上 下
5 / 20

しおりを挟む
 次の日、令嬢達の期待の王子は私と同じクラスにやって来ました、令嬢達は騒ぐほどの、中々の体格のよい男前な方でした。

「アサルト国から来ました、リュート・アサルトです。しばらくですが、よろしくお願いします」

 なんて爽やか王子。彼は半獣の王子様なのね。もふもふな耳に尻尾だわ。

 金髪に琥珀色の瞳のイケメンなトラさん。
 その方は授業が終わると、なぜか私に近づいて来た。

「公爵令嬢のリリア・ナノーカ嬢。今日からあなたのお屋敷でご厄介になります」
「ええ、私の屋敷に住むの?」

 声を上げて驚く私に、困惑した彼。

「あの、そのように連絡をして屋敷に荷物も送ったと、思うのですが?」

 連絡? 荷物? 最近お父様から届いていた、手紙を読んでいなかったわ。

 手紙の内容が、レオーン殿下とは仲良くやりなさいから、レオーン殿下と仲良くしなくても、私に会いに王城の私の所に来なさいに。なぜか、変わったのだけど。
 あることにハマって、そちらが忙しくて、お父様の手紙を簡単に目を通すだけ、だったからね?

 屋敷の部屋は余っているから大丈夫だけど。そこには私とメイドと従者しかいないけど、いいのかしら? 彼の従者はいらっしゃらないの?


「リリアお嬢様!」

 悩んでいると学園の廊下を歩く。見知った顔がこちらにやってきましたわ。

 このことを説明していただかなくては。

「セバスチャン、これはどう言うこと?」

「お嬢様が旦那様からの手紙をご覧にならないからです。直接、私が渡しに来ました」

 セバスチャンから受け取り、手紙を開くと「国王陛下から直々に申し渡された。隣国の獣人の王子をリリアの邸に住まわせてやってくれ。彼はこの国に一人で来ているから、彼のことをよろしく頼む」と、書かれていた。

 お父様、おっしゃりたいことはそれだけなの? もう、国王陛下から受けてしまった、後の話なのね。

 受けてしまったものは、仕方がありませんわ。

「セバスチャンわかりましたと、お父様に伝えて」
「はい、畏まりました」

 手紙をカバンにしまって、先程から困り顔のリュート様に声をかけた。

「話はお受けたわまりましたわ。屋敷に案内をします、一緒に馬車で帰りましょう」
「はい、リリア嬢」

 彼の尻尾かフリフリと動いたわ。なんて可愛いの。でも、殿方のお尻ばっかり見ていては失礼よね。

「待て、リリア嬢」

 呼び止められて振り向くと、今日はララーナさんと一緒ではなく、珍しく一人の殿下に呼び止められた。

「どうしたのですか、レオーン殿下?」
「帰るのか? 今日は前から決まっていた、父上と母上との会食の日なのだが」

 あら、そうだったかしら?

「私は今から、リュート様を屋敷に案内するのでご遠慮します。殿下は愛しのララーナさんをお連れすればいいのですわ。国王陛下にもそうお伝えください」

 愛しのララーナさんの名前を出せば、何も言えなくなる。一掃、このまま婚約破棄して、ララーナさんと婚約して欲しいわね。

 でも、それをしないとなると。ゲーム通り、学園の卒業までは出来ない仕組みなのかしらね?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる

葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。 アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。 アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。 市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。

悪役令嬢は天然

西楓
恋愛
死んだと思ったら乙女ゲームの悪役令嬢に転生⁉︎転生したがゲームの存在を知らず天然に振る舞う悪役令嬢に対し、ゲームだと知っているヒロインは…

愛されない女

詩織
恋愛
私から付き合ってと言って付き合いはじめた2人。それをいいことに彼は好き放題。やっぱり愛されてないんだなと…

あなたの妻にはなりません

風見ゆうみ
恋愛
幼い頃から大好きだった婚約者のレイズ。 彼が伯爵位を継いだと同時に、わたしと彼は結婚した。 幸せな日々が始まるのだと思っていたのに、夫は仕事で戦場近くの街に行くことになった。 彼が旅立った数日後、わたしの元に届いたのは夫の訃報だった。 悲しみに暮れているわたしに近づいてきたのは、夫の親友のディール様。 彼は夫から自分の身に何かあった時にはわたしのことを頼むと言われていたのだと言う。 あっという間に日にちが過ぎ、ディール様から求婚される。 悩みに悩んだ末に、ディール様と婚約したわたしに、友人と街に出た時にすれ違った男が言った。 「あの男と結婚するのはやめなさい。彼は君の夫の殺害を依頼した男だ」

恋だの愛だのそんなものは幻だよ〜やさぐれ女騎士の結婚※一話追加

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
彼は言った「私と結婚してくれないか」 私は答えた「はい、了解しました」 そして私たちの結婚は決まった。 そんなもんでしょ、結婚なんて。恋だの愛だの、くだらない。 そんなやさぐれ女騎士のお話 こちらの物語には数年後のお話 「声を取り戻した金糸雀は空の青を知る」がありますが、 こちらだけでお読みいただけます。 ※この小説は小説家になろうさんでも公開しています。 ※3/3 一話小話を追加しました

モブ転生とはこんなもの

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。 乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。 今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。 いったいどうしたらいいのかしら……。 現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。 他サイトでも公開しています。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!? バッドエンドだらけの悪役令嬢。 しかし、 「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」 そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。 運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語! ※完結済です。 ※作者がシステムに不慣れな時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)

処理中です...