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シャオえる

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81. 会いたい人は記憶の中

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「おはようございます!みなさん、起きてください!」
 朝、一番に目が覚めたミク。隣で熟睡しているリコ達に大声と、体を揺らしたり、叩いたりと三人をムリヤリ起こしていた
「……なに?」
「まだ、朝早いよ……」
「ミクちゃん、どうしたの?」
 三人ともミクに起こされて、寝ぼけながら元気一杯のミクに話しかけると、ニコニコと笑顔で、リコにぎゅっと抱きついた
「今日は、良いお天気です!お出掛けしましょう。街がダメなら本部の探索でも!」
 リコ達のテンションとは違いご機嫌なミクの頭を撫でながら、まだ頭が回らずボーッとしているリコ。クルミとモモカも、リコとミクの様子を見ながら、少しボーッとしている

「ミク……何で朝からこんなに元気なの……」
「今日は、良いことがありそうな気がするんです。だから、どこかに行きたいなって」
 リコの質問に、眩しい日差しが入る窓を指差しながら話すミク。起きてすぐからミクが機嫌の良い理由を知っても、リコ達はまだ眠たい気持ちが強く、ベッドから降りずに、まだボーッとしてしている
「でも、あまり動けないし。どうしようか……」
「レイさんに聞いてみる?それとも、レグスさんの方が良いのかな?」
「うーん……どうだろうね……」
 寝ぼけながら話を進めても結局、出掛けるか誰に聞くかも決められず、部屋の中でのんびり過ごすミクとリコ達。三人もやっと目が覚めてきた頃、誰かか訪ねてきたのかコンコンと扉の叩く音が部屋に響いた。モモカが部屋の扉を開けると、ミクの元気一杯の声に、


「全員、起きてるか」
「おはようございます!」
「……おはよう」
 レイの姿を見るなり、大声で挨拶をするミク。驚きで小声で返事をしたレイを、ニコニコとミクが見ている
「なんだ機嫌が良いな」
 元気で笑うミクを見て、その笑顔につられて一緒に笑うレイ。二人のやり取りを見ていたリコが苦笑いで頷いた
「起きてからずっと、こうなんです……」
 リコがレイに話していると、ミクがパタパタと足音をたてて、レイのもとに駆け寄っていく

「一緒にお出掛けしませんか?お話も……」
 機嫌よく話しかけ、レイの右手を両手でつかんだミク。その瞬間、笑顔だったミクの顔が段々と険しい顔に変わっていく
「ミク?どうしたの?」
 レイの手をつかんだまま動かず、リコの声かけにも返事もしないミク。ミクの声で騒がしかった部屋が、急に静かになった。不穏な雰囲気が流れ、リコ達がミクの様子を見ていると、ベッドの側にあるテーブルに置いていたミクの本が、突然パラパラとページが捲りはじめた。突然の出来事にリコ達が驚き戸惑っていると、ミクがレイに叫ぶように話はじめた

「お父様に会ったのですか?」
 レイの腕をつかんだまま、叫んだミク。戸惑いが増し動けないリコ達と、手を強くつかんで顔を見るミクを無表情で見つめるレイ。いくら問いかけても返事をしないベッドレイにミクの声がどんどん大きくなっていく

「いつ会ったのですか?お母様は?お父様は……」
 何も言わないレイに叫び声をあげ、問いかけ続けるミクに、慌ててリコがミクの後ろからぎゅっと抱きしめた
「ミク、落ち着いて……」
 と、優しく声をかけると、レイの手を離し、後ろにいるリコの方に驚いた表情で振り返った
「みなさん、お母様に会ったんですね!お父様も!」
 とリコの手を取り、叫ぶミクに、何が起きたか分からないリコ達は戸惑いうろたえている
「なに?急に……」
 クルミとモモカもミクのもとに駆け寄り、パニックになりつつあるミクを支えていると、レイがテーブルにある本を手に取り、深くため息をついた

「記憶を見る魔術か……」
 本には前に見たときよりも大分書き進められ、白紙の部分は半分になりそうな本をパタンと閉じた。それと同時に、ミクも力尽きたように、フラッと倒れてしまった
「ミク!」
 リコの腕のなかで、目を閉じ動かないミクに焦りだすリコ達。叫び声に気づいたレイは冷静にミクの様子を見ている
「かなりの高等魔術を急に使ったんだ。力を使い果たしたのだろう。休めば大丈夫だ」
 医師を呼ぼうとしたモモカを呼び止め、ソファーに座るレイ。リコ達がゆっくりとミクをベッドに移動させ、布団をかけている様子を見ながら、ミクの本を片手に持ち、ふぅ。と一つため息ついた
「それより三人とも、飛ばされた後の話を聞こうか」
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