5 / 106
3話
しおりを挟む
マリーナの記憶で書庫は屋敷の西側だ。そこに向かう途中、屋敷で働くメイド、使用人とすれ違うことはなかった。
その理由も私は知っている。この屋敷で働いているのはお父様の執事、専属のメイド。お母様の専属のメイド、私のメイドと料理人しかいない。乱暴者の私が気に食わないと言って、何人ものメイドを辞めさせたせいだ。
だからといっても屋敷の中は汚れていない、埃もなく綺麗だ。それは3日に一度、屋敷の掃除、洗濯に来る雇われのメイド達が数名いるから。
(お父様が考えたこの方法でなら、引きこもりのマリーナに会わなくて済む。忙しい両親にとってはありがたいだろうけど……マリーナがどうしてこうなったのか、考えて欲しかったな)
私としては、マリーナばかり悪くないと思う。
ケガをさせてしまうのは、いけないことだけどね。
ここが書庫か、木製の扉を開けた。
(うわぁ!!)
開けてすぐ、シャンデリアに火が灯ったのにも驚いたけど――書庫の中は古い本の香りがして、部屋の壁に沿って、天井まで本棚がコの字に並んでいた。
ほぉ。上の手が届かない本は、あの階段をかけて登り取るのか。
すごい……難しそうな本ばかり並んでる。
はたして、ここに私にも読める本はあるのだろうか? 本棚を見回すと下の段に子供用の絵本が並んでいた。
これマリーナが読んでいた絵本だ、その中に【良い子の魔法】【良いこの冒険】と書いてあった本があった。
(記憶にないから、マリーナはどっちの本も読んでないのか)
それを本棚から取り出し、近くに置いてあった木製の椅子に腰掛けた。
うーん。魔法の本も気になるけど"冒険の本"からみようかな?
本を開くと鎧を身に付けた男の子のイラストが書いてあった。あれ、これ手書きの絵本だ――もしかして、お父様かお母様が書いたのかな?
私は冒険の本をめくった。
『ボクは冒険者になりたい! まずは冒険者ギルドに行って登録だ。ギルドの受付のお姉さんに伝えて登録しなくてはならない。この時、水晶を触り冒険者ランクを調べるんだ』
おお!
『登録完了、ボクは冒険者になったぞ! ボクの冒険者のランクはFランク! 次に、ボクのランクにあった依頼を受けてダンジョンでモンスターを倒して、魔石を手に入れるぞ!』
(ダンジョンに魔石! ファンタジーの世界!)
『ダンジョンで、モンスターを倒して魔石をゲットしたぞ。この魔石には2種類あるんだ。『魔結石』はモンスターから入手ができ、火や風や雷など特定の魔力を秘めていて、魔法が使えない者でも魔法が使える。だが、使用できる魔法は魔結石が持つ力の領分を越えない。魔力石は単に魔力が詰まった石。魔法使いが自作して魔力の枯渇の時に使用する』
モンスターから手に入る魔結石と、自分で作る魔力石があるのかーー面白い。
『ボクが冒険者として、モンスターを倒して集めた魔石(魔結石)はね。一旦シュタイン国にある一番大きなハンターギルドが回収するんだ』
シュタイン国は――私が住むロベルト国の東側の国境を超えた先にある隣国。
『シュタイン国から、魔法大国クエルノ国に魔石は集められて。クエルノ国の国家許可のある錬金術師が魔導具を作るときに使用する』
へぇ、東側の隣国シュタイン国に集められた魔石は、魔法大国クエルノに集まって、錬金術師によって魔導具が作られているのか。
魔法大国クエルノは確か、ロベルト国の南側にある大国だったかな? 冒険の本の最後のページをめくった。
「ん、あれっ? ここに何か書いてある」
そこを読むと、クエルノ大国では魔法の家財道具が作られていて、各諸国の貴族の間では大人気。調理場やお風呂など、あらゆる所で使用されている。
となると、ウチにもあるんじゃない!
その理由も私は知っている。この屋敷で働いているのはお父様の執事、専属のメイド。お母様の専属のメイド、私のメイドと料理人しかいない。乱暴者の私が気に食わないと言って、何人ものメイドを辞めさせたせいだ。
だからといっても屋敷の中は汚れていない、埃もなく綺麗だ。それは3日に一度、屋敷の掃除、洗濯に来る雇われのメイド達が数名いるから。
(お父様が考えたこの方法でなら、引きこもりのマリーナに会わなくて済む。忙しい両親にとってはありがたいだろうけど……マリーナがどうしてこうなったのか、考えて欲しかったな)
私としては、マリーナばかり悪くないと思う。
ケガをさせてしまうのは、いけないことだけどね。
ここが書庫か、木製の扉を開けた。
(うわぁ!!)
開けてすぐ、シャンデリアに火が灯ったのにも驚いたけど――書庫の中は古い本の香りがして、部屋の壁に沿って、天井まで本棚がコの字に並んでいた。
ほぉ。上の手が届かない本は、あの階段をかけて登り取るのか。
すごい……難しそうな本ばかり並んでる。
はたして、ここに私にも読める本はあるのだろうか? 本棚を見回すと下の段に子供用の絵本が並んでいた。
これマリーナが読んでいた絵本だ、その中に【良い子の魔法】【良いこの冒険】と書いてあった本があった。
(記憶にないから、マリーナはどっちの本も読んでないのか)
それを本棚から取り出し、近くに置いてあった木製の椅子に腰掛けた。
うーん。魔法の本も気になるけど"冒険の本"からみようかな?
