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終わりの章(下)
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午後、執務室でいつもの業務をしていた。
セバスは終わった、書類を持ち執務室を出ている。
物静かな執務室に珍しくコンコンと執務室の扉が鳴り、それに返事を返した……すると。
「レオールお兄様!」
どこかいつもより興奮した様子の、ミッシェルとメイドのハサハが、執務室に入って来た。俺は見ていた書類を置き、2人にここに来た理由を聞いた。
「どうした、ミッシェル? 何かいい事でもあったのか」
「はい、お兄様、聞いてください!」
「レオール王太子殿下。執務中に失礼いたします」
いまにも喜びで踊り出しそうなミッシェルと、妹を止めながらも、どこか嬉しそうな、ハサハは俺に近付き頭を下げた。
「ハサハ、今日の執務は終わっているから、そんなにかしこまらなくていいよ。それで……君たちの喜びの理由はなんだい?」
「はい、聞いてくださいお兄様! 私の書いた小説と、ジェダ王子の漫画が期待賞を取りましたの。ハサハなんて大賞を取りましたわ!」
別荘で書いていたミッシェルとハサハの小説と、ジェダ王子の漫画が賞を取ったのか。
「それは、おめでとう! ミッシェル、ハサハ!」
「ありがとうお兄様。それで、私とハサハの小説が本になりますの……たくさん、改稿をしなくてはなりませんが」
本になるのか……楽しみだな。
「そうか、がんばりなさい。この事はジェダ王子も知っているのか?」
「はい、もちろんです! 王都近くに屋敷を借りて、発表まで待つと、おっしゃっていましたから!」
今頃、あちらでも大喜びだな。
喜ぶ2人の相手をしていた、執務室の扉がガチャっと開く。
「レオール様、ただいま戻りました……これは、いらっしゃいませ、ミッシェル王女殿下とハサハ。ただいま、紅茶か果実水を入れますね」
「いいえ、お騒がせしてすみません。私たちは戻るから飲み物はいいわ。失礼しました、レオールお兄様、セバスさん」
2人が執務室から出て行き静かになった。セバスは俺に気になるといった面持ちを見せたが、すぐにいつものセバスに戻る。
「レオール様、なにか飲まれますか?」
「そうだな、紅茶と林檎が食べたい」
「かしこまりました。ただいま準備いたします」
+
セバスは、接待ソファーのテーブルに、紅茶と林檎を置いた。
「レオール様、紅茶と林檎です」
「ありがとう。さっきの話をするから、セバスも休憩な」
ソファーの横をぽんぽんと叩き、セバスを座らせて、先程のミッシェルとハサハの話をした。
話を聞くと、目を開き、驚くセバス。
「ハサハが小説で大賞を取った? ミッシェル王女殿下とジェダ王子殿下も、小説と漫画で期待賞をお取りになったのですね」
「凄いよな……」
「はい。とても、めでたいことですね」
「それでセバス。3人に送るプレゼントは何がいいかな?」
「では、万年筆とノート、原稿用紙などいかがですか? それとも資料用に本を数冊、送りますか?」
「うーん、ミッシェルとハサハには万年筆とノート数冊と、本も数冊送って。ジェダ王子には漫画に必要な道具を送るかな?」
「わかりました。その様に手配いたしますね」
「よろしく。ふうっ、……疲れた」
隣に座るセバスの肩に、ぼふっと頭を預けた。
「なぁ、セバスは準備してきたのか?」
そう聞くと、ムズッとしたのか。セバスは頬を赤らめた。
「はい、してまいりました」
「そっか、どうりで先程から息が荒いはずだ。ソファーに座るのもいまは快感かな?」
こくりと頷くセバス。
「では。ご期待に沿わないとな、紅茶と林檎を食べ終わったら……隣でな」
「……っ、はい」
このまま何もなければ、変わらない日常をここで過ごすだろう。
弟の、アーサーとリュートも2人で悩み、考えて、自分たちの道を進むだろう。
「セバス、林檎を食べさせてくれ」
「はい、レオール様」
セバスが差し出した林檎をかじった。
+
それから2年後の事。
モードラー公爵家の実験室で「ふふふっ、はははっ!」と、笑い声が上がった。
「遂にやった! 僕は作り上げたんだ! ……この薬があれば、男でも子供を授かることができる」
この日。モードラー当主はレオール王太子殿下と側近セバスーー2人のために、夢の様な薬を完成させたのだった。
「これからも、おおいに、2人で愛し合ってくれ!」
