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1章 プロローグ

1話 世界の終わり

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 俺の名前は、本橋幸貴。

 俺の人生は、物心ついたときからクソだった。
 母親は病弱で、入退院を繰り返し、親父は放任主義と言えば、聞こえは言いが子供の面倒すら見ず、子供の世話で、毎日親は押し付け合いの喧嘩ばかりしていた。
 結局少2の頃に親は離婚し、親父の方に引き取られた俺は、親父に面倒を見て貰うことは当然のようになく、ずっと祖父母に預けられて幼少気を過ごしていた。
 祖父母は、親に比べればいくらかましかも? とは思うが、あの親にしてこの祖父母有りといえば、まぁ~わかるだろうか…

 元々年金暮らしでもあり、それほど裕福でもなく、生活に余裕があるわけでも無いところへ、子供とはいえ、食費やその他諸々の生活費がかさむわけで、あの親のせいで仕方なく預かっているというのが、顔を見れば分かるような気がする。

 後になって知ったが、あのクソ親父は、預けるだけで養育費等一切入れなかったらしい、それじゃ~誰だって嫌な顔の一つもするわな…

 中学に入れば、学生生活くらいは、少しはましになるか? とも思ったが、家が貧乏なことからイジメの対象になり、そこから登校拒否で家に引きこもり、ゲームばかりやっていたら、3年間はあっという間に過ぎていった。

 当然、勉強などろくにやってない俺は、結局地元にある最低ランクの高校にすら、あっさり落ちた。

 二次募集で、隣町にある、定員割れを起こしている定時制の高校を受ける。
 理由としては、やはり就職するなら、どこの高校だろうと、高卒は高卒、中卒よりは良いだろうと、言うだけなのだが。
 定員割れを起こした定時制は試験などなく、面接をさらっと受けるだけで入れた。

 こうして何とか高校にはいるも、問題がまた起きる。
 前にも言ったが、家は貧乏なのだ。
 祖父母は働いておらず、国民年金を最低給貰って生活しているだけの人。
 小学や中学の給食費や諸経費くらいは、嫌な顔をしながらも払ってくれてはいたが、高校はそうはいかない。
 学費がそれなりに高いのだ。
 一般家庭なら安いくらいかもしれないが、毎月数万の学費を払うだけの余裕は全くない。

 流石の俺も、これ以上祖父母に、迷惑をかけたくないと言う思いもあったし、当然働いた。中卒で日中働き長ら、夜学校に通う、何とかなるかと思いながら高校生活が始まったわけだが…

 まぁ~何とかなるわけないよな? ここで理由を言わなくても、察してもらえると助かるのだが。
 そもそもだ、定員割れ起こしてる定時制って所とか、試験も無いとかのときに、ちょっと考えたら分かったのでは? と後になって自分に突っ込みながら、後悔したときには遅かった………

 つまり、まともな高校なわけがなかったのだ。
 学校としては、収益があれば、それだけでいいと言う、不良学生の溜まり場だったわけで……

 入って1ヶ月もしない内にガッツリ勝つ上げにあい、学費や交通費等、生活に必要な金以外、全部持っていかれた。
 学費だけは払えなければ当然退学だし、交通費が無ければ学校にもこれず、金を回収出来なくなるからか、奴らにとっても自分達の財布がいなくなるのは困るのか見逃してはもらえたが。
 そんな感じで財布君になりながら、高校生活2年間もあっという間に終わり、3年目の春が訪れた…

 3年の卒業式や、春休みが終わった3年目の登校初日の学校の玄関で、俺は一人のショートヘアーの可愛い女性を見た。
 定時制ではあるが、昼間に通っている学生達がいるし、昼間も評判は良くないとは言え、別に男子校と言うわけではない。
 何かの理由から、帰るのが遅くなった女性とすれ違ったことは、この2年でも数える程だが何度かある。
 可愛いなあと顔がデレながらも、帰宅途中の女性かと思って、その場を後にし、自分の3階にある3年の教室へ向かっていった。

