ストラグルガールズ

シャオえる

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117. 見覚えのある場所を訪ねて

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「ねえ、離れるなとは言ったけど、もう少し離れて歩いて」
「えー、だって……。何だか、恐くない?」
「そう?人がいなくて、暗いだけじゃん。すぐ慣れるよ」
 ノエルの腕をぎゅっと強く掴んで歩くミコト。薄暗い学園の中で、二人の会話と足音だけが響いている
「ノエル、ちょっとだけでいいから、明かりを灯す術を使ってよ」
「嫌だ。無駄に魔力を使いたくないもん」
「えー。そんな……」
 歩き慣れた学園の中を少し嫌々ながらも進んでいると、ノエルがとある教室の前で立ち止まった
「ほら、そんなワガママ言ってる間に着いたよ」
「生徒会長室……。何となく雰囲気が……」
 ノエルの後ろで手をぎゅっと掴み直して、ミコトがそう言うと、ノエルがふぅ。と一つ大きく深呼吸をした

「入るよ」
 ノエルがそう言うとミコトがゆっくりと頷くが、ノエルは振り向くことなく、そーっと扉に引いて開けると、見覚えのある生徒会長室の中に、ノエルの後ろから見たミコトがちょっとホッと胸を下ろした
「あまり変わらないね」
「そうだね……」
 と、ミコトが返事をするとノエルが部屋の中に入りだした。手を繋いでいるミコトも部屋の中を見渡しながら入ると、ふとすぐそばにあった本棚に気づいて、本を取ろうと手を伸ばした
「あまり触らない方がいいよ。魔力がないけど、本にもし術が書いていたら、何が起きるかわかんないよ」
「そっか、ごめん……」
 本棚から手を離しながらミコトが謝っていると、グイッとノエルに手を引っ張られ、一緒に部屋の中を適当に見て回る

「特に得られそうなのはなさそうだし、他の教室行ってみよう」
「ちょっとまって……」
 ノエルが先に部屋を出て、ミコトも無理やり出されそうになり、部屋の中を見ながら返事をしていると、部屋の窓からふと、何かが見えて慌ててノエルの手をグイっと引っ張った
「ノエル。まって、あれ」
 ミコトの声に、廊下で出てくるのを待っていたノエルが部屋の入り口まで戻ってくると、ミコトの後ろから部屋の中を見渡しはじめた
「あれってなに?」
 そう問いかけると、ミコトが部屋の中に入り、窓の側まで二人一緒に近寄りミコトが何かを見た場所を指差すと、ノエルが困ったように微笑み、外を見ていたミコトをぎゅっと抱きしめた
「見つけた。ミコト、急いで行くよ。手を離さないようにね」
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