この世界には、まだまだ夢がある。
世界の人達の幸せとーー男性たちの愛に祝福を……。
セバスは終わった、書類を持ち執務室を出ている。
物静かな執務室に珍しくコンコンと執務室の扉が鳴り、それに返事を返した……すると。
「レオールお兄様!」
どこかいつもより興奮した様子の、ミッシェルとメイドのハサハが、執務室に入って来た。俺は見ていた書類を置き、2人にここに来た理由を聞いた。
「どうした、ミッシェル? 何かいい事でもあったのか」
「はい、お兄様、聞いてください!」
「レオール王太子殿下。執務中に失礼いたします」
いまにも喜びで踊り出しそうなミッシェルと、妹を止めながらも、どこか嬉しそうな、ハサハは俺に近付き頭を下げた。
「ハサハ、今日の執務は終わっているから、そんなにかしこまらなくていいよ。それで……君たちの喜びの理由はなんだい?」
「はい、聞いてくださいお兄様! 私の書いた小説と、ジェダ王子の漫画が期待賞を取りましたの。ハサハなんて大賞を取りましたわ!」
別荘で書いていたミッシェルとハサハの小説と、ジェダ王子の漫画が賞を取ったのか。
「それは、おめでとう! ミッシェル、ハサハ!」
「ありがとうお兄様。それで、私とハサハの小説が本になりますの……たくさん、改稿をしなくてはなりませんが」
本になるのか……楽しみだな。
「そうか、がんばりなさい。この事はジェダ王子も知っているのか?」
「はい、もちろんです! 王都近くに屋敷を借りて、発表まで待つと、おっしゃっていましたから!」
今頃、あちらでも大喜びだな。
喜ぶ2人の相手をしていた、執務室の扉がガチャっと開く。
「レオール様、ただいま戻りました……これは、いらっしゃいませ、ミッシェル王女殿下とハサハ。ただいま、紅茶か果実水を入れますね」
「いいえ、お騒がせしてすみません。私たちは戻るから飲み物はいいわ。失礼しました、レオールお兄様、セバスさん」
2人が執務室から出て行き静かになった。セバスは俺に気になるといった面持ちを見せたが、すぐにいつものセバスに戻る。
「レオール様、なにか飲まれますか?」
「そうだな、紅茶と林檎が食べたい」
「かしこまりました。ただいま準備いたします」
+
セバスは、接待ソファーのテーブルに、紅茶と林檎を置いた。
「レオール様、紅茶と林檎です」
「ありがとう。さっきの話をするから、セバスも休憩な」
ソファーの横をぽんぽんと叩き、セバスを座らせて、先程のミッシェルとハサハの話をした。
話を聞くと、目を開き、驚くセバス。
「ハサハが小説で大賞を取った? ミッシェル王女殿下とジェダ王子殿下も、小説と漫画で期待賞をお取りになったのですね」
「凄いよな……」
「はい。とても、めでたいことですね」
「それでセバス。3人に送るプレゼントは何がいいかな?」
「では、万年筆とノート、原稿用紙などいかがですか? それとも資料用に本を数冊、送りますか?」
「うーん、ミッシェルとハサハには万年筆とノート数冊と、本も数冊送って。ジェダ王子には漫画に必要な道具を送るかな?」
「わかりました。その様に手配いたしますね」
「よろしく。ふうっ、……疲れた」
隣に座るセバスの肩に、ぼふっと頭を預けた。
「なぁ、セバスは準備してきたのか?」
そう聞くと、ムズッとしたのか。セバスは頬を赤らめた。
「はい、してまいりました」
「そっか、どうりで先程から息が荒いはずだ。ソファーに座るのもいまは快感かな?」
こくりと頷くセバス。
「では。ご期待に沿わないとな、紅茶と林檎を食べ終わったら……隣でな」
「……っ、はい」
このまま何もなければ、変わらない日常をここで過ごすだろう。
弟の、アーサーとリュートも2人で悩み、考えて、自分たちの道を進むだろう。
「セバス、林檎を食べさせてくれ」
「はい、レオール様」
セバスが差し出した林檎をかじった。
+
それから2年後の事。
モードラー公爵家の実験室で「ふふふっ、はははっ!」と、笑い声が上がった。
「遂にやった! 僕は作り上げたんだ! ……この薬があれば、男でも子供を授かることができる」
この日。モードラー当主はレオール王太子殿下と側近セバスーー2人のために、夢の様な薬を完成させたのだった。
「これからも、おおいに、2人で愛し合ってくれ!」
この世界には、まだまだ夢がある。
世界の人達の幸せとーー男性たちの愛に祝福を……。
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