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モードラー公爵家 (セバス)
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書類から顔を上げず、いつもの様に呼んだ。
「セバス、お茶……っ、あ」
(そうだ、セバスはいないんだった)
月末になり、セバスはモードラー公爵家の報告会に公爵家に戻っていた。その為、俺の執務机の上には見慣れない、真鍮製の呼び鈴が置いてあった。
(今朝、出る前にお茶、用事などがあったらこの鈴を鳴らして、メイドを呼べとセバスが言っていたな。ここにメイドを呼ぶか、我慢するか……うぅん、セバスが戻るまで待つか)
書類に視線を戻して、必要な物にサインを始めたがすぐに手が止まった。
(セバスがここに、いないだけで変な感じだ)
『お茶ですか?』
『レオール様』
常にそこにいることが当たり前、セバスはもはや俺の生活の一部になんだ。
(セバスが戻るのは昼過ぎか……)
「それまで、昼寝でもするか」
急ぎの執務もないしと、ソファーに寝転んだ。
+
月末の報告会。
私はモードラーの屋敷に戻ってきていた。庭師に挨拶をして、エントランスを抜けてみんながあつまる食堂に向かった。
食堂に着くと中からは、楽しげな声ふが聞こえてきた。
「セバスです、母さん戻りました」
「おっ、お帰りセバス!」
私に向けて手を振る、赤いショートの髪と真っ白なワンピースを着た、いつみても少年か少女ような母さんと。母さんの近くには兄弟がいた。
バルバロッサ国にはレオール様の弟殿下、第2王子の側近をする茶髪に人なっこい顔の弟、リュートと、第1王女の専属メイド、オレンジ色の髪が特徴な、妹のハサハが先に来ていた。
「よっ、セバス兄、同じ王城にいるのになかなか会わないなぁ」
「ほんとよね、兄2人に会うの久しぶりだわ」
「普段、執務が忙しくて執務室から出ませんからね、2人とも元気そうで何よりです」
2人がこっちだと手招きされて、私は母さんの近くの席に座った。
「クリスは忙しくて来れないだろうから、月末の報告会を始めるよ。まず、その肌艶から見て、セバスとリュートは王子2人に相当、可愛がられているみたいだ。ハサハも王女と友達の様に仲良くしているんだね」
「あぁ、第2王子アーサー様に可愛がられているよ。母さんが作ったスライムぬるぬる液のお陰だ」
「そうですね、あれはとても良いものです」
母さんは腕組み頷く。
「でしょ、西の国に生息する回復力が高いと言われる、緑スライムから毒素成分を抜いたぬるぬる液。王子たちのあそこが大きく太くてお尻の穴が切れても、すぐにぬるぬる液が治すからちょっと無理をしても大丈夫だ。そしてぬるぬる液は傷薬とにも使えるから」
いきなり王子との交接の話をされて。妹、ハサハは困った様に声を上げた。
「ちょっと母さん、私もいるんだからその話は後にしてよ!」
「いいじゃない本当のことなんだから、王子って遺伝なのか、精力が1人より強く絶倫じゃない?」
「し、知らないわよそんな話!」
精力、絶倫と聞きハサハは頬を赤くした。
(レオール様が絶倫? 彼は毎日行う時もあれば、触り合いっこで終わる日、お休みの日もある、精力は強い方ですが絶倫ではないですね)
レオール様とのことを考えていた。隣に座る弟、リュートがこの話に頷き。
「へぇ、知らなかった……あれを絶倫というのか……第2王子は凄いぞ、朝は起こしにいくと口でしろって言うし、昼と夜は時間があれば仮眠室で何回もする。最近なんてご自分の尻を開発されているよ」
(尻を開発!)