本を開くと鎧を身に付けた男の子のイラストが書いてあった。あれ、これ手書きの絵本だ――もしかして、お父様かお母様が書いたのかな?
私は冒険の本をめくった。
『ボクは冒険者になりたい! まずは冒険者ギルドに行って登録だ。ギルドの受付のお姉さんに伝えて登録しなくてはならない。この時、水晶を触り冒険者ランクを調べるんだ』
おお!
『登録完了、ボクは冒険者になったぞ! ボクの冒険者のランクはFランク! 次に、ボクのランクにあった依頼を受けてダンジョンでモンスターを倒して、魔石を手に入れるぞ!』
(ダンジョンに魔石! ファンタジーの世界!)
『ダンジョンで、モンスターを倒して魔石をゲットしたぞ。この魔石には2種類あるんだ。『魔結石』はモンスターから入手ができ、火や風や雷など特定の魔力を秘めていて、魔法が使えない者でも魔法が使える。だが、使用できる魔法は魔結石が持つ力の領分を越えない。魔力石は単に魔力が詰まった石。魔法使いが自作して魔力の枯渇の時に使用する』
モンスターから手に入る魔結石と、自分で作る魔力石があるのかーー面白い。
『ボクが冒険者として、モンスターを倒して集めた魔石(魔結石)はね。一旦シュタイン国にある一番大きなハンターギルドが回収するんだ』
シュタイン国は――私が住むロベルト国の東側の国境を超えた先にある隣国。
『シュタイン国から、魔法大国クエルノ国に魔石は集められて。クエルノ国の国家許可のある錬金術師が魔導具を作るときに使用する』
へぇ、東側の隣国シュタイン国に集められた魔石は、魔法大国クエルノに集まって、錬金術師によって魔導具が作られているのか。
魔法大国クエルノは確か、ロベルト国の南側にある大国だったかな? 冒険の本の最後のページをめくった。
「ん、あれっ? ここに何か書いてある」
そこを読むと、クエルノ大国では魔法の家財道具が作られていて、各諸国の貴族の間では大人気。調理場やお風呂など、あらゆる所で使用されている。
となると、ウチにもあるんじゃない!
1
お気に入りに追加
185
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
もう二度とあなたの妃にはならない
葉菜子
恋愛
8歳の時に出会った婚約者である第一王子に一目惚れしたミーア。それからミーアの中心は常に彼だった。
しかし、王子は学園で男爵令嬢を好きになり、相思相愛に。
男爵令嬢を正妃に置けないため、ミーアを正妃にし、男爵令嬢を側妃とした。
ミーアの元を王子が訪れることもなく、妃として仕事をこなすミーアの横で、王子と側妃は愛を育み、妊娠した。その側妃が襲われ、犯人はミーアだと疑われてしまい、自害する。
ふと目が覚めるとなんとミーアは8歳に戻っていた。
なぜか分からないけど、せっかくのチャンス。次は幸せになってやると意気込むミーアは気づく。
あれ……、彼女と立場が入れ替わってる!?
公爵令嬢が男爵令嬢になり、人生をやり直します。
ざまぁは無いとは言い切れないですが、無いと思って頂ければと思います。
【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~
イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」
どごおおおぉっ!!
5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略)
ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。
…だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。
それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。
泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ…
旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは?
更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!?
ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか?
困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語!
※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください…
※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください…
※小説家になろう様でも掲載しております
※イラストは湶リク様に描いていただきました
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と
鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。
令嬢から。子息から。婚約者の王子から。
それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。
そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。
「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」
その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。
「ああ、気持ち悪い」
「お黙りなさい! この泥棒猫が!」
「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」
飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。
謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。
――出てくる令嬢、全員悪人。
※小説家になろう様でも掲載しております。
【書籍化決定】断罪後の悪役令嬢に転生したので家事に精を出します。え、野獣に嫁がされたのに魔法が解けるんですか?
氷雨そら
恋愛
皆さまの応援のおかげで、書籍化決定しました!
気がつくと怪しげな洋館の前にいた。後ろから私を乱暴に押してくるのは、攻略対象キャラクターの兄だった。そこで私は理解する。ここは乙女ゲームの世界で、私は断罪後の悪役令嬢なのだと、
「お前との婚約は破棄する!」というお約束台詞が聞けなかったのは残念だったけれど、このゲームを私がプレイしていた理由は多彩な悪役令嬢エンディングに惚れ込んだから。
しかも、この洋館はたぶんまだ見ぬプレミアム裏ルートのものだ。
なぜか、新たな婚約相手は現れないが、汚れた洋館をカリスマ家政婦として働いていた経験を生かしてぴかぴかにしていく。
そして、数日後私の目の前に現れたのはモフモフの野獣。そこは「野獣公爵断罪エンド!」だった。理想のモフモフとともに、断罪後の悪役令嬢は幸せになります!
✳︎ 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる