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PART 1 : ハルの嵐
No.05 ナツと使命
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「俺の命を守る……?」
心当たりはあの『黒い泥』だが、あれに狙われる理由が思い当たらない。
そもそもあの『黒い泥』は何なのか?
ハルにとってはわからないことだらけだ。
そんなことはナツにとっては承知のことだろう。
「そう。一つずつ説明していくわね。
あなたが狙われている理由は――ちょっと『並行世界』に関わってくることだから一旦後回し」
「えー……?」
そこが一番知りたいところなのだが、と思うものの、物事には順序がある。
黙って話を聞くことにした。
「まずさっきあなたを襲ったヤツ……アレは『デブリ』という、言ってみれば『魔物』みたいなものね」
「デブリ……か」
『黒い泥』=デブリということがわかった。
そして、それがなぜかハルを狙っているということも。
「デブリは並行世界の『狭間』に漂うもの、とだけ覚えておけばいいわ。これも並行世界そのものについて話す時に触れるから。
重要なのは、本来なら世界に干渉することのないはずのデブリが、今この世界に溢れ出してあなたを狙っているということ。
とは言っても、デブリ自体に意思とかそういうものはない……はずなのよね」
「だが、おまえが自分で言ったんだろう? 俺の命を狙ってるって」
「うん。でも、それはデブリが自分の意思で狙っているということとイコールじゃないわよ?」
「む……? いや、確かに……?」
デブリがハルに襲い掛かって来たことから勝手にそう思っていたが、ナツの言が正しければデブリ自体に意思はない。
では偶然デブリが襲ってくるのかと言えば――それも違うだろう。でなければ、ナツがわざわざ『守りに来た』というはずはないのだから。
「デブリをこの世界に誘導してあなたを狙っているヤツがいる、そういうこと」
「犯人がいるってわけか……」
「うん。まだ犯人は掴めていないんだけど、ハルを殺されるわけにはいかないわ。だからこうして守りに来たってわけ」
話の流れでそのままナツの言葉を信じてしまっていることにハルも気付いていたが、今はそのまま会話を進めることにした。
デブリにしろ、デブリを送り込んできている犯人にしろ、ハル自身に狙われる心当たりは全くない。
「よし、俺が狙われているってことは一旦了解した。あのデブリってヤツが危険ってこともわかった。
じゃあ次は、なぜ俺が狙われているのかってことだな」
先ほどは『一旦後回し』とされたことであるが、ここに触れないわけにはいかないだろう。
デブリという不可解な存在について先に疑問を解消し、根本的なことについて話す際の邪魔にならないように、という配慮なのだろうとハルは勝手に思っておくこととする。
ナツも頷き、ハルの疑問に答えようとする。
「ハルが狙われている理由は――結論から言うと、あなたは並行世界における『特異点』なの。あ、まぁ用語としちゃ微妙に間違ってるんだけど……いやまぁ他に言いようがないからいっか」
「『特異点』……? 俺が?」
「そう。数ある並行世界の中、今のところ観測できている唯一の特異点。それがハル、あなたなのよ」
ナツの言葉に引っ掛かるところはあるが、おそらくは後々語られることだろう、とハルは一旦置いておくこととする。
それよりも優先すべき話は、自分の命が狙われる理由――『特異点』であるということだろう。
「私たちが観測できる並行世界は幾つもあるんだけど、その中でも『法則』はあるのね。
で、ハルはその『法則』から逸脱しているってわけ」
「……その『法則』はなんだ?」
一拍置いて、ナツは答える。
「――性別よ」
「?」
「簡単に言うと、複数の並行世界における私たち――私とハル、それに他の私たちの性別なんだけど……ハル、あなた以外は全員『女』なの。
そして、今のところあなた……っていうか、私たち以外に並行世界間で性別が異なる人物っていないのよ」
「いや、待て待て!? 『並行世界』なんだろ? なら、ある人物の性別が違うという世界が合ってもおかしくないんじゃないか?
……おまえの並行世界という世迷言が正しいことを仮定すれば、だが」
結局はそこに行きつくことになる。
「うん、並行世界の証明はもうちょっと待ってもらうことになるけど……そうね、事前に説明はしておいた方がいいよね。
というわけで、後回しにしていた『並行世界そのもの』について説明しましょうか」
心当たりはあの『黒い泥』だが、あれに狙われる理由が思い当たらない。
そもそもあの『黒い泥』は何なのか?
