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75. 大好きな人達の為に
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「……ど、どうぞ」
リコの服をつかみながら、恐る恐るレグスに絵本を渡すミク。不安そうなミクやリコ達の様子とは裏腹に、ニコッと笑って絵本を受けとるレグス
「ありがとう」
とミクに言った後、少し離れて絵本をパラパラと開いて最後まで見た後、本を触れたりと絵本の中を確認していく
「確かに、何も起こらないようだな」
ふぅ。とため息ついて、リコに絵本を渡すレグス。リコがミクに絵本を渡すと、安心したように、強く絵本を抱きしめたミク。そんなミクを見て、レグスの表情が少しずつ変わっていく
「なら、仕方あるまいか」
と、ポツリと呟くとミクの持っている本をレグスが指差した
「その本を持ってこい」
「現時刻をもって、レグス副本部長が命ずる。その娘の本を持ってこい」
語気を強めリコ達に命令をするレグス。その命令を聞いて、戸惑うリコ達。不穏な雰囲気に、ミクが少し泣きそうになっている
「で、ですが……」
ミクを見たまま動かないリコ達に、苛立ったレグスが、何も言わず動きもしないレイに話しかけた
「出来ぬというのか。レイ、本部の隊員として、どういう教育をしてきたのかね?」
声を荒らげ叫ぶレグスに、リコの服をぎゅっと強くつかんで怯えるミク。モモカが落ち着かせようと、ミクの背中をそっと擦っていると、突然、ミクがレグスの方に向かって走り出した
「ど、どうぞっ!」
バッと勢いよくレグスに本を差し出すミク。突然のミクの行動に戸惑うリコ達。レイも止めにはいることが出来ず、ミクの様子を見つめている
「本をお貸しします。だから、みなさんのこと怒らないでください」
恐る恐るレグスに話し、本を差し出しているミクの姿に、リコが泣きそうになっている
「……ミク」
クルミがリコをぎゅっと抱きしめていると、レグスがミクの背に合わせるように、少し屈んで本を受け取り微笑んだ
「ありがとう。優しい子だね」
レグスに本を渡してすぐ、モモカのもとに駆け寄り、強く抱きついたミク。ビクビクと体が怯えて、持っていた絵本がパタンと床に落ちた
「なるほど……。これは、中々難しい魔術が書いてあるな……」
静かな魔術練習場に響く、本をめくる音とレグスの声に、不安が募っていくミクやリコ達。三人の不安や、レグスを見て見ぬふりをしているレイをよそに、レグスは嬉しそうに本を読んでいる
「本部の上位魔術師でも、そう簡単には扱えはしないだろうな」
何やら呟きながら、本に書かれた魔術を見ているレグスの姿を見ていたリコ達もヒソヒソと話はじめた
「あの本、何が書いてあるの?」
「さあ?」
「そういや、本の中って見たことないね」
三人が話していると、本を一通り読み終えたレグスは、まだ壁にもたれて、レグスの様子を見ているレイに話しかけた
「では、レイ。この本を使った場合はどうなる?」
「わかりません。一族以外のものが、本を使用をしたのを見たことはないので……」
と、レイが答えると、再び本を読みはじめたレグス。書かれている魔術を見てクスッと笑った
「そうか、なら……」
と言うと、本に書いてある文字を呟きはじめたレグス。すると、少しずつ魔術練習場の雰囲気が変わっていく。戸惑うミクやリコ達をよそに、本の魔術を使っていることに気づいたレイがリコ達に叫んだ
「その本を取れ!早く!」
「はっ……はいっ!」
レイに促され、リコが本に手を伸ばし、レグスが持つ本をガシッと掴んだ。だが、魔術を止めることには間に合わず、
読み終えてしまったレグスによる本の魔術は、レグスの足元に魔方陣が現れ光を放ち、本を掴んだリコだけでなく、本を取ろうとして側にいたクルミと、ミクの側にいたモモカも共に消え去ってしまった
「ほう、素晴らしいな。読むだけで、こうも簡単に高度魔術を使えるとは」
魔術が使えて嬉しそうに高らかに叫ぶレグスの声が、魔術練習場に鳴り響く。その一方、抱きしめていたモモカがいなくなり、ガクンと腕を落とすミク。周りを見渡してリコとクルミの姿を探しはじめた
「リコさん……クルミさん、モモカさん……どこに……」
三人が魔術練習場にいる気配がないことに気づき、泣きはじめたミク。声を殺して、落とした絵本を取ってグスグスと泣いていると、レイがミクの前に立って泣いているミクを見ていた
「行くぞ。早く立て」
「えっ。ど、どこに……」
「三人を探しにだ。君の本も持って消えている。急いで探さないと……」
と言うと、ミクを置いて部屋の入り口へと歩いていくレイ。慌てて涙を拭いレイの後を追うミク。その二人の後ろ姿を見ているレグスが、レイに向かって声をかけた
