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第一章 春
第四話 連絡先
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四月も後半に差し掛かってきた。
この頃俺は碧と杏実さんを近づけるため、まずは自分が杏実さんと距離を詰めないといけないと思い、そのために何をすべきかと考えているのだが……いい手が見つからない。
昔から時間をかけてじっくりと色んな人と仲良くなってきたタイプなので短期間で距離を詰めるのは難しく感じる。
今日も休み時間にボーッとそんなことを考えていたら、俺の高校友達一号こと、大喜に声をかけられた。
「なぁ、佑、RIME交換しよーぜ」
RIME───メッセージアプリのアドレス交換か……そういえば高校に入ってから知り合った人とはまだ誰ともしてないな。完全に忘れていた───それだ!
そうだ、RIMEを交換してないから杏実さんともそこまで親しくないのでは?!RIMEを交換してれば放課後とかも雑談とかできるし。
とりあえず大喜に軽く「いいよ」と返事をし、RIMEを交換した。
この勢いのまま杏実さんとも交換しよう、と意気込んでいると大喜から衝撃の一言を口にした。
「じゃあついでにクラスのグループにも招待しとくわ」
待て待て待て、そんなものいつの間に作られた?!知らないんだが。入学式から2週間は経ってるし、クラスの中で参加してないやつワンチャン俺だけだったりする?
そんな風に動揺していると、大喜が
「ああ、このグループ一昨日くらいに作られたから参加してるのクラス40人中まだ10人くらいだから」
と教えてくれたため一安心。
さて、気を取り直して杏実さんの所へいこう。
俺が杏実さんの下に向かった時、彼女は女の子二人と何やら雑談をしていた。
(うーん……あの女子二人とは話したことがあるとはいえ、ここからいきなり会話に混ざるのは流石に違和感があるな……)
まだ休み時間に入ったばかりだから、と会話が途切れるのを待っていると、杏実さんと話していた子が別の子に話しかけられ、そっちに流れていった。
話しにいくチャンス到来!!
でも女子に、そして『推し』に話しかけるのはやっぱりちょっと緊張するし、躊躇うなぁ。だけど、ここで止まってても意味ないしな、うん。思い切りよく行こう!
「ねぇ、杏実さん。RIME交換しない?」
俺がそう言うと、少し驚いた表情を見せながらもスマホを取り出しRIMEを交換してくれた。
ちゃんと交換できたことに安心していると、スマホが震える。見ると、画面には杏実さんから送られてきた可愛らしい猫の「よろしくね」というスタンプが表示されていた。こういう所までこの子は可愛いんだな、なんて思いながら俺もお返しに「よろしく」のスタンプを送った。
その後、碧のRIMEも持ってないことに気づいたので、杏実さんと交換した流れでそのまま話しかけに行き、交換した───後ろから視線を感じながら。
振り向かなくても分かる、多分これ杏実さんだ。これ確実に杏実さん碧のこと気になってるよね。
そう思いつつ、碧の連絡先を手に入れた俺は自分の席にさっと戻り、碧と話すポジションを杏実さんに譲る。
さて、どう動くかな、と見ていると杏実さんが話しかけようとして、躊躇って、というのを繰り返していた。助け船を出した方がいいだろうか、なんて考えが頭をよぎったが、最終的には緊張で顔を強張らせながらどうにか話しかけているのが見て取れたので安心した。
しばらくやりとりを交わした後にお互いにスマホを取り出しているのが見えたのでどうやら上手くいったらしい。
その後には頬を緩ませながら自分の席に戻る杏実さんを見ることをできた。嬉しそうで何よりだ。そして可愛い。
夕方、家に帰り、スマホを見るとRIMEにいくつか通知が来ていた。誰からだろうと思い、アプリを開くと1番上に「杏実」という名前が表示されていた。
杏実さんから?なんだろう?と思い、スマホをタップすると
『佑君って私のこと好きなの?』
というメッセージが現れた。
この一文を読んで死ぬほど驚いたが、続きを読んで納得した
『友達が「与田君、急に杏実のRIME聞いてたからワンチャン好きなんじゃない?」なんて言ってて……もし違ってたらごめんね』
そうか、友達に見られてたか。確かに急に男子が女子のRIME聞くとかそう見えてもおかしくはない。実際恋愛的な好きとは違うけど杏実さんのことは好きだし。と思い、
『恋愛的な好きではないけど好きだよ。だから仲良くなりたいなって思ったから』
と返信した。
すると、すぐに既読がつき、
『そっか!!私も佑君と仲良くしたいな、よろしく』
と返ってきた。
このまま会話を終わってもよかったのだが、杏実さんが恋愛に関する話題になりかねないものを最初に送ってきたので、せっかくだから気になってたことを聞いてみよう。
『じゃあ逆に質問。杏実さんって碧のこと好きなの?』
『えっ!??なんで?!、えっ?』
わかりやすく動揺している。
『あ、やっぱり笑笑?』
『………そうだけど…本当になんで分かったの?』
『いや~、階段の件以降、杏実さんのこと見てると結構碧の方見てるからもしかするとな~って』
『図星すぎて何も言えません……』
『まあ、頑張ってよ。応援してるからさ』
『ありがとう……頑張ります…』
そんなやりとりをして、会話が終了した。
やっぱ杏実さん碧のこと好きだったか。流石に行動がわかりやすすぎるぞ、杏実さん。
そんなわけで、『推し』のRIMEを手に入れた上に碧のことが好きと言う確認までできて収穫のある一日になった。
この頃俺は碧と杏実さんを近づけるため、まずは自分が杏実さんと距離を詰めないといけないと思い、そのために何をすべきかと考えているのだが……いい手が見つからない。
昔から時間をかけてじっくりと色んな人と仲良くなってきたタイプなので短期間で距離を詰めるのは難しく感じる。
今日も休み時間にボーッとそんなことを考えていたら、俺の高校友達一号こと、大喜に声をかけられた。
「なぁ、佑、RIME交換しよーぜ」
RIME───メッセージアプリのアドレス交換か……そういえば高校に入ってから知り合った人とはまだ誰ともしてないな。完全に忘れていた───それだ!
