ぱすてるランページ

シャオえる

文字の大きさ
上 下
52 / 109

52. 私の得意なこと

しおりを挟む
「みなさんの魔術を見せてください!」
 お昼ご飯を食べ終え、魔術練習場に着くなり、勢いよく大声でお願いするミク。そのお願いに三人顔を見合わせ、困った表情で、話し合いをはじめた
「えーと……。大丈夫かな?」
「大丈夫じゃない?」
「レイさんにバレたら怒られるけど……」
 あまり乗り気じゃないクルミとモモカが話をしていると、不安そうに返事を待つミクを見て、リコがニッコリ笑ってミクをぎゅっと抱きしめた
「まあ、なんとかなるよ。最近、術も使ってなかったし。運動しなきゃね」
 と、リコが話すと嬉しそうに抱きしめ返すミク。二人の様子を見たクルミとモモカが顔を見合わせて少し笑ってため息をついた

「じゃあ、モモカと一緒に部屋の端にいてね」
「……はいっ!」
 モモカと手を繋いで、部屋の入り口近くの端の方に移動するミク。二人が移動したのを確認すると、ふぅ。と深く深呼吸するクルミとリコ。気合いを入れ、始まった二人の魔術の練習風景に、近くまで来る水や炎の勢いに圧倒されながらも、目を輝かせ二人の戦う姿に見入っていく

「本当にスゴいですね。お母様やお父様も無理と言っていたのに……。皆さんはどうやって魔術を使っているのですか?」
「うーん。どう言ったらいいのかな……」
 と、モモカに問いかけると、すぐに答えられず少し困った表情で悩みはじめた
「こうしようとか、動いてほしいって強く願う……かな?」
「……強く願うですか?」
 不思議そうに聞き返すミクに、クスッと笑って頷くモモカ。二人の練習の様子を見ながら話はじめた
「そう。でも、私は二人みたいに炎を扱えないし、水も動かせないの。みんな得意なことが違うから、ミクちゃんにも飛ぶ以外に得意なことがあるのかも」
「私が得意なこと……」

 モモカに言われて、ふと部屋に置いてきた絵本をも思い出したミク。ぎゅっと胸に手を当て目を閉じ、絵本と無くなった本のこと、唄うなと言われているうたの事を思いだし、うっすらと目を開けると、無言で歩きはじめたミク。慌てて追いかけ止めようとするモモカを無視して、リコとクルミの方に歩いていく

「ミク、ここにいたら、危ないよ」
 モモカの声に気づいて、練習を止めたリコ。クルミもリコの側に駆け寄り、リコの前で立ち止まり顔をうつ向けているミクを三人が心配そうに見ていると、ミクがポツリと呟いた
「強い魔力……。私の力はもっと……」
 と、その瞬間、両手を前に広げると、ミクの周りに光が現れミクの体に隠れているはずの本が現れた
「本が……!」
 リコが叫び、本を手に取ろうとするミクを止めようと、動き出した時、ユラユラと地面が大きく揺れはじめ、天井も崩れはじめてきた。天井から瓦礫が落ちはじめ、大きな瓦礫がミク達の真上に落ちてきた


「みんな、大丈夫?!」
「どうにか……」
「助かった……モモカ、ありがとう」
 ギリギリ、瓦礫がぶつかりそうなの所で、モモカの防御の術により怪我もなく瓦礫の山から出てきたリコ達。本部から、警報を伝える音が鳴り響き、大勢の隊員達がリコ達のもとに大急ぎで駆け寄ってくる
「ミクはどこ?」
 側にいたはずのミクがいないことに気づいて、辺りを見渡すリコ達。すると、三人の少し離れた瓦礫の山の上で、本を開き、見つめているミクの姿を見つけた
「私の魔術は本……全て書き続けないといけない……」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。 飲めないお酒を飲んでぶったおれた。 気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。 その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった

外れスキル【削除&復元】が実は最強でした~色んなものを消して相手に押し付けたり自分のものにしたりする能力を得た少年の成り上がり~

名無し
ファンタジー
 突如パーティーから追放されてしまった主人公のカイン。彼のスキルは【削除&復元】といって、荷物係しかできない無能だと思われていたのだ。独りぼっちとなったカインは、ギルドで仲間を募るも意地悪な男にバカにされてしまうが、それがきっかけで頭痛や相手のスキルさえも削除できる力があると知る。カインは一流冒険者として名を馳せるという夢をかなえるべく、色んなものを削除、復元して自分ものにしていき、またたく間に最強の冒険者へと駆け上がっていくのだった……。

異世界大使館雑録

あかべこ
ファンタジー
異世界大使館、始めますhttps://www.alphapolis.co.jp/novel/2146286/407589301のゆるゆるスピンオフ。 本編読まないと分かりにくいショートショート集です。本編と一緒にお楽しみください。

転生令嬢は庶民の味に飢えている

柚木原みやこ(みやこ)
ファンタジー
ある日、自分が異世界に転生した元日本人だと気付いた公爵令嬢のクリステア・エリスフィード。転生…?公爵令嬢…?魔法のある世界…?ラノベか!?!?混乱しつつも現実を受け入れた私。けれど…これには不満です!どこか物足りないゴッテゴテのフルコース!甘いだけのスイーツ!! もう飽き飽きですわ!!庶民の味、プリーズ! ファンタジーな異世界に転生した、前世は元OLの公爵令嬢が、周りを巻き込んで庶民の味を楽しむお話。 まったりのんびり、行き当たりばったり更新の予定です。ゆるりとお付き合いいただければ幸いです。

水しか操れない無能と言われて虐げられてきた令嬢に転生していたようです。ところで皆さん。人体の殆どが水分から出来ているって知ってました?

ラララキヲ
ファンタジー
 わたくしは出来損ない。  誰もが5属性の魔力を持って生まれてくるこの世界で、水の魔力だけしか持っていなかった欠陥品。  それでも、そんなわたくしでも侯爵家の血と伯爵家の血を引いている『血だけは価値のある女』。  水の魔力しかないわたくしは皆から無能と呼ばれた。平民さえもわたくしの事を馬鹿にする。  そんなわたくしでも期待されている事がある。  それは『子を生むこと』。  血は良いのだから次はまともな者が生まれてくるだろう、と期待されている。わたくしにはそれしか価値がないから……  政略結婚で決められた婚約者。  そんな婚約者と親しくする御令嬢。二人が愛し合っているのならわたくしはむしろ邪魔だと思い、わたくしは父に相談した。  婚約者の為にもわたくしが身を引くべきではないかと……  しかし……──  そんなわたくしはある日突然……本当に突然、前世の記憶を思い出した。  前世の記憶、前世の知識……  わたくしの頭は霧が晴れたかのように世界が突然広がった……  水魔法しか使えない出来損ない……  でも水は使える……  水……水分……液体…………  あら? なんだかなんでもできる気がするわ……?  そしてわたくしは、前世の雑な知識でわたくしを虐げた人たちに仕返しを始める……──   【※女性蔑視な発言が多々出てきますので嫌な方は注意して下さい】 【※知識の無い者がフワッとした知識で書いてますので『これは違う!』が許せない人は読まない方が良いです】 【※ファンタジーに現実を引き合いに出してあれこれ考えてしまう人にも合わないと思います】 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるよ! ◇なろうにも上げてます。

黒髪の聖女は薬師を装う

暇野無学
ファンタジー
天下無敵の聖女様(多分)でも治癒魔法は極力使いません。知られたら面倒なので隠して薬師になったのに、ポーションの効き目が有りすぎていきなり大騒ぎになっちまった。予定外の事ばかりで異世界転移は波瀾万丈の予感。

異世界転生令嬢、出奔する

猫野美羽
ファンタジー
※書籍化しました(2巻発売中です) アリア・エランダル辺境伯令嬢(十才)は家族に疎まれ、使用人以下の暮らしに追いやられていた。 高熱を出して粗末な部屋で寝込んでいた時、唐突に思い出す。 自分が異世界に転生した、元日本人OLであったことを。 魂の管理人から授かったスキルを使い、思い入れも全くない、むしろ憎しみしか覚えない実家を出奔することを固く心に誓った。 この最強の『無限収納EX』スキルを使って、元々は私のものだった財産を根こそぎ奪ってやる! 外見だけは可憐な少女は逞しく異世界をサバイバルする。

巻き込まれた薬師の日常

白髭
ファンタジー
商人見習いの少年に憑依した薬師の研究・開発日誌です。自分の居場所を見つけたい、認められたい。その心が原動力となり、工夫を凝らしながら商品開発をしていきます。巻き込まれた薬師は、いつの間にか周りを巻き込み、人脈と産業の輪を広げていく。現在3章継続中です。【カクヨムでも掲載しています】レイティングは念の為です。

処理中です...