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別荘に行こう 2

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 朝食が終わり少し休憩した後、ベッドに同人誌を持って寝転んだ。


「オメガバース、アルファ、ベータ、オメガの漫画か、漫画は初めて読むな」
 

「はい、初めてですね。そのオメガバースと書かれた小説と同人誌が今回はかなりの数ありますね。あと学園物? 舞踏会の庭園にて……」


 セバスも片付けが変わりソファーに座り、一緒に本を見始めた。

「漫画とは文字ではなく絵で表現したものか、肖像画の絵ではなく綺麗な絵だな……書いているのは妹のミッシェル、メイドのハサハ、有名小説家マーレさんか、遂に妹は小説と漫画まで自分で描き始めたな」


(なにより、妹が楽しそうにしている)


「なかなか漫画は面白いですね」

「あぁ面白い……セバスもこっちで寛げよ」

 少し広めなベッドな端によりセバスを呼んだ。セバスはいつもなら「私はいいです」と遠慮するがいまは休暇中だ。

「では、隣に失礼します」

「うん」

 誰が見ることもなく2人、ベッドに寝転んで本を読んでいた。この漫画は中々面白く夢中で読んでしまう。

 一冊読み終えて、はぁと息を吐いた。

「凄えぞ、セバス。このオメガバースという本、2人が舞踏会で出会うシーンが綺麗だ、丁寧に描かれた薔薇が舞うぞ」

「本当ですか?」

 セバスも気になり俺の本を覗いた。こうやって遠慮しないセバスに俺も近付き本を見せた。

「このシーンだ、オメガの甘い香りがアルファに分かり、お互いが番だと示すんだって……」  

「番ですか? 私の読んでいる本も、獣人族と人族が香りで惹かれあっていますね」

「香りで惹かれ合う2人か、この番って言葉は良いな」

(俺たちも番だと言っても良いのかな……なんてな)

「レオール様、どれも絵が綺麗で話が面白くて、これは読みふけってしまいますね」

「ほんとそうだな。この本の通りに役を付ければ俺がアルファでセバスがオメガか……オメガの発情期はかなりエロいな、相手の物を集める巣ごもりも可愛い。そして、男が子を産む物語は初めてだ」

「次はそれにします」

 中々、同人誌ーー漫画とは面白い。しかし、一つ気になる物があった。それはタイトル『舞踏会の庭園にて』と小説と漫画が一緒になった本だ。

 これはまさに社交界の閨事情。俺が聞いたことがある話もちらほら書いてあった。貴族は家の為に政略結婚が当たり前だ。

(俺もそうだと習い育った)

 しかし、引き離されても互いを想い。社交会の休憩室、用意された部屋で馬車の中で交接に励む姿が書かれていた。

「ミッシェルとハサハは隣国の王子とたまに、社交会に参加していると聞いていたな。まさかそこでアーサーの時と同じく、男同士の交接を直に見たのだな」

 隣国の第2王子はミッシェルを気に入っていると聞いた。ミッシェルに夕食のときにそれとなく聞いたが……妹は同じ趣味を持つ同士だと答えた。


(2人の間に恋愛感情はないようだった)


「レオール様ーーもしか、そうだとしても私からは聞けません」

「だな。まだ爵位や名前を変えてあるから良いが……知る者が見たらわかるかもしれない。しかし俺たちの他に、こんなにエロい効接をくりかえる者がいたのだな」


「そうですね。実際……私も閨に誘われたことがあります」


「はぁ、俺のセバスを誘うとは何処のどいつだ! しっかり断ったのだろうな」

「はい、丁寧にお断りいたしました」


(昔からセバスは、男性にしては綺麗だからな)


 馬車は止まる事なく別荘まで進んでいた。昼まで後1時間か……1度、何処かの街が村で休憩を入れるか。


「セバス、昼に馬車を止めて一旦休憩を取ると、従者に伝えてくれ」

「かしこまりました」


 セバスは馬車の先端に行き、連絡用の小窓を開けて、昼休憩を従者2人に伝えるようたのんだ。




 


 従者に連絡して戻るとレオール様がベッドの上で寝息を立てていた。前の日まで仕事をされていたから疲れているのだろう。

 私はベッドの端に座り、レオール様の寝顔を眺めた。


(笑うと可愛く、綺麗な人だ)


 物語の様にあなたの番ーー唯一無二の存在に慣れるなら、どんなに良いだろうか。

「レオール様と過ごす別荘を毎年、楽しみにしておりました」

 髪に触れようとした、手をレオール様に掴まれた。

「レオール様⁉︎」

「俺もだ、楽しみにしている。そんな所におらず俺の隣に来いよ」

 いらずらっぽい瞳を向ける、我が主人には勝てませんね。
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