32 / 69
2.黄金の夜鳴鶯
気分転換
しおりを挟む
それにはとうとうなにも言えなくなってしまったフェオドーラ。ミールの言葉の続きを待った。
「もちろん、これはまだクララ嬢には言うな。あいつの口から言ってもらわなければならない。そして、それをどう判断するかはクララ嬢だからだ」
ミールの言葉に頷くドーラ。
「とにかく、こっから先はどうやってドミトリーが裁判でクララ嬢を使うかはわからないからなんとも言えないが、少なくとも彼女が呼び出されたのはそういった理由がある」
ドーラにもこれ以上、なにもできることはない。わかったとだけ返事をして、部屋から出た。
「夕ごはんにしましょう。クララたちが待ってるから」
彼女の言葉にそうだなと苦笑いして、ドーラのあとをついていった。
どうやらアリーナからはなにも聞かされていないのだろう。クララとアリーナはいつも通りに和気藹々とおしゃべりを楽しんでいる。そんな中で先ほどの話をするのははばかられた二人は無言で食事を進めた。
「明日はグルースンのおっさんのところだよな?」
食後、クララがハーブティーを飲んでリラックスしているときにミールが確認してきた。グルースンというのは、エルスオング大公国の調香師たちの中ではかなり名の知れた人で、精油、エッセンシャルオイルの原料である植物を何種類か栽培している人だ。この国で採取できる精油は土地柄少なく、かなり貴重なものであり高価だ。『ステルラ』では一種類だけそこで生産精油を使っている。
「うん。この時期だからあんまり収穫物はないと思うけど、加工場と乾燥小屋を見にいくつもり」
今回の訪問は第一級認定調香師としての視察半分、『ステルラ』の店主としての買い手半分でいく。だから、花が咲いてなくても仕事としては十分成り立つのだ。クララとアリーナは楽しみにしていそうながらも真剣な表情で聞いている。
「二人ともそんなに緊張していては、朝から疲れてしまいますよ? ある程度、肩の力を抜いてくださいね」
昨日のこともある。クララたちは一度、失敗しているからこそ、余計に力を入れすぎそうで先に力を抜くように言った。どうやら図星だったようで、二人は顔を見合わせ、笑いあった。
普段ならば、遅くまで翌日の営業の準備をするが、ドーラもその晩は早めに就寝した。
「さぁ、行きましょう」
翌朝、ポローシェ侯爵の家紋付き馬車に四人とも乗り込み、グルースン農園へ出発した。出発して間もなく、クララたちは互いに肩を寄せあって眠ってしまっており、ミールは彼の仕事の書類を、ドーラはコレンルファ伯爵夫人から依頼を受けたクララへの香水の処方箋を作っていた。
出発してから二時間後、目的の農園についたようで、馬車が停まった。
「おはようございます、グルースンさん」
代表してドーラが挨拶するとおお、よく来た、とにこやかに四人を出迎えてくれた老人がいた。
「こちらがこの農園の代表のグルースンさん。グルースンさん、こちらはコレンルファ伯爵令嬢クララさんと彼女付きのメイドのアリーナさんです。ちょうど調香師に興味があるということで、客人を突然連れてきてしまい、申し訳ありません」
クララたちに農園の主を、グルースンにクララたちを紹介したあと、突然の来訪を詫びる。しかし、グルースンは笑顔で大丈夫さ、と陽気に答える。
「ドーラ嬢ちゃんならば、そうたくさんの人を連れてくるこったぁねぇ。だから、一人や二人程度なら問題ないさ」
早速、グルースンに農園とその施設を視察させてもらった。やはり多くの精油を作っているだけあって敷地も広大であり、移動では専用の馬車を使うほどだった。
「天候は例年と同じかちぃとだけ晴れ間が多かったから、レモングラスやセージは去年よりもよおさん育っておったぞ。ほかの作物、ローズやマジョラムもいつもどおりだ」
移動中の馬車ではグルースンが原料植物の生育状況を語る。それをドーラは記録用紙に書きとめていく。
「ま、価格には影響しないがね」
基本的に農作物はたくさん収穫できれば流通量も多くなる。それによって市場価格も変動し、単価は安くなる。不作のときはそれの反対だ。精油もその原料となる植物が多く収穫できれば当然、生産できる精油の量も多くなる。しかし、あまり値段には反映されない。それは『技術』の結晶だからだ。
「さぁ、どうだね? 土の状況とかみてみるかい?」
すでに綺麗に耕されている農地に案内されたドーラはいいえ、と苦笑いしながら答える。
