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33. いつまでも、このままでいるために
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「アカリ!それ私の!」
「ヒナタが食べるの遅いからだよ。早い者勝ち」
最後に食べようと残していたパンを奪い取り、美味しそうに食べるアカリを怒った顔をして騒ぐヒナタ。朝から元気な二人に、クスクスと笑う家政婦達。すると、アカリが食べたパンをヒナタの側に置くと、二人に微笑み話しかけた
「お二人の分ありますので、ゆっくり食べてくださいね」
「はい!ありがとうございます」
パンを取り、アカリと一緒に食べはじめたヒナタ。その姿を微笑み見守っていると、カチャと食堂の扉が開いた
「二人とも、朝から元気だな」
食堂の様子を見るなり、クスッと笑い食堂の中に入ってきたクロス。そのすぐ後を少しうつ向きがちにレイナも来た。扉の方に振り向いたヒナタが、レイナの姿を見るなり一目散に駆け寄っていった
「おはようございます。お母様」
「ヒナタ、おはよう」
二人見つめあって微笑むと、その様子にムッと嫉妬したアカリがガタンと椅子を倒しそうになりながら立ち上がった
「私も、抱きつく!」
バタバタと大急ぎでレイナの元に走ってく。クロスの横を通り抜け、ヒナタと一緒に、レイナをぎゅっと強く抱きしめた
「ちょっと二人とも、苦しいわ」
二人の強い力に、思わず笑うレイナ。その様子を微笑ましく家政婦達が見ていると、足取り重く遅れて食堂に来たノアが、アカリとヒナタの様子を見て、ポツリ呟いた
「あの光景が、ずっと続くために……」
「ノアさん……」
呟いたノアの言葉が聞こえた家政婦達が、少し困ったように声をかける。そのやり取りにクロスは気づきながらも、気づかない振りをして、スタスタとテーブルの方に歩いていく
「それより二人とも、ご飯の後はお出掛けをしようか」
二人が座っていたテーブルの向かいに座りながらアカリとヒナタにそう声をかけると、アカリがレイナから手を離れて嬉しさからピョンピョンと跳び跳ねる
「お出掛けですか?やった!」
「ヒナタも一緒に行きましょうね」
ぎゅっと抱きしめるが、ヒナタはあまり浮かない表情になって、胸元に顔を埋めて、小さく首を横に動かした
「私は……」
「ヒナタ、行かないの?」
「うん、私はお家で待ってる」
テンションの低いヒナタに、不思議そうに問いかけるアカリにそう返事をすると、レイナから離れてアカリの腕を掴んだ
「アカリ、行こう」
腕を掴んだまま無理矢理引っ張って食堂に出ていったヒナタ。廊下から、アカリの叫ぶ声が響いて聞こえてくる
「ちょっと……。ヒナタ、アカリ!」
慌てて二人の後を追いかけてるレイナ。バタバタと騒がしくなった廊下とは違い、食堂は急に静かになった
「おや、不自然すぎたかな?」
二人の反応に苦笑いをしながら、アカリとヒナタが残していったパンを食べはじめるクロスの元に、ため息をつきながらノアがクロスの方に振り向いた
「昨日の今日ですからね。どうされますか?本当に行かれますか?」
話しかけられて、一瞬ノアの方を見たクロス。すぐに目をテーブルに置かれたおかわり用のパンに向けて、クスッと笑いながら、手を伸ばした
「予定ではな。だが、無理矢理連れていっても良いことはなさそうだな。様子を見ながら動こうか。その為にも、美味しいご飯をちゃんと食べようか」
「ヒナタが食べるの遅いからだよ。早い者勝ち」
最後に食べようと残していたパンを奪い取り、美味しそうに食べるアカリを怒った顔をして騒ぐヒナタ。朝から元気な二人に、クスクスと笑う家政婦達。すると、アカリが食べたパンをヒナタの側に置くと、二人に微笑み話しかけた
「お二人の分ありますので、ゆっくり食べてくださいね」
「はい!ありがとうございます」
パンを取り、アカリと一緒に食べはじめたヒナタ。その姿を微笑み見守っていると、カチャと食堂の扉が開いた
「二人とも、朝から元気だな」
食堂の様子を見るなり、クスッと笑い食堂の中に入ってきたクロス。そのすぐ後を少しうつ向きがちにレイナも来た。扉の方に振り向いたヒナタが、レイナの姿を見るなり一目散に駆け寄っていった
「おはようございます。お母様」
「ヒナタ、おはよう」
二人見つめあって微笑むと、その様子にムッと嫉妬したアカリがガタンと椅子を倒しそうになりながら立ち上がった
「私も、抱きつく!」
バタバタと大急ぎでレイナの元に走ってく。クロスの横を通り抜け、ヒナタと一緒に、レイナをぎゅっと強く抱きしめた
「ちょっと二人とも、苦しいわ」
二人の強い力に、思わず笑うレイナ。その様子を微笑ましく家政婦達が見ていると、足取り重く遅れて食堂に来たノアが、アカリとヒナタの様子を見て、ポツリ呟いた
「あの光景が、ずっと続くために……」
「ノアさん……」
呟いたノアの言葉が聞こえた家政婦達が、少し困ったように声をかける。そのやり取りにクロスは気づきながらも、気づかない振りをして、スタスタとテーブルの方に歩いていく
「それより二人とも、ご飯の後はお出掛けをしようか」
二人が座っていたテーブルの向かいに座りながらアカリとヒナタにそう声をかけると、アカリがレイナから手を離れて嬉しさからピョンピョンと跳び跳ねる
「お出掛けですか?やった!」
「ヒナタも一緒に行きましょうね」
ぎゅっと抱きしめるが、ヒナタはあまり浮かない表情になって、胸元に顔を埋めて、小さく首を横に動かした
「私は……」
「ヒナタ、行かないの?」
「うん、私はお家で待ってる」
テンションの低いヒナタに、不思議そうに問いかけるアカリにそう返事をすると、レイナから離れてアカリの腕を掴んだ
「アカリ、行こう」
腕を掴んだまま無理矢理引っ張って食堂に出ていったヒナタ。廊下から、アカリの叫ぶ声が響いて聞こえてくる
「ちょっと……。ヒナタ、アカリ!」
慌てて二人の後を追いかけてるレイナ。バタバタと騒がしくなった廊下とは違い、食堂は急に静かになった
「おや、不自然すぎたかな?」
二人の反応に苦笑いをしながら、アカリとヒナタが残していったパンを食べはじめるクロスの元に、ため息をつきながらノアがクロスの方に振り向いた
「昨日の今日ですからね。どうされますか?本当に行かれますか?」
話しかけられて、一瞬ノアの方を見たクロス。すぐに目をテーブルに置かれたおかわり用のパンに向けて、クスッと笑いながら、手を伸ばした
「予定ではな。だが、無理矢理連れていっても良いことはなさそうだな。様子を見ながら動こうか。その為にも、美味しいご飯をちゃんと食べようか」
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