上 下
74 / 99

七十三

しおりを挟む
 ナサはわたしを抱きしめて、目を細めて笑った。

「シッシシ、リーヤを愛している……大切にする。どんなことからも守ると約束する、幸せにするよ」

「嬉しい、わたしもナサが大好き……これからもよろしくね、ナサ」

(カートラお兄様とランドル様、アサトさん、ロカさん、ミリアさんに見守られて頬が熱いけど……)

 今度こそは幸せなお嫁さんになりたい、ナサならわたしを守ってくれて、ずっと愛してくれると信じている。

「ナサ、リイーヤをよろしくな」
「はい、カートラお兄さん」

 カートラお兄さん?

「ナサ!」

「おお、いいなぁ。よろしくな義弟……そうか、リーヤと結婚したら俺とナサと兄弟になるのか。まわりを気にせず手合わせできるな!」

 カートラお兄様は嬉しそう笑いナサの肩を叩き。外でランドルは各所に手紙を飛ばしていた。二人は『舞踏会で会おう』と、馬を走らせリルガルド国へと戻っていった。



 カートラお兄様たちを見送ったあと『じゃ、オレも手紙を出すかな』とランドルから貰っていた紙に、ナサはお母様に送る手紙を書き始めた。

「ナサ、わたしも書いた方がいい?」

「んー、リーヤの事はたまに手紙に書いていたから……お袋も知ってる」

「え、そうなの?」

 どんな内容が気になるけど、人様の手紙だもの聞けない。それが顔に出ていたのか、ナサは。

「オレに気になる子ができた……すごくいい子で、真面目で、可愛くて、無茶ばかりするんだ。オレと同じ獣人、亜人じゃないんだってな……お袋はオレに"気になる人"ができて喜んでいたよ」

 シッシシと笑うナサと、それを見てニシシとアサトは笑い。

「ナサはさ、亜人の国にいてもガレーン国に来てからも、ぜんぜん女っ気なかっだもんな。そんなナサがリーヤを初めて見たとき、一目惚しちまって、どうしたらいいんだって聞いてきたとき俺は嬉しかったよ」

「はい、私も驚きました。幸せになってくださいね……リーヤを取られるのはやるせないですが」
  
 オイオイと泣きまねをするロカ。

「ロカ!」

「よかったね、リーヤ、ナサ。困ったらここには頼れる者がたくさんいるんだ。一人、一人で抱え込まずに遠慮なく私達を頼るんだよ」

「はい。遠慮せず、どしどし頼らせていただきます。ありがとうございます、ミリアさん」

 同じ国出身で冒険者のアサトとロカ、ミリアさんに祝福されて照れるナサとわたし。

「リーヤ、ここにいると益々からかわれるぞ。まだ警備まで時間があるから、手紙をだすついでに散歩しよう」

 ナサに出された手を取り。わたし達は散歩に出かけたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

前略、旦那様……幼馴染と幸せにお過ごし下さい【完結】

迷い人
恋愛
私、シア・エムリスは英知の塔で知識を蓄えた、賢者。 ある日、賢者の天敵に襲われたところを、人獣族のランディに救われ一目惚れ。 自らの有能さを盾に婚姻をしたのだけど……夫であるはずのランディは、私よりも幼馴染が大切らしい。 「だから、王様!! この婚姻無効にしてください!!」 「My天使の願いなら仕方ないなぁ~(*´ω`*)」  ※表現には実際と違う場合があります。  そうして、私は婚姻が完全に成立する前に、離婚を成立させたのだったのだけど……。  私を可愛がる国王夫婦は、私を妻に迎えた者に国を譲ると言い出すのだった。  ※AIイラスト、キャラ紹介、裏設定を『作品のオマケ』で掲載しています。  ※私の我儘で、イチャイチャどまりのR18→R15への変更になりました。 ごめんなさい。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

婚約者を想うのをやめました

かぐや
恋愛
女性を侍らしてばかりの婚約者に私は宣言した。 「もうあなたを愛するのをやめますので、どうぞご自由に」 最初は婚約者も頷くが、彼女が自分の側にいることがなくなってから初めて色々なことに気づき始める。 *書籍化しました。応援してくださった読者様、ありがとうございます。

【完結】私は死んだ。だからわたしは笑うことにした。

彩華(あやはな)
恋愛
最後に見たのは恋人の手をとる婚約者の姿。私はそれを見ながら階段から落ちた。 目を覚ましたわたしは変わった。見舞いにも来ない両親にー。婚約者にもー。わたしは私の為に彼らをやり込める。わたしは・・・私の為に、笑う。

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

殿下、側妃とお幸せに! 正妃をやめたら溺愛されました

まるねこ
恋愛
旧題:お飾り妃になってしまいました 第15回アルファポリス恋愛大賞で奨励賞を頂きました⭐︎読者の皆様お読み頂きありがとうございます! 結婚式1月前に突然告白される。相手は男爵令嬢ですか、婚約破棄ですね。分かりました。えっ?違うの?嫌です。お飾り妃なんてなりたくありません。

侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています

猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。 しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。 本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。 盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

処理中です...