ストラグルガールズ

シャオえる

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119. 震える声で名前を呼ぶ

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「ノエル……」
 暗くなった周りをキョロキョロと見渡すミコト。不安から少し手が震え、ノエルの手を掴んでいた手が少し緩む
「手を離しちゃダメだよ。こんな暗い中、もし離れたら助けられないかもしれないから」
「う、うん……」
 注意され慌てて両手でノエルの手を強くつかんで、少し体を近づけると、二人の前で浮かぶ本を見た
「でも、どうするの?学園どころか、みんな見えなくなったけど」
「大丈夫、あの本があるから」
 と、ずっと本から目線をそらすことなく見ているノエルがミコトに返事をすると、クスッと不敵に微笑んだ
「本の魔力が強くなっていく……。私だけで耐えれるかな」
 そう言うと、本に近づく為ゆっくりと一歩踏み出した時、後ろにいたミコトにぎゅっと強く引っ張られた

「近づいちゃダメだよ」
「それじゃあ、ここまで頑張って来た意味ないよ」
「でも、何が起きるか分かんないのに……」
「分かんなくても行かなきゃ。ミコトは嫌かもしれないけど」
 ノエルの言葉を聞いても、行かせないように手をグイッと強く引っ張るミコト。本に近づくどころか少しずつ遠くなり、困ったノエルが、はぁ。とため息をつき、本を見ると、本の中から、ポツポツと小さな光の粒が現れ二人の周りにふわりと浮かぶ。すぐ側でふわふわと移動してきたその光の粒を見ると、光の中に二人と同じ年齢のような女の人がニコッと笑って術を唱えていた
「この人達は……」
「歴代の生徒会長さん達。私達の学園以外の人達もいるね」
 次々と現れ、周りに浮かぶ光を見ながら話をする二人。まだまだ光が現れるのが終わりそうもない様子に、ノエルがまたふぅ。とため息をついた

「ねえ、ミコト」
 と、呟くような声でノエルがミコトを呼ぶ
「なんで、あの本って生徒会長だけだと思う?別にさ、ミコトが持ってても、術が使えないなら持っても平気と思わない?」
「まあ確かに不思議といえばそうだけど……。でも結局は、そっくりな本も作れて、威力は減るけど書かれた術も、私でも使えたから……」
 そうミコトが返事をしている隙に、ミコトの手を離さないようにしながら、グイッと本に近づいた。急に引っ張られたミコトが少しこけそうになりノエルの服をつかみながら、後ろから抱きついた。すると、ノエルの体が少し震えているのに気づいてノエルの顔を見ると、その視線に気づいたノエルが、気持ちを誤魔化すようにニコッと微笑んだ
「本のいう通りになるかな……。それとも、誰かが願った通りになるのか。一息つく暇もあまりなさそうだね。少し、ツラいかもしれないけど頑張ろう」
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