「毎回、同じことを言ってるような気がしますけど、精油製造官のグルースンさんにはこちらの知識は負けますよ」
精油製造官というのは、調香師にしか就けない職種の一つだ。精油の製造やその原料となる植物の栽培を管理する職種で、公の機関、調香院の管轄でもある。
だから、このグルースンの農園のことは彼が一番知り尽くしている。ハハハとグルースンもそれを否定しない。
「そういうことにしておくか」
見た感じ異常は感じられなかったドーラたち一行は再び馬車に乗りこみ、次の目的地、製造部に向かった。
製造部はちょうど作業中で、多くの工員が忙しなく働いていた。
「ここも去年に新しい機械を買ってもらったからか、かなり効率がよくなった。もちろん、帝国産の機械のほうがもっと早く採れそうな気がするが、ま、今んとこはこれでもエルスオング大公国内で使う分にゃ十分余裕だ」
グルースンは目の前の機械を指しながらそう自慢する。ドーラはそれなかそうでしたか、と笑う。去年は彼女自身が担当ではなかったものの、この機械を導入するための審議会議には出席していたから覚えていた。
「とりあえず、できたてのローズだ、どうだね?」
そう言って今しぼりたてのオイルが入った褐色瓶を手渡した。渡された彼女は蓋を開けて匂いを嗅ぐ。
「ええ、問題ありませんね」
ドーラも頷き返す。よかったよかったと安心したようなグルースン。彼は彼なりに心配していたのだろう。
すべての施設の視察を終えたドーラたち四人は農園のふちにあるテラスで昼食を食べた。
「あら、おいしいですよ?」
料理が苦手なはずのアリーナが作ったのに、かなりおいしく感じられた。それはミールも同じようだったみたいで、二人ともどういうことかと問うと、うまく説明できないアリーナにかわってクララが答えた。
「アリーナも十分、料理は作れるんです。なんですけど、コレンルファ伯爵家では基準に満たなくて。それで料理を作る機会が減ったので、普段は料理は苦手ということにしているんです」
その説明に納得したドーラとミール。彼女の作った昼食はどちらかというと庶民的。伯爵家には合わなかったのだろう。
「そういえば、一つお聞きしたかったのですが、植物が多く収穫できたのに、なぜ精油の値段は変わらないとおっしゃったのでしょう」
食事後、不意にクララが尋ねてきた。ドーラはそこに興味を持ちましたか、とにこやかに返す。
「先ほども見ましたとおり、精油というのは収穫した後、多くの人の手で加工されます。その機械を動かすための費用や人件費がかかるうえ、その花から採れる精油の量はわずかしかありません。だから、普段の食事のように収穫量が値段に反映されることはありません。むしろ、特に希少価値が高いものについてはその逆、収穫量が少なければ値段が高くなることはあっても、収穫量が増加しても安くなることはありませんね」
彼女の説明になるほど、と目を輝かせるクララ。
そのあとはしばらく談笑してから、四人は帰途についた。明日の予定もあるし、何よりドーラはコレンルファ伯爵夫人との約束を果たさねばならない。ゆっくりしている余裕はなかった。
ちょうど四人が『ステルラ』へ到着したとき、店の前に一台の馬車が停まっていた。
「久しぶり」
そこから降りてきたのは、クララをこの店に導いた人、アレクサンドル・ハヴルスク公爵子息だった。
「明日、馬鹿の裁判に呼ばれてるんだって?」
応接室でアレクサンドルはそう切り出した。本来ならば、貴族の話の中にドーラはいないほうがいい。だけれども、今、クララは『ステルラ』で治療中だから、彼女に負担になることはできるだけ避けたほうがいい。
「はい」
さすがに明日のことだ。アリーナかコレンルファ伯爵夫人付きのメイドの誰かから聞いていたようだった。
「またあの馬鹿がなにかやらかすのでなければいいんだけど。まあ、とにかくむやみやたらとあいつをかばうことはしないでくれ」
彼はクララを心配しているのか、それともただドミトリーという弟を突き放したいのか分からなかった。しかし、クララはその含んでいるものに気づいているのか、はい、と頷く。じゃあまた、明日、あちらで、と言ってアレクサンドルは帰っていった。
クララは少しびっくりしていたようだったが、ほとんど落ち着いている。
「もちろん、これはまだクララ嬢には言うな。あいつの口から言ってもらわなければならない。そして、それをどう判断するかはクララ嬢だからだ」
ミールの言葉に頷くドーラ。
「とにかく、こっから先はどうやってドミトリーが裁判でクララ嬢を使うかはわからないからなんとも言えないが、少なくとも彼女が呼び出されたのはそういった理由がある」
ドーラにもこれ以上、なにもできることはない。わかったとだけ返事をして、部屋から出た。
「夕ごはんにしましょう。クララたちが待ってるから」
彼女の言葉にそうだなと苦笑いして、ドーラのあとをついていった。
どうやらアリーナからはなにも聞かされていないのだろう。クララとアリーナはいつも通りに和気藹々とおしゃべりを楽しんでいる。そんな中で先ほどの話をするのははばかられた二人は無言で食事を進めた。
「明日はグルースンのおっさんのところだよな?」
食後、クララがハーブティーを飲んでリラックスしているときにミールが確認してきた。グルースンというのは、エルスオング大公国の調香師たちの中ではかなり名の知れた人で、精油、エッセンシャルオイルの原料である植物を何種類か栽培している人だ。この国で採取できる精油は土地柄少なく、かなり貴重なものであり高価だ。『ステルラ』では一種類だけそこで生産精油を使っている。
「うん。この時期だからあんまり収穫物はないと思うけど、加工場と乾燥小屋を見にいくつもり」
今回の訪問は第一級認定調香師としての視察半分、『ステルラ』の店主としての買い手半分でいく。だから、花が咲いてなくても仕事としては十分成り立つのだ。クララとアリーナは楽しみにしていそうながらも真剣な表情で聞いている。
「二人ともそんなに緊張していては、朝から疲れてしまいますよ? ある程度、肩の力を抜いてくださいね」
昨日のこともある。クララたちは一度、失敗しているからこそ、余計に力を入れすぎそうで先に力を抜くように言った。どうやら図星だったようで、二人は顔を見合わせ、笑いあった。
普段ならば、遅くまで翌日の営業の準備をするが、ドーラもその晩は早めに就寝した。
「さぁ、行きましょう」
翌朝、ポローシェ侯爵の家紋付き馬車に四人とも乗り込み、グルースン農園へ出発した。出発して間もなく、クララたちは互いに肩を寄せあって眠ってしまっており、ミールは彼の仕事の書類を、ドーラはコレンルファ伯爵夫人から依頼を受けたクララへの香水の処方箋を作っていた。
出発してから二時間後、目的の農園についたようで、馬車が停まった。
「おはようございます、グルースンさん」
代表してドーラが挨拶するとおお、よく来た、とにこやかに四人を出迎えてくれた老人がいた。
「こちらがこの農園の代表のグルースンさん。グルースンさん、こちらはコレンルファ伯爵令嬢クララさんと彼女付きのメイドのアリーナさんです。ちょうど調香師に興味があるということで、客人を突然連れてきてしまい、申し訳ありません」
クララたちに農園の主を、グルースンにクララたちを紹介したあと、突然の来訪を詫びる。しかし、グルースンは笑顔で大丈夫さ、と陽気に答える。
「ドーラ嬢ちゃんならば、そうたくさんの人を連れてくるこったぁねぇ。だから、一人や二人程度なら問題ないさ」
早速、グルースンに農園とその施設を視察させてもらった。やはり多くの精油を作っているだけあって敷地も広大であり、移動では専用の馬車を使うほどだった。
「天候は例年と同じかちぃとだけ晴れ間が多かったから、レモングラスやセージは去年よりもよおさん育っておったぞ。ほかの作物、ローズやマジョラムもいつもどおりだ」
移動中の馬車ではグルースンが原料植物の生育状況を語る。それをドーラは記録用紙に書きとめていく。
「ま、価格には影響しないがね」
基本的に農作物はたくさん収穫できれば流通量も多くなる。それによって市場価格も変動し、単価は安くなる。不作のときはそれの反対だ。精油もその原料となる植物が多く収穫できれば当然、生産できる精油の量も多くなる。しかし、あまり値段には反映されない。それは『技術』の結晶だからだ。
「さぁ、どうだね? 土の状況とかみてみるかい?」
すでに綺麗に耕されている農地に案内されたドーラはいいえ、と苦笑いしながら答える。
「毎回、同じことを言ってるような気がしますけど、精油製造官のグルースンさんにはこちらの知識は負けますよ」
精油製造官というのは、調香師にしか就けない職種の一つだ。精油の製造やその原料となる植物の栽培を管理する職種で、公の機関、調香院の管轄でもある。
だから、このグルースンの農園のことは彼が一番知り尽くしている。ハハハとグルースンもそれを否定しない。
「そういうことにしておくか」
見た感じ異常は感じられなかったドーラたち一行は再び馬車に乗りこみ、次の目的地、製造部に向かった。
製造部はちょうど作業中で、多くの工員が忙しなく働いていた。
「ここも去年に新しい機械を買ってもらったからか、かなり効率がよくなった。もちろん、帝国産の機械のほうがもっと早く採れそうな気がするが、ま、今んとこはこれでもエルスオング大公国内で使う分にゃ十分余裕だ」
グルースンは目の前の機械を指しながらそう自慢する。ドーラはそれなかそうでしたか、と笑う。去年は彼女自身が担当ではなかったものの、この機械を導入するための審議会議には出席していたから覚えていた。
「とりあえず、できたてのローズだ、どうだね?」
そう言って今しぼりたてのオイルが入った褐色瓶を手渡した。渡された彼女は蓋を開けて匂いを嗅ぐ。
「ええ、問題ありませんね」
ドーラも頷き返す。よかったよかったと安心したようなグルースン。彼は彼なりに心配していたのだろう。
すべての施設の視察を終えたドーラたち四人は農園のふちにあるテラスで昼食を食べた。
「あら、おいしいですよ?」
料理が苦手なはずのアリーナが作ったのに、かなりおいしく感じられた。それはミールも同じようだったみたいで、二人ともどういうことかと問うと、うまく説明できないアリーナにかわってクララが答えた。
「アリーナも十分、料理は作れるんです。なんですけど、コレンルファ伯爵家では基準に満たなくて。それで料理を作る機会が減ったので、普段は料理は苦手ということにしているんです」
その説明に納得したドーラとミール。彼女の作った昼食はどちらかというと庶民的。伯爵家には合わなかったのだろう。
「そういえば、一つお聞きしたかったのですが、植物が多く収穫できたのに、なぜ精油の値段は変わらないとおっしゃったのでしょう」
食事後、不意にクララが尋ねてきた。ドーラはそこに興味を持ちましたか、とにこやかに返す。
「先ほども見ましたとおり、精油というのは収穫した後、多くの人の手で加工されます。その機械を動かすための費用や人件費がかかるうえ、その花から採れる精油の量はわずかしかありません。だから、普段の食事のように収穫量が値段に反映されることはありません。むしろ、特に希少価値が高いものについてはその逆、収穫量が少なければ値段が高くなることはあっても、収穫量が増加しても安くなることはありませんね」
彼女の説明になるほど、と目を輝かせるクララ。
そのあとはしばらく談笑してから、四人は帰途についた。明日の予定もあるし、何よりドーラはコレンルファ伯爵夫人との約束を果たさねばならない。ゆっくりしている余裕はなかった。
ちょうど四人が『ステルラ』へ到着したとき、店の前に一台の馬車が停まっていた。
「久しぶり」
そこから降りてきたのは、クララをこの店に導いた人、アレクサンドル・ハヴルスク公爵子息だった。
「明日、馬鹿の裁判に呼ばれてるんだって?」
応接室でアレクサンドルはそう切り出した。本来ならば、貴族の話の中にドーラはいないほうがいい。だけれども、今、クララは『ステルラ』で治療中だから、彼女に負担になることはできるだけ避けたほうがいい。
「はい」
さすがに明日のことだ。アリーナかコレンルファ伯爵夫人付きのメイドの誰かから聞いていたようだった。
「またあの馬鹿がなにかやらかすのでなければいいんだけど。まあ、とにかくむやみやたらとあいつをかばうことはしないでくれ」
彼はクララを心配しているのか、それともただドミトリーという弟を突き放したいのか分からなかった。しかし、クララはその含んでいるものに気づいているのか、はい、と頷く。じゃあまた、明日、あちらで、と言ってアレクサンドルは帰っていった。
クララは少しびっくりしていたようだったが、ほとんど落ち着いている。
0
お気に入りに追加
115
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。
他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。
それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる