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33話

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 ウキウキ乗っただけで、トラ丸は空に飛び上がらない。私はここのままトラ丸に乗って、散歩でもいいかな。空を飛ぶのは初めてだし。

「トラ丸、無理しちゃダメだからね。ダメだと思ったら直ぐにやめて」

《マリ……ありがとう》
《トラ丸、無理するな》
《ポもそう思う》

 トラ丸は私のため必死に、飛ぼうとしているのがわかった。私はこの世界でトラ丸に会えたことが奇跡だから、ゆっくりいけばいいと思ってる。

 モフモフ、フワフワな背中に乗れただけで最高だもの!

「マリーナ、トラ丸と仲良くなるのが大切だから、2人の関係はとてもいいと思う。これなら空を飛ぶことも、憑依も直ぐにできそうだね」

「憑依?」

「聖獣の力は僕達人間にはイタズラにしかならないけど、体に宿して力を借りることができる」

「え?」

 トラ丸の力を借りられるの? ステキだわ。



「トラ丸、元に戻っていいよ。お疲れさま」
《お、おう》

 ヴォルフ様の合図でトラ丸は元の大きさに戻り、フウッと息を吐いた。大きくなるのも結構力を使ったのがわかった。トラ丸は神様に頼み私の所に来てくれた、無理はさせたくない。

 前世、さみしい私をたくさん癒してくれたから。

「トラ丸、背中に乗せてくれてありがとう。おやつの時間になったら起こすね」

 頭を撫でするとトラ丸スはリスリして、テラスの椅子で丸くなって眠った。



「マリーナ、魔法について何か聞きたいことがあるかい?」

 魔法について?
 あ、あれを聞きたい。

「はい、あります。魔石(魔力石)の作り方を教えて欲しいです」

「魔力石? いいよ。マリーナは魔法を込める石は持ってる?」

 持っているとヴォルフ様に返事を返して、テラス席から部屋に戻り、お母様から頂いた木箱を持って戻った。

 ヴォルフ様に木箱を渡すと、彼は箱を開けて中に入っている石を見て頷いた。

「これは良い石だね。この石に魔力を込めても半永久的に、石の魔力は消耗しないだろう。一つ貰うね」

 ヴォルフ様は石を一つ取ると手のひらに乗せて、ご自身の魔力を込めた――透明な石は魔力が込められて、半透明の乳白色に輝く。

「よし。これで魔力石の出来上がり、マリーナもやってみて」

 私は箱から石を取り、手のひらに乗せて石に魔力を込めるが。ヴォルフ様と同じ半透明の乳白色にならず、石は透明のまま。お母様に貰ってから何度か挑戦したけど、やはり石は半透明の乳白色にならなかった。

「うん、マリーナはまだ魔力操作が上手くできていないね、石に込められる魔力以上に魔力を出しすぎてる。だから石に魔力が弾かれているんだ」

「石に弾かれる?」

「うん魔力石と言っても、ほんの少しの魔力しか入らないんだ。マリーナ手を貸して」

「手をですか?」

 ヴォルフ様に手を出すと彼は両手を握り、私に分かりやすく、フワリと魔力を出す。その魔力は水と氷属性だからなのか、ヴォルフ様の魔力はひんやりしている様に感じた。

「マリーナ、覚えて。その石に込められるのはこれくらい」
「え? ヴォルフ様、これくらいですか?」

「そうそう、上手いね。もう一度やってみて」

「はい」

 石を手のひらに乗せて魔力を込める。今度は上手くいったのか、半透明の乳白色の石に変わった。
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