16 / 50
PART 3 : ワンダリング・パラレルワールド
No.16 血と肉と暴力 ~アキの世界(前編)
しおりを挟む
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
超科学パラレルワールドゲートを潜った一行がたどり着いたのは――
「……原っぱ?」
周囲に視界を遮る物が何もない『原っぱ』だった。
「あら? わたしの集落に近い場所かしらね?」
「うん、直接行っちゃうと集落の人を驚かせちゃうし……ハルが危ないかなと思って」
「……え、俺危ない目に遭わされるところだった?」
「そ、そうならないように調整したって言ってるでしょ!」
とはいえ、この原っぱに来たところで何がわかるわけでもない。
5~10分で『アキの集落』にたどり着いて見学していく、ということだろうか。
……とハルが思った時だった。
「? どうした、フユ?」
くいくいっとフユがハルの服を引っ張る。
「…………くるよ」
「は? 何が……?」
フユに問いただすよりも早く、彼女の言葉を聞いたナツとアキが動く。
「アキ姉!」
「ええ、ナツちゃんは皆をお願いねぇ~」
「わ、わかった! 超科学物理バリア!!」
一体いかなる道具なのか、ハルたち三人を包み込む青い光の膜が現れた直後。
――突如、少し離れた地面が『爆発』した。
「な、なんだぁっ!?」
「…………こわいの、きた」
「危なっ、ギリギリだったわー」
爆発した地面の破片、土や石つぶてが弾丸のように周囲に撒き散らされる。
が、それらは全て青い光の膜――超科学物理バリアによって防がれ、ハルたちには一つも届くことはなかった。
「……ふふ、うふふふふふふ……相変わらずストーカーみたいな勘の良さですねぇ。ヨシキ君?」
「……は? 良樹……?」
思いがけない名をアキが呟いたのを聞き逃さなかった。
彼女の声に応えるように、爆発の中心地から『何か』が現れる。
「…………な、なんだあいつ……人間、なのか……?」
「うん……信じられないでしょうけど、あれは人間――このA世界における『男』よ」
現れたのは、確かに人型をしていた。
しかし、それがただの人間だとはハルにはどうしても思えなかった。
身長は少し離れているためはっきりとはわからないが、おそらくは2メートルは軽く超えているだろう。
ボディビルダーも裸足で逃げ出すくらい全身の筋肉が膨張しており、もはや人型はしているが『人間』ではなく『毛のない類人猿』と言った方が近いくらいである。
どこから現れた、とその場ではハルにはすぐわからなかったが……彼は遠くから飛んできたのだ。
「てめぇ……アキナァ……今度こそ、ブチ殺してやるよぉ……」
「くふっ、できもしないこと、口にしちゃダメですよぉ♪」
「ブチ殺す、殺ぉぉぉぉぉぉすっ!!!」
大気を震わせ、聞いているだけのハルたちまでもが思わず竦みあがるような雄たけびを上げながら、筋肉ダルマが地を蹴りアキへと飛び掛かる。
見た目の鈍重さとは裏腹に、運動能力も天才的なハルであっても目で追うことすらできない速度だ。
比喩ではなく、本当に丸太のような太さの腕に加えて、同じく比喩ではなく目にもとまらぬ速さが加われば――その衝撃はダンプカーに全速力でぶつかられるようなものだろう。
「!!」
ハルたちは反応することもできず、アキが為す術もなく殴り殺される場面を――目にすることはなかった。
「ぐぐ、アキナァ……!!」
「うんうん。前よりは重い拳になってますよぉ、がんばりましたねぇ~えらいえらい♪」
「て、てめぇ……!」
筋肉ダルマのパンチを、その場から一歩も動くことなく。
アキは片手であっさりと受け止めていた。
……見掛け倒しなわけではない。
その証拠に、受け止めたアキの足元の地面が衝撃に耐えかねて大きくヒビ割れている。
「ナツちゃん? 5分だけだったよね~? 悪いけど、ちょっと待っててくれるかな~?」
「う、うん……それはいいけど……」
「ふふっ、良かったですねぇ~ヨシキ君? 今日は5分しか相手してあげられないので、命までは取らないであげますねぇ~」
「なっ、てめ――」
筋肉ダルマ――ヨシキの怒りの声が途切れた。
受け止めた手とは逆の手で放ったアキのパンチを浴び、ヨシキの身体がまるでギャグマンガのように吹っ飛んでいったからだ。
「せーのっ!!」
それを追いかけるように、今度はアキが地を蹴り、瞬間移動のような速度で吹っ飛んだヨシキへと追撃を仕掛ける。