「よぉ~本橋、金貸してくれよ~いつかきっと返すからさぁ~」

 自分の教室に入った途端に、カツアゲグループのリーダーの郷田対馬にたかられた…取り巻き連中も揃っているのか…

 郷田対馬は地元でも有名なヤクザの息子らしい、取り巻き連中もそれを知って従っているようだ…

 「ごめん、今は金がない、知ってるだろ?給料日3日前だって、今あるのは後3日間のバス代くらいしかないよ」

 「じゃ~それでいいよ、金全部おいてけよ。高々3日だ。別に来なくても平気だろ? 割りとこの学校じゃ優等生なんだしよ。
 仕事が忙しいとかいって、学校休んでも問題ないだろ? それとも、またぼこぼこにされたいのかなぁ~? 
 どれだけ先生にチクったって、誰も助けてなんかくれないぜ? 義務教育でもないしよ、誰もお前見たいなの、好き好んで助ける奴もいないわな~」

 (ふざけやがって、クソが)

 郷田のことを知らない最初の内は、怒りを覚えて抵抗もしたが。多勢に無勢でぼこぼこにされ、祖父母には相談など出来ず、親などいないに等しい俺には先生に相談するしか無かったが。
 こいつの言うとおり、地元でも有名なヤクザの息子に不良学校、カツアゲやイジメは日常茶飯事のようで、先生達に相談しても、まともに相手をしてはくれず、嫌なら退学していいという始末だった……

 定時制で有りながら、単位制でもあるこの学校は、頭の悪い俺でも、3年ここにいれば卒業できると言う場所だ。

 その為に仕方なく、2年近くもカツアゲされても、我慢し耐えてきた…

 「分かったよ…でも、今日の帰りの交通費だけは頼むから勘弁してくれ。余り帰りが遅いと親が心配するから、頼むよ…」

 「チッ、しゃ~ねーな、今回はそれで勘弁してやる。まぁ、どうせ3日後には、たんまりと金を貸してくれるんだろうしよ?」

 「あぁ、分かった……じゃ、はいこれ……」

 俺は仕方なく3日分の交通費約3,000円を渡した…

 「おし、お前らいくぞ」

 郷田は金を受け取り満足したのか、教室を出ていこうとする。がそれを取り巻きの一人が呼び止める。

 「えっ、郷田さん授業わ?」

 「そんなのどうでも良いんだよ。それよりよ、今年の1年に女が入ったらしいんだよ、見に行くぞ」

 もう5分もすれば授業が始まる。取り巻き連中も聞き返すが、郷田に気にした様子はない。
 まぁこっちとしても消えてくれるなら、これ以上面倒がなくて助かるのだが。
 今郷田は女って言ったのか?

 「えっ、マジですか? 確かにここって、別に男子校とかじゃなく、一応共学ですけど。地元でもそれなりに不良高て言われてて、知らない人がいないくらいじゃないですか、女なんて好き好んで来たりしませんけどね」

 取り巻き連中の言うように、かなり珍しいのではないだろうか。
 確かに男子校と言うわけじゃないが、この2年間の入学生は男子100%だったからだ、この2年で女子は一人も入って来ない、こんなむさ苦しい場所に女子が入ってきただと?

 (ありえねぇ~)

 思わずそう思ってしまった……

 「あぁ、理由はしらねーけどよ、入って来たらしいんだよ。昼間は兎も角よ、夜のここはよ、卒業式はあっても、始業式はねぇからよ。やっぱり上級生として可愛い後輩には、挨拶くらいしとかねーとよ?」

