上 下
52 / 52

終わりの章(下)

しおりを挟む
午後、執務室でいつもの業務をしていた。
セバスは終わった、書類を持ち執務室を出ている。

物静かな執務室に珍しくコンコンと執務室の扉が鳴り、それに返事を返した……すると。 

「レオールお兄様!」

どこかいつもより興奮した様子の、ミッシェルとメイドのハサハが、執務室に入って来た。俺は見ていた書類を置き、2人にここに来た理由を聞いた。

「どうした、ミッシェル? 何かいい事でもあったのか」

「はい、お兄様、聞いてください!」

「レオール王太子殿下。執務中に失礼いたします」

いまにも喜びで踊り出しそうなミッシェルと、妹を止めながらも、どこか嬉しそうな、ハサハは俺に近付き頭を下げた。

「ハサハ、今日の執務は終わっているから、そんなにかしこまらなくていいよ。それで……君たちの喜びの理由はなんだい?」


「はい、聞いてくださいお兄様! 私の書いた小説と、ジェダ王子の漫画が期待賞を取りましたの。ハサハなんて大賞を取りましたわ!」


別荘で書いていたミッシェルとハサハの小説と、ジェダ王子の漫画が賞を取ったのか。


「それは、おめでとう! ミッシェル、ハサハ!」

「ありがとうお兄様。それで、私とハサハの小説が本になりますの……たくさん、改稿をしなくてはなりませんが」

  本になるのか……楽しみだな。

「そうか、がんばりなさい。この事はジェダ王子も知っているのか?」

「はい、もちろんです! 王都近くに屋敷を借りて、発表まで待つと、おっしゃっていましたから!」

今頃、あちらでも大喜びだな。


喜ぶ2人の相手をしていた、執務室の扉がガチャっと開く。

「レオール様、ただいま戻りました……これは、いらっしゃいませ、ミッシェル王女殿下とハサハ。ただいま、紅茶か果実水を入れますね」

「いいえ、お騒がせしてすみません。私たちは戻るから飲み物はいいわ。失礼しました、レオールお兄様、セバスさん」

2人が執務室から出て行き静かになった。セバスは俺に気になるといった面持ちを見せたが、すぐにいつものセバスに戻る。

「レオール様、なにか飲まれますか?」

「そうだな、紅茶と林檎が食べたい」

「かしこまりました。ただいま準備いたします」







 セバスは、接待ソファーのテーブルに、紅茶と林檎を置いた。

「レオール様、紅茶と林檎です」

「ありがとう。さっきの話をするから、セバスも休憩な」

ソファーの横をぽんぽんと叩き、セバスを座らせて、先程のミッシェルとハサハの話をした。

話を聞くと、目を開き、驚くセバス。

「ハサハが小説で大賞を取った? ミッシェル王女殿下とジェダ王子殿下も、小説と漫画で期待賞をお取りになったのですね」

「凄いよな……」

「はい。とても、めでたいことですね」

「それでセバス。3人に送るプレゼントは何がいいかな?」

「では、万年筆とノート、原稿用紙などいかがですか? それとも資料用に本を数冊、送りますか?」

「うーん、ミッシェルとハサハには万年筆とノート数冊と、本も数冊送って。ジェダ王子には漫画に必要な道具を送るかな?」

「わかりました。その様に手配いたしますね」


「よろしく。ふうっ、……疲れた」


隣に座るセバスの肩に、ぼふっと頭を預けた。

「なぁ、セバスは準備してきたのか?」

そう聞くと、ムズッとしたのか。セバスは頬を赤らめた。

「はい、してまいりました」

「そっか、どうりで先程から息が荒いはずだ。ソファーに座るのもいまは快感かな?」

こくりと頷くセバス。

「では。ご期待に沿わないとな、紅茶と林檎を食べ終わったら……隣でな」

「……っ、はい」

このまま何もなければ、変わらない日常をここで過ごすだろう。
弟の、アーサーとリュートも2人で悩み、考えて、自分たちの道を進むだろう。

「セバス、林檎を食べさせてくれ」

「はい、レオール様」

セバスが差し出した林檎をかじった。









それから2年後の事。

モードラー公爵家の実験室で「ふふふっ、はははっ!」と、笑い声が上がった。

「遂にやった! 僕は作り上げたんだ! ……この薬があれば、男でも子供を授かることができる」

この日。モードラー当主はレオール王太子殿下と側近セバスーー2人のために、夢の様な薬を完成させたのだった。

「これからも、おおいに、2人で愛し合ってくれ!」

この世界には、まだまだ夢がある。
世界の人達の幸せとーー男性たちの愛に祝福を……。
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

俺をおもちゃにするなって!

丹砂 (あかさ)
BL
オレはチートクラスの大魔法使い! ……の弟子。 天は二物を与えずとは言うけど、才能と一緒にモラルを授かり損ねた師匠に振り回されて、毎日散々な目に遭わされている。 そんな師匠の最近のお気に入りは、性的玩具(玩具と言いつつ、もうそれ玩具の域じゃないよね!?)を開発する事、っていう才能のムダ使いだ。 オレ専用に開発されたそんな道具の実験から必死に逃げつつ捕まりつつ、お仕置きされつつ立ち直りつつ。いつか逃げ出してやる!と密かに企みながら必死に今日を暮らしている。 そんな毎日をちょっと抜粋した異世界BLのお話です。 ******************* 人格破綻系のチート × ちょろい苦労人 誰得?と思うぐらい特殊嗜好の塊です。 メインはエロでスパイス程度にストーリー(?)、いやそれよりも少ないかもしれません。 軽いノリで書いてるので、中身もいつもよりアホっぽいです。ぜひお気軽にお読み下さい。 ※一旦完結にしました。 ******************* S彼/SM/玩具/カテーテル/調教/言葉責め/尿道責め/膀胱責め/小スカ なおこちらは、上記傾向やプレイが含まれます。 ご注意をお願いします。

王と宰相は妻達黙認の秘密の関係

ミクリ21 (新)
BL
王と宰相は、妻も子もいるけど秘密の関係。 でも妻達は黙認している。 だって妻達は………。

四天王の今日の仕事は魔王の命令で壁尻だ!

ミクリ21
BL
四天王は壁尻をしてヤられる話。

朝起きたら女体化してました

たいが
恋愛
主人公の早乙女駿、朝起きると体が... ⚠誤字脱字等、めちゃくちゃあります

メスイキしないと死ぬ呪いをかけられたので、ライバルに「抱いてくれ」と頼み込んだらヤンデレだった件。

野良猫のらん
BL
タイトル通りのアホエロ短編となっております。 闇魔術使いのジェイミーくんが調子に乗ったらメスイキしないと死ぬ呪いにかけられたので、ヤンデレライバルのクライドに抱いてもらうお話です。 R18部分には*をつけています。 ___________________ 宣伝です。 私の新作『銀狼公爵と愛しの番』がヴィオラ文庫から出ています。 各電子書籍サイトにて配信中です!

メス喘ぎレッスン帖 ─団長、奥さんを抱く前に俺と発声練習しましょう!─

雲丹はち
BL
セックス経験ゼロのまま結婚しちゃった騎士団長に年下副官が初夜のイロハを教え込む話。

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

処理中です...