20 / 69
十歳
距離
しおりを挟む
「我が愚息、クリスティアンも本来ならば今回、成人させるべきだった。しかし、私が間違ってしまったばかりに、あの女の一味を増長させてしまった。あいつらにとって正当な出自であるクリスティアンは目の上のたん瘤だ」
ディートリヒ王は王族の内部事情を話しだした。自分はいくら王族に近い立場といえども、聞いていい話ではないだろうと思った。
だけども、先ほどの話どおりならば、これも王宮に出仕するためには聞いておいた方がよいだろうと踏んだのだろう。
すでに覚悟は決めている。だから、彼の話をしっかりと聞くことができた。
しかし、よくよく考えると、ディートリヒ王はフレデリカのことをあの女、と読んだ。これに王妃がなにも言わないところを見ると、すでに二人の間ではそのことは解決されているのだろう、見ることができる。
「あいつらはここ最近、どういう手を使っているのか知らないが、積極的にクリスティアンやシシィを排除するようになってきた」
その発言にはアリアもさすがに驚いた。
まさか、あの人はすでに王族殺しに手を出そうとしているのか。
もちろん、自分が手を下したとは分からないようにするとは思うが、それでもリスクが大きすぎる。
「ここだけの話だが、この間の茶会でシシィとクリスティアンともに襲われかけた」
下手人は捕まったがな、とディートリヒ王はこともなげにいうが、アリアはその言葉には言葉も出なかった。
王妃を見ると、まつ毛を伏せており、そのときのことを思い出していたのだろう。少し苦しそうな表情だった。
「だからこそ、あの女が来る可能性を考慮して、物理的な被害だけではない、精神的な被害も出すわけにはいかなかった」
彼の言葉に頷くしかなかった。
さすがに王妃の不参加は様々な憶測を呼ぶ。しかし、成人前の王太子ならば、ある程度、言い訳が立つ。
自分自身でさえ何もできないが、王族まで何も手出しができない、というところを見ると、協力せざるを得ないだろう。
もちろん、全ての目的を達成するには苦しい展開だが、今の状況ならば、母親のサポートも得られるのではないだろうか。
「アリア・スフォルツァ公爵令嬢」
ディートリヒ王は少しためらいがちにアリアの名前を呼んだ。
国王に名前を呼ばれると、さすがのアリアもすっと背が伸びる。
「そなたは十歳。公爵令嬢、という立場からすると、すでに婚約者を定められても仕方ない年齢だ。だが、レーン、そなたの母親はそれをしていない。悪いがそれを利用させてもらってもよいか?」
彼はあえて問いかけの形をとった。その真意はどこにあるのか分からなかったが、アリアの心はすでに決まっていた。
「もちろんでございます。王妃殿下の侍女として勉強しつつ、陛下の役に立てれば幸いと存じます」
アリアはこの前とは違って、今度こそしっかりと返答した。その返答にディートリヒ王は満足したように笑ったが、どこか寂しそうでもあった。
「そういえば」
話がひと段落した後、今度はシシィ王妃から声をかけられた。
「何でございましょうか?」
まさか王妃にまで声をかけられるとは思わなかったので、ハッとした。
「ミスティアとこの後、会っていかないか?」
シシィ王妃は少し固い声で尋ねた。もちろん、夫を狂わせたフレデリカのことは許せないだろうが、娘のミスティア王女についてもあまりその口から名前を聞いたことはない。だからこそ、余計にアリアは何があったのだろうかと尋ねたかったが、この場で聞けなかった。
それでも最近、ミスティア王女に会っていなかったことをいまさらながら思い出したので、その提案に迷うことなくはい、と受けたアリアだった。
「アリアお姉さま」
ミスティア王女の部屋は以前とは異なり、あの女が入り浸っておらず、どこか寂しさがある。まあ、この前の夜会の影響で王宮に引きこもって、ふんぞり返っているよりも、どこか自分を支援してくれる貴族の家にいて、密談しているのであろうとは容易く予想できたのだが。
彼女はアリアが部屋に入るなり、抱き着いてきた。
「殿下。ここはまだ侍女たちがいますので」
アリアも本当はミスティア王女に抱きつきたい。
でも、今ここで軽率な行動をとったら、どうなるのか分からない、