「そうだな。では、任務として探してもらおうか。楽しみにしているよ」
リコの服をつかみながら、恐る恐るレグスに絵本を渡すミク。不安そうなミクやリコ達の様子とは裏腹に、ニコッと笑って絵本を受けとるレグス
「ありがとう」
とミクに言った後、少し離れて絵本をパラパラと開いて最後まで見た後、本を触れたりと絵本の中を確認していく
「確かに、何も起こらないようだな」
ふぅ。とため息ついて、リコに絵本を渡すレグス。リコがミクに絵本を渡すと、安心したように、強く絵本を抱きしめたミク。そんなミクを見て、レグスの表情が少しずつ変わっていく
「なら、仕方あるまいか」
と、ポツリと呟くとミクの持っている本をレグスが指差した
「その本を持ってこい」
「現時刻をもって、レグス副本部長が命ずる。その娘の本を持ってこい」
語気を強めリコ達に命令をするレグス。その命令を聞いて、戸惑うリコ達。不穏な雰囲気に、ミクが少し泣きそうになっている
「で、ですが……」
ミクを見たまま動かないリコ達に、苛立ったレグスが、何も言わず動きもしないレイに話しかけた
「出来ぬというのか。レイ、本部の隊員として、どういう教育をしてきたのかね?」
声を荒らげ叫ぶレグスに、リコの服をぎゅっと強くつかんで怯えるミク。モモカが落ち着かせようと、ミクの背中をそっと擦っていると、突然、ミクがレグスの方に向かって走り出した
「ど、どうぞっ!」
バッと勢いよくレグスに本を差し出すミク。突然のミクの行動に戸惑うリコ達。レイも止めにはいることが出来ず、ミクの様子を見つめている
「本をお貸しします。だから、みなさんのこと怒らないでください」
恐る恐るレグスに話し、本を差し出しているミクの姿に、リコが泣きそうになっている
「……ミク」
クルミがリコをぎゅっと抱きしめていると、レグスがミクの背に合わせるように、少し屈んで本を受け取り微笑んだ
「ありがとう。優しい子だね」
レグスに本を渡してすぐ、モモカのもとに駆け寄り、強く抱きついたミク。ビクビクと体が怯えて、持っていた絵本がパタンと床に落ちた
「なるほど……。これは、中々難しい魔術が書いてあるな……」
静かな魔術練習場に響く、本をめくる音とレグスの声に、不安が募っていくミクやリコ達。三人の不安や、レグスを見て見ぬふりをしているレイをよそに、レグスは嬉しそうに本を読んでいる
「本部の上位魔術師でも、そう簡単には扱えはしないだろうな」
何やら呟きながら、本に書かれた魔術を見ているレグスの姿を見ていたリコ達もヒソヒソと話はじめた
「あの本、何が書いてあるの?」
「さあ?」
「そういや、本の中って見たことないね」
三人が話していると、本を一通り読み終えたレグスは、まだ壁にもたれて、レグスの様子を見ているレイに話しかけた
「では、レイ。この本を使った場合はどうなる?」
「わかりません。一族以外のものが、本を使用をしたのを見たことはないので……」
と、レイが答えると、再び本を読みはじめたレグス。書かれている魔術を見てクスッと笑った
「そうか、なら……」
と言うと、本に書いてある文字を呟きはじめたレグス。すると、少しずつ魔術練習場の雰囲気が変わっていく。戸惑うミクやリコ達をよそに、本の魔術を使っていることに気づいたレイがリコ達に叫んだ
「その本を取れ!早く!」
「はっ……はいっ!」
レイに促され、リコが本に手を伸ばし、レグスが持つ本をガシッと掴んだ。だが、魔術を止めることには間に合わず、
読み終えてしまったレグスによる本の魔術は、レグスの足元に魔方陣が現れ光を放ち、本を掴んだリコだけでなく、本を取ろうとして側にいたクルミと、ミクの側にいたモモカも共に消え去ってしまった
「ほう、素晴らしいな。読むだけで、こうも簡単に高度魔術を使えるとは」
魔術が使えて嬉しそうに高らかに叫ぶレグスの声が、魔術練習場に鳴り響く。その一方、抱きしめていたモモカがいなくなり、ガクンと腕を落とすミク。周りを見渡してリコとクルミの姿を探しはじめた
「リコさん……クルミさん、モモカさん……どこに……」
三人が魔術練習場にいる気配がないことに気づき、泣きはじめたミク。声を殺して、落とした絵本を取ってグスグスと泣いていると、レイがミクの前に立って泣いているミクを見ていた
「行くぞ。早く立て」
「えっ。ど、どこに……」
「三人を探しにだ。君の本も持って消えている。急いで探さないと……」
と言うと、ミクを置いて部屋の入り口へと歩いていくレイ。慌てて涙を拭いレイの後を追うミク。その二人の後ろ姿を見ているレグスが、レイに向かって声をかけた
「そうだな。では、任務として探してもらおうか。楽しみにしているよ」
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