「あーやだ、尻、尻うるさい! リュー兄、尻の開発とかいいけど。庭園とか外でするのだけはやめて! 1週間前に散歩中のミッシェル様が庭園で見てしまったのよ」
「あぁ、あの時は悪かったよ、でも俺からは誘ってはいない。アーサー様がここでやろうと言い出して、断れなかったんだよ!」
「だからって、あんな誰にでも見える所でするか普通! そのせいでミッシェル様が男同士の恋愛に目覚めちゃったじゃない!」
「そんなの本人の自由だし、別にいいじゃん」
「よくない! 男同士の本を買いに街まで行く私の身にもなってよ! どんどん本の内容がエスカレートしてるんだからね!」
そう言ったハサハに「にししっ」とリュートは笑い。
「とか言って、ハサハもそういう本好きだろ? 王女様と一緒に読めばいいじゃん!」
「そ、そりゃ好きだけど……兄弟の生はキツい。あんたが涎を垂らして、よがってる所なんて見たくなかったわ! それにアーサー弟殿下の婚約者に見られても知らないわよ!」
(それはありますね、私もエリザベス様に見られるのはちょっと嫌ですね)
「はっ、俺がそんなヘマするかよ」
「わかんない! 今度、外でやるのなら遮音の魔法をかけて、見回り騎士にの見えない位置とか、夜にしなさいよ」
リュートはポンと手を叩き。
「おっ、夜かいいな。バルコニーで夜風にさらされながらするのもいいな、アーサー様にそう伝えておくよ。夜の方が燃えるからな」
「もー、リュー兄のばか!」
2人が言い争う姿を母さんは黙って、楽しそうに眺めていた。
「ふふっ、若いっていいわね~私も彼氏作ろうかしら?」
「彼氏って、母さんにリル兄がいるだろう?」
「いるけど……最近、ご無沙汰なんだ」
報告会が始まってから食堂にやって来たリル兄。離れた席に座って紅茶をまったり楽しんでいたが、突然の母さんの話にゴフッと紅茶にむせた。そのリル兄にハサハが追い討ちをかける。
「そりゃそうよ、リル兄は男の姿の母さんがいいんだもの。見た目が中性的だからって、最近ワンピースなんて着ちゃって、可愛いけど」
「リル兄は素敵な紳士です、逃すと悲しむのは母さんですよ」
リュートとハサハも頷くと、ちらっとリル兄を見た母さん。
「セバスの言う通りか。この姿がリルが好きだと思って、やっていたんだけど元に戻すよ」
「その方が絶対いいわ」
「えぇ、良いと思いますよ」
公爵モードラー家。始祖の魔女は生きている。その魔女がマーレ母さん。みんな母さんと呼んでいますが性別は男性、魔女ではなく魔法使い。
100年前、他の国では魔女、魔法使いが悪魔使いとして頻繁に裁判にかけられていた。母さんも逃げている途中に前バルバロッサ国王に捕まり「お前が魔女か何か魔法を見せてみろ」と言われて、披露した魔法に国王が気に入った。
母さんは国王のメイドとして付き、国の窮地を何度か救った。バルバロッサ国王に爵位をもらい公爵まで登った。
いまは表に出ませんが裏で国を支えている。
マーレ薬局、何でも屋モードラーなと国の至る所に店を構えた。
(魔女だと呼ばれたのは母さんは逃げるとき村娘に女装していて、国王に捕まったとき魔女マーレと名乗った為。そのまま魔女となりモードラー家の女当主として収まったらしいです)
前国王が崩御された後も、助けられた御恩を返す日々尽くしている。私たちはそんな母さんに拾われた元捨て子。
ハサハは北の国出身、リュートは西の国出身、私は南の国出身。私たちは魔力を持ちで生まれて、家族に捨てられた。
この屋敷で働くみんなも母さんに拾われた者ばかり。私たちを我が子の様に大切にしてくれる、偉大な母さんです。
だから、モードラー公爵家は血が繋がっていなくても、大の仲良し大家族なんです。
