1 / 16
いち熊 異世界に召喚?
しおりを挟む
森野聖(もりのひじり)二十一歳は困っていた。
右を向いても、はたまた、左を向いても見たこともない森の中に私はいた。
今日は花金。残業がなく定時上がりジムに寄った帰りだった。ひと汗かいてシャワーを浴び『運動したから、少しくらいカロリーとっても平気!』理論で、帰り道にあるコンビニに寄って、サラダチキンとチョコ、あたりめとキンキンに冷えたビールを購入する予定を立てたばかり。
明日の土曜と日曜は家に引きこもって撮り溜めした、スラスラ、魔王城でたべるぞぉ、ニャンコでごめん。などなど異世界アニメを見るはずだった。
ジムで体も動かしさっぱりして最寄駅に着く前『この国を助けてください!』と、声優のようなイケメンだろう男性の声が聞こえた、と同時に私の足元に金色に光る魔法陣が現れた。
「えっ、えぇ、嘘? きゃっ、だ、だ、誰か助けて!」
その私の声に振り向いた人たちに半笑いで写真を撮られるし。帰りを急ぐ人々は聞こえない振りだし。
誰にも助けてもらえず、私は魔法陣にずるずる引き込まれて行った。体半分くらい埋まったときに思ったよ。あ、都会の人って冷たいなぁって。
それで、着いた先が見知らぬ森の中だし。
「どこだ、ここ? 勝手に人を召喚しておいて、誰もいない森の中って酷くないかい。誰かー私を元の世界に戻してよ!」
森の中で散々喚いてみたけど誰も来ない。
「くそっ、撮り溜めしたアニメ見たかった……買いだめした漫画だって、ライトノベル、BL本だって読んでいないのに……」
私って何のために召喚されたの? よくあるライトノベルなら着いた先が立派な城で、聖女召喚とか、勇者召喚、巻き込まれ召喚?
……追放?
はっ、森の中ということは既に追放されてた後なのでは?
私は城にちゃんと召喚されていたけど気絶していて、能力を勝手に調べたところ「こいつ呼んだ割に能力ないな、近くの森に捨ててこようぜ」的な。
終了のお知らせがよぎ……いや、待て待て。
私の他にもう1人召喚された人がいた、と言うより、私がいる魔法陣に突撃して来た人がいた。その人はいきなり走ってきて「私が貴方の代わりに異世界に行ってあげる、聖女ひゃっほぉう!」って魔法陣の中の私を突き飛ばした。
いま思い出しても、あの人、凄い人相で怖かった。見た目からして私より年上の人だったかも、お肌の張りとか目尻のシワとか……。
うーん、悪口かな? いや、突撃されたとき痛い思いしたし、本人いないし。それにさ、こっちは魔法陣に吸い込まれて慌てているのに、自分が都合で異世界に行きたいからって、見知らぬ人――私を突き飛ばすなんて酷い人だと思う。
キョロキョロ
「……はぁ」
やっぱり、待っていても……誰も来ないか。
「能力無しで追放されたのか……そうならそうで私も見知らぬ森の中で、うだうだしてても仕方がない。ライトノベルの主人公のように、この森を抜けて近くの村か町を探そう! そこで、ここが何処だか聞けばいいや」
そうと決まれば右と左のどっちに向かう?
そうだ、困った時はアレをやってみよう。鞄に入っている筆記用具の中からボールペンを出して、倒れる方に進む。前にライトノベルで召喚された男の子がやっていて、面白そうだったのよね。
このボールペンはどっちに倒れる?
「あ、右に倒れたわ!」
じゃー右に進もうとして、もふんともふもふの何かに、体がめり込み跳ね飛ばされた。
「きゃっ」
いてっ、お尻を打って痛いけど。顔はもふんと、幸せな感触が襲った。
もふもふ?
「……ごっ、ごめん。君、大丈夫?」
「はい、平気で、すぅ? ……えっ!」
私がぶつかったもふもふは、手に草の入った籠を持った、2足歩行の森の熊さんだった。
右を向いても、はたまた、左を向いても見たこともない森の中に私はいた。
今日は花金。残業がなく定時上がりジムに寄った帰りだった。ひと汗かいてシャワーを浴び『運動したから、少しくらいカロリーとっても平気!』理論で、帰り道にあるコンビニに寄って、サラダチキンとチョコ、あたりめとキンキンに冷えたビールを購入する予定を立てたばかり。
明日の土曜と日曜は家に引きこもって撮り溜めした、スラスラ、魔王城でたべるぞぉ、ニャンコでごめん。などなど異世界アニメを見るはずだった。
ジムで体も動かしさっぱりして最寄駅に着く前『この国を助けてください!』と、声優のようなイケメンだろう男性の声が聞こえた、と同時に私の足元に金色に光る魔法陣が現れた。
「えっ、えぇ、嘘? きゃっ、だ、だ、誰か助けて!」
その私の声に振り向いた人たちに半笑いで写真を撮られるし。帰りを急ぐ人々は聞こえない振りだし。
誰にも助けてもらえず、私は魔法陣にずるずる引き込まれて行った。体半分くらい埋まったときに思ったよ。あ、都会の人って冷たいなぁって。
それで、着いた先が見知らぬ森の中だし。
「どこだ、ここ? 勝手に人を召喚しておいて、誰もいない森の中って酷くないかい。誰かー私を元の世界に戻してよ!」
森の中で散々喚いてみたけど誰も来ない。
「くそっ、撮り溜めしたアニメ見たかった……買いだめした漫画だって、ライトノベル、BL本だって読んでいないのに……」
私って何のために召喚されたの? よくあるライトノベルなら着いた先が立派な城で、聖女召喚とか、勇者召喚、巻き込まれ召喚?
