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シャオえる

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59. 失ったならば、新たなものを

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「レイ、君にはどう処罰を与えようか」
 会議室の扉を開けてすぐ、レイの姿を見るなりそう呟いた老人の言葉に、苦笑いしながら空いている椅子に座った
「来て早々、嫌な話をしますね」
「我々の未来を潰したのだ。当然だろう」
 睨まれながら声をかけられているのも気にせずに、テーブルに置かれた資料を読みはじめたレイ。舌打ちやヒソヒソと話す声も聞こえて、会議室に嫌な雰囲気が流れだす

「……それで、これからどうする?」
 と、会議が再開すると、会議室が少しざわつきはじめ、あちらこちらからと、話し声が聞こえてくる
「あの娘は、あの森にある家に暮らさせるのか?」
「いや、さすがに両親もまだ見つからぬ今は、ここに残すべきと思うが……」
「レイ、話を聞いているのか?」
 騒ぎの中、黙々と資料を読んでいたレイに隣にいた老人が声をかけると、少し顔をあげクスッと笑う
「ええ、聞いてますよ」 
「誰のせいでわざわざ集まっていると思っているんだっ!」
 その笑顔に苛立った老人がレイに向かって叫ぶ。騒がしかった会議室が、一瞬にして静かになった

「……しかし、本がなくなった今、我々の願いはどうなる?」
「新たな本はないのか?」
「あったとしても、あの娘の力がいる。本と、うたの力を兼ね備えた力が……」
 静けさが一変、すぐに騒がしさが戻り、個々で話し合いが進む。騒がしさだけが大きくなり会議の進歩が何一つ進まない中、レイともう一人、誰とも会話に参加せずに考え込んでいる人物がいた


「新たな本か……」
 レイから少し離れたテーブルの真ん中に座る、周りにいる老人達より少し若め男性が、レイに話をかけた
「レイ、新たな本を作り出す方法はなんだね?」
「さあ?私に聞かれても知りませんよ」
 質問に安易に答えるレイに、近くにいた老人達がレイを睨む。だが、男性は余裕の表情で、レイにまた話返す
「ならば、レイ。あの娘には、少々頑張ってもらわねばならないが……」
「なにをするのです?」
 急に声をあげ話はじめたレイに、クスッと笑う男性。二人のやり取りに、みな息を呑み見守っている

「あの娘に、本を新たに作ってもらおう。新たな本を探すよりも手っ取り早い」
「それは……!」
 男性の提案を聞くなり、ガタンと音をたて椅子から立ち上がったレイに、一斉に皆が振り向いた。不敵に笑う男性に、レイがキッと睨みつけた
「なんだ、レイ。なにか問題でも?」
「……いえ」
 返事を隣に聞こえない程の微かな声で返事をすると、ゆっくりと椅子に座り直した。緊迫した時間がまだ流れる中、重鎮らしき男性が、入り口付近に居た隊員達に視線を向けると、その視線に隊員達がみな、一瞬ビクッと怯えた

「ときに、その娘はどこにいる?」
「お昼ご飯を食べ終え、リコさん達と部屋にいると思いますが……」
 と、女性隊員が答えるとレイを一瞬見た。見られたことに気づいたレイと目線が合い、またフッと笑うと、まだ怯えている隊員達に命令をした
「ならば、早急に娘をこちらに連れてくるように……。もちろん、本も一緒に……」
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