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悪役令嬢の物語

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次の日、俺は学園にある一つの教室の前で足を止まらせてしまった。
 朝、こっそり渡された手紙の中に書かれていた部屋だ。一人でと書かれていた通り、何とか騎士を言いふくめてその部屋に来ていた。
「やっと来たわね」
 そこにはヒロインが仁王立ちで立ちつくしていた。鋭い眼差しが俺を睨む。
「それじゃあ、あんたに一つずつ話していくから耳の穴かっぽじてよく聞きなさい。まずあんたゲームしかしたことないって話だったけど小説があることは知ってるの」
「ああ、それなら」
 大人気のゲームだったからメディアミックスって奴をたくさんしていてその中の一つには、小説があったはずだ。俺は活字が苦手なのもあってみてない。
「でも読んではないのよね、何で。バカだから」
「失礼な。そうだけど。でもそれだけじゃなく姉ちゃんがアデール様は出てこないから読んでも無駄だよって教えてもらったんだよ。俺はアデール様一筋だったから
読まなかったんだ!!」
 無意味としりつつ胸を張ってしまう。そんな俺をヒロインはなんつうか、生易しいような目でヒロインは見てきていた。
「あんたのお姉さんって優しいのね」
「いや……優しくはねえけど」
 どっちかっていうと酷い。夜中に喉が渇いたとか言ってシュースを買わせにいくような奴だ。
「優しいわよ。だってお姉さんがあんたに見ないようにいったのあんたが落ち込むと思ったからでしょう」
「は、それは、どろ言う」
「あのね、小説はアデール様が主役で、そして内容はリアン様とアデール杵の恋物語なのよ」
「は。えっ。な……」
「読んでいないあなたが驚くのも無理はないけどすべて事実なのよ。物語はアデール様が婚約破棄を言い渡されて家からも追いだされるところから始まるの。
 その日一日をどこかで休めるような金もなく、また頼ることのできる相手もおらず、自信もなくしてここで死ぬのだと諦めた彼女の前にリアン様が訪れるの。そうして一つの手紙と宝石を渡して彼女にこう言うの。貴方はこんなことで折れるような人でないことを私は知っています。もし貴方に生きる気持ちがあるのなら、ここに来てくれと。そこの者たちならよくしてくれると。
 リアン様に絶忙に打ち拉がれていたアデール様は救われるの。全てに捨てられたけど、私にはリアン様がいたのだった。この方だけは幼いころからずっと見守ってくれていたのだと。
 そこからアデール様の過去が語られていくの。ゲームではちらりとしかふれられてなかったけど、アデール様は幼い頃ご両親との仲がよろしくなく、しかも王太子と婚約してしまうことで王家のことをよく思っていなかった両親から完全に疎まれ
てしまう。男であれば良かったのにと後指さされる彼女はそんな中で、完ぺきな女性であろうとするの。
 王子の婚約者として誰にも指差されないような完べきな女性。そして将来は王子を支え、この国をより良く、長くから続く家とこの国の確執さえをなくそうとそう誓って一人辛い道を歩みはじめるのです。
 婚約を持ってきたはずの王家すら、アイゼット家の力を削ぐためのものとしか考えていなくて周りが敵だらけの中一人、一生懸命、勉学や修業にはげむ姿は何度読んでも胸がはりさけそうだった。アデール様は優しくてそして努力家なお方だったのよ。
 それをぽっとでのヒロインに全て掻っ攫われた挙げ句、家がしたことまで全部背負わされて追放される何てあんまりよ。
 でも彼女にはリアン様がいた。
 リアン様はずっとそんな一人孤独の中戦う彼女を見てくださっていたの。陰ながら疲れた彼女にお茶をいれてくれたり、魔法のアドバイスをしたりしてアデール様を支えてくださっていたの。
 アデール様はそのことを思いだしもう一度、立ち上がってみようと決めたのよ。でもその時アデール様はリアン様が渡してくれた伝はは使わなかったわ。何かあればリアン様にも迷惑がもかかると思って、一人持ち前の強さと賢さでどんどん道を切り開いて行くの。
 リアン様はそんな彼女のことを心配し、探していて、そして二人は恋に落ち結ばれていく。
 最高のお話だったわ。
 私はゲームをやっている時ははヒロインと王子派だったけど、その作品をみるとリアアデにズボンしちゃったのだもの。もう毎日リアアデで妄想してたわ。
 良いこと。リアアデこそ至上!
 リアン様とアデール様こそ結ばれるべき運命の人なのよ」
 バーンってヒロインが最後胸をはった。俺は何が何なのか分からず目を白黒させる。
 分かる。いや、分かってしまうんだ。
 めちゃくちゃ詳しく話してくれて悲しいことに全部伝わってきた。でも理解したくないんだ。俺の憧れ、俺の理想。俺が大好きで大好きで仕方ない。好きすぎて毎日が辛いぐらいの彼女に恋人ができるなんて。
 しかも昨日の様子からして彼女はすでにリアンに思いをよせているようで……、
「え、そんなのうわきじゃん」
「ちょ、アデール様に何て失礼なこと言うの! まだお二人は恋仲ではないし、リアン様は身分もあってただ見守るだけと決めていらっしゃるし、アデール様は今はまだ恋心にも気付かず、じき王妃として苦労していらっしゃるところなのよ。
 貴方にわからないでしょう。じき王妃とは言えアイゼット家を縛り付けるためだけの婚約であることは、多くのものが知るところ。王子との仲もよくなくて後ろ指さされるような日々を過ごしていたアデール様がどれだけ苦しい日々をおくってきたか。
 それでも一人耐えていた所に王子がヒロインといい感じになりはじめどれだけその心を痛めたか。そして王子とヒロインがくっついてしまったら婚約はなくならなくとも己の居場所はなくなってしまう。どうにかしなければと苦しんで悲しんであげ句のはてに追い出され、絶望の果に立った時、傍に来てくれたリアン様にどれだけ救われたか。
 その後も見守り続けてくれるリアン様に想いを寄せるも必然だし、その前から薄っすらと恋心があった所で誰が責められるの。
 そもそも一度も彼女のことを恋人として大切にしてあげなかった王子が悪いんじゃない。
 それが浮気とか今更言ってもおそいのよ」
 ずがんって胸にささった。うわぁって胸元を抑えてしまうのをヒロインはふふんと勝ち誇った顔でみてきた。
「これで分かったわね。あんたには万に一つも勝ち目がないこと、アデール様はリアンと付き合うのよ!!」
 そして言いはなたれる言葉。
 わなわなと体が震えていく。いやだと声がでた。
「俺はそれでもアデール様と恋がしたい! もう俺はアデール様のことが嫌いな王子じゃなくて、アデール様のことが大好きな俺なんだよ! アデール様好き!! 今からでも俺を好きにさせてみせるから」
「はぁ、そんなの許すわけないでしょう」
「お前の許可なんて求めてないんだよ!」
「ふざけんなって」
 ぎゃあぎゃあ喚きだしてしまう。
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