超科学パラレルワールドゲートを潜った一行がたどり着いたのは――
「……原っぱ?」
周囲に視界を遮る物が何もない『原っぱ』だった。
「あら? わたしの集落に近い場所かしらね?」
「うん、直接行っちゃうと集落の人を驚かせちゃうし……ハルが危ないかなと思って」
「……え、俺危ない目に遭わされるところだった?」
「そ、そうならないように調整したって言ってるでしょ!」
とはいえ、この原っぱに来たところで何がわかるわけでもない。
5~10分で『アキの集落』にたどり着いて見学していく、ということだろうか。
……とハルが思った時だった。
「? どうした、フユ?」
くいくいっとフユがハルの服を引っ張る。
「…………くるよ」
「は? 何が……?」
フユに問いただすよりも早く、彼女の言葉を聞いたナツとアキが動く。
「アキ姉!」
「ええ、ナツちゃんは皆をお願いねぇ~」
「わ、わかった! 超科学物理バリア!!」
一体いかなる道具なのか、ハルたち三人を包み込む青い光の膜が現れた直後。
――突如、少し離れた地面が『爆発』した。
「な、なんだぁっ!?」
「…………こわいの、きた」
「危なっ、ギリギリだったわー」
爆発した地面の破片、土や石つぶてが弾丸のように周囲に撒き散らされる。
が、それらは全て青い光の膜――超科学物理バリアによって防がれ、ハルたちには一つも届くことはなかった。
「……ふふ、うふふふふふふ……相変わらずストーカーみたいな勘の良さですねぇ。ヨシキ君?」
「……は? 良樹……?」
思いがけない名をアキが呟いたのを聞き逃さなかった。
彼女の声に応えるように、爆発の中心地から『何か』が現れる。
「…………な、なんだあいつ……人間、なのか……?」
「うん……信じられないでしょうけど、あれは人間――このA世界における『男』よ」
現れたのは、確かに人型をしていた。
しかし、それがただの人間だとはハルにはどうしても思えなかった。
身長は少し離れているためはっきりとはわからないが、おそらくは2メートルは軽く超えているだろう。
ボディビルダーも裸足で逃げ出すくらい全身の筋肉が膨張しており、もはや人型はしているが『人間』ではなく『毛のない類人猿』と言った方が近いくらいである。
どこから現れた、とその場ではハルにはすぐわからなかったが……彼は遠くから飛んできたのだ。
「てめぇ……アキナァ……今度こそ、ブチ殺してやるよぉ……」
「くふっ、できもしないこと、口にしちゃダメですよぉ♪」
「ブチ殺す、殺ぉぉぉぉぉぉすっ!!!」
大気を震わせ、聞いているだけのハルたちまでもが思わず竦みあがるような雄たけびを上げながら、筋肉ダルマが地を蹴りアキへと飛び掛かる。
見た目の鈍重さとは裏腹に、運動能力も天才的なハルであっても目で追うことすらできない速度だ。
比喩ではなく、本当に丸太のような太さの腕に加えて、同じく比喩ではなく目にもとまらぬ速さが加われば――その衝撃はダンプカーに全速力でぶつかられるようなものだろう。
「!!」
ハルたちは反応することもできず、アキが為す術もなく殴り殺される場面を――目にすることはなかった。
「ぐぐ、アキナァ……!!」
「うんうん。前よりは重い拳になってますよぉ、がんばりましたねぇ~えらいえらい♪」
「て、てめぇ……!」
筋肉ダルマのパンチを、その場から一歩も動くことなく。
アキは片手であっさりと受け止めていた。
……見掛け倒しなわけではない。
その証拠に、受け止めたアキの足元の地面が衝撃に耐えかねて大きくヒビ割れている。
「ナツちゃん? 5分だけだったよね~? 悪いけど、ちょっと待っててくれるかな~?」
「う、うん……それはいいけど……」
「ふふっ、良かったですねぇ~ヨシキ君? 今日は5分しか相手してあげられないので、命までは取らないであげますねぇ~」
「なっ、てめ――」
筋肉ダルマ――ヨシキの怒りの声が途切れた。
受け止めた手とは逆の手で放ったアキのパンチを浴び、ヨシキの身体がまるでギャグマンガのように吹っ飛んでいったからだ。
「せーのっ!!」
それを追いかけるように、今度はアキが地を蹴り、瞬間移動のような速度で吹っ飛んだヨシキへと追撃を仕掛ける。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
TS転生して夢のvtuberになったのでリスナーを青色に染めちゃいます!
カルポ
青春
社畜だった主人公、田中 蒼伊は、会社帰りの電車の中で推しの雨降 レインの配信を見ながら家に帰る途中で過労により死んでしまう。
そして目が覚めた主人公は、女子になっていて、推しのvtuberと合う為に頑張る話。
【完結】「妹の身代わりに殺戮の王子に嫁がされた王女。離宮の庭で妖精とじゃがいもを育ててたら、殿下の溺愛が始まりました」
まほりろ
恋愛
国王の愛人の娘であるヒロインは、母親の死後、王宮内で放置されていた。
食事は一日に一回、カビたパンや腐った果物、生のじゃがいもなどが届くだけだった。
しかしヒロインはそれでもなんとか暮らしていた。
ヒロインの母親は妖精の村の出身で、彼女には妖精がついていたのだ。
その妖精はヒロインに引き継がれ、彼女に加護の力を与えてくれていた。
ある日、数年ぶりに国王に呼び出されたヒロインは、異母妹の代わりに殺戮の王子と二つ名のある隣国の王太子に嫁ぐことになり……。
※カクヨムにも投稿してます。カクヨム先行投稿。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します。
「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」
※2023年9月17日女性向けホットランキング1位まで上がりました。ありがとうございます。
※2023年9月20日恋愛ジャンル1位まで上がりました。ありがとうございます。
【完結】私が奏でる不協和音
かずき りり
青春
勉強、勉強、勉強。
テストで良い点を取り、模試で良い順位を取り、難関大学を目指して勉強する日々に何の意味があるというのだろうか。
感情は抜け落ち、生きているのか死んでいるのか分からないような毎日。
まるで人形のようで、生きるとは一体何なのか。
将来に不安しかなくて、自分で自分を傷つける。
そんな中で出会った「歌」
楽しい。
私は歌が好きだ。
歌い手という存在を知り
動画配信サイトやアプリといったネットの世界へと触れていく。
そして…………
人生詰んだ気がしたので、VTuberになってみた。
未来アルカ
大衆娯楽
鬼堕 俊隆(きだ としたか)。
とある事件によって親族に見放され、就職することも難しく貯金の残りもわずかとなった彼は、人生の最後くらい楽しく過ごしたいという思いから、VTuber『鬼道 奈落』としてデビューする。
VTuberを通して出会う、自分の知らない世界。その中で、徐々に明らかになっていく彼の悲しい過去。
カクヨムでも投稿しています!
『なんか姿似てるVTuber知ってるなー』とか『名前のイントネーション似てるVTuber知ってるなー』って感じで楽しんで貰えたら嬉しいです。
神様お願い!〜神様のトバッチリを受けた定年おっさんは異世界に転生して心穏やかにスローライフを送りたい〜
きのこのこ
ファンタジー
突然白い発光体の強い光を浴びせられ異世界転移?した俺事、石原那由多(55)は安住の地を求めて異世界を冒険する…?
え?謎の子供の体?謎の都市?魔法?剣?魔獣??何それ美味しいの??
俺は心穏やかに過ごしたいだけなんだ!
____________________________________________
突然謎の白い発光体の強い光を浴びせられ強制的に魂だけで異世界転移した石原那由多(55)は、よちよち捨て子幼児の身体に入っちゃった!
那由多は左眼に居座っている神様のカケラのツクヨミを頼りに異世界で生きていく。
しかし左眼の相棒、ツクヨミの暴走を阻止できず、チート?な棲家を得て、チート?能力を次々開花させ異世界をイージーモードで過ごす那由多。「こいつ《ツクヨミ》は勝手に俺の記憶を見るプライバシークラッシャーな奴なんだ!」
そんな異世界は優しさで満ち溢れていた(え?本当に?)
呪われてもっふもふになっちゃったママン(産みの親)と御親戚一行様(やっとこ呪いがどうにか出来そう?!)に、異世界のめくるめくグルメ(やっと片鱗が見えて作者も安心)でも突然真夜中に食べたくなっちゃう日本食も完全完備(どこに?!)!異世界日本発福利厚生は完璧(ばっちり)です!(うまい話ほど裏がある!)
謎のアイテム御朱印帳を胸に(え?)今日も平穏?無事に那由多は異世界で日々を暮らします。
※一つの目的にどんどん事を突っ込むのでスローな展開が大丈夫な方向けです。
※他サイト先行にて配信してますが、他サイトと気が付かない程度に微妙に変えてます。
※昭和〜平成の頭ら辺のアレコレ入ってます。わかる方だけアハ体験⭐︎
⭐︎第16回ファンタジー小説大賞にて奨励賞受賞を頂きました!読んで投票して下さった読者様、並びに選考してくださったスタッフ様に御礼申し上げますm(_ _)m今後とも宜しくお願い致します。
VTuberデビュー! ~自分の声が苦手だったわたしが、VTuberになることになりました~
柚木ゆず
児童書・童話
「君の声はすごく可愛くて、僕の描いたキャラクターにピッタリなんです。もしよろしければ、VTuberになってくれませんか?」
声が変だと同級生や教師に笑われ続けたことが原因で、その時からずっと家族の前以外では声を出せなくなっていた女の子・佐倉美月。
そんな美月はある日偶然、隣家に引っ越してきた同い年の少年・田宮翔と――SNSで人気の中学生絵師に声を聞かれたことが切っ掛けとなり、やがて自分の声に対する認識が変わってゆくことになるのでした。
元勇者のデブ男が愛されハーレムを築くまで
あれい
ファンタジー
田代学はデブ男である。家族には冷たくされ、学校ではいじめを受けてきた。高校入学を前に一人暮らしをするが、高校に行くのが憂鬱だ。引っ越し初日、学は異世界に勇者召喚され、魔王と戦うことになる。そして7年後、学は無事、魔王討伐を成し遂げ、異世界から帰還することになる。だが、学を召喚した女神アイリスは元の世界ではなく、男女比が1:20のパラレルワールドへの帰還を勧めてきて……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる