月夜、リコレクション

7. もっと寂しくなる前に

「今日は一人？」
　ノエルがニコッと微笑み声をかけると、青い髪の女の子が少しうつ向いてゆっくりと頷いた
「私を探していたの？」
　またノエルが聞くと、またゆっくりと頷く。それを見て壁にもたれ少し残念そうにため息をついた
「そうなんだ。いつも魔術ですぐ見つかっていたから、私を探すなんてアオイらしくないね」
　ノエルの言葉を聞いて、青い髪の女の子がうつ向いていた顔を少し上げ、ぎゅっと両手をつかんで一歩前に出た
「私はアオイって名前なの？」
「そうだね、たぶん」
　二人の会話が終わり、コツンと女の子が一歩前に出た足の音が地面に響いた瞬間、お昼過ぎで快晴で明るかった空が一瞬で暗くなった。騒がしかった外をを歩き話す人達の声も消え、ノエルの前には月明かりで出来た自身の影が見えた


「月が綺麗……」
　青い髪の女の子が少し顔を上げると、ノエルの後ろに満月が重なって見えた
「綺麗だよね。でも綺麗で眩しすぎて、私はもうちゃんと見れないよ」
「そうなの？それは寂しいね」
「アオイのせいだよ」
「……私のせいなの？」
　顔を横に動かしながらノエルに聞き返すが、ノエルは返事をすることなく足で地面をトンッと軽く鳴らした。すると、一瞬で暗かった空が明るくなり、また学校の周りが騒がしくなった

「もうあなたと戦いたくないから、帰って」
　楽しそうに会話をしながら校舎の外でご飯を食べるクラスメイトの姿を見ながらノエルが言うと、アオイと呼ばれた女の子の一歩前に出ていた足を少し引いた
「また会える？」
「会えるけれど、しばらくは会わなくてもいいかな」
「……そっか。残念」
　ぎゅっと手を胸の前に当て、寂しそうな顔をする女の子の様子を見ていたノエルが瞬きをした。目を閉じたほんの一瞬の隙にその女の子の姿が消えていなくなっていた
「はあ。一気に疲れた……」
　ペタンと座り壁にもたれると、鞄から残していたパンを取り出し一口食べると少し雲が増えてきた空を見上げた
「もう少し、隠れていてくれないと私の気持ちが落ち着かないんだけどなぁ……」