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第3章 女豹の掟
1 二人の女豹
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姫川玲奈は、組織犯罪対策課の課長席で提出された報告書に目を通していた。そこには、長い黒髪をストレートに伸ばした若い女の写真が添付されていた。色白で小さめの顔の中で、黒曜石のように輝く瞳が真っ直ぐに玲奈を見つめていた。その切れ長の澄んだ瞳は、彼女の意志の強さと自尊心を玲奈に感じさせた。
(生意気な眼ね……)
それが、楪瑞紀の写真を初めて見た玲奈の感想だった。自分より六歳も若いにも拘わらず、<西新宿の女豹>と呼ばれる玲奈を圧倒する眼力を感じたのだ。その写真の横に書かれた経歴を見て、玲奈は自分の直感が正しいことを実感した。
氏名:楪瑞紀
年齢:二十五歳
性別:女
住所:東京都新宿区西新宿七丁目○番○号
連絡先:090-32○○-78○○
現職:<楪探偵事務所>所長
前職:<星月夜>特別捜査部特別捜査官
特技:射撃、合気道
その下に書かれた特記事項には、普通の女性ではあり得ない事柄が記載されていた。
『過去に射殺した人数は下記の六名となる。
李昊天……<狗神会《こうじんかい》>会長。
金泰然……<狗神会《こうじんかい》>親衛隊長。
崔峰風……<狗神会《こうじんかい》>親衛隊員。
徐麗孝……<狗神会《こうじんかい》>親衛隊員。ヘリ・パイロット。
王雲嵐……<蛇咬会>会長。
白氷麗……<蛇咬会>護衛隊長。
以上の六名については、<星月夜>による非常時特別発砲権が発動中であったため、正当防衛と見做される』
(あの<蛇咬会>と<狗神会《こうじんかい》>の会長を射殺したっていうの? そして、今回は<一条組>の組長、一条天翔と、若頭補佐の九鬼雷銅を含む六人を射殺とはね……。恐れ入ったわ……)
現在、楪瑞紀の身柄は、この警視庁西新宿署に拘留していた。今回は非常時特別発砲権が発動されていないため、相手が暴力団員とはいえ、六名もの人間を射殺した瑞紀を取り調べている最中なのだ。
(状況から考えれば、正当防衛とすることも可能だわ。水島麗華の足どりを調査に行ったところを捕らえられ、コカインを射たれて凌辱された。拳銃を所持していたのが一条と廊下にいた三人の男たち……。この四人については、間違いなく正当防衛が立証できる。問題は九鬼と加藤ね。この二人は拳銃どころか、ナイフ一本持っていなかった。凌辱されかかったとは言え、正当防衛ではなく過剰防衛と判断される可能性が十分にあるわね……)
楪瑞紀を起訴するかどうかは、玲奈の一存で決まるとも言えた。裁判所に検察官を送致して起訴を申請するかどうかの判断を下すのが、組織犯罪対策課長である玲奈なのだ。
だが、玲奈は今回の起訴申請について、二箇所から相談を受けていた。
その一つは、<櫻華会>若頭の神崎純一郎だった。当然ながら、指定暴力団である<櫻華会>が正規ルートで警察に申し入れをしてくるなどあり得ない。あくまで純一郎は個人的に玲奈に話をしてきたのだ。
今回の事件で、純一郎は最愛の水島麗華を殺された。麗華を直接撃ったのは一条だが、その原因となったのは楪瑞紀だった。麗華は瑞紀を庇って、一条に撃たれたのだ。それにも拘わらず、純一郎は瑞紀の不起訴を玲奈に求めてきた。そこまで純一郎が肩入れする瑞紀に対して、玲奈は興味を持つのと同時に嫉妬を覚えた。
そして、もう一つは正式なルートからの干渉だった。それも、玲奈が強く出られない数少ない相手からの無言の圧力だった。<星月夜>統合作戦本部長の高城雄斗である。高城は非常時特別発砲権の発動が遅れたことを玲奈に詫び、瑞紀の正当防衛を主張してきた。
高城の影響力は西新宿署だけでなく、警視庁においても決して小さいものではない。その上、玲奈個人にとっても高城は大恩ある人間であった。
玲奈はかつて直属の上司から不倫の関係を迫られたことがあった。それを断ったことに逆恨みをし、その上司は玲奈に汚職の濡れ衣を着せたのだ。偶然、警視庁に来ていた高城がその事実を知り、玲奈の汚名を晴らしてその上司を懲戒処分に追い込んでくれた。
今の玲奈があるのは、高城がいたからこそだった。その高城が瑞紀の不起訴を要望する以上、玲奈に選択肢はなかった。
(楪瑞紀は、正当防衛による不起訴とする。高城さんが望む以上、それは仕方ないわ。でも、あの高城さんが彼女をそこまで評価する理由は確認しておきたい。それを見極めるまでは、何日でも泊まってもらうわよ)
玲奈は瑞紀の報告書ファイルを閉じると、小脇に抱えながら席を立った。そして、カツカツとヒールの音を響かせながら、二階の取調室へ向かった。
