悪役令嬢は全てを諦めたフリをしました。 つらい私の気持ちを救ったのは"いなり寿司"と"モフモフのあなた"だった。

8

　帰って来てすぐ、ベッドに飛び乗り天を仰ぐ。

「はぁ、疲れた……あの人たちは自分勝手で、ウザすぎ」

　まったく人を王城へ呼ぶ方はいいけど、呼ばれる方は――何日も前からドレスを選び、早朝から馬車で2時間以上かけているのをもっと考えてほしい。

（悪役令嬢をやるにしても、ずっと、あのおバカな2人を見ているのは苦痛にしかならない！　疲れるのはヤダァ！）



　それからも。
　
「2人だけの、お茶会をしよう」
「忙しいので、無理です」
「2人だけで、食事をしよう」
「わたくし食欲がありませんの、結構です」
　
　私の頑固たる拒否で――あの後、スザーリン殿下は他の力にある令嬢と初顔合わせをしたが。その席にもミミリアは"アホの子"の様に参加して、大事になっているらしい。

　あたりまえよね。
　少し考えればわかるはず。

　乙女ゲームの内容を知っている、私だったから、まだアレで済んだのだ。他の令嬢が私がされた事をされたら気絶、泣く、拒否に決まっている。

　おバカどもはお花が咲いていて、気付いていないだろうけど。男爵のミミリアよりも位の高い令嬢をお呼びしているのだ。スザーリン殿下の対応は、婚約者候補として呼ばれた令嬢達に対して失礼すぎる。

　もっと早く気付いた方がいいぞ、アホ殿下！

　結局、すべての令嬢たちにも断られたて、スザーリン殿下の婚約者は決まらないまま……数年が経っていた。