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57. 触れられない理由
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「よく来れたね。二人とも偉いよ」
クロスとレイナのともに着いて、ふぅ。とため息ついたアカリとヒナタ。レイナが二人に駆け寄りぎゅっと抱きしめた
「もう少し、奥に行こうか。そろそろ、ノアも来るだろうが、もう少し先で、みんなで紅茶でも飲もうか」
一息着く間もなく、更に奥へと一人歩きだしたクロス。レイナも二人を手離して歩きはじめた。また残されたアカリとヒナタ。ぎゅっと強く手を繋いで、クロスとレイナの後を追っていく
「あれ?」
あちらこちらでたくさんの本棚が並び続けてく中、しばらく三人会話もなくただ歩いていると突然、足を止めたアカリ。手を繋いでいたヒナタがグイッと手を取られて足を止めた
「アカリ。どうしたの?」
「……本が、呼んでる」
そういうとヒナタの手を離して、フタバと一緒にバタバタと足音を鳴らしながら走り、本棚で姿を隠してあっという間にいなくなってしまった
「ちょっと、アカリ!」
慌ててヒナタがイチカと一緒に、まだバタバタと聞こえている足音を便りにアカリの後を追いかけていく
「……すぐ追わなくていいの?」
追いかけることなく、遠くから聞こえてくる二人の足音を聞きながら、レイナが震える声でクロスに問いかけた
「ああ、話で理解するよりかは分かってくれるだろうし」
「でも……」
話をしているうちに二人の足音が聞こえなくなっていた。不安が募りレイナが両手をぎゅっとつかんでいると、その両手をそっと包むようにクロスが優しくレイナの手をつかんだ
「それより、落ち着いてきたかい?」
「……ええ。少しは」
「そうか。じゃあ、ゆっくりと二人を追いかけようか」
「アカリ、待って!どこ行くの?」
「分かんないけど……フタバもここって言ってる気がするの」
その頃、アカリとヒナタはバタバタと本棚の間を潜り抜け、クロスとレイナからだいぶ離れた場所をまだ走り続けていた。フタバを先頭に走り続けていると、行き止まりにたどり着いた。息を切らし足を止めたアカリ。キョロキョロと辺りを見渡していると、ヒナタも着いて、行き止まりに近づいていくアカリの姿を息を呑むように見守っている
「あれ?本がない……」
行き止まりと思って着いた場所には、壁一面に一冊も本が置かれていない空の本棚が置かれていた。不思議そうに、辺りを見渡していると、ヒナタがふと何かにに気づいて指差した
「アカリ。あれ、ほら」
ヒナタが指差す場所に目を向けると、一冊床に置かれた本があった。ページを上に向いたその本は、段々と姿が見えなくなっていく
「待って!消えないで!」
慌ててその本に触れようと手を伸ばし駆け寄るアカリ。だが、間に合わず伸ばしたその手は床にバンっと叩くように触れた
「消えちゃった……」
「ここには、本はもうないの?」
「どうだろう。なさそうにも見えるけど……」
床を強く叩いてしまい赤くなって痛む手を押さえているアカリの所に慌てて駆け寄るヒナタ。手に触れて更に慌てているヒナタを横目に、近くにある本棚を見ていると、コツコツと誰かが近づいてくる足音が聞こえてきた
「ここの本はもうないよ。本達はもう疲れたんだ」
悲しげな声が聞こえてきて、驚きその声がする方に振り向くとクロスとレイナが二人に追い付き、空になった本棚の姿を見て悲しんでいた
「お父様……」
「本が疲れたって……」
クロスの言葉に不思議がっていると、アカリとヒナタの側にレイナが駆け寄り、赤くなっているアカリの手を見て、その手をぎゅっと強くつかんだ。その様子をアカリが驚くことなくボーッとした表情で見ている。そんな三人の姿を微笑ましく見ていたクロスも近より、側にある本棚にそっと触れて少し悲しげな声でアカリとヒナタに話しかけた