「も、戻りました、母さん」
食堂に私たちより年が離れた兄の様な存在。現王バルバロッサ・ジェイド陛下の側近をしている、クリス兄が珍しく報告会に顔をだした。
「あら、珍しいクリスじゃない。どうしたの?」
「母さんにお願いしたいことがありまして」
クリス兄は食堂にいる私たちを見て、眉をひそめたが、息を吐き話をきりだした。
「王妃がしばらく別荘に行かれることになりまして、その……」
俺たちをチラチラ見て言いにくそうなクリス兄。そんな兄を見て母さんはニコッと笑った。
「わかった。国王と久しぶりにいちゃいちゃするから、ぬるぬる液が欲しいんだな、何本いる?」
「か、母さん!」
母さんに言われたクリス兄の耳は真っ赤だ。年甲斐もなく国王と交接する事を兄弟に知られて、照れているようです。私は素敵だと思いますが、隣のリュートとハサハが好奇心、丸出しで見ていますからね。
「いま用意するから、セバス、リュートも何本いるか数を言いなさい!」
「はい、俺はぬるぬる30本」
「私は10本ほど」
「……僕は3本です」
「わかった、用意してくるから待っていて、リル運ぶのを手伝って!」
「かしこまりました」
母さんがいなくなり、ハサハはリュートの数に驚いていた。
「ぬるぬる液、さ、30本って! あなたどれだけ、アーサー弟殿下とする気なの!」
「別にいいだろう、アーサー様のデカいんだよ」
大きいのはレオール様もそうですからわかりますが……リュートの数は脅威。毎日、アーサー様と使うのですね。
「それと、リュー兄は終わったとちゃんとクリーンの魔法かけてるわよね。出しっぱなしだとメイドが困るわよ!」
「あ、当たり前だろう!」
「ほんと? リュー兄は攻撃魔法と防御魔法が得意でも、生活魔法は苦手だったじゃない」
「いまは何回もかけてるおかげて、ちゃんと使える様になった!」
「何百回の間違いじゃない!」
「うるせぇ」
「ほら、2人とも落ち着きなさい」
私がのんびり紅茶をいただくなか、リュートとハサハが言い合うのをクリス兄が止めていた。
「さぁ、みんなの好きな。ぬるぬる液と元気回復ビンビンドリンク、持ってきたわよ!」
母さんはガシャンとガラスの入れ物に入った、ぬるぬる液と元気回復ビンビンドリンクを食堂のテーブルに置いた。
「ありがとう、母さん! 毎回、思うけどネーミングセンス悪いよな」
アイテムボックスを開き、ぬるぬる液をしまいながらリュートは母さんに言った。
「そう? わかりやすく商品に名前つけてるけど、傷軟膏とか滋養強壮、栄養ドリンクにすればよかった?」
「いいえ、普通の名前だと商品のインパクトに欠けます。母さんの好きなように名前をつけた方がいいと思います」
「私もそう思うわ。名前を言うのは少し恥ずかしいけど、分かりやすい商品だもの」
「ありがとう、セバス、ハサハ」
ぬるぬる液とビンビンドリンクをアイテムボックスにしまい。モードラー家の月末の報告会が終わった。母さんは午後に商品開発室、店の責任者を呼び、新商品の発表会をするらしい。
帰り間際。いつの間にかワンピースから男性物の服に替わっていた母さん。馬車に乗り込む私たちに手を振った。
「あなたたち、ぬるぬる液がなくなったらいつでも、手紙をよこすんだよ!」
「「はい!」」
月末の報告会が終わり、私たちはクリス兄を含め、みんなで馬車に乗り王城に戻っていた。その道中。ずーっとリュートとハサハは言い合いをして、隣に座ったクリス兄は私とレオール様との交接を散々聞いてきた。
(クリス兄はご自分の事は恥ずかしがるのに、人のは平気なんですね……)