……追放?
はっ、森の中ということは既に追放されてた後なのでは?
私は城にちゃんと召喚されていたけど気絶していて、能力を勝手に調べたところ「こいつ呼んだ割に能力ないな、近くの森に捨ててこようぜ」的な。
終了のお知らせがよぎ……いや、待て待て。
私の他にもう1人召喚された人がいた、と言うより、私がいる魔法陣に突撃して来た人がいた。その人はいきなり走ってきて「私が貴方の代わりに異世界に行ってあげる、聖女ひゃっほぉう!」って魔法陣の中の私を突き飛ばした。
いま思い出しても、あの人、凄い人相で怖かった。見た目からして私より年上の人だったかも、お肌の張りとか目尻のシワとか……。
うーん、悪口かな? いや、突撃されたとき痛い思いしたし、本人いないし。それにさ、こっちは魔法陣に吸い込まれて慌てているのに、自分が都合で異世界に行きたいからって、見知らぬ人――私を突き飛ばすなんて酷い人だと思う。
キョロキョロ
「……はぁ」
やっぱり、待っていても……誰も来ないか。
「能力無しで追放されたのか……そうならそうで私も見知らぬ森の中で、うだうだしてても仕方がない。ライトノベルの主人公のように、この森を抜けて近くの村か町を探そう! そこで、ここが何処だか聞けばいいや」
そうと決まれば右と左のどっちに向かう?
そうだ、困った時はアレをやってみよう。鞄に入っている筆記用具の中からボールペンを出して、倒れる方に進む。前にライトノベルで召喚された男の子がやっていて、面白そうだったのよね。
このボールペンはどっちに倒れる?
「あ、右に倒れたわ!」
じゃー右に進もうとして、もふんともふもふの何かに、体がめり込み跳ね飛ばされた。
「きゃっ」
いてっ、お尻を打って痛いけど。顔はもふんと、幸せな感触が襲った。
もふもふ?
「……ごっ、ごめん。君、大丈夫?」
「はい、平気で、すぅ? ……えっ!」
私がぶつかったもふもふは、手に草の入った籠を持った、2足歩行の森の熊さんだった。
0
お気に入りに追加
116
あなたにおすすめの小説
ぽっちゃり女子の異世界人生
猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。
最強主人公はイケメンでハーレム。
脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。
落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。
=主人公は男でも女でも顔が良い。
そして、ハンパなく強い。
そんな常識いりませんっ。
私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。
【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜
𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。
だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。
「もっと早く癒せよ! このグズが!」
「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」
「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」
また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、
「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」
「チッ。あの能無しのせいで……」
頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。
もう我慢ならない!
聖女さんは、とうとう怒った。
25歳のオタク女子は、異世界でスローライフを送りたい
こばやん2号
ファンタジー
とある会社に勤める25歳のOL重御寺姫(じゅうおんじひめ)は、漫画やアニメが大好きなオタク女子である。
社員旅行の最中謎の光を発見した姫は、気付けば異世界に来てしまっていた。
頭の中で妄想していたことが現実に起こってしまったことに最初は戸惑う姫だったが、自身の知識と持ち前の性格でなんとか異世界を生きていこうと奮闘する。
オタク女子による異世界生活が今ここに始まる。
※この小説は【アルファポリス】及び【小説家になろう】の同時配信で投稿しています。
【完結】人々に魔女と呼ばれていた私が実は聖女でした。聖女様治療して下さい?誰がんな事すっかバーカ!
隣のカキ
ファンタジー
私は魔法が使える。そのせいで故郷の村では魔女と迫害され、悲しい思いをたくさんした。でも、村を出てからは聖女となり活躍しています。私の唯一の味方であったお母さん。またすぐに会いに行きますからね。あと村人、テメぇらはブッ叩く。
※三章からバトル多めです。
聖女にしろなんて誰が言った。もはや我慢の限界!私、逃げます!
猿喰 森繁
ファンタジー
幼いころから我慢を強いられてきた主人公。 異世界に連れてこられても我慢をしてきたが、ついに限界が来てしまった。 数年前から、国から出ていく算段をつけ、ついに国外逃亡。 国の未来と、主人公の未来は、どうなるのか!?
転生したらチートすぎて逆に怖い
至宝里清
ファンタジー
前世は苦労性のお姉ちゃん
愛されることを望んでいた…
神様のミスで刺されて転生!
運命の番と出会って…?
貰った能力は努力次第でスーパーチート!
番と幸せになるために無双します!
溺愛する家族もだいすき!
恋愛です!
無事1章完結しました!
妹と歩く、異世界探訪記
東郷 珠
ファンタジー
ひょんなことから異世界を訪れた兄妹。
そんな兄妹を、数々の難題が襲う。
旅の中で増えていく仲間達。
戦い続ける兄妹は、世界を、仲間を守る事が出来るのか。
天才だけど何処か抜けてる、兄が大好きな妹ペスカ。
「お兄ちゃんを傷つけるやつは、私が絶対許さない!」
妹が大好きで、超過保護な兄冬也。
「兄ちゃんに任せろ。お前は絶対に俺が守るからな!」
どんなトラブルも、兄妹の力で乗り越えていく!
兄妹の愛溢れる冒険記がはじまる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる