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別荘に行こう 7

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一階のホームシアターには大きなスクリーンと、ソファーがある部屋だった。セバスが先に入り魔力で灯を灯したその部屋に説明書が据えてあり、映写機という物に魔力を流し込めばいいらしい。


「セバス、早速やってくれ!」

「かしこまりました」


セバスが魔力を流した映写機というものが動き、映像が前の大きなスクリーンに映った。部屋は暗くしてみるらしい。


「なっ、なんだこれは……セバスも隣に座れよ」


映像が始まり30分たったころ。隣のセバスからぐずぐずと涙と鼻水をすする音がした。


「なに泣いてんだよ」


「話が良くて……ぐ、すっ」

「まぁ、2人が結ばれるシーンは泣くな」


俺たちは漫画が動き話す絵のような物を見ていた。話は漫画で読んだオメガバース物。番を亡くしたオメガが新しい伴侶と仲良くなるまでの物語。2人の思いが事細かく書かれていた。


「これが何かわからないが、絵に声があっていて物語がすごく良かった」

「はい、とてもよい物語でした」


涙ぐむセバスにハンカチを渡した。


「……レ、レオール様、他の物語もあるようです」


「そうか、それはまた明日だな」

「楽しみです」


セバスはホームシアターが気に入ったのだな。また明日、同じ物を見てもいいかね。









「昨年より広いな」


俺たちは別荘の2階に移動した。2階にはリビング、寝室と執務室、露天風呂付きサニタリー、セバスの部屋が用意されていた。寝室のベッドはキングに代わり、リビング、レンガ調のオシャレなキッチン、食事を取る食卓、本棚、ソファーが様変わりしていた。

各部屋を見て周り、リビングから行ける執務室の扉を開いた。


(中は城より小さな作りだな)


「レオール様、書類と手紙が何通か来ていますね」

「本当だな、部屋着に着替えてから始めるか……」


「はい、かしこまりました」


セバスは寝室に移動してウォークインクローゼットを開けた。中は黒を基調とした作りで広く、肌着などが入るタンス、正装、シャツ、スラックス、靴、帽子、昨年に着たアロハシャツ、パーカー、Tシャツが何枚か掛かっていた。その中に初めてみる服があったようで、セバスが中から俺を呼んだ。


「レオール様、ここに甚平という服がありますがどうします?」

「甚平?」


クローゼットに向かうと、甚平とは紺色で落ち付いた初め見る装いだった。カラフルなアロハシャツもいいが、落ち着いた紺色に惹かれた。


「セバス、この甚平というのを着る」  

「分かりました」


着付け方はアロハシャツの時と同じく、説明が札に描いてあった。着てきた服を脱いだ。


(アロハシャツとは異なり前で交差させて腰で紐を結ぶのか。なかなかオシャレだな)


「これって王都で最近流行っている麻か? 珍しい生地で涼しいな」

「いいですね、私も甚平を着ます」


広いウォークインクローゼットの中で、セバスも着替えた。


「おっ、なかなか似合うな」

「レオール様もお似合いです」


ここで読書か休憩といきたいが、俺たちは移動をして執務を始めた。セバスも自分専用の机で俺宛に届いた、手紙の区別を始めて眉をひそめた。


「どうした? セバス」

「エリザベス様から手紙が来ていますが、どうされますか?」


「エリザベスか……近々誕生日だったよな。婚約破棄していないし誕生会の参加は無しで、エリザベスには黄色いチューリップの花束を送っておいてくれ」


「かしこまりました、そのように手配いたしますね」

「……頼む」


(本心を言うなら2度と、エリザベスには会いたくないな)
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