王城ーー馬車付き場でみんなと別れて、私はレオール様の執務室に戻ってきた。執務室の警備騎士に挨拶をして、ノックと声をかけて部屋に入った。
「レオール様、いま戻りました」
(あれっ、静かですね)
いると思った執務机にはおらず、彼はソファーでぐっすり寝ていた。私はその寝顔をしばらく楽しみ彼を起こした。
「起きてください、レオール様」
「ん? おぉセバス戻ったのか、お帰り」
「ただいま戻りました。お昼はどうされたのですか?」
時刻は一時を回っていた。
「昼か、食べていないな。セバス、お茶と何か作ってくれ、ここで一緒に食べよう」
「かしこまりました、しばらくお待ちください」
私は執務室の隣にあるキッチンに立ち。あるものでサンドイッチとスープを作り、紅茶を入れてテーブルに運んだ。
「レオール様、できましたよ」
「ありがとう、セバスも座って食べよう」
「はい」
私たちの遅めの昼食が始まった。
それは報告会から三日後、満月の夜のこと。
アーサー弟殿下とリュートは夜の庭園で遮音の魔法をかけて、月明かりの下で楽しんでいた。
2人の交接が激しさを増した同時刻。満月を楽しもうとミッシェル様がハサハを誘い、バルコニーにでてきた。
「まぁ!」
彼女が目にしたのは月明かりの下で激しく交わる男2人。気が付いたハサハが止めてもミッシェル様はその場から動かず。ことの始まりから終わりまで見ていた。
終わった後、ミッシェル様は興奮げに。
「ハサハ、すごいですわ。男同士ってお尻を使って交接をあの様にやるのですね。本だと雛穴、花蕾と書かれていて、少しわかりづらかったのですが謎が解けました!」
「えぇ、それは良かったですね」
王女はキラキラな瞳をされて、ハサハに語ったそうだ。
(やばい、このままこの道に進んでいくと。ミッシェル様はいつか、もっと近くで2人の交接を見たいと仰るかもしれない、リュー兄ぃ!)
王城、彼女の部屋に積まれていく男同士の本と、キラキラした瞳をする王女様に頭を抱えたハサハだった。
「セバス、お茶……っ、あ」
(そうだ、セバスはいないんだった)
月末になり、セバスはモードラー公爵家の報告会に公爵家に戻っていた。その為、俺の執務机の上には見慣れない、真鍮製の呼び鈴が置いてあった。
(今朝、出る前にお茶、用事などがあったらこの鈴を鳴らして、メイドを呼べとセバスが言っていたな。ここにメイドを呼ぶか、我慢するか……うぅん、セバスが戻るまで待つか)
書類に視線を戻して、必要な物にサインを始めたがすぐに手が止まった。
(セバスがここに、いないだけで変な感じだ)
『お茶ですか?』
『レオール様』
常にそこにいることが当たり前、セバスはもはや俺の生活の一部になんだ。
(セバスが戻るのは昼過ぎか……)
「それまで、昼寝でもするか」
急ぎの執務もないしと、ソファーに寝転んだ。
+
月末の報告会。
私はモードラーの屋敷に戻ってきていた。庭師に挨拶をして、エントランスを抜けてみんながあつまる食堂に向かった。
食堂に着くと中からは、楽しげな声ふが聞こえてきた。
「セバスです、母さん戻りました」
「おっ、お帰りセバス!」
私に向けて手を振る、赤いショートの髪と真っ白なワンピースを着た、いつみても少年か少女ような母さんと。母さんの近くには兄弟がいた。
バルバロッサ国にはレオール様の弟殿下、第2王子の側近をする茶髪に人なっこい顔の弟、リュートと、第1王女の専属メイド、オレンジ色の髪が特徴な、妹のハサハが先に来ていた。
「よっ、セバス兄、同じ王城にいるのになかなか会わないなぁ」
「ほんとよね、兄2人に会うの久しぶりだわ」
「普段、執務が忙しくて執務室から出ませんからね、2人とも元気そうで何よりです」
