（完結〉恐怖のギロチン回避！ 皇太子との婚約は妹に譲ります〜 え？ 私のことはお気になさらずに

41話

「まぁ、素敵！　キッチンのタイルが可愛い、薪を使って火を起こすの？　……お風呂が木の桶⁉︎ ぜひ入りたいわ、どうやって入浴するのかしら？　アオ君のベッド可愛い」

　カサンドラは遠慮せず家の全ての扉を開け、シュシュは本棚に首っ丈だ。

「アオ君、この本棚の本借りてもいいですか？」
「シュシュ目の付け所がいいわ、私も借りたい」
　
　家の中に入っても、カサンドラのテンションは下がらない、むしろ上がる一方だ。だけど、アオは嬉しかった森に捨てられていた自分を拾ってくれ、必死に育ててくれた。

　大好きな、おじじとおばばの家を褒めてくれた。

「そっか、よかった」
「えぇ、ここを第二と別荘にしますわ」
「ドラお嬢様、よい考えです」

「ハァ？　この家を第二の別荘にする⁉ 部屋数が少ないぞ」
　
「私はこのままでも気にしないけど……お祖母様に頼めばいいのよ」

「そうです、自分達で壊れた箇所を直してもいい。私テーブル、タンスなら作れます！」

　こんな……はちゃめちゃなお嬢様とメイドがいたもんだと、アオは2人に会えたことを喜び、神様に感謝した。

「じゃ、2人にクリーン魔法を部屋中にかけてもらって、終わったら飯にしようか？　オレ、キッチンでお湯を沸かすな」

「任せてください！」
「かしこまりました！」

　本日の夕飯は大猪の分厚いカツサンド、アオの行きつけのサンドイッチ屋さんを教えてもらい。その店自慢のサンドイッチを買っていた。カサンドラは魔石トースターが欲しかったが、魔導具屋は時間が遅くてしまっていので、明日、冒険の後に寄ることにした。

　カサンドラ達が部屋のクリーンをかけるのを見て、アオはお湯を沸かすためにいる薪を取りに、ランタンを持って外の薪置き場に向った。

　外に出てアオはため息をつく……今朝からずっと、アオ達の後を着いてくる奴がいた。アオとスズ、チロちゃんは気付いていた。冒険を楽しむ、カサンドラとシュシュに何かしようとしたら、とっ捕まえようと思っていたが何もしてこない。

　ソイツはただ後をついてくるだけ……とうとうアオの家まで着いてきたというより、ソイツは三軒隣の幼馴染だ。

（近くに居るのに話しかけてもこない……何がしたい？）

　薪置き場から使えそうな薪を拾って、ソイツがいる場所を見たが動く気配がない。

　――単なる嫌がらせか何か？

「おい！　オレに話があるのなら真夜中にもう一度来い。わかったのなら合図をしろ……カサンドラ達を狙うのなら容赦しないぞ！」

　ソイツは……カチカチと腰のナイフを鳴らして合図すると、戻っていった。どうやら、アオに用事があるみたいだ。



　♱♱♱



　帰る途中で買った紅茶を入れ、大猪のカツサンドに満足したカサンドラとシュシュは、今日の冒険の疲れからか眠そうだ。

　アオに明日もあるから早めに寝るぞと言われて、2人ベッドへと入り、アオはソファーに横になった。

　

　深夜。カチカチとナイフを鳴らす音に目を覚まして、上着を羽織り、カサンドラ達を起こさないようソッと外に出たアオの前に。ランタンを持った昔の冒険者仲間――オオカミのギンがいた。

「今朝からずっと後をつけてきて、一体どういうつもりだ」

　カサンドラ達を起こさないよう、小声で聞いたアオに。
　ギンはいつのも覇気がなく、神妙な面持ちで「助けて欲しい」と話し。

「アオは魔女様と知り合いなんだろ？　魔女に頼んで弟を助けてくれないか！」

「魔女って……ギン？　弟のラハに何かあったのか？」

「それがわかんねぇんだよ……最近、眠いって眠りっぱなしで……目を覚ましても、訳がわからない言葉を話すわ。頭を抱えてもがき苦しむ」

「……なに？」

　ギンの弟のラハは獣人にしては珍しく魔力を持つ。
　それが災いしたのか……夜遅く、家の外でアオとギンは2人で話していた。

　アオの家の扉がガチャっと開き。

「部屋のソファーにいないと思ったら……アオ君、こんな夜中に外で何しているの？」

　寝巻き姿の、カサンドラが顔を出した。
　その姿を見たアオは慌てた。
　
「ちょっ、ドラ！　上に何か羽織れ！」

　アオは、自分が着ている上着を脱いでカサンドラにかけた。