 「郷田のアニキ、それって普通逆じゃないですかね?」

 「うるせーな、いくぞ野郎共」

 「わっかりましたーー」

 郷田が取り巻きどもをつれ、にやけた顔つきで、1階の1年の教室へ向けて階段を降りていく。

 結局郷田と取り巻き連中は、それっきり帰って来なかった。

 まぁ~いても寝てるだけで、授業を真面目に受けてるわけでもないし。いないお陰で授業はかなりはかどった気がしないでもない。

 最後の授業のチャイムがなり、HRも終わり帰るかと下駄箱に向かって行くと、その隣にある保健室に灯りがついていた。

 ん? 珍しいな。
 保健室なんていつも真っ暗なのに、この学校に養護教員なんてものはいない。
 何かあれば、担任が保健室を開け、対処するだけで事足りるとのことだ。
 確かに1クラス20人しかおらず、組も一つしかないしな。
 ここの夜の定時制学校は、1年から3年まで合わせてもたった60人の生徒しかいないのだ。

 俺は珍しいなと思いながらも、どうでも良いかと思い、帰ろうと下駄箱から靴を取り出そうとしたときだ、女性の悲鳴が聞こえた。

 (イヤーーーー)

 (えっ? 何だ!!)

 と思い振り返ると、灯りのついた保健室の方向だった。

 (ドクンッ)

 鼓動が早くなったような気がした…

 (まさか!?)

 俺はそっと保健室に近づき、音が出ないように扉をそっと開け、隙間から中の様子を見た。

 そこには郷田と取り巻き連中がいて、登校時に見た可愛い女性に郷田が馬乗りになって、襲いかかっていた。

 「イヤーー、止めてください!!」

 「へへ、大人しくしろよ、どうせ誰も助けになんかこねえからよ」

 「イヤーーーー!!!」

 女性は叫び更に抵抗するが、郷田の力に叶うわけも無く、泣き叫ぶのが精一杯だ。

 取り巻き連中は、周りでニヤニヤ笑いながら、郷田が女性を襲うのをただ見ている。

 そして、俺は郷田に女性が襲われているのを見て、何かが切れた……

 (プツンッ)

 正確には、何かが切れた音がした、と言うのだろうか。その時のことは正直良くは覚えていない。ただ頭が真っ白になり、扉をバタン!とあけ、郷田をぶっ飛ばしていた……

 「郷田ぁぁぁぁぁぁ~~~~~!!!」

 「あん?なん……ブファァァァ」

 吹っ飛んだ郷田はそのまま、頭から下に落ち床に頭をぶつけて倒れる。

 「大丈夫か!」

 「ヒィッ!」

 女性に声をかけるが、まだ泣き怯えている。
 しかし落ち着くまで、待っている暇はない、俺は女性を抱え、そのまま逃走を始めた。

 「邪魔だぁぁぁ、どけぇぇーー!!」

 (!!?)

 デカイ声を出したせいか、咄嗟の事で思考がおいついてないのか、取り巻き連中は、怯み固まったまま動かない。
 その隙に俺達は保健室を出て逃げる。

 しかし、どこへ逃げる? 
 余り考えてる暇はない。
 すぐそこは玄関だが、すぐ追い付かれるのでわ? 
 既に思考はグチャグチャだし、まだ泣きじゃくる女性を抱えたままだ、そう遠くには行けない。
 僅かな時間で考え出した結論は、屋上に逃げることだった。
 この2年間で何度も世話になった場所でもある。

 夜の学校の屋上は、何気に俺の一人になれる憩いの場でもあったが。
 この屋上は中からは鍵が無いと空かないが、外からは捻れば鍵がかけられる、便利な場所でもあったからだ。

 何処にそんな体力があったのか、女性も軽い方だとは思うが、それでも高校1年生の女性なら40キロ位はあるのでわ?