「それをお話しする前に、レイナと一緒に素敵なうたを聞かせておくれ」
クロスとレイナのともに着いて、ふぅ。とため息ついたアカリとヒナタ。レイナが二人に駆け寄りぎゅっと抱きしめた
「もう少し、奥に行こうか。そろそろ、ノアも来るだろうが、もう少し先で、みんなで紅茶でも飲もうか」
一息着く間もなく、更に奥へと一人歩きだしたクロス。レイナも二人を手離して歩きはじめた。また残されたアカリとヒナタ。ぎゅっと強く手を繋いで、クロスとレイナの後を追っていく
「あれ?」
あちらこちらでたくさんの本棚が並び続けてく中、しばらく三人会話もなくただ歩いていると突然、足を止めたアカリ。手を繋いでいたヒナタがグイッと手を取られて足を止めた
「アカリ。どうしたの?」
「……本が、呼んでる」
そういうとヒナタの手を離して、フタバと一緒にバタバタと足音を鳴らしながら走り、本棚で姿を隠してあっという間にいなくなってしまった
「ちょっと、アカリ!」
慌ててヒナタがイチカと一緒に、まだバタバタと聞こえている足音を便りにアカリの後を追いかけていく
「……すぐ追わなくていいの?」
追いかけることなく、遠くから聞こえてくる二人の足音を聞きながら、レイナが震える声でクロスに問いかけた
「ああ、話で理解するよりかは分かってくれるだろうし」
「でも……」
話をしているうちに二人の足音が聞こえなくなっていた。不安が募りレイナが両手をぎゅっとつかんでいると、その両手をそっと包むようにクロスが優しくレイナの手をつかんだ
「それより、落ち着いてきたかい?」
「……ええ。少しは」
「そうか。じゃあ、ゆっくりと二人を追いかけようか」
「アカリ、待って!どこ行くの?」
「分かんないけど……フタバもここって言ってる気がするの」
その頃、アカリとヒナタはバタバタと本棚の間を潜り抜け、クロスとレイナからだいぶ離れた場所をまだ走り続けていた。フタバを先頭に走り続けていると、行き止まりにたどり着いた。息を切らし足を止めたアカリ。キョロキョロと辺りを見渡していると、ヒナタも着いて、行き止まりに近づいていくアカリの姿を息を呑むように見守っている
「あれ?本がない……」
行き止まりと思って着いた場所には、壁一面に一冊も本が置かれていない空の本棚が置かれていた。不思議そうに、辺りを見渡していると、ヒナタがふと何かにに気づいて指差した
「アカリ。あれ、ほら」
ヒナタが指差す場所に目を向けると、一冊床に置かれた本があった。ページを上に向いたその本は、段々と姿が見えなくなっていく
「待って!消えないで!」
慌ててその本に触れようと手を伸ばし駆け寄るアカリ。だが、間に合わず伸ばしたその手は床にバンっと叩くように触れた
「消えちゃった……」
「ここには、本はもうないの?」
「どうだろう。なさそうにも見えるけど……」
床を強く叩いてしまい赤くなって痛む手を押さえているアカリの所に慌てて駆け寄るヒナタ。手に触れて更に慌てているヒナタを横目に、近くにある本棚を見ていると、コツコツと誰かが近づいてくる足音が聞こえてきた
「ここの本はもうないよ。本達はもう疲れたんだ」
悲しげな声が聞こえてきて、驚きその声がする方に振り向くとクロスとレイナが二人に追い付き、空になった本棚の姿を見て悲しんでいた
「お父様……」
「本が疲れたって……」
クロスの言葉に不思議がっていると、アカリとヒナタの側にレイナが駆け寄り、赤くなっているアカリの手を見て、その手をぎゅっと強くつかんだ。その様子をアカリが驚くことなくボーッとした表情で見ている。そんな三人の姿を微笑ましく見ていたクロスも近より、側にある本棚にそっと触れて少し悲しげな声でアカリとヒナタに話しかけた
「それをお話しする前に、レイナと一緒に素敵なうたを聞かせておくれ」
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