光と影のシンフォニア

シャオえる

文字の大きさ
上 下
10 / 70

10. みんなの想像を越えて

しおりを挟む
「これは、なかなか……」
「想像以上……ですね」
「ヒナタとアカリが一緒に唄っていたからな。その影響もあるだろう」
 暗い扉の中に入っていたクロスとノアは、険しい表情でヒナタの本を見ていた
「どうしますか?私達の手に追えなくなるかもしれませんが……」
「構わん。続けよう」
 そう言うと一つ深呼吸をして、気持ちを落ちつかせはじめたクロス。同じくノアも大きく深呼吸をした







「ねえ、お母様。三時のおやつは、何にしましょうか」
 その頃、たくさん眠って元気になったアカリが、家から少し離れた街を機嫌良く歩いていた
「アカリ……。今、町に来たばかりでしょう?もう、おやつの心配するの?」
「だって、楽しみなんだもん。ねえ、ヒナタ」
 レイナに返事をしながらヒナタの方に振り向くと、人混みの中に紛れそうな程、アカリ達の後ろを家政婦と一緒にゆっくりと歩くヒナタがいた。慌てて駆け寄ってくアカリ。ヒナタの側に着く前に、その場にペタンと座ってしまった

「ヒナタ?どうしたの?大丈夫?」
 座り込んだヒナタを支える家政婦達を押し退けて、ヒナタの顔を見ようと覗き込むアカリ。ヒナタもアカリに気づき、ゆっくりと顔を動かした
「アカリ、お父様が……」
「お父様が、どうしたの?」
 アカリに何かを伝えようと、ゆっくりと口を動かすが、力が入らず声は出ない。アカリがヒナタの声を聞き取ろうと顔を近づけた時、力が抜けたようにヒナタの腕がペタンと落ちた
「ヒナタ!」
 グッタリとしているヒナタの体を揺らして慌てるアカリ。
二人の様子を見ていたレイナや家政婦達もヒナタに駆け寄ってく
「ヒナタ!ヒナタ!」
 抱き抱えながら名前を呼び続けるアカリの様子に気づいた通行人の人達が、ざわつきはじめている
「……熱はないようね」
 と言うと、レイナの様子を泣きそうな顔で見ているアカリを見た
「すぐ帰りましょう。アカリ、いい?」
「はい!」
 アカリの返事を聞いて、立ち上がり家政婦達と話し始めたレイナ。その様子を見ていたアカリ。すると、ヒナタを抱きしめていた腕がそっと触れられて、ヒナタを見ると、少し意識が戻ったのか、うっすらと目を開けていた
「アカリ……」
 力無く、か細い声でアカリの名前を呼ぶヒナタ。思わず強く抱きしめた
「ヒナタ……大丈夫?」
「私の本、無くさないでね」
「えっ……。うん……」
 ヒナタの側に落ちていた本に気づいたアカリ。慌てて本を取って、無くさないようにぎゅっと強くだきしめた
「アカリ。ヒナタはどう?大丈夫そう?」
「うん、大丈夫と思う……」
 レイナに返事をしていると家政婦が側に来て、そっとヒナタを抱き抱えた。抱っこされていても起きないヒナタ。そのまま家路へと早歩きで進む家政婦と一緒に、不安そうな表情のアカリも少し小走りで、その後を追っていく



「レイナ様……」
 一足先に帰ってくアカリ達の後ろ姿を見て動かないレイナに、家政婦が声をかけた。他の家政婦達も心配そうにレイナの側に来ていた
「まだ大丈夫よ。アカリにはまだ影響が出ていないし」
「ですが……」
 レイナの言葉を聞いて家政婦が返事をしようすると、後ろにいないと気づいたアカリが、レイナと家政婦達に向かって
大声で叫んだ
「お母様、みなさん!早く行こう!」
 アカリの声に近くを歩いていた人達が、アカリに目を向けた。人々の視線も気にせず、大きく手を振り、レイナ達を呼び続けている姿を見て、ふぅ。と大きくため息をつくと、家政婦達にニコッと笑った
「大丈夫よ。あの子達には、本と唄があるのだから」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

義理の妹が妊娠し私の婚約は破棄されました。

五月ふう
恋愛
「お兄ちゃんの子供を妊娠しちゃったんだ。」義理の妹ウルノは、そう言ってにっこり笑った。それが私とザックが結婚してから、ほんとの一ヶ月後のことだった。「だから、お義姉さんには、いなくなって欲しいんだ。」

結婚三年、私たちは既に離婚していますよ?

杉本凪咲
恋愛
離婚しろとパーティー会場で叫ぶ彼。 しかし私は、既に離婚をしていると言葉を返して……

美しい姉と痩せこけた妹

サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――

ロリっ子がおじさんに種付けされる話

オニオン太郎
大衆娯楽
なろうにも投稿した奴です

妹しか愛していない母親への仕返しに「わたくしはお母様が男に無理矢理に犯されてできた子」だと言ってやった。

ラララキヲ
ファンタジー
「貴女は次期当主なのだから」  そう言われて長女のアリーチェは育った。どれだけ寂しくてもどれだけツラくても、自分がこのエルカダ侯爵家を継がなければいけないのだからと我慢して頑張った。  長女と違って次女のルナリアは自由に育てられた。両親に愛され、勉強だって無理してしなくてもいいと甘やかされていた。  アリーチェはそれを羨ましいと思ったが、自分が長女で次期当主だから仕方がないと納得していて我慢した。  しかしアリーチェが18歳の時。  アリーチェの婚約者と恋仲になったルナリアを、両親は許し、二人を祝福しながら『次期当主をルナリアにする』と言い出したのだ。  それにはもうアリーチェは我慢ができなかった。  父は元々自分たち(子供)には無関心で、アリーチェに厳し過ぎる教育をしてきたのは母親だった。『次期当主だから』とあんなに言ってきた癖に、それを簡単に覆した母親をアリーチェは許せなかった。  そして両親はアリーチェを次期当主から下ろしておいて、アリーチェをルナリアの補佐に付けようとした。  そのどこまてもアリーチェの人格を否定する考え方にアリーチェの心は死んだ。  ──自分を愛してくれないならこちらもあなたたちを愛さない──  アリーチェは行動を起こした。  もうあなたたちに情はない。   ───── ◇これは『ざまぁ』の話です。 ◇テンプレ [妹贔屓母] ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング〔2位〕(4/19)☆ファンタジーランキング〔1位〕☆入り、ありがとうございます!!

旦那様に離婚を突きつけられて身を引きましたが妊娠していました。

ゆらゆらぎ
恋愛
ある日、平民出身である侯爵夫人カトリーナは辺境へ行って二ヶ月間会っていない夫、ランドロフから執事を通して離縁届を突きつけられる。元の身分の差を考え気持ちを残しながらも大人しく身を引いたカトリーナ。 実家に戻り、兄の隣国行きについていくことになったが隣国アスファルタ王国に向かう旅の途中、急激に体調を崩したカトリーナは医師の診察を受けることに。

私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】

小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。 他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。 それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。 友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。 レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。 そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。 レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……

七年間の婚約は今日で終わりを迎えます

hana
恋愛
公爵令嬢エミリアが十歳の時、第三王子であるロイとの婚約が決まった。しかし婚約者としての生活に、エミリアは不満を覚える毎日を過ごしていた。そんな折、エミリアは夜会にて王子から婚約破棄を宣言される。

処理中です...