 そんな女性を抱き抱えながら、俺は階段を猛ダッシュで登り屋上へつき、女性を下ろして鍵を締める。

 「大丈夫……なわけないか…でも、少しは落ち着いたかい?」

 「はぃ、有り難う御座いました…」

 女性の服装は、上下何処にでもある紺色のセーラー服に、身長150㎝くらいのスレンダーな体型でショートヘアーが良く似合う、可愛い女の子だ。
 まだ事情からか少し体が震えているが、それでも泣き止み少し落ち着いたように見える。
 そういう俺も、一気に体の力が抜け疲労感が激しく襲う。

 「それにしても、何で保健室なんかであんなことにって、聞いてもい良いのかな?」

 「はい、大丈夫です…最初は授業中に、廊下からニヤニヤしながら眺めてたり、休み時間に、話かられたりするだけだったのですが。
 流石にずっといるし、先生も注意したりしなくて、おかしいなとは思い始めたんですが、それ以上は何も無かったので、適当に相手をして帰ろうと思ったんです。
 そして、HRが終わって後、玄関に来た所で、無理矢理に保健室に連れていかれて、近くにいた男子達は助けてくれずに、そのままベットに押し倒されて、それで……」

 女性は、また暗い顔になりながら、下を向き泣きそうになる。

 「なるほど…確かに奴らは、1年に女の子を見に行くとか言ってたが、まさかずっと張り付いてるとは思わなかったな、本当にクソ野郎共だな」

 本当にクソ野郎だ。地元のヤクザの息子だからって、やりたい放題かよ。
 教師も教師だ、誰もビビって何もしやがらない。
 しかし、どうしたものかな…

 ストレスが相当たまってたのかな、理由なんて聞かれても分からないが。
 俺だって、本来ならこんなことガラじゃないんだが。
 何故か勢いでやってしまった以上仕方ないが。
 今日は何とかなったとしても、当然明日はやって来るわけで……

 まあ、俺は明日から3日間は来れないが、金もないし。
 半殺しですめば良いが、まあぼこぼこにされるのは3日後以降で確定と……

 だが、彼女はどうだろう、こんな状態で明日も来るのだろうか? 
 そういえば、まだ名前すら聞いて無かったな。

 「なんかごめん、嫌な事思い出させちゃって。所でさ、名前は何て言うのかな、俺は本橋幸貴、一応ここの3年だけど」

 「いえ、こっちこそ、助けて貰ったのに、まだ名前も言ってなくて。私の名前は四島梨花です」

 「四島さんか、とりあえず、しばらくここで様子を見るとしても、この先どうしようか、お互いに……」

 「御免なさい、私のせいで、本橋先輩にまで迷惑かけて、本当にスミマセン」

 四島さんが申し訳なさそうに、頭を下げる、しかし本当にどうしたものか…

 そんなときに屋上の扉が叩かれる

 ドン!ドン!!ドン!!!  ガン!ガン!!ガン!!!

 「ヒィッ!」

 「おい、本橋いんのかー!!出てこい、扉あけろー!ぶっ殺してやる!!」

 郷田が来たらしい。
 ていうか、開けたら殺されるって言うのに、誰が扉開けんの?
 頭強く打ち過ぎた? 
 頭の中で一人ツッコミをいれるが、そんな場合ではない。

 ガン!ガン!ガン! 

 更に扉を叩き音が聞こえ、四島さんが震え出す。
 扉には鍵がかかっており鋼鉄製でもあるので、いくら郷田が叩いたり蹴飛ばした所で、どうにもならないが…

 「おい! 職員室行って鍵持ってこい!!」

 「ハイ!ワカリマシター!」

 不味いな、流石に鍵を持ってこられたら、どうにもならない。
 取り巻き共が鍵を持ってきたら、怒り狂った郷田に俺はぶっ飛ばされ、四島さんは、また襲われるに違いない。

 とりあえず身を隠せる場所はと。
 辺りを見渡すが、屋上は四方をフェンスで囲み中央付近に、3つベンチが並び、左右端の方に貯水槽が3つずつあるくらいだ。
 ここにいては一目で見つかるし、仕方ない、貯水槽の裏に隠れるか。

 「四島さん、こっち!」

 「えっ!あっ、はい」

 俺は四島さんの手を引き、一番右の貯水槽の裏へ隠れる。
 とは言え大した時間稼ぎにもならないだろうが、隠れる所など他に無いわけだし…

 「郷田の奴、今日くらい諦めて帰るかと思ったけど、アイツの性格とか考えたら、そんなわけなかったな、本当にどうしようか」

 「もう嫌です。なんで私ばかりこんな目にあうのか、私が何をしたって言うの…」

 四島さんが、また泣き出した。
 俺はどうしたら良いのかわからず、あたふたし始める、そりゃそうだ…産まれて約17年は経つが、女性とこんなに話したことなど1度もない。
 イヤ、そもそも関わるのすら人生初ではないだろうか?

 まったく、どうして良いか分からない俺は、とりあえず四島さんの頭を撫でて見ることにした、そしたら四島さんが胸に飛び込んできた。

 (マジか!!)

 更にどうしたら良いか分からなくなった……だが、少し立つと落ち着いたのか、泣き止んではくれたらしい。

 「先輩優しいですね…本当にありがとうございます」

 「えっ、いや、大したことは何もしてないけど、ハハハ」

 「私、小さい頃、両親を事故で無くしてから、人にこんなに優しくされたの初めてかもしれません。
 両親を無くしてから、ずっと金銭的な問題で、親戚をたらい回しにされて、去年、こっちに引っ越して来たんですけど。
 やっぱり金銭的な問題から、高校進学は、難しいって言うし、どちらかというと、住む場所は提供するから、働いて毎月生活費や家賃を入れてくれとか言われて。
 こっちに来て早々、新聞配達をさせられて、ここ1年くらいは、それでお金稼いでたりもしたんですが。
 やっぱり、中卒じゃまともな仕事なんて無いと思うし、定時制でも高校行って見ないかと、中学の担任の先生が言うので。
 何とか伯母さんに頼んで、一番学費や諸経費が安いここならいいって言われて、ここに来たんですよ」

 「なるほどなあ、俺も似たようなもんだが、まあそうだよな、普通の家庭の人だったら、まずこんな所には来ないもんなあ…ここの評判とかは知らなかったの?」

 「いえ……多少ですが、話には聞いてました、でも、やっぱり他と比べるとお金が安いって事で、伯母さんもここしか認めてくれなかったんです…」

 「確かに、ここの学費や制服とかって、目茶苦茶安いからな。俺の家もさ、貧乏でさ、それで仕方なく、自分で稼いで来れるここに来たからさ。しかし、何か俺達にてんなぁ」

 「家が貧しいってことがですか…」

 「あぁ、まあそれもあるけどさ、俺の家もさ、四島さんにくらべたら、まだましなのかもしれないが。俺も小2の時に両親は離婚してね、たらい回しとかにはならなかったけど、俺は祖父母の家にずっと預けられて過ごしてたんだ」

 「俺の両親は、多分まだ生きてるとは思うけど。もうかれこれ10年以上、あってもいないし、幼い頃も面倒なんて見てもらった記憶がまったくないよ。
 会えば喧嘩ばっかで、人の面倒の押し付け合いでさ、何処かに家族で出かけた記憶とか一つもないしな」

 「祖父母に預けらた時も、年金で節約しながら、ひっそり暮らしてる人達だったからさ、スゲー嫌そうな顔されてさ、今でも覚えてるよ」

 「そんで、家が貧乏ってことで中学はイジメられ登校拒否で、金も学力もなく行き着いた先がここだったと…言うわけよ…」

 「確かに少しはにてるかもしれませんが、先輩がイジメられッ子ですか…あんなに強かったのに…」

 「ハハッ、別に強く何か無いよ、俺だって普通ならその他大勢の中の一人さ。
 正直、何故四島さんを助けたのか、良くわかって無いんだ。
 ただ四島さんが、郷田に襲われてる姿を見たら、頭が真っ白になって、気がついたら郷田をぶっ飛ばしていたと、ただそれだけなのさ」

 「それでも、助けてくれて本当にありがとうございます、本橋先輩!!」

 四島さんが、今までで一番の笑顔でお礼を言う。
 正直かなり照れる。

 「それでさ、この後、マジでどうしようか? 間違いなく、怒り狂った郷田が殴りこんでくるし、逃げる場所も無い。騒ぎを聞き付けても、きっと職員連中も助けには来ないだろうし、屋上に逃げたのは大失敗だったかな」

