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「リリア、大丈夫か?」
大きな声と共に、熱にうなされる私の部屋の扉が、いきなり開いた。
お父様⁉︎
心配をした専属メイドが家に連絡を入れたのね。私の家族が心配をして、お見舞いに飛んできたみたい。
「リリア!」
「リア」
「リリー」
「リリアちゃん」
宰相で仕事が忙しいトールお父様。隣国との共同軍事会議で忙しい五歳年上のカーラお兄様と三歳年上のジュンクお兄様二人。それを支える、たくましいハリアお母様。
お母様は私のベッドの脇に、ご自分で持ってきた、大きな果物かごを置いた。
「これを食べれば、熱なんてすぐに下がるわ」
なんでも熱さましに効くと。お母様の故郷の果物を沢山持ってきてくださいました。でも、一番に効いたのは久々に会えた家族かな。
「何かいるかい、リア」
「いや、何がいるかは、この僕に言いなさい」
「ありがとう、カーラお兄様、ジュンクお兄様」
お母様とお父様、お兄様二人にたっぷりの愛情をもらい、果物もたっぷり取り、熱も徐々に下がりました。
それから一週間ほどで体調も戻り。
久しぶりに学園に登校をしたところ。それに気付いた二人は、見せつけるように私の前に現れた。
嫌いな王子と、ヒロインか……。
「リリア嬢、体調はもういいのか?」
「いきなり倒れて心配していたわ」
「もう、平気ですわ。レオーン殿下とララーナさんには、ご心配をおかけしました」
熱が下がってから二人を見ても、泣きもせず。何の反応を返さない私に、彼らは面白くないのか、突っかかってくるようになった。
「リリア嬢。ララーナ嬢と俺とで、お昼を一緒に食べないか?」
「すみません、殿下。私は友達と取る約束をしていますので結構ですわ。ララーナさんとお二人でどうぞ」
「リリア嬢、城に美味しいケーキがあるんだ、ララーナも加えて庭園でお茶をしよう」
「すみません、殿下。私はこの後用事がありますの。ララーナさんだけをお誘いください」
笑顔でやんわり断り、乗らない私を見て、殿下は舌打ちをしていた。
だって、どうでもいいの。私はあなたみたいな俺様が一番、苦手で嫌いなの。
「リリア嬢、どうして王城に来ない!」
あれから、花嫁修業に向かわないと、機嫌の悪い殿下に、呼び止められて振り向き私はこう告げた。
「私はもう結構ですわ。花嫁修業は殿下の愛しいララーナさんとどうぞ。それはそうと殿下。さっさと嫌いな私と婚約破棄をしてください」
去って行こうとする、後ろから殿下の声がした。
「それは無理な話だ。この婚約は俺の父上が決めた事だ、婚約破棄など簡単には出来ない」
私は振り向き微笑む。
「殿下なら大丈夫です。きっと、国王陛下も殿下とララーナさん、お二人の愛をみたら、お許ししてくれるはずですわ」
その場を笑顔で去り、誰も来ない書庫で涙を流す。殿下のことを嫌いなはずなのに。
まだ、声をかけられると、期待してしまう自分がいて嫌だ。
心の奥底に殿下を想う、恋心。
「だからと言って、簡単には許せないの。傷付いた私を嘲笑った二人を……私は許すことがでない」
二度と殿下のことは好きにはならない。
大きな声と共に、熱にうなされる私の部屋の扉が、いきなり開いた。
お父様⁉︎
心配をした専属メイドが家に連絡を入れたのね。私の家族が心配をして、お見舞いに飛んできたみたい。
「リリア!」
「リア」
「リリー」
「リリアちゃん」
宰相で仕事が忙しいトールお父様。隣国との共同軍事会議で忙しい五歳年上のカーラお兄様と三歳年上のジュンクお兄様二人。それを支える、たくましいハリアお母様。
お母様は私のベッドの脇に、ご自分で持ってきた、大きな果物かごを置いた。
「これを食べれば、熱なんてすぐに下がるわ」
なんでも熱さましに効くと。お母様の故郷の果物を沢山持ってきてくださいました。でも、一番に効いたのは久々に会えた家族かな。
「何かいるかい、リア」
「いや、何がいるかは、この僕に言いなさい」
「ありがとう、カーラお兄様、ジュンクお兄様」
お母様とお父様、お兄様二人にたっぷりの愛情をもらい、果物もたっぷり取り、熱も徐々に下がりました。
それから一週間ほどで体調も戻り。
久しぶりに学園に登校をしたところ。それに気付いた二人は、見せつけるように私の前に現れた。
嫌いな王子と、ヒロインか……。
「リリア嬢、体調はもういいのか?」
「いきなり倒れて心配していたわ」
「もう、平気ですわ。レオーン殿下とララーナさんには、ご心配をおかけしました」
熱が下がってから二人を見ても、泣きもせず。何の反応を返さない私に、彼らは面白くないのか、突っかかってくるようになった。
「リリア嬢。ララーナ嬢と俺とで、お昼を一緒に食べないか?」
「すみません、殿下。私は友達と取る約束をしていますので結構ですわ。ララーナさんとお二人でどうぞ」
「リリア嬢、城に美味しいケーキがあるんだ、ララーナも加えて庭園でお茶をしよう」
「すみません、殿下。私はこの後用事がありますの。ララーナさんだけをお誘いください」
笑顔でやんわり断り、乗らない私を見て、殿下は舌打ちをしていた。
だって、どうでもいいの。私はあなたみたいな俺様が一番、苦手で嫌いなの。
「リリア嬢、どうして王城に来ない!」
あれから、花嫁修業に向かわないと、機嫌の悪い殿下に、呼び止められて振り向き私はこう告げた。
「私はもう結構ですわ。花嫁修業は殿下の愛しいララーナさんとどうぞ。それはそうと殿下。さっさと嫌いな私と婚約破棄をしてください」
去って行こうとする、後ろから殿下の声がした。
「それは無理な話だ。この婚約は俺の父上が決めた事だ、婚約破棄など簡単には出来ない」
私は振り向き微笑む。
「殿下なら大丈夫です。きっと、国王陛下も殿下とララーナさん、お二人の愛をみたら、お許ししてくれるはずですわ」
その場を笑顔で去り、誰も来ない書庫で涙を流す。殿下のことを嫌いなはずなのに。
まだ、声をかけられると、期待してしまう自分がいて嫌だ。
心の奥底に殿下を想う、恋心。
「だからと言って、簡単には許せないの。傷付いた私を嘲笑った二人を……私は許すことがでない」
二度と殿下のことは好きにはならない。
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