力の弱い彼女を軽く引きはがして、改めて挨拶した。そんなアリアの様子に、ミスティア王女は、
「お姉さまはどんどん私の手の届かない場所に行ってしまいますのね」
と、寂しそうな笑みを浮かべていた。
まだ、成人前の王女からしてみれば、そのように取れるのだろう。
だけれども、動き出してしまった以上、引き返すこともできない。
「最近何かが変わって来ているみたいですね」
ミスティア王女は夜会のことは知らされていないのだろう。『何か』というあいまいな言葉にも一つの線を感じた。アリアはどこまで言ってもいいのか分からなかった。だから、うかつに情報を伝えることができない。
「もし、あの母親を消すのに私が足枷になっているのでしたら私ごと消してください、お姉さま」
窓の外を見ながら言われたその言葉に、アリアは固まった。
もしや。
侍女たちから漏れ聞いたのか。
それとも。
思ったよりもミスティア王女は大人なだけなのか。侍女や周囲の様子から、自分と母親の置かれた立場を理解しているだけなのか。
そんな彼女にゆっくりと首を横に振りながら告げる。
「ミスティア王女殿下。あなたの母親を断罪することはありましても、罪のない殿下を断罪することはできません」
アリアはあえてフレデリカのことを名前でも、今の肩書きでも呼ばなかった。
「多分、それは陛下や王妃殿下も同じだと思います。こうやって私がお会いできているので」
確証はなかったが、王妃殿下の言葉からして、それであっているだろう。
おそらくフレデリカのことは憎んでいても、まだこの目の前にいる年端もいかない少女のことは守る気があるのではないか。
アリアにはそう感じてならない。
ありがとうございます、そうミスティア王女は寂しそうに頭を下げた。
少し突き放すには早すぎたかな、と後悔しながらも、これでいい、と思いながら、王女の部屋から退出した。
ディートリヒ王は王族の内部事情を話しだした。自分はいくら王族に近い立場といえども、聞いていい話ではないだろうと思った。
だけども、先ほどの話どおりならば、これも王宮に出仕するためには聞いておいた方がよいだろうと踏んだのだろう。
すでに覚悟は決めている。だから、彼の話をしっかりと聞くことができた。
しかし、よくよく考えると、ディートリヒ王はフレデリカのことをあの女、と読んだ。これに王妃がなにも言わないところを見ると、すでに二人の間ではそのことは解決されているのだろう、見ることができる。
「あいつらはここ最近、どういう手を使っているのか知らないが、積極的にクリスティアンやシシィを排除するようになってきた」
その発言にはアリアもさすがに驚いた。
まさか、あの人はすでに王族殺しに手を出そうとしているのか。
もちろん、自分が手を下したとは分からないようにするとは思うが、それでもリスクが大きすぎる。
「ここだけの話だが、この間の茶会でシシィとクリスティアンともに襲われかけた」
下手人は捕まったがな、とディートリヒ王はこともなげにいうが、アリアはその言葉には言葉も出なかった。
王妃を見ると、まつ毛を伏せており、そのときのことを思い出していたのだろう。少し苦しそうな表情だった。
「だからこそ、あの女が来る可能性を考慮して、物理的な被害だけではない、精神的な被害も出すわけにはいかなかった」
彼の言葉に頷くしかなかった。
さすがに王妃の不参加は様々な憶測を呼ぶ。しかし、成人前の王太子ならば、ある程度、言い訳が立つ。
自分自身でさえ何もできないが、王族まで何も手出しができない、というところを見ると、協力せざるを得ないだろう。
もちろん、全ての目的を達成するには苦しい展開だが、今の状況ならば、母親のサポートも得られるのではないだろうか。
「アリア・スフォルツァ公爵令嬢」
ディートリヒ王は少しためらいがちにアリアの名前を呼んだ。
国王に名前を呼ばれると、さすがのアリアもすっと背が伸びる。
「そなたは十歳。公爵令嬢、という立場からすると、すでに婚約者を定められても仕方ない年齢だ。だが、レーン、そなたの母親はそれをしていない。悪いがそれを利用させてもらってもよいか?」
