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シャオえる

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106. 気分を変えて一つだけ

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 レイの部屋から出た後、再びミクのいる医務室に戻ってきたリコ達。まだ、起きる様子のないミクを見ながら、ゆっくりと時間が過ぎていく
「あの……ミクのお母さんは……」
 リコがそばにいた看護師に問いかけると、声をかけられ振り向くと、不安そうな表情のリコを見てニッコリと微笑んだ
「大丈夫ですよ。もう少ししたら皆さんも会いに行けると思いますが……どうしますか?」
 看護師の返事を聞いて、ミクの方に向き直すと、少しうつ向いたリコ
「ミクが起きてから……会おうかな……」
 と、元気のない小さな声で返事をすると、隣にいるクルミとモモカが目を合わせ、ふぅ。とため息ついた

「それより皆さん、少し休まれては?あまり食事も取れてないようですし……」
 ずっとミクのそばから動かない三人に、心配になった看護師がリコ達に提案しても、リコはあまり浮かない表情
「ありがとうございます。でも……」
 ミクを見たまま返事をするリコ。その返事に少し困った表情になった看護師と、二人の会話を聞いていたクルミが突然立ち上がり、リコの手をつかんで引っ張った
「リコ、ここは任せて行こう」
「でも……」
「ほら、行くよ。そんな顔でミクと会わせたくないもの」
 動く気のないリコをモモカと一緒に引っ張り、部屋にいた人達が心配そうに見守る中、医務室の入り口へと歩いていく
「少し出ます。ミクのこと宜しくお願いします」
 無理矢理リコをモモカと一緒に部屋から出して、クルミが医師達にペコリと頭を下げた。三人の様子を見ていた医師達は頷き、看護師達は優しく微笑んだ
「もちろんです。何かあればすぐお呼びしますね」





「……どうぞ」
 その頃、カフカの部屋では誰かが訪ねていた。返事と共に、部屋の扉が開くと、ニコニコと笑うレイが部屋の中に入ってきた
「やあ、機嫌はどう?」
 何やらたくさんの荷物を持ってきたレイを見て、机に向かい何かを書いていた手を止め、ため息ついた
「最悪だな。怪我は直してもらったが、なかなか気分が上がらん」
「奇遇だねぇ。僕もなんだ」
 と、楽しそうに話をするレイ。ガサゴソと荷物から取り出したのは、カフカの好きなお酒。グラスに注ぐと、レイの様子を見てたカフカに差し出した
「一つ飲んで、気分を変えないかい?」
「本部内で飲むのは禁止だぞ」
 機嫌よく差し出すレイに呆れながら答えてると、無理矢理グラスを渡し、新しく取り出したグラスにもお酒を注ぎだした
「いいのいいの。どうせ書くものが、一つや二つの増えるくらい大差ないでしょ?」
「まあ、それはそうだな」
 レイの明るく話してくる様子と、好きなお酒に負けて、レイの向かいのソファーに座ったカフカ。先に一気に飲み干し、ふぅ。と一息ついた

「あの子はどうしている?」
「今も寝ているけれど、さっき一瞬だけ起きたらしいよ」
 レイも飲みながらカフカに返事をすると、レイに飲み干したグラスを手渡した
「そうか。まぁ、新たな魔術は私とて疲れるからな」
「本当だ。新たな魔術は迷惑なものだな」
 と、カフカとは違う声がレイのすぐ後ろから、突然聞こえてきた。声のする方に振り向くと、カフカよりも機嫌の悪そうなレグスが二人を見ていた
「あれ?いつからいたの?」
 レグスの姿を見るなり嬉しそうに話しかけるレイ。明るいレイの笑顔を見て、更に機嫌の悪そうな表情になった

「ずっといたよ。奥の部屋で寝ていたんだ」
「そうなんだ、早く言ってよ」
 カフカとレイが話をしていると、テーブルに置かれたレイのグラスを取り飲み干した
「おかわりを貰おうか……」
 グラスをレイに差し出して、まだ機嫌の悪そうに隣に座ったレグスを、呆れながらカフカが見ている。グラスを受け取り継ぎ足し、話しかけながらレグスにお酒が入ったグラスを渡した
「久々に三人ゆっくり揃ったんだから、反省会も兼ねて思い出話でもはじめようか」
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