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十六

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「………んっ」

 翌朝、カーテンから差し込む日差しで目が覚めたリリは、寝返りを打つと目の前にカイザーが寝ていた。一緒のベッドで寝ていたことに驚くも、自分がカイザーのガウンを握ってしまったからだと気付く。

(手を外さないでくれたのね)

 やさしいカイザーをポーッと見つめる先に、ガウンからのぞく、引き締まった胸元が見えた。鍛えられて盛り上がる筋肉と、昨日よりも甘い香りに誘われて、リリはカイザーの胸元に擦り寄った。

 ……私の好きな香り、カイザー様の香り。

 そのリリの大胆な行動に、先に目覚めていたカイザーは驚いた。そして、中々スリスリをやめないリリに、カイザーはそっとつぶやいた。

「朝から、リリは大胆だね」
「ひゃっ! カ、カイザー様、起きてらしたのですね」

 顔を赤くさせて、恥ずかしさで逃げようとしたリリは、簡単にカイザーの腕の中に捕まり。逃がさないと、カイザーの腕に力がはいっつたことがわかり、リリは観念した。

「ごめんなさい、好きな香りだったから………すり寄ってしまったの」

 リリの大胆な行動と、大胆な発言にカイザーのほうが押し黙った。



♱♱♱



 食堂で朝食を終えた後。
 カイザーは午前中、庭園でバラの手入れをするけど『リリもする?』と誘ってくれた。

 それにリリは頷いた。
 部屋に戻りメイドに汚れてもいい服に着替える。昨夜、リリに耳と尻尾が生えたためにアンたちメイドは、下着からドレスまで尻尾穴を縫ってくれた。

「リリアムお嬢様、カイザー様が着られなくなった作業用のシャツとスラックスです。ここから尻尾を出して、尻尾の上でリボンをむすぶように致しました」

「尻尾が楽にだせるわ。ありがとう、アン」

 作業のため髪を邪魔にならないよう、結い上げてもらう。

「お嬢様の黒髪もきれいでしたが、白銀の髪も素敵ですわ」

「そう? カイザー様はお会いしたとき、黒髪を綺麗だとほめてくれたの………先祖返りをして白銀の髪にかわり、耳と尻尾が生えた私のことお嫌にならないかしら?」

 昨夜は私が泣いてしまって、かなり動揺していたから……お優しいカイザーはご自身のお気持ちを言えなかったんじゃないかと、リリは考えた。


 ――もし、そうだとしたら、私はここも出ていかなくてはならない。


「リリアムお嬢様は昨夜と今朝のカイザー様をみて、その様にかんじたのですか?」

 感じていないと、リリはブンブン横に首を振る。

「昨夜と今朝、カイザー様は優しく私を見つめてくださったわ。でもね、アン。私はカイザー様が好き、大好きなの……その、カイザー様が元婚約者のルーズベルトとは違うとわかっていても……こわいの」

 好きだ、愛していると言っていても、人の気持ちは簡単に変わると知ったから。
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