「何度、同じことを言わされるんですか? それは、昨日も言いましたよね? 九鬼雷銅を撃ったのは強姦されそうになったからだし、一条天翔は実際に発砲してきたからやむなく撃ちました」
すでにこの答えは三回告げていた。今ので四回目だった。瑞紀は昨日の午後一時に西新宿署の要請に応えて出頭してから、すでに二十四時間以上も拘束されていた。
「では、加藤順彦、久保祐二、直江隼人、君島拓也の四人はどうして殺した?」
瑞紀の正面に座る中西勇介が質問してきた。彼の横では、早瀬はるかという女性刑事がノートPCのキーボードを叩いて瑞紀の供述を記録していた。瑞紀が女性のため、警察側も女性刑事を同席させているようだった。
「それも何度も答えましたよね……」
ハアッとため息をつくと、瑞紀は中西の顔を睨みながら抑揚のない声で告げた。
「久保、直江、君島という名前はここに来て初めて知りました。ドア越しに撃ったので、あの時は顔も見ていません。室内の銃声が聞こえたらしく、事務所にいた<一条組>の組員たちが殺到してきたんです。命の危険を感じて、先に発砲しました」
「ドア越しで相手が武器を持っているかも分からないのに、いきなり発砲したのか? それも、フルオートで二十三発も……?」
中西がジロリと瑞紀の顔を見据えながら訊ねた。自分といくらも年が変わらない若い女性が、フルオート射撃が可能な拳銃を持っていることさえ、中西の常識を遥かに超えていた。
「あなた、マル暴の刑事なのに殺気を感じたことないんですか? 撃たなければ撃たれる……そういう状態が、あの時の状況です」
瑞紀の言葉を聞いて、今度は中西がため息をついた。組織犯罪対策課に配属されてから六年になるが、そんな命のやり取りをしたことなど一度もなかった。当然のことだが、殺気など感じたことはなかった。
「分かった……。では、加藤はどうして射殺した? ヤツは拳銃はおろか、ナイフさえ持っていなかったぞ」
「加藤は麻薬を射たれた私を辱めました。あの時も、一条と九鬼と一緒に、私と麗華を強姦しようとしていました。加藤を撃ったことも、一条や九鬼と同様に正当防衛です」
瑞紀は事実をありのままに告げた。だが、武器を持っていない九鬼や加藤を射殺したことが、正当防衛と認められるかどうかは瑞紀にも自信がなかった。
「そこまででいいわ、中西君……」
衝立の向こうから、メゾ・アルトの美声が響き渡った。不当な取り調べを防止するために、取調室のドアは開けておき、被疑者のプライバシーや人権を保護する観点から入口に衝立が立てられるのだ。その衝立の左側から、一人の女性が姿を現した。
ウェーブが掛かったダーク・ブラウンの髪を背中まで伸ばした、面長ですっきりとした瓜実顔の美女だった。切れ長の眼にある濃茶色の瞳は強い意志の光を宿しており、細く通った鼻筋と女性らしいプックリとした唇が印象的だった。
女性にしては身長が高く、百七十センチは超えていた。大きく豊かな胸が白いカットソーを盛り上げ、膝まである漆黒のスカートからは細く白い脚が伸びていた。七センチはあるハイヒール・パンプスはスカートに合わせた艶のある黒色で、彼女の高い身長をより強調していた。
「楪瑞紀さんね。初めまして。あたしは姫川玲奈……。この組織犯罪対策課の課長で、階級は警視よ」
「警視……?」
警視とは一般の警察官が定年前に到達できる最高位で、小さな警察署であれば署長になれる階級だ。だが、姫川と名乗った女性は、まだ三十歳前後にしか見えなかった。つまり、彼女は紛れもなく国家公務員総合職採用者ということだった。
「中西君、早瀬さん、お疲れ様。あとはあたしが代わるわ。二人とも退出していいわよ。ドアを閉めていってね」
「はい、姫川課長……。でも、ドアは……」
席を立ちながら中西が怪訝な表情を浮かべた。被疑者の取調中にドアを閉めることは「警察捜査における取調べ適正化指針」に違反する行為だったのだ。
「構わないわ。あたしがいいと言っているのよ」
「は、はい……」
「分かりました……」
中西と早川が、玲奈にサッと敬礼をしながら告げた。そして、急いで取調室から出ると、カシャンと入口のドアを閉じた。その様子を見送ると、玲奈はゆったりとした動作で瑞紀の目の前に腰を下ろした。
「まずは、最初にはっきりと現実を認識させてあげるわ。あなたを起訴するか不起訴にするかを決めるのは、あたしよ……」
「……」
玲奈の言い方にカチンと頭に来て、瑞紀は彼女の濃茶色の瞳を真っ直ぐに見つめた。だが、玲奈は瑞紀の視線に動じた素振りも見せずに、薄らと微笑を浮かべながら続けた。
「楪瑞紀。二十五歳。<楪探偵事務所>の所長で、元<星月夜>の特別捜査官。射撃の腕前は<星月夜>でもトップクラスで、合気道は二段だそうね。そして、今回を含めると、十二人の人間を射殺している……」
「それは……」
瑞紀の抗議を遮るように、玲奈が続けた。
「中国系マフィアの会長二人を含む六人と、今回の<一条組>組長を含む六人……。合わせて十二人の悪者を退治した正義のヒロインってところかしら?」