彼はあえて問いかけの形をとった。その真意はどこにあるのか分からなかったが、アリアの心はすでに決まっていた。
「もちろんでございます。王妃殿下の侍女として勉強しつつ、陛下の役に立てれば幸いと存じます」
アリアはこの前とは違って、今度こそしっかりと返答した。その返答にディートリヒ王は満足したように笑ったが、どこか寂しそうでもあった。
「そういえば」
話がひと段落した後、今度はシシィ王妃から声をかけられた。
「何でございましょうか?」
まさか王妃にまで声をかけられるとは思わなかったので、ハッとした。
「ミスティアとこの後、会っていかないか?」
シシィ王妃は少し固い声で尋ねた。もちろん、夫を狂わせたフレデリカのことは許せないだろうが、娘のミスティア王女についてもあまりその口から名前を聞いたことはない。だからこそ、余計にアリアは何があったのだろうかと尋ねたかったが、この場で聞けなかった。
それでも最近、ミスティア王女に会っていなかったことをいまさらながら思い出したので、その提案に迷うことなくはい、と受けたアリアだった。
「アリアお姉さま」
ミスティア王女の部屋は以前とは異なり、あの女が入り浸っておらず、どこか寂しさがある。まあ、この前の夜会の影響で王宮に引きこもって、ふんぞり返っているよりも、どこか自分を支援してくれる貴族の家にいて、密談しているのであろうとは容易く予想できたのだが。
彼女はアリアが部屋に入るなり、抱き着いてきた。
「殿下。ここはまだ侍女たちがいますので」
アリアも本当はミスティア王女に抱きつきたい。
でも、今ここで軽率な行動をとったら、どうなるのか分からない、
力の弱い彼女を軽く引きはがして、改めて挨拶した。そんなアリアの様子に、ミスティア王女は、
「お姉さまはどんどん私の手の届かない場所に行ってしまいますのね」
と、寂しそうな笑みを浮かべていた。
まだ、成人前の王女からしてみれば、そのように取れるのだろう。
だけれども、動き出してしまった以上、引き返すこともできない。
「最近何かが変わって来ているみたいですね」
ミスティア王女は夜会のことは知らされていないのだろう。『何か』というあいまいな言葉にも一つの線を感じた。アリアはどこまで言ってもいいのか分からなかった。だから、うかつに情報を伝えることができない。
「もし、あの母親を消すのに私が足枷になっているのでしたら私ごと消してください、お姉さま」
窓の外を見ながら言われたその言葉に、アリアは固まった。
もしや。
侍女たちから漏れ聞いたのか。
それとも。
思ったよりもミスティア王女は大人なだけなのか。侍女や周囲の様子から、自分と母親の置かれた立場を理解しているだけなのか。
そんな彼女にゆっくりと首を横に振りながら告げる。
「ミスティア王女殿下。あなたの母親を断罪することはありましても、罪のない殿下を断罪することはできません」
アリアはあえてフレデリカのことを名前でも、今の肩書きでも呼ばなかった。
「多分、それは陛下や王妃殿下も同じだと思います。こうやって私がお会いできているので」
確証はなかったが、王妃殿下の言葉からして、それであっているだろう。
おそらくフレデリカのことは憎んでいても、まだこの目の前にいる年端もいかない少女のことは守る気があるのではないか。
アリアにはそう感じてならない。
ありがとうございます、そうミスティア王女は寂しそうに頭を下げた。
少し突き放すには早すぎたかな、と後悔しながらも、これでいい、と思いながら、王女の部屋から退出した。
0
お気に入りに追加
499
あなたにおすすめの小説
【完結】後妻に入ったら、夫のむすめが……でした
仲村 嘉高
恋愛
「むすめの世話をして欲しい」
夫からの求婚の言葉は、愛の言葉では無かったけれど、幼い娘を大切にする誠実な人だと思い、受け入れる事にした。
結婚前の顔合わせを「疲れて出かけたくないと言われた」や「今日はベッドから起きられないようだ」と、何度も反故にされた。
それでも、本当に申し訳なさそうに謝るので、「体が弱いならしょうがないわよ」と許してしまった。
結婚式は、お互いの親戚のみ。
なぜならお互い再婚だから。
そして、結婚式が終わり、新居へ……?
