミハルに目をつけられたくないのが本音だ。

(弥白さんは分からないけど、ミハルさんは弥白さんのこと好きだもの)

 シンヤもそうだった、ようやく慣れてきたのだ。
 見習いだが、環と営むあやかし治療院が楽しい。
 
「まあ、何かあったら助けるよ」
「ありがとう、シンヤ君」

 シンヤは弥白が諦めるまで、助けてくれると言った。




 +
 



「環ちゃん知ってる?」
「はい?」

 腹痛を訴え第三治療院を訪れた、鬼女のメメが環に驚きの話をした。

 数日後――あやかし横丁で小狸、化け猫、猫又など見た目が可愛い、あやかし達が誘拐されるという、事件が起こっていると聞いた。

「メメさん、その話は本当ですか?」
「ええ、情報屋のハヤに聞いたから確かよ」

 環は驚き、隣のシンヤの治療室の扉を開けた。
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