「何が言いたいんですか……?」
嘲弄とも挑発とも取れる玲奈の言葉に、瑞紀はキッと彼女の顔を睨みつけた。
「恐い眼ね……。さすがに十二人も殺した女だけあるわ。でも、さっきの二人はともかく、あたしにそんな眼をしても無駄よ。こう見えてあたしも、それなりの修羅場は経験しているからね」
「そうなんでしょうね。新宿のマル暴の課長なんて、本来はたたき上げの刑事がなる役職ですよね? 普通に考えたら女のキャリアに務まるはずがない。つまり、あなたは普通じゃないってことですね?」
瑞紀の言葉を聞いて、玲奈が楽しそうに笑った。
「思った通りの女ね、あなた……。純一郎が気に入るはずだわ」
「純一郎……? あなた、神崎さんと……?」
<櫻華会>若頭の神崎をファーストネームで呼び捨てた玲奈に、瑞紀は黒瞳を大きく見開いた。
「純一郎は、あたしの大学の後輩なのよ。そして、あたしの初めての男でもあるわ」
「神崎さんが……?」
あまりにもストレートな物言いに、瑞紀は思わず麗華の顔を見つめた。
「まあ、純一郎のことはどうでもいいわ。それよりも、あなた、刑事にならない?」
「え……?」
突然話を変えた玲奈に、瑞紀は戸惑った。彼女の真意が見えなかったからだ。
「射撃の腕は一流で、合気道の達人……。人を殺した経験もあるし、度胸もあって頭も切れる。あなたみたいな部下がいてくれたら、あたしも助かるんだけど……」
「そんな話をするためにここに来たんですか? 全然取り調べに見えないんですけど……」
玲奈の誘いに噴き出しながら、瑞紀が告げた。まさか、取調室で勧誘されるなどとは思ってもいなかった。
「ああ、ごめんなさいね。別にあたし、あなたを取り調べに来た訳じゃないのよ。今回の事件であなたの正当防衛を認めて、不起訴にするって伝えに来たのよ」
「不起訴……?」
(この人、凄く優秀な刑事だわ。人の意表を衝いて終始マウントを取り続けている。それなのに嫌な感じがしない。むしろ、話しに引き込まれる……)
「そう。正直に言うと、純一郎なんかよりもずっと恐い人から圧力がかかってるのよ。あなたの正当防衛を認めろってね」
玲奈が笑いながら告げた。見る者を魅了するような素晴らしい笑顔だった。
「あなたが恐いっていう人って……?」
「高城雄翔。さすがのあたしも、あの人の前では小娘の一人に過ぎないわ」
瑞紀の問いに、玲奈が素直に答えた。
「え……? 高城の叔父様が……?」
(高城の叔父様……ね? 単なる元上司と部下って関係でもないってことね?)
瑞紀の言葉に、麗華が二人の関係に興味を抱いた。だが、表面的には平静を装って話を続けた。
「高城さんの影響力は、西新宿署だけでなく警視庁でもかなり大きいのよ。何て言っても、<鬼元帥>って呼ばれてるくらいだからね」
「そうなんですか……。私はまた、高城さんに助けられたんですね」
嬉しさとともに申し訳なさが混在する気持ちで、瑞紀が告げた。その様子を見つめながら、玲奈がニッコリと微笑んだ。
「楪瑞紀……これから、瑞紀と呼ぶことにするわ。あなたもあたしのことは、玲奈と呼びなさい。こう見えても、あたしは<西新宿の女豹>って呼ばれているの。何かあったときには、あたしを頼りなさい。ついでに、あたしの部下になることも検討しておいてね……」
そう告げると、玲奈は瑞紀に右手を差し出した。
「ありがとうございます、玲奈さん。今更刑事にはなりませんけど、頼りにさせてもらいます」
玲奈の手を握り締めながら、瑞紀が笑顔を浮かべた。
それは二人の女豹の間で友情が生まれた瞬間であり、大きな事件の流れに瑞紀が巻き込まれるきっかけでもあった。そのことをまだ二人は予想さえもしていなかった。
「それで、瑞紀に正当防衛を認めたのか……?」
「そうよ……彼女、あたし以上に優秀……あッ、いやッ……だめッ、あっああッ……!」
白い喉をグンッと仰け反らせると、濃茶色の髪を振り乱しながら玲奈が喘いだ。玲奈の白い太股を両手で抱えながら、純一郎が猛りきった男で最奥まで貫いたのだ。
「<西新宿の女豹>が肩入れするほど優秀だったんだな?」
「そう……あッ、待ってッ……話せなく……なるッ……だめッ……いやぁあッ……!」
純一郎が熱い火柱を入口まで引き抜き、粒だった天井部分を三度擦り上げた。そして、グイッと肉襞を抉りながら一気に子宮口まで貫いた。女を狂わせる三浅一深の動きだった。その悪魔の律動を、純一郎は何度も繰り返し始めた。
「あッ、あッ、だめッ……! それッ、いやッ……!」
硬く熱い火柱で天井部分を擦られると、腰骨を灼き溶かすような愉悦が背筋を舐め上げた。そして、肉襞を抉られながら最奥まで貫かれると、壮絶な雷撃が脳天を直撃し、真っ白な閃光が意識を包み込んだ。
(だめッ、こんなの……我慢できないッ! 気持ちいいッ!)