一緒に馬車に乗ったその方は誰ですか?
断罪イベント? よろしい、受けて立ちましょう!
寿司
恋愛
イリア=クリミアはある日突然前世の記憶を取り戻す。前世の自分は入江百合香(いりえ ゆりか)という日本人で、ここは乙女ゲームの世界で、私は悪役令嬢で、そしてイリア=クリミアは1/1に起きる断罪イベントで死んでしまうということを!
記憶を取り戻すのが遅かったイリアに残された時間は2週間もない。
そんなイリアが生き残るための唯一の手段は、婚約者エドワードと、妹エミリアの浮気の証拠を掴み、逆断罪イベントを起こすこと!?
ひょんなことから出会い、自分を手助けしてくれる謎の美青年ロキに振り回されたりドキドキさせられながらも死の運命を回避するため奔走する!
◆◆
第12回恋愛小説大賞にエントリーしてます。よろしくお願い致します。
◆◆
本編はざまぁ:恋愛=7:3ぐらいになっています。
エンディング後は恋愛要素を増し増しにした物語を更新していきます。
妹が約束を破ったので、もう借金の肩代わりはやめます
なかの豹吏
恋愛
「わたしも好きだけど……いいよ、姉さんに譲ってあげる」
双子の妹のステラリアはそう言った。
幼なじみのリオネル、わたしはずっと好きだった。 妹もそうだと思ってたから、この時は本当に嬉しかった。
なのに、王子と婚約したステラリアは、王子妃教育に耐えきれずに家に帰ってきた。 そして、
「やっぱり女は初恋を追うものよね、姉さんはこんな身体だし、わたし、リオネルの妻になるわっ!」
なんて、身勝手な事を言ってきたのだった。
※この作品は他サイトにも掲載されています。
異世界もふもふ死にかけライフ☆異世界転移して毛玉な呪いにかけられたら、凶相騎士団長様に拾われました。
和島逆
恋愛
社会人一年目、休日の山登り中に事故に遭った私は、気づけばひとり見知らぬ森の中にいた。そしてなぜか、姿がもふもふな小動物に変わっていて……?
しかも早速モンスターっぽい何かに襲われて死にかけてるし!
危ういところを助けてくれたのは、大剣をたずさえた無愛想な大男。
彼の緋色の瞳は、どうやらこの世界では凶相と言われるらしい。でもでも、地位は高い騎士団長様。
頼む騎士様、どうか私を保護してください!
あれ、でもこの人なんか怖くない?
心臓がバクバクして止まらないし、なんなら息も苦しいし……?
どうやら私は恐怖耐性のなさすぎる聖獣に変身してしまったらしい。いや恐怖だけで死ぬってどんだけよ!
人間に戻るためには騎士団長の助けを借りるしかない。でも騎士団長の側にいると死にかける!
……うん、詰んだ。
★「小説家になろう」先行投稿中です★
許してもらえるだなんて本気で思っているのですか?
風見ゆうみ
恋愛
ネイロス伯爵家の次女であるわたしは、幼い頃から変わった子だと言われ続け、家族だけじゃなく、周りの貴族から馬鹿にされ続けてきた。
そんなわたしを公爵である伯父はとても可愛がってくれていた。
ある日、伯父がお医者様から余命を宣告される。
それを聞いたわたしの家族は、子供のいない伯父の財産が父に入ると考えて豪遊し始める。
わたしの婚約者も伯父の遺産を当てにして、姉に乗り換え、姉は姉で伯父が選んでくれた自分の婚約者をわたしに押し付けてきた。
伯父が亡くなったあと、遺言書が公開され、そこには「遺留分以外の財産全てをリウ・ネイロスに、家督はリウ・ネイロスの婚約者に譲る」と書かれていた。
そのことを知った家族たちはわたしのご機嫌伺いを始める。
え……、許してもらえるだなんて本気で思ってるんですか?
※独特の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。
全裸で異世界に呼び出しておいて、国外追放って、そりゃあんまりじゃないの!?
猿喰 森繁
恋愛
私の名前は、琴葉 桜(ことのは さくら)30歳。会社員。
風呂に入ろうと、全裸になったら異世界から聖女として召喚(という名の無理やり誘拐された被害者)された自分で言うのもなんだけど、可哀そうな女である。
日本に帰すことは出来ないと言われ、渋々大人しく、言うことを聞いていたら、ある日、国外追放を宣告された可哀そうな女である。
「―――サクラ・コトノハ。今日をもって、お前を国外追放とする」
その言葉には一切の迷いもなく、情けも見えなかった。
自分たちが正義なんだと、これが正しいことなのだと疑わないその顔を見て、私はムクムクと怒りがわいてきた。
ずっと抑えてきたのに。我慢してきたのに。こんな理不尽なことはない。
日本から無理やり聖女だなんだと、無理やり呼んだくせに、今度は国外追放?
ふざけるのもいい加減にしろ。
温厚で優柔不断と言われ、ノーと言えない日本人だから何をしてもいいと思っているのか。日本人をなめるな。
「私だって好き好んでこんなところに来たわけじゃないんですよ!分かりますか?無理やり私をこの世界に呼んだのは、あなたたちのほうです。それなのにおかしくないですか?どうして、その女の子の言うことだけを信じて、守って、私は無視ですか?私の言葉もまともに聞くおつもりがないのも知ってますが、あなたがたのような人間が国の未来を背負っていくなんて寒気がしますね!そんな国を守る義務もないですし、私を国外追放するなら、どうぞ勝手になさるといいです。
ええ。
被害者はこっちだっつーの!
妊娠した愛妾の暗殺を疑われたのは、心優しき正妃様でした。〜さよなら陛下。貴方の事を愛していた私はもういないの〜
五月ふう
恋愛
「アリス……!!君がロゼッタの食事に毒を入れたんだろ……?自分の『正妃』としての地位がそんなに大切なのか?!」
今日は正妃アリスの誕生日を祝うパーティ。園庭には正妃の誕生日を祝うため、大勢の貴族たちが集まっている。主役である正妃アリスは自ら料理を作り、皆にふるまっていた。
「私は……ロゼッタの食事に毒を入れていないわ。」
アリスは毅然とした表情を浮かべて、はっきりとした口調で答えた。
銀色の髪に、透き通った緑の瞳を持つアリス。22歳を迎えたアリスは、多くの国民に慕われている。
「でもロゼッタが倒れたのは……君が作った料理を食べた直後だ!アリス……君は嫉妬に狂って、ロゼッタを傷つけたんだ‼僕の最愛の人を‼」
「まだ……毒を盛られたと決まったわけじゃないでしょう?ロゼッタが単に貧血で倒れた可能性もあるし……。」
突如倒れたロゼッタは医務室に運ばれ、現在看護を受けている。
「いや違う!それまで愛らしく微笑んでいたロゼッタが、突然血を吐いて倒れたんだぞ‼君が食事に何かを仕込んだんだ‼」
「落ち着いて……レオ……。」
「ロゼッタだけでなく、僕たちの子供まで亡き者にするつもりだったのだな‼」
愛人ロゼッタがレオナルドの子供を妊娠したとわかったのは、つい一週間前のことだ。ロゼッタは下級貴族の娘であり、本来ならばレオナルドと結ばれる身分ではなかった。
だが、正妃アリスには子供がいない。ロゼッタの存在はスウェルド王家にとって、重要なものとなっていた。国王レオナルドは、アリスのことを信じようとしない。
正妃の地位を剥奪され、牢屋に入れられることを予期したアリスはーーーー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる