アリアノート

シャオえる

文字の大きさ
上 下
9 / 65

9. 騒がしさの正体

しおりを挟む
「これでよし。後は乾燥させて、それから……」
 ミオの練習を付き合った後、家に戻ってきたアリアは、すぐに部屋に籠りお城で貰った薬草を調合していた。ふと休憩がてらに窓を見ると、いつの間にか空は暗くかりかけていた
「お茶でも飲もうかな」
 そう呟くとお茶を用意するためにキッチンに行こうとした時、玄関の扉がバンッと勢いよく開く音が聞こえた
「アリア!ご飯持ってきたよ!」 
 ミオがおかずを入れたお皿をガチャガチャと鳴らして家の中に入ってくると、あたふたと急いだ様子でお皿をテーブルに置いた
「ありがとう。助かるよ」
 一人分にしては多いおかずの量を見て、ミオの分も合わせた二人分の分け皿を用意しようと食器棚に向かうが、ミオはまたバタバタと忙しそうに玄関の扉の方へと向かい、扉を開けて大声でアリアに声をかけた
「アリア、私もう帰るね」
「もう帰るの?一緒にご飯食べないの?」
「あの杖を使って魔術を使うのが楽しくってさ!また明日来るから、傷薬作っててね」
「わかった。あまり無理しないでね」
 ミオに返事をしながら手を振ると、ニコッと微笑み手を振り返したミオ。パタンと扉を閉じ、パタパタと走り帰っていく足音が聞こえなくなると、アリアが少し寂しそうに持ってきてくれたおかずを見た


「あっ、食べる前にそうだ」
 部屋に慌てて戻り、放っておいた薬草を見て、うんうんと頷くと、近くにあった薬草を手に取った
「これをこうして、それから……」
 乾燥した薬草を取り、手に持った薬草と合わせると、本棚から少し厚めの本を取り出し、合わせた薬草と交互に見て、またうんうんと頷き、そのまま夢中になってあれこれと調合をしていく


「よし、これも成功。明日、ミオに試してみようかな」
 新たな薬草を作り終え、ふぅ。と深呼吸をして呟く。机の上にぐちゃぐちゃに置かれた薬草の残りを見て、キッチンの方へと歩きだした
「後は頼まれた傷薬を、えーっと……」
 食器棚からカチャカチャと新しいコップを取りだしながら考え事をしていると、ふわりとそよ風が吹いてアリアの髪が少し揺れた
「窓、開けっぱなしだ!」
 薬草を乾燥させるために開けていた窓を閉め忘れていた事を思いだし慌てて部屋に戻り、窓を閉めようとした時、アリアの後ろから、はぁ。とため息が聞こえた

「つまんないの」
 声とため息に驚き振り向くと、本当につまらなさそうな顔をしたアクアがアリアの部屋の中をウロウロと動き見て回っていた。戸惑うアリアをチラッと見た後、今度は本棚から一冊取り出してパラパラとめくり読みはじめた
「こんな所に住んでるんだ。お母様ダメじゃないの。いつか言わなきゃ」
 本を本棚に戻しながらそう言うと、部屋の扉を開けリビングへと向かうとまたウロウロと動き見て回りはじめた
「あなたは、えーっと、確か……」
 慌ててアクアの後を追いかけてきたアリアが困った声で話しかける
「急に来てごめんなさい。ちょっと見てみたくて」
 アクアの方に振り向くことなくアクアが言うと、今度はキッチンや寝室を見たり、一通り家の中を見て回っていく。また薬草が置かれた部屋に戻ると、近くにあった薬草を一つ手に取ると、はぁ。とため息をついた
「薬草……。私はあまり好きじゃないんだよね。でも、だからこそなのかも」
「あの、ここに来ていいの?」
「ええ、心配はありません」
 アクアの後ろから声をかけたアリアに、フフッと笑って返事をすると、くるりと振り返りアリアを見ると、何も持っていなかったはずの右手に、今日ミオが買った同じような杖を持っていた。その杖の先をアリアに向けると、突然クラっと眩暈が起きて、バタンとその場に倒れてしまった。呼吸をしているのを確認すると、またフフッと笑って玄関の方へと歩きだし、扉を開けるとアリアがいる方の部屋を見て一人呟いた
「私の術にかかれば、魔力のないお姉ちゃんの記憶なんてすぐに消せるから。心配なんてないよ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

13歳女子は男友達のためヌードモデルになる

矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

処理中です...