上 下
5 / 16

ご熊 リチャの住む村

しおりを挟む
「ヒジリ、ここが僕が住む村だよ」

 リチャに案内された村は思っていたよりも貧相だった「この村はね、亜人と人が一緒に住む村だよ」と、リチャは教えてくれた。リチャの言う通り耳と尻尾が揺れていた。

(可愛い)

 村のみんなはリチャの帰りを待っていたのか、リチャの周りに集まってきた。

「リチャ、おかえり」

「リチャ、モンスターと戦ったのかい? 怪我はしていないか?」

「リチャ、いつもモンスターを退治してくれて、ありがとうよ」

「平気だよ。僕は強いからね、簡単にはやられないよ」

「リチャ!」

「リチャ!」

 子供達も集まり、みんなと和気藹々しているけど、年配の方と子供ばかり、この村に若い人がいないみたい?

 1人の耳と尻尾付きのおばちゃんが私に気付き、微笑んだ。

「おや? 隣にいるこの子は誰だい? リチャのお嫁さんかい?」
 
「リチャに嫁!」

 村の人たちが、ざわめき始めた。

「残念だけど、この子は僕の嫁じゃないんだ。この子はザザンの森で見つけた、ヒジリって言うだ……誰かに召喚されたみたいなんだよね」

 召喚されたと聞き、村の表情が変わり聞こえてくる「またか」と口々に言い始めた。私の他にも召喚された子がいるんだ。

「歴代の国王は何度も何度も異世界の人を呼ぶ。自分達では出来ないからと、今度はこんなに若い子を呼ぶとは」

 こんな若い子? に引っかかる。私は若いっちゃ若いけど。もしかして私は年齢よりも若く見られてる? 150センチの身長と普通盛りの胸、でもスーツ着てるんだけど。

 隣のリチャに聞いてみた。

「リチャ、リチャ、私っていくつに見えているの?」

「うん? ヒジリの歳かぁ、14くらい?」

 なぬ? 

「14歳? 違う……わ、私、21歳なんだけど」


 えっ! と村のみんながびっくりした。







 それはもう、ぷっくり膨れたさ。

「ごめんね、ヒジリ」

 村のみんなも「ごめん」と謝った。やっぱり異世界でも、日本人って若くみられるんだ、と……実感。

「もういいよ、リチャも、村の皆さんも。しばらくリチャの家に住ませてもらうので、よろしくお願いします」

 頭を下げるとみんなは喜んで迎えてくれた。よかった、国のこと魔法のことを知るまでは、しばらくこの村に置いてもらおう。

 村の人たちも何かあったら「聞きにおいで」と言ってくれた。

「さてと、僕たちも帰ろう。お腹すいたよね、家で食事にしよう」

「うん」
 
 リチャがこっちだと家に呼んでくれた。木造の煙突付きの可愛いお家。入ってと言ったリチャの家の中はなんか臭い。強烈な薬品臭いに思わず鼻を摘んだ。

「す、凄い薬品の匂いだね」

「そうかな? そうかいま、ギルドに下ろすポーション作っているからかな? このポーションをギルドに納品すれば、かなりの額が手に入るから頑張らないと」

 火にかけたままの壺の中身を棒でかき混ぜた。そして、ごめんね。いまはこれしかないんだ、と丸いパンと牛乳をテーブルに出してくれる。

「ありがとう、いただきます」

「たくさんもないけど、食べて」

 リチャも反対側に座り、食事をしようとした時。ドンドンと激しく扉を叩く音が聞こえて入ってきた。

 「リチャいる? 森から村に戻ってきたって?」

 その人は「はぁ、はぁ」息を切らしていた。リチャはテーブルから立ち上がりると女性を支えて。

「どうしたの? リリおばさん」

「旦那がまた胸を押さえて苦しみ出したんだ、頼む、リチャ、旦那を見てやって!」

「分かった。直ぐに見に行くから、リリおばさんはここで、ゆっくり休んでから来るんだよ」

 おばさんをテーブルに座らせて、リチャは家にあるクスリを革製の鞄に詰め始めた。

「リチャ?」

「ごめんね。直ぐに戻ってくるから……ヒジリはゆっくり、この家で寛いでいていいからね、リリおばちゃんもだよ!」

「分かった」

「リチャ、頼むよ」

 そう言い残して、リチャは革製の鞄を持ち、外に走っていった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生することになりました。~神様が色々教えてくれます~