あまりの快感に涙が溢れるのが自分でも分かった。恥ずかしい声が止まらなくなり、濡れた唇から涎が糸を引いて垂れ落ちた。
「警視庁の警視がヤクザに犯されて、そんな声を上げていいのか?」
「くッ……! ど、奴隷のくせに、生意気……あッ、いやッ……だめッ、それッ……!」
純一郎の言葉に、玲奈はキッと女豹の眼差しで彼を睨みつけた。だが、三浅一深の動きの前に女豹の顔など一瞬で剥がされ、玲奈は快感を求めて腰が淫らに動くことを止められなかった。
「恥ずかしくないのか、そんなにイヤらしく腰を振って……? <西新宿の女豹>のこんな姿を見たら、部下が幻滅するぞ」
「腰なんて……振ってない……あッ、だめッ……! 一緒は、いやぁッ……!」
純一郎が左手で玲奈の左乳房を揉みしだきながら、ツンと突き勃った乳首をコリコリと扱きだした。そして、右手は濡れた叢をかきわけると、慣れた手つきで突起の薄皮をクルンと剥き上げた。
「ひッ……! いやぁああ……だめッ、それぇえッ……!」
純一郎の指先が花唇から溢れ出た蜜液を掬い取ると、真っ赤に充血した真珠粒を転がしながら塗り込んできた。
三浅一深の動きと同時に、乳房を揉みしだかれ、乳首を扱かれ、真珠粒を嬲られては堪ったものではなかった。どこからどんな快感が襲ってくるのかさえも分からずに、玲奈は白いシーツを握り締めながら濃茶色の髪を舞い乱して悶え啼いた。
「あッ、あッ、あぁああッ……! だめッ、イッちゃうッ……! 許してッ! イクぅううッ……!」
大きく裸身を仰け反らせると、ビックンッビックンッと激しく痙攣しながら玲奈は絶頂を極めた。快美の火柱が総身を貫き、凄絶な快感が脳天を直撃した。全身の細胞が灼き溶け、四肢の先端まで甘い痺れが走り抜けた。
(凄……いッ……、気持ち……いいッ……)
焦点を失った瞳から随喜の涙が溢れ、ワナワナと震える唇からトロリと涎が垂れ落ちた。愉悦の硬直から全身を弛緩させると、玲奈は女の悦びを噛みしめながらグッタリとベッドに沈み込んだ。
「そんな蕩けた顔してどうしたんだ、玲奈? お前の奴隷はまだご主人様に奉仕し足りないぞッ!」
ニヤリと笑いながら玲奈を見下ろすと、純一郎が悪魔の律動を再開し始めた。粒だった天井部分を三回擦り上げ、肉襞を抉りながら子宮口まで一気に貫いてきた。女泣かせの三浅一深の動きは、一瞬のうちに玲奈の躰に怒濤の快楽を送り込んできた。
「うそ……待って……まだ、イッてる……あッ、いやッ……やめッ、だめぇえッ!」
絶頂を極めたばかりの女体が、その悪魔の快感に抗うことなど不可能だった。玲奈は瞬く間に快美の炎に包まれ、快絶の業火に灼き尽くされた。腰骨が熱く燃え上がり、凄絶な快感が全身の細胞を灼き溶かした。脳天を何度も雷撃が襲い、真っ白な閃光が視界を覆い尽くした。乳首は痛いほどガチガチに尖りきり、花唇からは蜜液がプシャップシャッと音を立てて飛び散った。
「あッ、あッ、いやぁあッ……! また、イッちゃうッ……! だめッ、イクッ!」
ビクンッビクンッと総身を激しく痙攣させると、玲奈はあっという間に二度目の絶頂を極めた。だが、その歓喜の愉悦を噛みしめる時間さえ、玲奈には与えられなかった。純一郎が三浅一深の動きを止めて、怒濤の如く凄まじい勢いで熱い火柱を抜き挿しし始めたのだ。
「だめぇえッ! 許してぇえッ! イクッ……イクぅううッ!」
二度も絶頂を極めさせられた女体が、その暴虐に耐えることなどできるはずもなかった。玲奈は絶頂している最中にも関わらず、その先にある歓悦の極みへと駆け上らされた。だが、純一郎は玲奈の狂態を見下ろしながら、更に悪辣な所業を始めた。
激しい律動で玲奈を責め続けながら、硬く屹立した乳首を捻りあげ、大きく勃起した真珠粒を摘まんで扱きだしたのだ。
「ひぃいいいッ! だめッ、それぇえッ……!」
「また、イクぅううッ! アッ、アァアア!」
「イクの、止まらないッ……! 許してッ! イクぅううッ!」
イッたと思った瞬間には、次の絶頂を極めさせられた。愉悦に次ぐ絶頂……。絶頂に続く極致感……。
その切れ目のない絶頂地獄に、玲奈は陥った。白い裸身は真っ赤に上気し、深い縦皺を刻んだ美貌は涙と涎に塗れた。乳首は痛いほどそそり勃ち、花唇からは止めどなく愛蜜が迸った。
「お願いッ! もう、許してぇッ! 死んじゃうッ! また、イクッ! イクぅううッ!」
グンッと大きく背中を仰け反らせると、玲奈は凄まじいほどの痙攣を始めた。次の瞬間、シャアーッという音とともに、花唇から黄金の潮流が虚空に弧を描いて迸った。そして、ガクガクと硬直していた裸身を弛緩させると、玲奈はグッタリと寝台に沈み込んだ。
閉じた睫毛はピクピクと震え、真っ赤に染まった目尻からは幾筋もの涙が流れ落ちていた。頬に貼り付いた後れ毛を咥える唇からは、ハァハァと火の吐息がせわしなく漏れていた。濡れた唇の端からはネットリとした涎が垂れ落ち、シーツに染みを描いていた。
それは紛れもなく、壮絶な官能の奔流に翻弄された女の末路そのものだった。
「満足したか、ご主人様……?」
純一郎が玲奈の後れ毛をかき上げながら、優しい口調で訊ねてきた。
「はぁ、はぁ……。死ぬかと……思った……」
官能の愉悦に蕩けきった瞳で純一郎を見つめると、玲奈が荒い息を吐きながら告げた。ビクンッビクンッと全身が痙攣を続けていて、言葉が上手く話せなかった。凄まじい快感で四肢の先端まで甘く痺れて、指一本動かせそうになかった。
「いい女になったな、玲奈……。こんなイヤらしい女が警視とは、部下が知ったら驚くぞ……」
「バカ……そんなこと……、んッ……あッ……」
文句を言おうとした玲奈の唇を純一郎が塞いだ。そして、ネットリと舌を絡めながら、硬く尖った右乳首を摘まんでコリコリと扱きだした。たったそれだけの刺激で、玲奈の躰は再び燃え上がった。
(気持ちいい……感じるッ……! うそッ……! キスと乳首を触られただけで……! あたし、イッちゃうッ……! だめッ、イクッ!)
ビクンッビクンッと痙攣すると、玲奈はあっという間に絶頂を極めた。唾液の糸を引きながら唇を離すと、純一郎がニヤリと笑いながら玲奈の顔を見つめた。
「キスだけでイッたのか? 本当にイヤらしい女だな……」
「ハァ、ハァ……イッてない……」
カアッと顔を赤らめると、玲奈はフイッと顔を逸らせた。それが虚勢であることなど自分でも分かりきっているのだが、感じすぎる自分の躰が恥ずかしかったのだ。玲奈の心の動きなど完全に見通しながら、純一郎が告げた。
「イッてないなら、もう一度ちゃんとイカせてやろうか……?」
「お願い……もう、許して……」
笑いながら告げた純一郎の言葉に、玲奈は本気で哀願した。
(これ以上……続けられたら……あたし、バカになる……)
「だが、嘘つきの女豹には、きっちりとお仕置きしないとな……」
「いやッ……やめッ……んッ……あッ……」
玲奈の拒絶の言葉を無視するように、純一郎が再び唇を塞いできた。ネットリと舌を絡ませながら、純一郎は玲奈の右乳房を左手で揉みしだいた。そして、ツンと突き勃った乳首を指先で摘まみながら、コリコリと扱き上げた。
同時に右手で叢をかきわけると、大きく勃起した真珠粒を指先で転がしながら嬲り始めた。
「んッ……んめッ……あッ、あッ、んあぁああッ……!」
数え切れないほどの絶頂を極めて、玲奈の躰は普段の何倍も敏感になっていた。濃厚な口づけをされながら女の弱点を責められ、玲奈は抗うこともできずにあっという間に歓喜の頂点へと駆け上らされた。
「どうだ、少しは反省したか……?」
「……もう……許して……」
ハア、ハアと火の吐息を漏らしながら、玲奈がコクリと頷いた。全身がビクンッビクンッと痙攣し、凄絶な快感が意識さえも灼き溶かしていた。そこには女豹の面影など欠片もない、愉悦の奔流に支配された女の蕩けた貌があった。
「では、俺は先にいくぞ。動けるようになるまでゆっくりとしていろ」
そう告げると、純一郎は玲奈に背を向けて衣服を身につけだした。その様子を見つめながら、玲奈は自分の中に湧き上がった感情を持て余していた。
(あたし、こいつからもう離れられない……。こいつはヤクザで、あたしは警視なのに……。そして、こいつはあたしのことを愛してさえいない……。きっと、死んだ水島麗華の代わりに、あたしを抱いているだけ……)
切なさ、愛おしさ、悲しさ、嫉妬……様々な感情が玲奈の心を支配した。
(疲れた……。少し眠ろう……)
激しいセックスによる肉体の疲れもあったが、それ以上に精神が疲れていた。玲奈はゆっくりと瞼を閉じた。
長い睫毛に覆われた目尻から涙が溢れて、ツッツゥーと白い頬を伝って流れ落ちた。
(生意気な眼ね……)
それが、楪瑞紀の写真を初めて見た玲奈の感想だった。自分より六歳も若いにも拘わらず、<西新宿の女豹>と呼ばれる玲奈を圧倒する眼力を感じたのだ。その写真の横に書かれた経歴を見て、玲奈は自分の直感が正しいことを実感した。
氏名:楪瑞紀
年齢:二十五歳
性別:女
住所:東京都新宿区西新宿七丁目○番○号
連絡先:090-32○○-78○○
現職:<楪探偵事務所>所長
前職:<星月夜>特別捜査部特別捜査官
特技:射撃、合気道
その下に書かれた特記事項には、普通の女性ではあり得ない事柄が記載されていた。
『過去に射殺した人数は下記の六名となる。
李昊天……<狗神会《こうじんかい》>会長。
金泰然……<狗神会《こうじんかい》>親衛隊長。
崔峰風……<狗神会《こうじんかい》>親衛隊員。
徐麗孝……<狗神会《こうじんかい》>親衛隊員。ヘリ・パイロット。
王雲嵐……<蛇咬会>会長。
白氷麗……<蛇咬会>護衛隊長。
以上の六名については、<星月夜>による非常時特別発砲権が発動中であったため、正当防衛と見做される』
(あの<蛇咬会>と<狗神会《こうじんかい》>の会長を射殺したっていうの? そして、今回は<一条組>の組長、一条天翔と、若頭補佐の九鬼雷銅を含む六人を射殺とはね……。恐れ入ったわ……)
現在、楪瑞紀の身柄は、この警視庁西新宿署に拘留していた。今回は非常時特別発砲権が発動されていないため、相手が暴力団員とはいえ、六名もの人間を射殺した瑞紀を取り調べている最中なのだ。
(状況から考えれば、正当防衛とすることも可能だわ。水島麗華の足どりを調査に行ったところを捕らえられ、コカインを射たれて凌辱された。拳銃を所持していたのが一条と廊下にいた三人の男たち……。この四人については、間違いなく正当防衛が立証できる。問題は九鬼と加藤ね。この二人は拳銃どころか、ナイフ一本持っていなかった。凌辱されかかったとは言え、正当防衛ではなく過剰防衛と判断される可能性が十分にあるわね……)
楪瑞紀を起訴するかどうかは、玲奈の一存で決まるとも言えた。裁判所に検察官を送致して起訴を申請するかどうかの判断を下すのが、組織犯罪対策課長である玲奈なのだ。
だが、玲奈は今回の起訴申請について、二箇所から相談を受けていた。
その一つは、<櫻華会>若頭の神崎純一郎だった。当然ながら、指定暴力団である<櫻華会>が正規ルートで警察に申し入れをしてくるなどあり得ない。あくまで純一郎は個人的に玲奈に話をしてきたのだ。
今回の事件で、純一郎は最愛の水島麗華を殺された。麗華を直接撃ったのは一条だが、その原因となったのは楪瑞紀だった。麗華は瑞紀を庇って、一条に撃たれたのだ。それにも拘わらず、純一郎は瑞紀の不起訴を玲奈に求めてきた。そこまで純一郎が肩入れする瑞紀に対して、玲奈は興味を持つのと同時に嫉妬を覚えた。
そして、もう一つは正式なルートからの干渉だった。それも、玲奈が強く出られない数少ない相手からの無言の圧力だった。<星月夜>統合作戦本部長の高城雄斗である。高城は非常時特別発砲権の発動が遅れたことを玲奈に詫び、瑞紀の正当防衛を主張してきた。
高城の影響力は西新宿署だけでなく、警視庁においても決して小さいものではない。その上、玲奈個人にとっても高城は大恩ある人間であった。
玲奈はかつて直属の上司から不倫の関係を迫られたことがあった。それを断ったことに逆恨みをし、その上司は玲奈に汚職の濡れ衣を着せたのだ。偶然、警視庁に来ていた高城がその事実を知り、玲奈の汚名を晴らしてその上司を懲戒処分に追い込んでくれた。
今の玲奈があるのは、高城がいたからこそだった。その高城が瑞紀の不起訴を要望する以上、玲奈に選択肢はなかった。
(楪瑞紀は、正当防衛による不起訴とする。高城さんが望む以上、それは仕方ないわ。でも、あの高城さんが彼女をそこまで評価する理由は確認しておきたい。それを見極めるまでは、何日でも泊まってもらうわよ)
玲奈は瑞紀の報告書ファイルを閉じると、小脇に抱えながら席を立った。そして、カツカツとヒールの音を響かせながら、二階の取調室へ向かった。
「何度、同じことを言わされるんですか? それは、昨日も言いましたよね? 九鬼雷銅を撃ったのは強姦されそうになったからだし、一条天翔は実際に発砲してきたからやむなく撃ちました」
