死にたがりの悪役令嬢

わたちょ

文字の大きさ
上 下
25 / 48
第二部

悪役令嬢の新たな日々

しおりを挟む
「いいあなたはまだぺーぺーのぺーなんです。そんなものでは調子に乗ってはいけませんわ」
「えーーでも二十位だよ。凄くない」
「全然。全然ですわ。そんなもので誇らしげにするなど愚かしいです」
「えーー」
「仮にもトレーフルブラン様に師事してもらう身であるのなら十位以内に入りなさいな。そうじゃないとトレーフルブラン様の弟子だなど認めませんわ」
「十位以内……。それはちょっと厳しいかも。……いや、でもそうだよね。それくらいにはならないと……。頑張らなきゃな」
 二人の少女の声がかしましく聞こえます。よくやることと思いながら私はお茶を飲む。あ、美味しい。
「このお茶は何処のなのかしら」
「はい。そちらはオーロラ国のブルー地方のものですね。爽やかな甘味があって最近評判の品なんですよ。お口に合いましたか」
「ええ、とても美味しいわ」
「トレーフルブラン様。このお菓子などそのお茶に合うと思うのですがいかがです」
「おひとつ頂こうかしら」
「なーー、トレーフルブラン。これも飲まねぇ。さっき作った薬草魔法薬。一口飲めば気力回復集中力アップ、魔法の力増大。いいことづ「飲みません!
 トレーフルブラン様を貴方の実験に付き合わせないでくださいと何度言えば分かるんですか、ルーシュリック様」
「えーーいいじゃん」
 あらあら。こちらも此方で騒がしくなってきましたわ。まあ、いつもの事ですから嫌いではないのですけれどね。みんなの声が飛び交うのにニコニコ笑みが浮かびます。お茶を飲んでお菓子も食べて幸せですわ。
 魔王の一件があってからもう三か月余り。この三か月は飛ぶように早く過ぎ去りました。セラフィード様との婚約破棄について周りから色々聞かれたり、私の中にいる魔王について様々な方が説明や検査を求めたりしてきて……。
 落ち着くことができたのは一週間前のこと。
 そしてここ一週間は毎日のようにお茶会を開いて優雅な日々を送っています。
 まあ、優雅なというには些か騒がしいですけどね。
 私のお茶会の傍ではさやかさんが立派な令嬢になるためお勉強に励まれていますし、その近くではルーシュリック様が魔法の研究に勤しんでおられます。私に協力も求めてこられるのですが、それは四人娘の一人ベロニカ様が止めてくれます。さやか様の勉強は私が見なくともミルシェリー様が見てくださり、ルイジェリア様はお茶会に必要なお茶やお菓子を手配してくれます。ティーラ様は三人と二人を纏め上げて場が混沌とならないように調整してくれます。
 私のやることは何一つないのです。
 何て平和でしょうか。セラフィード様の婚約者だった時はセラフィード様や四人の行動に注意を向け、何かあればフォローをし、教師や生徒に良い印象を与えるようにと色々手を回してきたのですが今やそれもありませんし……。王城や下町に行ってこの国の現状把握をする必要も前よりありません。
 正直ここまでやることがありませんと何をしていいかわかりませんわ。
 今まで次期王妃として支えるためだけの生き方をしてきたので悩んでしまいます。時間もそうあるわけではありませんしそろそろ何かをしなければならないのですが……。
 取り敢えず今日は、
「だから違いますと言っているでしょう」
「分かっているよ。今考えてるの」
「この程度の問題にそんなにかかっていては十位以内なんて無理でしてよ」
「うう……」
「ちょっと! ここであんまり変なことしないでくださいませ」
「簡単な魔法しただけじゃん」
「変だと思ってない所が変なのよ。こんなに土煙を上げてお茶に入ったらどうするんです」「え、別に魔法で取ればいいじゃん」
「そう云う問題ではないんです。この魔法馬鹿!」
「あ、二人ともそれ以上は近寄ってこないでくださいね。トレーフルブラン様の邪魔になりますから」
「次はこのお茶なんてどうですか」
「いいですわね」
 この騒がしい声達をBGMにお茶を楽しみましょう。
 何かをするのは明日から、って……これは駄目な人の良い訳でしたかしら。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

あなたが「消えてくれたらいいのに」と言ったから

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
「消えてくれたらいいのに」 結婚式を終えたばかりの新郎の呟きに妻となった王女は…… 短いお話です。 新郎→のち王女に視点を変えての数話予定。 4/16 一話目訂正しました。『一人娘』→『第一王女』

私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです

こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。 まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。 幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。 「子供が欲しいの」 「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」 それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。

お飾り王妃の受難〜陛下からの溺愛?!ちょっと意味がわからないのですが〜

湊未来
恋愛
 王に見捨てられた王妃。それが、貴族社会の認識だった。  二脚並べられた玉座に座る王と王妃は、微笑み合う事も、会話を交わす事もなければ、目を合わす事すらしない。そんな二人の様子に王妃ティアナは、いつしか『お飾り王妃』と呼ばれるようになっていた。  そんな中、暗躍する貴族達。彼らの行動は徐々にエスカレートして行き、王妃が参加する夜会であろうとお構いなしに娘を王に、けしかける。  王の周りに沢山の美しい蝶が群がる様子を見つめ、ティアナは考えていた。 『よっしゃ‼︎ お飾り王妃なら、何したって良いわよね。だって、私の存在は空気みたいなものだから………』  1年後……  王宮で働く侍女達の間で囁かれるある噂。 『王妃の間には恋のキューピッドがいる』  王妃付き侍女の間に届けられる大量の手紙を前に侍女頭は頭を抱えていた。 「ティアナ様!この手紙の山どうするんですか⁈ 流石に、さばききれませんよ‼︎」 「まぁまぁ。そんなに怒らないの。皆様、色々とお悩みがあるようだし、昔も今も恋愛事は有益な情報を得る糧よ。あと、ここでは王妃ティアナではなく新人侍女ティナでしょ」 ……あら?   この筆跡、陛下のものではなくって?  まさかね……  一通の手紙から始まる恋物語。いや、違う……  お飾り王妃による無自覚プチざまぁが始まる。  愛しい王妃を前にすると無口になってしまう王と、お飾り王妃と勘違いしたティアナのすれ違いラブコメディ&ミステリー

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます

下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。

旦那様は離縁をお望みでしょうか

村上かおり
恋愛
 ルーベンス子爵家の三女、バーバラはアルトワイス伯爵家の次男であるリカルドと22歳の時に結婚した。  けれど最初の顔合わせの時から、リカルドは不機嫌丸出しで、王都に来てもバーバラを家に一人残して帰ってくる事もなかった。  バーバラは行き遅れと言われていた自分との政略結婚が気に入らないだろうと思いつつも、いずれはリカルドともいい関係を築けるのではないかと待ち続けていたが。

【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~

山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」 母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。 愛人宅に住み屋敷に帰らない父。 生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。 私には母の言葉が理解出来なかった。

処理中です...