柴ちゃん
ファンタジー
突然、神様に転生する?と、聞かれた私が異世界でほのぼのすごす予定だった物語。 想像と、違ったんだけど?神様! 寿命で亡くなった長島深雪は、神様のサーヤにより、異世界に行く事になった。 神様がくれた、フェンリルのスズナとともに、異世界で妖精と契約をしたり、王子に保護されたりしています。そんななか、誘拐されるなどの危険があったりもしますが、大変なことも多いなか学校にも行き始めました❗ もふもふキュートな仲間も増え、毎日楽しく過ごしてます。 とにかくのんびりほのぼのを目指して頑張ります❗ いくぞ、「【【オー❗】】」 誤字脱字がある場合は教えてもらえるとありがたいです。 「~紹介」は、更新中ですので、たまに確認してみてください。 コメントをくれた方にはお返事します。 こんな内容をいれて欲しいなどのコメントでもOKです。 2日に1回更新しています。(予定によって変更あり) 小説家になろうの方にもこの作品を投稿しています。進みはこちらの方がはやめです。 少しでも良いと思ってくださった方、エールよろしくお願いします。_(._.)_

召喚されたけど要らないと言われたので旅に出ます。探さないでください。

udonlevel2
ファンタジー
修学旅行中に異世界召喚された教師、中園アツシと中園の生徒の姫島カナエと他3名の生徒達。 他の三人には国が欲しがる力があったようだが、中園と姫島のスキルは文字化けして読めなかった。 その為、城を追い出されるように金貨一人50枚を渡され外の世界に放り出されてしまう。 教え子であるカナエを守りながら異世界を生き抜かねばならないが、まずは見た目をこの世界の物に替えて二人は慎重に話し合いをし、冒険者を雇うか、奴隷を買うか悩む。 まずはこの世界を知らねばならないとして、奴隷市場に行き、明日殺処分だった虎獣人のシュウと、妹のナノを購入。 シュウとナノを購入した二人は、国を出て別の国へと移動する事となる。 ★他サイトにも連載中です(カクヨム・なろう・ピクシブ) 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

転生王女は異世界でも美味しい生活がしたい!~モブですがヒロインを排除します~

ちゃんこ
ファンタジー
乙女ゲームの世界に転生した⁉ 攻略対象である3人の王子は私の兄さまたちだ。 私は……名前も出てこないモブ王女だけど、兄さまたちを誑かすヒロインが嫌いなので色々回避したいと思います。 美味しいものをモグモグしながら(重要)兄さまたちも、お国の平和も、きっちりお守り致します。守ってみせます、守りたい、守れたらいいな。え~と……ひとりじゃ何もできない! 助けてMyファミリー、私の知識を形にして~! 【1章】飯テロ/スイーツテロ・局地戦争・飢饉回避 【2章】王国発展・vs.ヒロイン 【予定】全面戦争回避、婚約破棄、陰謀?、養い子の子育て、恋愛、ざまぁ、などなど。 ※〈私〉=〈わたし〉と読んで頂きたいと存じます。 ※恋愛相手とはまだ出会っていません(年の差) ブログ https://tenseioujo.blogspot.com/ Pinterest https://www.pinterest.jp/chankoroom/ ※作中のイラストは画像生成AIで作成したものです。

私の家族はハイスペックです! 落ちこぼれ転生末姫ですが溺愛されつつ世界救っちゃいます!

りーさん
ファンタジー
 ある日、突然生まれ変わっていた。理由はわからないけど、私は末っ子のお姫さまになったらしい。 でも、このお姫さま、なんか放置気味!?と思っていたら、お兄さんやお姉さん、お父さんやお母さんのスペックが高すぎるのが原因みたい。 こうなったら、こうなったでがんばる!放置されてるんなら、なにしてもいいよね! のんびりマイペースをモットーに、私は好きに生きようと思ったんだけど、実は私は、重要な使命で転生していて、それを遂行するために神器までもらってしまいました!でも、私は私で楽しく暮らしたいと思います!

私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル
ファンタジー
旧題:私は『聖女ではない』ですか。そうですか。帰ることも出来ませんか。じゃあ『勝手にする』ので放っといて下さい。 【 聖女?そんなもん知るか。報復?復讐?しますよ。当たり前でしょう?当然の権利です! 】 地震を知らせるアラームがなると同時に知らない世界の床に座り込んでいた。 同じ状況の少女と共に。 そして現れた『オレ様』な青年が、この国の第二王子!? 怯える少女と睨みつける私。 オレ様王子は少女を『聖女』として選び、私の存在を拒否して城から追い出した。 だったら『勝手にする』から放っておいて! 同時公開 ☆カクヨム さん ✻アルファポリスさんにて書籍化されました🎉 タイトルは【 私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください 】です。 そして番外編もはじめました。 相変わらず不定期です。 皆さんのおかげです。 本当にありがとうございます🙇💕 これからもよろしくお願いします。

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!

明衣令央
ファンタジー
 糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。  一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。  だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。  そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。  この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。 2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。

処理中です...