すでにこの答えは三回告げていた。今ので四回目だった。瑞紀は昨日の午後一時に西新宿署の要請に応えて出頭してから、すでに二十四時間以上も拘束されていた。
「では、加藤順彦、久保祐二、直江隼人、君島拓也の四人はどうして殺した?」
瑞紀の正面に座る中西勇介が質問してきた。彼の横では、早瀬はるかという女性刑事がノートPCのキーボードを叩いて瑞紀の供述を記録していた。瑞紀が女性のため、警察側も女性刑事を同席させているようだった。
「それも何度も答えましたよね……」
ハアッとため息をつくと、瑞紀は中西の顔を睨みながら抑揚のない声で告げた。
「久保、直江、君島という名前はここに来て初めて知りました。ドア越しに撃ったので、あの時は顔も見ていません。室内の銃声が聞こえたらしく、事務所にいた<一条組>の組員たちが殺到してきたんです。命の危険を感じて、先に発砲しました」
「ドア越しで相手が武器を持っているかも分からないのに、いきなり発砲したのか? それも、フルオートで二十三発も……?」
中西がジロリと瑞紀の顔を見据えながら訊ねた。自分といくらも年が変わらない若い女性が、フルオート射撃が可能な拳銃を持っていることさえ、中西の常識を遥かに超えていた。
「あなた、マル暴の刑事なのに殺気を感じたことないんですか? 撃たなければ撃たれる……そういう状態が、あの時の状況です」
瑞紀の言葉を聞いて、今度は中西がため息をついた。組織犯罪対策課に配属されてから六年になるが、そんな命のやり取りをしたことなど一度もなかった。当然のことだが、殺気など感じたことはなかった。
「分かった……。では、加藤はどうして射殺した? ヤツは拳銃はおろか、ナイフさえ持っていなかったぞ」
「加藤は麻薬を射たれた私を辱めました。あの時も、一条と九鬼と一緒に、私と麗華を強姦しようとしていました。加藤を撃ったことも、一条や九鬼と同様に正当防衛です」
瑞紀は事実をありのままに告げた。だが、武器を持っていない九鬼や加藤を射殺したことが、正当防衛と認められるかどうかは瑞紀にも自信がなかった。
「そこまででいいわ、中西君……」
衝立の向こうから、メゾ・アルトの美声が響き渡った。不当な取り調べを防止するために、取調室のドアは開けておき、被疑者のプライバシーや人権を保護する観点から入口に衝立が立てられるのだ。その衝立の左側から、一人の女性が姿を現した。
ウェーブが掛かったダーク・ブラウンの髪を背中まで伸ばした、面長ですっきりとした瓜実顔の美女だった。切れ長の眼にある濃茶色の瞳は強い意志の光を宿しており、細く通った鼻筋と女性らしいプックリとした唇が印象的だった。
女性にしては身長が高く、百七十センチは超えていた。大きく豊かな胸が白いカットソーを盛り上げ、膝まである漆黒のスカートからは細く白い脚が伸びていた。七センチはあるハイヒール・パンプスはスカートに合わせた艶のある黒色で、彼女の高い身長をより強調していた。
「楪瑞紀さんね。初めまして。あたしは姫川玲奈……。この組織犯罪対策課の課長で、階級は警視よ」
「警視……?」
警視とは一般の警察官が定年前に到達できる最高位で、小さな警察署であれば署長になれる階級だ。だが、姫川と名乗った女性は、まだ三十歳前後にしか見えなかった。つまり、彼女は紛れもなく国家公務員総合職採用者ということだった。
「中西君、早瀬さん、お疲れ様。あとはあたしが代わるわ。二人とも退出していいわよ。ドアを閉めていってね」
「はい、姫川課長……。でも、ドアは……」
席を立ちながら中西が怪訝な表情を浮かべた。被疑者の取調中にドアを閉めることは「警察捜査における取調べ適正化指針」に違反する行為だったのだ。
「構わないわ。あたしがいいと言っているのよ」
「は、はい……」
「分かりました……」
中西と早川が、玲奈にサッと敬礼をしながら告げた。そして、急いで取調室から出ると、カシャンと入口のドアを閉じた。その様子を見送ると、玲奈はゆったりとした動作で瑞紀の目の前に腰を下ろした。
「まずは、最初にはっきりと現実を認識させてあげるわ。あなたを起訴するか不起訴にするかを決めるのは、あたしよ……」
「……」
玲奈の言い方にカチンと頭に来て、瑞紀は彼女の濃茶色の瞳を真っ直ぐに見つめた。だが、玲奈は瑞紀の視線に動じた素振りも見せずに、薄らと微笑を浮かべながら続けた。
