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86話

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 カルロのことを屋敷に帰ってきた、カカナお母様に伝えた。私の憑依に気付いたけどそれどころではなく、すぐ見に行きましょうと向かうと、彼はまだ細マッチョで筋トレ中。私たちが家に訪れたことがわかり、笑顔で向かい入れてくれた。

 お母様はいつもとは様子の違う、カルロに苦笑いを浮かべた。

「あらあら……でも体調は良くなったみたいね、その万能の実と言うのは、人に何かしらのパワーを与えるのかしらね?」

 そう言い、お皿に残っている"万能の実"を見ていた。

「でも、心配していたのよ。かなり、良くなってよかったわ。ゆっくり今日は休みなさい。あとこれは貰っていくわね」

 と、万能の実が乗ったお皿を回収した。

 屋敷に戻る途中、お母様にトラ丸との憑依の解き方を聞きたかったのだけど。ヴォルフ様がいらっしゃるからと。これから万能の実を調べに出てくるわと、ジロウに乗ってウキウキと行ってしまった。

「カカナお母様の、好奇心くすぐられちゃったかぁ」
《それなら仕方がない。少し待てばヴォルフも来るだろう》

 そうだね。とヴォルフ様に会う準備を始める。パレットが準備したお風呂に入り、髪を魔導具の冷風器で乾かして。あの日にもらったワンピースを着て、彼の屋敷の前で到着を待っていた。

(カルロとパレットはトラ丸の声が聞こえていたみたいだけど、耳と尻尾は見えていなかったかも)



 夕方ごろヴォルフ様の屋敷の扉が開く。中からヴォルフ様とクロ君。シラさんとポ君が出てくる。そして待っていた私を見て声を上げた。

「え? マリーナ? いつ耳と尻尾を生やしたの?」
《可愛い、トラ丸と憑依?》
「完璧な憑依ですね」
《ポ、驚いた》

「どうして、トラ丸と憑依したんだ?」

「えっーと。今朝、魔法の訓練をしていたんだけど。何かの拍子にトラ丸と憑依しちゃって、解き方がわからないんです」

 そう伝えると彼は"私らしい"と笑った。久しぶりに見た彼の笑顔が嬉しくて、私も笑った。しかし困ったことに嬉しくなると尻尾が上がる。尻尾が上がるとワンピースのスカートを持ち上げた。

「きゃっ」

「シラ、目を瞑って! マリーナは魔力を抑えて、落ちつきながら「トラ丸、離れて」と言ってみて」

「はい「トラ丸、離れて!」」

 ヴォルフ様の言う通りにすると、ポンと憑依が解けたのか。私の耳と尻尾が消えて、トラ丸が目の前に現れた。

「よかった……」
《フウッ、いっときは焦った》

「フフ、トラ丸と憑依したマリーナ可愛かった……いや。さあ、色々と持ってきたから、ここで夕食を摂ろう。シラ準備をお願い」

「かしこまりました」

 シラさんはアイテムボックスを開け、テラス席にテーブルクロスを弾き。次にスープ、サラダ、肉料理などの料理を取りだしていった。

「ごめんね、あまり時間がとれなくて」
「いいえ。今日、ヴォルフ様に会えてくれしいです」

 久しぶりにヴォルフ様とみんなとの夕食を楽しんだ。夕食後、デザートを食べながらヴォルフ様が口を開く。

「マリーナ、次で最後になる」
「次で最後?」

「父上が倒れ、僕は兄上の手伝いをしなくてはならないから、こちらにくる時間が取れない……僕の誕生日の日が最後だ」

「ヴォルフ様の誕生日……で最後」

 今から1週間後が彼の誕生だ。その日が最後――ヴォルフ様に会えなくなる。畑を復活させて、万能の実を彼に渡さなくてはならない。

「わかりました。その日、アップルパイを焼きます」
「ああ、楽しみだな」

「楽しみにしていてください。毎日、手紙を書きます。毎日、ヴォルフ様、クロ君、シラさん、ポ君の健康を夜空に願います」

 一緒、彼の瞳が揺れた。だけど、永遠の別れにはならないだろう。彼は乙女ゲームの攻略者対象、次に会うのは学園でかな。彼はヒロインに会って恋をする……

「マリーナ、ありがとう」
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