そうだ、RIMEを交換してないから杏実さんともそこまで親しくないのでは?!RIMEを交換してれば放課後とかも雑談とかできるし。
とりあえず大喜に軽く「いいよ」と返事をし、RIMEを交換した。
この勢いのまま杏実さんとも交換しよう、と意気込んでいると大喜から衝撃の一言を口にした。
「じゃあついでにクラスのグループにも招待しとくわ」
待て待て待て、そんなものいつの間に作られた?!知らないんだが。入学式から2週間は経ってるし、クラスの中で参加してないやつワンチャン俺だけだったりする?
そんな風に動揺していると、大喜が
「ああ、このグループ一昨日くらいに作られたから参加してるのクラス40人中まだ10人くらいだから」
と教えてくれたため一安心。
さて、気を取り直して杏実さんの所へいこう。
俺が杏実さんの下に向かった時、彼女は女の子二人と何やら雑談をしていた。
(うーん……あの女子二人とは話したことがあるとはいえ、ここからいきなり会話に混ざるのは流石に違和感があるな……)
まだ休み時間に入ったばかりだから、と会話が途切れるのを待っていると、杏実さんと話していた子が別の子に話しかけられ、そっちに流れていった。
話しにいくチャンス到来!!
でも女子に、そして『推し』に話しかけるのはやっぱりちょっと緊張するし、躊躇うなぁ。だけど、ここで止まってても意味ないしな、うん。思い切りよく行こう!
「ねぇ、杏実さん。RIME交換しない?」
俺がそう言うと、少し驚いた表情を見せながらもスマホを取り出しRIMEを交換してくれた。
ちゃんと交換できたことに安心していると、スマホが震える。見ると、画面には杏実さんから送られてきた可愛らしい猫の「よろしくね」というスタンプが表示されていた。こういう所までこの子は可愛いんだな、なんて思いながら俺もお返しに「よろしく」のスタンプを送った。
その後、碧のRIMEも持ってないことに気づいたので、杏実さんと交換した流れでそのまま話しかけに行き、交換した───後ろから視線を感じながら。
振り向かなくても分かる、多分これ杏実さんだ。これ確実に杏実さん碧のこと気になってるよね。
そう思いつつ、碧の連絡先を手に入れた俺は自分の席にさっと戻り、碧と話すポジションを杏実さんに譲る。
さて、どう動くかな、と見ていると杏実さんが話しかけようとして、躊躇って、というのを繰り返していた。助け船を出した方がいいだろうか、なんて考えが頭をよぎったが、最終的には緊張で顔を強張らせながらどうにか話しかけているのが見て取れたので安心した。
しばらくやりとりを交わした後にお互いにスマホを取り出しているのが見えたのでどうやら上手くいったらしい。
その後には頬を緩ませながら自分の席に戻る杏実さんを見ることをできた。嬉しそうで何よりだ。そして可愛い。
夕方、家に帰り、スマホを見るとRIMEにいくつか通知が来ていた。誰からだろうと思い、アプリを開くと1番上に「杏実」という名前が表示されていた。
杏実さんから?なんだろう?と思い、スマホをタップすると
『佑君って私のこと好きなの?』
というメッセージが現れた。
この一文を読んで死ぬほど驚いたが、続きを読んで納得した
『友達が「与田君、急に杏実のRIME聞いてたからワンチャン好きなんじゃない?」なんて言ってて……もし違ってたらごめんね』
そうか、友達に見られてたか。確かに急に男子が女子のRIME聞くとかそう見えてもおかしくはない。実際恋愛的な好きとは違うけど杏実さんのことは好きだし。と思い、
『恋愛的な好きではないけど好きだよ。だから仲良くなりたいなって思ったから』
と返信した。
すると、すぐに既読がつき、
『そっか!!私も佑君と仲良くしたいな、よろしく』
と返ってきた。
このまま会話を終わってもよかったのだが、杏実さんが恋愛に関する話題になりかねないものを最初に送ってきたので、せっかくだから気になってたことを聞いてみよう。
『じゃあ逆に質問。杏実さんって碧のこと好きなの?』
『えっ!??なんで?!、えっ?』
わかりやすく動揺している。
『あ、やっぱり笑笑?』
『………そうだけど…本当になんで分かったの?』
『いや~、階段の件以降、杏実さんのこと見てると結構碧の方見てるからもしかするとな~って』
『図星すぎて何も言えません……』
『まあ、頑張ってよ。応援してるからさ』
『ありがとう……頑張ります…』
そんなやりとりをして、会話が終了した。
やっぱ杏実さん碧のこと好きだったか。流石に行動がわかりやすすぎるぞ、杏実さん。
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