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「……アム、リリアム、聞いているの?」


(はぁ、……妹を見たから、ルーズベルトに婚約を破棄されたときのことを、思いだしてしまったわ)


「リリアム?」

「はい、聞いております、カルランお義母様」

 それならいいわ、とカルランは話を続けた。

「それでね。冬には入る前の秋迄にルーズベルトとミサリアの、二人を結婚させたいのよ。でもね、この子にそう言っても『リリアムお姉様が先に結婚して欲しい』と言って、話を聞いてくれないのよ」

 そう言ったお母様に、妹は頬を膨らまして、

「だってお母様。ミサは……リリアムお義姉様に早く幸せになって貰いたいの。ルーズベルトも会うたびにそう言っているわ。フフ、ルーズベルトは家族思いの紳士だから、お義姉様の幸せを祈っているのですって」

「……幸せ? そ、そうですか、ありがとうございます」

(嘘つきね。人から幸せを奪った貴女がよく言えたものだわ。ルーズベルトだって、そんなこと思うわけない)

 ただ単にルーズベルトは同じ屋根の下で、リリと会うのが気まずくて嫌なだけ。ほんとうの紳士は義妹に手を出して、婚約破棄もしない。


「私よりも幸せになって、リリアムお義姉様」


 した手にでながら、マウントを取ろうとするミサエラには呆れる。見た目が可愛く、仕草も可愛いミサエラ。そんなミサエラに誘惑されて、ホイホイ浮気したルーズベルトもルーズベルトだ。

(まあ、ミサエラは初めから女豹のような目つきで、ルーズベルトを狙っていたもの)

 家族との初顔合わせの日に、ミサエラからやたらと彼にくっ付いていたことも。結婚式の話を進めるために、屋敷へ訪れたルーズベルトの前で、胸元が空いた卑猥なドレスで誘惑していたことも。

 また、リリが見ていないところで、彼と濃厚なくちづけしていたことも。お節介好きな令嬢と、メイド達に告げられてリリは知っていた。

(知らない方がよかった……私のことが嫌いになったから、婚約を破棄したと思いたかった。いらないお節介だったのよ)

 リリも妹と浮気をする様な、ルーズベルトには未練は……ない。

 ――けど、お父様の浮気相手カルランと娘のミサエラ。二人が屋敷に来てから、リリの周りはおかしくなった。
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