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ルーズベルトに別れを言われたのは、満月の夜だった。その日は夜遅くに珍しく、婚約者ルーズベルトから"会いたい"と、屋敷の外へと呼ばれた。
リリは部屋着からドレスに着替えて会いに行けば、庭先でオドオドするルーズベルトに「すまない、君の妹ミサテラ嬢を愛してしまった」と頭を深く下げられた。
(……妹を愛した? 結局はそうなるのね)
この夜、ルーズベルトは準備よく慰謝料も持ってきていた。リリはルーズベルトがこの屋敷に養子に来てくれたら、寂しい毎日も少しは楽しくなると思っていたのに……その夢も叶わなくなってしまった。
『だ、だから、その、リリアム……僕と婚約破棄してくれないか?』
『婚約破棄ですか? でも……融資の話はどうなるのですか?』
彼の家の借金をウチが返し、婿養子の来るという契約で、リリはルーズベルトと婚約した。
妹とはそんな契約をしておらず、リリは彼の両親がなんと言うのか心配した。しかし、ルーズベルトの口から出た言葉はちがった。
『リリアム心配いらないよ。……僕の父上と君の父にも、この婚約破棄のことは承諾してもらっている。借金の話も、婿養子の話も大丈夫。ただ婚約者が姉から妹に変わるだけだ』
『えっ』
ルーズベルトの酷い言葉と、両親もウチのお父様も承諾した……話はもうそこまで進んでいる。それなら、リリがなにを言っても覆らない。彼との別れと悲しさ、胸の痛みを奥に隠してリリは微笑んだ。
『それなら、婚約を破棄しても何にも心配は要りませんわね。わかりました……初めからルーズベルト様は妹の方が良かったですものね』
そのリリの言葉にルーズベルトは焦りはじめる。
『い、いや、そういうわけでは……ないのだが』
『そういう、わけないでしょう? 私ではなく義妹ばかり見て、我慢できず婚約者がある身で、ミサエラに手を出していたくせに……そんなに妹が良かったのなら筋を通して、先に私と婚約破棄してから手を出せばよかったのよ……フフ、バカらしくて笑っちゃうわ。この慰謝料はいただきます。さようなら、ミサエラと仲良くね』
リリはルーズベルトに涙を見せることなく、自分で言えるだけの嫌味を言い。この日、ルーズベルトとの婚約破棄を受け入れた。
後でメイドたちの話で知った。この婚約破棄の裏にカルランお義母様も一枚噛んでいたと。
翌日あれよ、あれよと婚約破棄の話は進み、義妹ミサエラとルーズベルトの婚約の話も同時に進んでいた。
(婚約破棄の書類はカルランお義母様が率先してやってくれたから、ルーズベルトと顔を合わさなくてよかった……もしお会いしていたら、心は乱れて、泣いていたかもしれない)
リリは部屋着からドレスに着替えて会いに行けば、庭先でオドオドするルーズベルトに「すまない、君の妹ミサテラ嬢を愛してしまった」と頭を深く下げられた。
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この夜、ルーズベルトは準備よく慰謝料も持ってきていた。リリはルーズベルトがこの屋敷に養子に来てくれたら、寂しい毎日も少しは楽しくなると思っていたのに……その夢も叶わなくなってしまった。
『だ、だから、その、リリアム……僕と婚約破棄してくれないか?』
『婚約破棄ですか? でも……融資の話はどうなるのですか?』
彼の家の借金をウチが返し、婿養子の来るという契約で、リリはルーズベルトと婚約した。
妹とはそんな契約をしておらず、リリは彼の両親がなんと言うのか心配した。しかし、ルーズベルトの口から出た言葉はちがった。
『リリアム心配いらないよ。……僕の父上と君の父にも、この婚約破棄のことは承諾してもらっている。借金の話も、婿養子の話も大丈夫。ただ婚約者が姉から妹に変わるだけだ』
『えっ』
ルーズベルトの酷い言葉と、両親もウチのお父様も承諾した……話はもうそこまで進んでいる。それなら、リリがなにを言っても覆らない。彼との別れと悲しさ、胸の痛みを奥に隠してリリは微笑んだ。
『それなら、婚約を破棄しても何にも心配は要りませんわね。わかりました……初めからルーズベルト様は妹の方が良かったですものね』
そのリリの言葉にルーズベルトは焦りはじめる。
『い、いや、そういうわけでは……ないのだが』
『そういう、わけないでしょう? 私ではなく義妹ばかり見て、我慢できず婚約者がある身で、ミサエラに手を出していたくせに……そんなに妹が良かったのなら筋を通して、先に私と婚約破棄してから手を出せばよかったのよ……フフ、バカらしくて笑っちゃうわ。この慰謝料はいただきます。さようなら、ミサエラと仲良くね』
リリはルーズベルトに涙を見せることなく、自分で言えるだけの嫌味を言い。この日、ルーズベルトとの婚約破棄を受け入れた。
後でメイドたちの話で知った。この婚約破棄の裏にカルランお義母様も一枚噛んでいたと。
翌日あれよ、あれよと婚約破棄の話は進み、義妹ミサエラとルーズベルトの婚約の話も同時に進んでいた。
(婚約破棄の書類はカルランお義母様が率先してやってくれたから、ルーズベルトと顔を合わさなくてよかった……もしお会いしていたら、心は乱れて、泣いていたかもしれない)
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