死にたがりの悪役令嬢

わたちょ

文字の大きさ
上 下
42 / 48
第二部

悪役令嬢の記憶

しおりを挟む
「思い出しましたわ! 思い出しました!」
 私の声が部屋のなかに響きます。こんな夜中に大声を出すなどはしたないとは思いますがそれでも抑えられませんでした。思い出してしまったのです。先生の顔を何処で見たことがあるのか。それは前世でした。
 今日、私は前世の夢を見ました。思い出してからというもの前世の夢事態はよく見ていたのですが今日のはいつもと少し違い前世でやりこんだこの世界のゲームの夢でした。
 第二部をやりおえ、そしてまだ見ぬ第三部に手を伸ばす。そうです。ゲーム『愛と魔法の物語』は前世ではかなりの人気があり続編まで出ているゲームなのです。だからこそ私は魔王が私と同じような存在であることを知っていたのです。第一部では封印されただけの魔王ですが、第二部では焦点があてられ攻略キャラにまでなっていましたから。そして第三部ですが、私第三部に関しては詳しくは知らないのです。
 丁度結婚詐欺師と付き合いだした頃に発売が発表されて、発売された後は余裕がなくて買えなかったのです。それでも広告を見たりしていたので多少の情報なら知っています。その広告のなかで見たのがあの先生の素顔でした。この人は一体とドキドキしたことがあるのを思い出しましたわ。確か煽り文句にも似たような言葉が書かれていたような……。
 しかもうろ覚えではありますが、先生も攻略キャラの一人だったような。それもかなりメインに近い……。
 そこまで考えて私は時計を見ました。今は深夜一時を過ぎた頃です。うら若き乙女が出掛けるような時間ではありません。ですが私は荷物を整えると構わず部屋を飛び出しました。屋敷の警備に見つからないよう隠れながら足早に家を出て、確実に見つからないところまで出ますと走り出してしまいました。
 行き先は一つ。
 学園。そこにいる先生のもとですわ。
 記憶を思い出して私はすぐにあの日の事を考えました。私が遅くまで学園に残ってしまい侵入者に襲われたあの日。助けてくれた先生はあの時侵入者は二組、追うもの以外にも追われるものがいたと話しましたが果たしてそれは本当だったのでしょうか。侵入者たちが誰かを探しているのは確かでした。その誰かはもしかしたらあの時少し考えた通り先生だったのでは。あの時は先生に狙われる理由などないだろうと思い深く考えませんでしたが、今はないとは言い切れません。
 むしろあると考えた方が自然ですわ。
 何せ第三部の攻略対象キャラ。しかもメイン。第一部からいての抜擢ですからこれは相当キャラ設定が盛られていますわよ。その証拠にあの魔法の腕。それがメインキャラだからという理由なら納得ですし、見た目だなんだ隠していた驚きの理由が秘められているはず
 狙われる理由の一つや二つなら持っているはずですわ。実は元貴族と言われても今の私なら驚きませんわよ。
 学園の前にたどり着いた私は何とか学園に侵入して先生を探します。
 先生を探すのはなにも先生の秘密が知りたいからではありませんわ。何度もルーシュリック様に言った通り先生が知られるのを嫌がっていることを無理矢理知りたいなどと思っていませんの。こんなことをして先生の迷惑になることは分かっています。でも先生が襲われているかも知れないことをわかって、ただ大人しくしているだなんて事は私にはできませんでしたの。
 大切な人が傷付いてるかもしれないのに待ってるなんて私の性にはあわないのでした。助けたいと思ってしまうのです。
 先生の小屋にはやはり先生はいませんでしたわ。校舎の中に入れば探していなかったのに例の侵入者たちが見つかりました。格好からして同じで間違いありません。
 奴等から離れて先生を探すための準備をすることにしました。この学園は広いですから一人闇雲に探したところで先生は見つからないでしょう。空間魔法の一つに周辺の状況を把握する魔法があります。それを使って探そうと思うのです。ただこの魔法はかなり難しく発動するのに時間が掛かってしまいます。その間侵入者に見つからないよう隠れる必要がありました。
 慎重に移動して一階の教室の一つに隠れましたわ。
 
「捉えましたわ」
 思わず声をあげてしまった私はすぐに自分の手で口許を抑えました。とは言え近くに人はいないので大丈夫だとは思うのですが。
 時間がかかりましたが魔法の発動に成功し先生がどこにいるのか知ることができました。四階の端の部屋。音楽室に身を潜めているようでした。そこまでの階にそれぞれ二人ずつ侵入者がいましたわ。見つからないよう移動しなければなりませんわね。この魔法は一度発動さえしてしまえばずっと発動させ続けることも可能です。確認しながら進めばいけるでしょう。
 え? どう言うことでしょうか。
 それぞれ上の階にいた侵入者達がこちらに向かってきています。
 見つかりましたわ。でもなんで。考えている暇はありません。逃げることは難しそうですしそれならば迎え撃つ準備をしなければなりません。
 一応もしものための準備はしているのです
 がらりとドアが開きました。その瞬間強風を叩き付けてやったのですが、残念なことに一人もかかりませんでしたわ。四人の侵入者が部屋の中に入ってきます。
「ああ? んだ、あの男じゃねえのかよ。糞が。いや、まあ、そうだとは思ってたけどよ。でも、お前とはな……」
 覚えのある声がしました。あの夜の男ですわ。きっと他の三人もそうなのでしょう。
「丁度いい今度こそお前を頂いてやるよ」
 嫌らしい声がするのを冷めた目で見つめました。
「おあいにく様。私一度負けた相手に二度も負けはしませんわ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

砕けた愛は、戻らない。

豆狸
恋愛
「殿下からお前に伝言がある。もう殿下のことを見るな、とのことだ」 なろう様でも公開中です。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

あなたが「消えてくれたらいいのに」と言ったから

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
「消えてくれたらいいのに」 結婚式を終えたばかりの新郎の呟きに妻となった王女は…… 短いお話です。 新郎→のち王女に視点を変えての数話予定。 4/16 一話目訂正しました。『一人娘』→『第一王女』

私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです

こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。 まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。 幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。 「子供が欲しいの」 「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」 それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。

お飾り王妃の受難〜陛下からの溺愛?!ちょっと意味がわからないのですが〜

湊未来
恋愛
 王に見捨てられた王妃。それが、貴族社会の認識だった。  二脚並べられた玉座に座る王と王妃は、微笑み合う事も、会話を交わす事もなければ、目を合わす事すらしない。そんな二人の様子に王妃ティアナは、いつしか『お飾り王妃』と呼ばれるようになっていた。  そんな中、暗躍する貴族達。彼らの行動は徐々にエスカレートして行き、王妃が参加する夜会であろうとお構いなしに娘を王に、けしかける。  王の周りに沢山の美しい蝶が群がる様子を見つめ、ティアナは考えていた。 『よっしゃ‼︎ お飾り王妃なら、何したって良いわよね。だって、私の存在は空気みたいなものだから………』  1年後……  王宮で働く侍女達の間で囁かれるある噂。 『王妃の間には恋のキューピッドがいる』  王妃付き侍女の間に届けられる大量の手紙を前に侍女頭は頭を抱えていた。 「ティアナ様!この手紙の山どうするんですか⁈ 流石に、さばききれませんよ‼︎」 「まぁまぁ。そんなに怒らないの。皆様、色々とお悩みがあるようだし、昔も今も恋愛事は有益な情報を得る糧よ。あと、ここでは王妃ティアナではなく新人侍女ティナでしょ」 ……あら?   この筆跡、陛下のものではなくって?  まさかね……  一通の手紙から始まる恋物語。いや、違う……  お飾り王妃による無自覚プチざまぁが始まる。  愛しい王妃を前にすると無口になってしまう王と、お飾り王妃と勘違いしたティアナのすれ違いラブコメディ&ミステリー

至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます

下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。

【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~

山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」 母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。 愛人宅に住み屋敷に帰らない父。 生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。 私には母の言葉が理解出来なかった。

忘れられた妻

毛蟹葵葉
恋愛
結婚初夜、チネロは夫になったセインに抱かれることはなかった。 セインは彼女に積もり積もった怒りをぶつけた。 「浅ましいお前の母のわがままで、私は愛する者を伴侶にできなかった。それを止めなかったお前は罪人だ。顔を見るだけで吐き気がする」 セインは婚約者だった時とは別人のような冷たい目で、チネロを睨みつけて吐き捨てた。 「3年間、白い結婚が認められたらお前を自由にしてやる。私の妻になったのだから飢えない程度には生活の面倒は見てやるが、それ以上は求めるな」 セインはそれだけ言い残してチネロの前からいなくなった。 そして、チネロは、誰もいない別邸へと連れて行かれた。 三人称の練習で書いています。違和感があるかもしれません

処理中です...