ハルにとってはわからないことだらけだ。
そんなことはナツにとっては承知のことだろう。
「そう。一つずつ説明していくわね。
あなたが狙われている理由は――ちょっと『並行世界』に関わってくることだから一旦後回し」
「えー……?」
そこが一番知りたいところなのだが、と思うものの、物事には順序がある。
黙って話を聞くことにした。
「まずさっきあなたを襲ったヤツ……アレは『デブリ』という、言ってみれば『魔物』みたいなものね」
「デブリ……か」
『黒い泥』=デブリということがわかった。
そして、それがなぜかハルを狙っているということも。
「デブリは並行世界の『狭間』に漂うもの、とだけ覚えておけばいいわ。これも並行世界そのものについて話す時に触れるから。
重要なのは、本来なら世界に干渉することのないはずのデブリが、今この世界に溢れ出してあなたを狙っているということ。
とは言っても、デブリ自体に意思とかそういうものはない……はずなのよね」
「だが、おまえが自分で言ったんだろう? 俺の命を狙ってるって」
「うん。でも、それはデブリが自分の意思で狙っているということとイコールじゃないわよ?」
「む……? いや、確かに……?」
デブリがハルに襲い掛かって来たことから勝手にそう思っていたが、ナツの言が正しければデブリ自体に意思はない。
では偶然デブリが襲ってくるのかと言えば――それも違うだろう。でなければ、ナツがわざわざ『守りに来た』というはずはないのだから。
「デブリをこの世界に誘導してあなたを狙っているヤツがいる、そういうこと」
「犯人がいるってわけか……」
「うん。まだ犯人は掴めていないんだけど、ハルを殺されるわけにはいかないわ。だからこうして守りに来たってわけ」
話の流れでそのままナツの言葉を信じてしまっていることにハルも気付いていたが、今はそのまま会話を進めることにした。
デブリにしろ、デブリを送り込んできている犯人にしろ、ハル自身に狙われる心当たりは全くない。
「よし、俺が狙われているってことは一旦了解した。あのデブリってヤツが危険ってこともわかった。
じゃあ次は、なぜ俺が狙われているのかってことだな」
先ほどは『一旦後回し』とされたことであるが、ここに触れないわけにはいかないだろう。
デブリという不可解な存在について先に疑問を解消し、根本的なことについて話す際の邪魔にならないように、という配慮なのだろうとハルは勝手に思っておくこととする。
ナツも頷き、ハルの疑問に答えようとする。
「ハルが狙われている理由は――結論から言うと、あなたは並行世界における『特異点』なの。あ、まぁ用語としちゃ微妙に間違ってるんだけど……いやまぁ他に言いようがないからいっか」
「『特異点』……? 俺が?」
「そう。数ある並行世界の中、今のところ観測できている唯一の特異点。それがハル、あなたなのよ」
ナツの言葉に引っ掛かるところはあるが、おそらくは後々語られることだろう、とハルは一旦置いておくこととする。
それよりも優先すべき話は、自分の命が狙われる理由――『特異点』であるということだろう。
「私たちが観測できる並行世界は幾つもあるんだけど、その中でも『法則』はあるのね。
で、ハルはその『法則』から逸脱しているってわけ」
「……その『法則』はなんだ?」
一拍置いて、ナツは答える。
「――性別よ」
「?」
「簡単に言うと、複数の並行世界における私たち――私とハル、それに他の私たちの性別なんだけど……ハル、あなた以外は全員『女』なの。
そして、今のところあなた……っていうか、私たち以外に並行世界間で性別が異なる人物っていないのよ」
「いや、待て待て!? 『並行世界』なんだろ? なら、ある人物の性別が違うという世界が合ってもおかしくないんじゃないか?
……おまえの並行世界という世迷言が正しいことを仮定すれば、だが」
結局はそこに行きつくことになる。
「うん、並行世界の証明はもうちょっと待ってもらうことになるけど……そうね、事前に説明はしておいた方がいいよね。
というわけで、後回しにしていた『並行世界そのもの』について説明しましょうか」
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