2人がこっちだと手招きされて、私は母さんの近くの席に座った。
「クリスは忙しくて来れないだろうから、月末の報告会を始めるよ。まず、その肌艶から見て、セバスとリュートは王子2人に相当、可愛がられているみたいだ。ハサハも王女と友達の様に仲良くしているんだね」
「あぁ、第2王子アーサー様に可愛がられているよ。母さんが作ったスライムぬるぬる液のお陰だ」
「そうですね、あれはとても良いものです」
母さんは腕組み頷く。
「でしょ、西の国に生息する回復力が高いと言われる、緑スライムから毒素成分を抜いたぬるぬる液。王子たちのあそこが大きく太くてお尻の穴が切れても、すぐにぬるぬる液が治すからちょっと無理をしても大丈夫だ。そしてぬるぬる液は傷薬とにも使えるから」
いきなり王子との交接の話をされて。妹、ハサハは困った様に声を上げた。
「ちょっと母さん、私もいるんだからその話は後にしてよ!」
「いいじゃない本当のことなんだから、王子って遺伝なのか、精力が1人より強く絶倫じゃない?」
「し、知らないわよそんな話!」
精力、絶倫と聞きハサハは頬を赤くした。
(レオール様が絶倫? 彼は毎日行う時もあれば、触り合いっこで終わる日、お休みの日もある、精力は強い方ですが絶倫ではないですね)
レオール様とのことを考えていた。隣に座る弟、リュートがこの話に頷き。
「へぇ、知らなかった……あれを絶倫というのか……第2王子は凄いぞ、朝は起こしにいくと口でしろって言うし、昼と夜は時間があれば仮眠室で何回もする。最近なんてご自分の尻を開発されているよ」
(尻を開発!)
「あーやだ、尻、尻うるさい! リュー兄、尻の開発とかいいけど。庭園とか外でするのだけはやめて! 1週間前に散歩中のミッシェル様が庭園で見てしまったのよ」
「あぁ、あの時は悪かったよ、でも俺からは誘ってはいない。アーサー様がここでやろうと言い出して、断れなかったんだよ!」
「だからって、あんな誰にでも見える所でするか普通! そのせいでミッシェル様が男同士の恋愛に目覚めちゃったじゃない!」
「そんなの本人の自由だし、別にいいじゃん」
「よくない! 男同士の本を買いに街まで行く私の身にもなってよ! どんどん本の内容がエスカレートしてるんだからね!」
そう言ったハサハに「にししっ」とリュートは笑い。
「とか言って、ハサハもそういう本好きだろ? 王女様と一緒に読めばいいじゃん!」
「そ、そりゃ好きだけど……兄弟の生はキツい。あんたが涎を垂らして、よがってる所なんて見たくなかったわ! それにアーサー弟殿下の婚約者に見られても知らないわよ!」
(それはありますね、私もエリザベス様に見られるのはちょっと嫌ですね)
「はっ、俺がそんなヘマするかよ」
「わかんない! 今度、外でやるのなら遮音の魔法をかけて、見回り騎士にの見えない位置とか、夜にしなさいよ」
リュートはポンと手を叩き。
「おっ、夜かいいな。バルコニーで夜風にさらされながらするのもいいな、アーサー様にそう伝えておくよ。夜の方が燃えるからな」
「もー、リュー兄のばか!」
2人が言い争う姿を母さんは黙って、楽しそうに眺めていた。
「ふふっ、若いっていいわね~私も彼氏作ろうかしら?」
「彼氏って、母さんにリル兄がいるだろう?」
「いるけど……最近、ご無沙汰なんだ」
報告会が始まってから食堂にやって来たリル兄。離れた席に座って紅茶をまったり楽しんでいたが、突然の母さんの話にゴフッと紅茶にむせた。そのリル兄にハサハが追い討ちをかける。
「そりゃそうよ、リル兄は男の姿の母さんがいいんだもの。見た目が中性的だからって、最近ワンピースなんて着ちゃって、可愛いけど」
「リル兄は素敵な紳士です、逃すと悲しむのは母さんですよ」
リュートとハサハも頷くと、ちらっとリル兄を見た母さん。
「セバスの言う通りか。この姿がリルが好きだと思って、やっていたんだけど元に戻すよ」
「その方が絶対いいわ」
「えぇ、良いと思いますよ」
公爵モードラー家。始祖の魔女は生きている。その魔女がマーレ母さん。みんな母さんと呼んでいますが性別は男性、魔女ではなく魔法使い。
100年前、他の国では魔女、魔法使いが悪魔使いとして頻繁に裁判にかけられていた。母さんも逃げている途中に前バルバロッサ国王に捕まり「お前が魔女か何か魔法を見せてみろ」と言われて、披露した魔法に国王が気に入った。
母さんは国王のメイドとして付き、国の窮地を何度か救った。バルバロッサ国王に爵位をもらい公爵まで登った。
いまは表に出ませんが裏で国を支えている。
マーレ薬局、何でも屋モードラーなと国の至る所に店を構えた。
(魔女だと呼ばれたのは母さんは逃げるとき村娘に女装していて、国王に捕まったとき魔女マーレと名乗った為。そのまま魔女となりモードラー家の女当主として収まったらしいです)
前国王が崩御された後も、助けられた御恩を返す日々尽くしている。私たちはそんな母さんに拾われた元捨て子。
ハサハは北の国出身、リュートは西の国出身、私は南の国出身。私たちは魔力を持ちで生まれて、家族に捨てられた。
この屋敷で働くみんなも母さんに拾われた者ばかり。私たちを我が子の様に大切にしてくれる、偉大な母さんです。
だから、モードラー公爵家は血が繋がっていなくても、大の仲良し大家族なんです。
「も、戻りました、母さん」
食堂に私たちより年が離れた兄の様な存在。現王バルバロッサ・ジェイド陛下の側近をしている、クリス兄が珍しく報告会に顔をだした。
「あら、珍しいクリスじゃない。どうしたの?」
「母さんにお願いしたいことがありまして」
クリス兄は食堂にいる私たちを見て、眉をひそめたが、息を吐き話をきりだした。
「王妃がしばらく別荘に行かれることになりまして、その……」
俺たちをチラチラ見て言いにくそうなクリス兄。そんな兄を見て母さんはニコッと笑った。
「わかった。国王と久しぶりにいちゃいちゃするから、ぬるぬる液が欲しいんだな、何本いる?」
「か、母さん!」
母さんに言われたクリス兄の耳は真っ赤だ。年甲斐もなく国王と交接する事を兄弟に知られて、照れているようです。私は素敵だと思いますが、隣のリュートとハサハが好奇心、丸出しで見ていますからね。
「いま用意するから、セバス、リュートも何本いるか数を言いなさい!」
「はい、俺はぬるぬる30本」
「私は10本ほど」
「……僕は3本です」
「わかった、用意してくるから待っていて、リル運ぶのを手伝って!」
「かしこまりました」
母さんがいなくなり、ハサハはリュートの数に驚いていた。
「ぬるぬる液、さ、30本って! あなたどれだけ、アーサー弟殿下とする気なの!」
「別にいいだろう、アーサー様のデカいんだよ」
大きいのはレオール様もそうですからわかりますが……リュートの数は脅威。毎日、アーサー様と使うのですね。
「それと、リュー兄は終わったとちゃんとクリーンの魔法かけてるわよね。出しっぱなしだとメイドが困るわよ!」
「あ、当たり前だろう!」
「ほんと? リュー兄は攻撃魔法と防御魔法が得意でも、生活魔法は苦手だったじゃない」
「いまは何回もかけてるおかげて、ちゃんと使える様になった!」
「何百回の間違いじゃない!」
「うるせぇ」
「ほら、2人とも落ち着きなさい」
私がのんびり紅茶をいただくなか、リュートとハサハが言い合うのをクリス兄が止めていた。
「さぁ、みんなの好きな。ぬるぬる液と元気回復ビンビンドリンク、持ってきたわよ!」
母さんはガシャンとガラスの入れ物に入った、ぬるぬる液と元気回復ビンビンドリンクを食堂のテーブルに置いた。
「ありがとう、母さん! 毎回、思うけどネーミングセンス悪いよな」
アイテムボックスを開き、ぬるぬる液をしまいながらリュートは母さんに言った。
「そう? わかりやすく商品に名前つけてるけど、傷軟膏とか滋養強壮、栄養ドリンクにすればよかった?」
「いいえ、普通の名前だと商品のインパクトに欠けます。母さんの好きなように名前をつけた方がいいと思います」
「私もそう思うわ。名前を言うのは少し恥ずかしいけど、分かりやすい商品だもの」
「ありがとう、セバス、ハサハ」
ぬるぬる液とビンビンドリンクをアイテムボックスにしまい。モードラー家の月末の報告会が終わった。母さんは午後に商品開発室、店の責任者を呼び、新商品の発表会をするらしい。
帰り間際。いつの間にかワンピースから男性物の服に替わっていた母さん。馬車に乗り込む私たちに手を振った。
「あなたたち、ぬるぬる液がなくなったらいつでも、手紙をよこすんだよ!」
「「はい!」」
月末の報告会が終わり、私たちはクリス兄を含め、みんなで馬車に乗り王城に戻っていた。その道中。ずーっとリュートとハサハは言い合いをして、隣に座ったクリス兄は私とレオール様との交接を散々聞いてきた。
(クリス兄はご自分の事は恥ずかしがるのに、人のは平気なんですね……)
王城ーー馬車付き場でみんなと別れて、私はレオール様の執務室に戻ってきた。執務室の警備騎士に挨拶をして、ノックと声をかけて部屋に入った。
「レオール様、いま戻りました」
(あれっ、静かですね)
いると思った執務机にはおらず、彼はソファーでぐっすり寝ていた。私はその寝顔をしばらく楽しみ彼を起こした。
「起きてください、レオール様」
「ん? おぉセバス戻ったのか、お帰り」
「ただいま戻りました。お昼はどうされたのですか?」
時刻は一時を回っていた。
「昼か、食べていないな。セバス、お茶と何か作ってくれ、ここで一緒に食べよう」
「かしこまりました、しばらくお待ちください」
私は執務室の隣にあるキッチンに立ち。あるものでサンドイッチとスープを作り、紅茶を入れてテーブルに運んだ。
「レオール様、できましたよ」
「ありがとう、セバスも座って食べよう」
「はい」
私たちの遅めの昼食が始まった。
それは報告会から三日後、満月の夜のこと。
アーサー弟殿下とリュートは夜の庭園で遮音の魔法をかけて、月明かりの下で楽しんでいた。
2人の交接が激しさを増した同時刻。満月を楽しもうとミッシェル様がハサハを誘い、バルコニーにでてきた。
「まぁ!」
彼女が目にしたのは月明かりの下で激しく交わる男2人。気が付いたハサハが止めてもミッシェル様はその場から動かず。ことの始まりから終わりまで見ていた。
終わった後、ミッシェル様は興奮げに。
「ハサハ、すごいですわ。男同士ってお尻を使って交接をあの様にやるのですね。本だと雛穴、花蕾と書かれていて、少しわかりづらかったのですが謎が解けました!」
「えぇ、それは良かったですね」
王女はキラキラな瞳をされて、ハサハに語ったそうだ。
(やばい、このままこの道に進んでいくと。ミッシェル様はいつか、もっと近くで2人の交接を見たいと仰るかもしれない、リュー兄ぃ!)
王城、彼女の部屋に積まれていく男同士の本と、キラキラした瞳をする王女様に頭を抱えたハサハだった。
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