 俺は本気で困った顔で、四島さんに聞いてみる。打開策が見つかるとは、到底思えないし、思ってもいないが、聞かずにはいられなかった。

 だが彼女は、何かを決意したかのような顔で、俺の目を見ながら、あるお願いを口にする。

 「本橋先輩、お願いがあるんですが。ここから飛び降りて、私と一緒に死んでくれませんか?」

 「えっ!?」

 四島さんは、今何て言ったんだ!? 
 余りにも唐突な事で、脳が理解出来ていないのか、一瞬固まってしまった…

 死んでくれって言ったのか? 
 何かの聞き間違いか? 
 それとも何が違う意図があるのだろうか? 
 俺は未だに理解出来ず聞き返してしまった。

 「四島さん、それってどういうこと…?」

 「私、もう生きるのに疲れました。このまま待ってても、郷田って人に、また襲われて、犯されるだけだと思うんですよ。
 先輩の言うとおり、逃げる場所もないし、助けも来ません。だからって、犯されるって分かってて、黙って待つなんて、絶対に出来ません、嫌です」

 「仮にそれで1回2回我慢した所で、明日以降どうしろって言うですか? 
 私に1年間、郷田に犯されるのをずっと我慢しろと? 
 それに郷田が後1年で卒業するまで、我慢したとしてもですよ?
 郷田がいなくなったから、犯されないって事は、言えませんよね?
 別の誰かに襲われるかもしれない。
 それこそ3年間、誰かにずっと犯され続けることになるかもしれません、冗談じゃありませんよ」

 「学校を止めれば、今日犯されるくらいで、すむかもしれませんが。根本的な問題はそこじゃないですし。ここしかないから、ここへ来てこれじゃ、もう生きる気力もなくなりましたよ…」

 「でも、やっぱり、勝手かもしれませんが。一人で飛び降りるのは、ちょっと怖いし、似た境遇の先輩とだったら、少しは怖さも無くなって、良いかなって思ったんです」

 「それに、助けてくれた時の先輩は、凄くカッコ良くて。正直ちょっと惚れました……私の人生両親が無くなって以降、良いこと何て、何一つもありませんでしたが。最後くらい、好いてる人と一緒にって思ったんですけど、やっぱり駄目ですか…?」

 四島さんは、本気で言っているのか…しかも何気に告白された? 
 この状況で!?
 さて、どうしたものか……何かもう頭がぐちゃぐちゃで思考力が追い付いてない感じもするが、考えなくてわ…

 とりあえず、飛び降りる云々は、ひとまず置いておくにしても、この後起きるであろう状況などは、概ね四島さんの言うとおり出はないかと、確かに思うが……

 なら、そんな四島さんに、俺は何をしてやてる? そもそも明日から3日間は、ここには来れないことが、既に確定済みではないか……
 それに、その後だってどうだ? 
 たまたま今回うまく助けれただけだ、こんな奇跡2度と起きないだろう…

 俺が、この先も郷田から四島さんを守る…? 嫌、ありえない……そんなこと、どうやってもできるはずがない、第一そんなことができるなら、カツアゲなんかされてないし、今だって、これから襲って来る郷田をどうにかできるはずだ…

 だが、実際に現実はそう甘くはない…ならばどうする?

 産まれてこの方、良いこと何て、何一つ無かったし、クソ見たいな人生だったが、何とか我慢してやって来た。
 それでも後1年は耐えねばならない。更に言えば今回の件で、後1年、金を渡すだけでは、無事でいられないだろう。

 だがしかし、後1年耐えるだけだ?
 耐えきれば違う人生がやってくるかも?

 本当にそうか? 
 そんな保証はどこにもないよな? 
 第一確かに卒業してしまえば、郷田との関係も切れると思うが、思うだけで、切れなかったら? 

 奴の家は、それなりに名の有るヤクザ組らしいし、構成員とかも何人もいるらしい、卒業後に襲われないって保証、どこにもないよな……

 ならばどうする?
 助けることも見捨てることも出来ない………ならばどうする?

 可愛い女の子の頼みを聞いて、一度くらいカッコつけるのも悪くないか?
 クソ見たいな人世だったが、最後くらい、可愛い女の子と一緒なら悪くないか?

 ……………ふふっ、ハハハッ、悪くないな、別に良いじゃないか!!ハハハッ

 俺がいなくなっても、困る家族なんていない。
 職場の人は、行きなりいなくなれば、多少は困るかもしれないが、別に新しい人をいれるだけだろう。

 学校には、迷惑がかかるかも知れないが、こんなクソ見たいな学校が、どうなろうと知ったことじゃない。
 俺は四島さんのお願いを叶えるべく、覚悟を決めて答える。

 「いいよ、一緒に死のうか」

 緊張したのか、少し声はうわずったようにも聞こえたが、俺がそう応えると四島さんの顔が笑顔になって抱きついて来た。

 「先輩!!」

 これ絶対に、これから死のうって顔じゃないよな。

 「しかし、人生最期が、俺何かとで本当に良いの?」

 「はい!先輩がいいです! それに、そんなこと言っても、他に選べる人が、いないじゃないですか。いても先輩を選んだとは、思いますが♪」

 「ハハハッ、何か凄く嬉しいこと、言ってくれるね」

 そのときだった、出入口の方から扉が勢い良く開く音が聞こえた

 バタン!!!

 (!!)

 二人に緊張が走り、ここからでは、貯水槽の陰で見えないが、出入口の方を向く。

 どうやら、遂に郷田達が、職員室から鍵を持ってきて、屋上に入って来たようだ。

 「オラァァァ、本橋何処だぁーーー、出てこい、ぶっ殺してやるーー」

 「お前らぁ、早く本橋を探せぇぇぇぇぇ、見つけ次第、ぶっ殺してやるーー」

 アイツはぶっ殺してやるしか言えないのか。
 出ていったら殺されるってのに、何故出ていくよ。
 まあ既に死ぬ気だが、それでも郷田になんか殺されるのはご免だ。

 (四島さん、まだ大丈夫、見つかってはいないよ、今のうちにフェンス登って)

 (はぃ)

 俺はフェンスを登る途中で、貯水槽の隙間から郷田達を見る。
 郷田は取り巻き連中に俺を探させ、自分は、その辺のベンチを蹴飛ばしてるようだ。
 そんな事をしてる間に俺達はフェンスを登り降りる……

 「郷田の兄貴いましたぜーー」

 (!!)

 俺がフェンスを降りた所で、取り巻きの一人に見つかったようだ。

 「そこかぁぁ、本橋ぃぃぃ、ぶっ殺してやるぅぅぅ」

 こっちから、まだ姿は見えないが。
 郷田が物凄い勢いで、近づいて来るのが何となく分かる。
 取り巻き連中は郷田が来るまで動かず、こっちを見てるだけだ。

 「先輩。手を繋いでも良いですか?」

 「ん?あぁ、良いよ」

 「ありがとうございます、本橋先輩」

 そう言って四島さんと、笑顔で手を繋ぐ。

 「なあ、四島さん! 俺はどうでもいいけどさ、もしも生まれ変われるなら、今度こそ幸せになれよ!」

 人生最後にかける言葉なんて、正直、何を言って良いのか分からない。
 何故そんなことを言ったのかも、まったく分からない。

 ただ、手を繋いだ時、俺は四島の幸せを、願わずにはいられなかった。

 「えぇ~、自分がどうでもいいのに、他人には幸せになれって。先輩、何かそれおかしく無いですか?」

 「ハハ、そうかな? おかしいか?」

 「なら、そっくりその言葉、私も返しますよ~先輩こそ、生まれ変われるなら、今度こそ幸せなって下さいね~」

 「ハハハ、確かに、おかしいかも?」

 「でしょう~」

 『ぷっ、あハハハハハハハハハハハ』

 そうして俺達は、笑いながら笑顔で飛び降り、自分達の人生に終止符を打った………

 「本橋ぃぃぃぃぃぃ」

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俺...光野朔夜(こうのさくや)には、大好きな彼女がいた。 しかし親の都合で遠くへと転校してしまった。 だが今は遠くの人と通信が出来る手段は多々ある。 その通信手段を使い、彼女と毎日連絡を取り合っていた。 ―――そんな恋愛関係が続くこと、数ヶ月。 いつものように朝食を食べていると、母が母友から聞いたという話を 俺に教えてきた。 ―――それは俺の彼女...海川恵美(うみかわめぐみ)の浮気情報だった。 「――――は!?」 俺は思わず、嘘だろうという声が口から洩れてしまう。 あいつが浮気してをいたなんて信じたくなかった。 だが残念ながら、母友の集まりで流れる情報はガセがない事で 有名だった。 恵美の浮気にショックを受けた俺は、未練が残らないようにと、 あいつとの連絡手段の全て絶ち切った。 恵美の浮気を聞かされ、一体どれだけの月日が流れただろうか? 時が経てば、少しずつあいつの事を忘れていくものだと思っていた。 ―――だが、現実は厳しかった。 幾ら時が過ぎろうとも、未だに恵美の裏切りを忘れる事なんて 出来ずにいた。 ......そんな日々が幾ばくか過ぎ去った、とある日。 ―――――俺はトラックに跳ねられてしまった。 今度こそ良い人生を願いつつ、薄れゆく意識と共にまぶたを閉じていく。 ......が、その瞬間、 突如と聞こえてくる大きな声にて、俺の消え入った意識は無理やり 引き戻されてしまう。 俺は目を開け、声の聞こえた方向を見ると、そこには美しい女性が 立っていた。 その女性にここはどこだと訊ねてみると、ニコッとした微笑みで こう告げてくる。 ―――ここは天国に近い場所、天界です。 そしてその女性は俺の顔を見て、続け様にこう言った。 ―――ようこそ、天界に勇者様。 ...と。 どうやら俺は、この女性...女神メリアーナの管轄する異世界に蔓延る 魔族の王、魔王を打ち倒す勇者として選ばれたらしい。 んなもん、無理無理と最初は断った。 だが、俺はふと考える。 「勇者となって使命に没頭すれば、恵美の事を忘れられるのでは!?」 そう思った俺は、女神様の嘆願を快く受諾する。 こうして俺は魔王の討伐の為、異世界へと旅立って行く。 ―――それから、五年と数ヶ月後が流れた。 幾度の艱難辛苦を乗り越えた俺は、女神様の願いであった魔王の討伐に 見事成功し、女神様からの恩恵...『勇者』の力を保持したまま元の世界へと 帰還するのだった。 ※小説家になろう様とツギクル様でも掲載中です。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

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"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

18禁NTR鬱ゲーの裏ボス最強悪役貴族に転生したのでスローライフを楽しんでいたら、ヒロイン達が奴隷としてやって来たので幸せにすることにした

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『異世界少女を歪ませたい』はエロゲー+MMORPGの要素も入った神ゲーであった。 しかし、NTR鬱ゲーであるためENDはいつも目を覆いたくなるものばかりであった。 そんなある日、裏ボスの悪役貴族として転生したわけだが...俺は悪役貴族として動く気はない。 そう思っていたのに、そこに奴隷として現れたのは今作のヒロイン達。 なので、酷い目にあってきた彼女達を精一杯愛し、幸せなトゥルーエンドに導くことに決めた。 あらすじを読んでいただきありがとうございます。 併せて、本作品についてはYouTubeで動画を投稿しております。 より、作品に没入できるようつくっているものですので、よければ見ていただければ幸いです!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

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2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

俺がカノジョに寝取られた理由

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その夜、知らない男の上に半裸で跨る幼馴染の姿を見た俺は…… ※完結。予約投稿済。最終話は6月27日公開

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