「楪瑞紀。二十五歳。<楪探偵事務所>の所長で、元<星月夜>の特別捜査官。射撃の腕前は<星月夜>でもトップクラスで、合気道は二段だそうね。そして、今回を含めると、十二人の人間を射殺している……」
「それは……」
瑞紀の抗議を遮るように、玲奈が続けた。
「中国系マフィアの会長二人を含む六人と、今回の<一条組>組長を含む六人……。合わせて十二人の悪者を退治した正義のヒロインってところかしら?」
「何が言いたいんですか……?」
嘲弄とも挑発とも取れる玲奈の言葉に、瑞紀はキッと彼女の顔を睨みつけた。
「恐い眼ね……。さすがに十二人も殺した女だけあるわ。でも、さっきの二人はともかく、あたしにそんな眼をしても無駄よ。こう見えてあたしも、それなりの修羅場は経験しているからね」
「そうなんでしょうね。新宿のマル暴の課長なんて、本来はたたき上げの刑事がなる役職ですよね? 普通に考えたら女のキャリアに務まるはずがない。つまり、あなたは普通じゃないってことですね?」
瑞紀の言葉を聞いて、玲奈が楽しそうに笑った。
「思った通りの女ね、あなた……。純一郎が気に入るはずだわ」
「純一郎……? あなた、神崎さんと……?」
<櫻華会>若頭の神崎をファーストネームで呼び捨てた玲奈に、瑞紀は黒瞳を大きく見開いた。
「純一郎は、あたしの大学の後輩なのよ。そして、あたしの初めての男でもあるわ」
「神崎さんが……?」
あまりにもストレートな物言いに、瑞紀は思わず麗華の顔を見つめた。
「まあ、純一郎のことはどうでもいいわ。それよりも、あなた、刑事にならない?」
「え……?」
突然話を変えた玲奈に、瑞紀は戸惑った。彼女の真意が見えなかったからだ。
「射撃の腕は一流で、合気道の達人……。人を殺した経験もあるし、度胸もあって頭も切れる。あなたみたいな部下がいてくれたら、あたしも助かるんだけど……」
「そんな話をするためにここに来たんですか? 全然取り調べに見えないんですけど……」
玲奈の誘いに噴き出しながら、瑞紀が告げた。まさか、取調室で勧誘されるなどとは思ってもいなかった。
「ああ、ごめんなさいね。別にあたし、あなたを取り調べに来た訳じゃないのよ。今回の事件であなたの正当防衛を認めて、不起訴にするって伝えに来たのよ」
「不起訴……?」
(この人、凄く優秀な刑事だわ。人の意表を衝いて終始マウントを取り続けている。それなのに嫌な感じがしない。むしろ、話しに引き込まれる……)
「そう。正直に言うと、純一郎なんかよりもずっと恐い人から圧力がかかってるのよ。あなたの正当防衛を認めろってね」
玲奈が笑いながら告げた。見る者を魅了するような素晴らしい笑顔だった。
「あなたが恐いっていう人って……?」
「高城雄翔。さすがのあたしも、あの人の前では小娘の一人に過ぎないわ」
瑞紀の問いに、玲奈が素直に答えた。
「え……? 高城の叔父様が……?」
(高城の叔父様……ね? 単なる元上司と部下って関係でもないってことね?)
瑞紀の言葉に、麗華が二人の関係に興味を抱いた。だが、表面的には平静を装って話を続けた。
「高城さんの影響力は、西新宿署だけでなく警視庁でもかなり大きいのよ。何て言っても、<鬼元帥>って呼ばれてるくらいだからね」
「そうなんですか……。私はまた、高城さんに助けられたんですね」
嬉しさとともに申し訳なさが混在する気持ちで、瑞紀が告げた。その様子を見つめながら、玲奈がニッコリと微笑んだ。
「楪瑞紀……これから、瑞紀と呼ぶことにするわ。あなたもあたしのことは、玲奈と呼びなさい。こう見えても、あたしは<西新宿の女豹>って呼ばれているの。何かあったときには、あたしを頼りなさい。ついでに、あたしの部下になることも検討しておいてね……」
そう告げると、玲奈は瑞紀に右手を差し出した。
「ありがとうございます、玲奈さん。今更刑事にはなりませんけど、頼りにさせてもらいます」
玲奈の手を握り締めながら、瑞紀が笑顔を浮かべた。
それは二人の女豹の間で友情が生まれた瞬間であり、大きな事件の流れに瑞紀が巻き込まれるきっかけでもあった。そのことをまだ二人は予想さえもしていなかった。
「それで、瑞紀に正当防衛を認めたのか……?」
「そうよ……彼女、あたし以上に優秀……あッ、いやッ……だめッ、あっああッ……!」
白い喉をグンッと仰け反らせると、濃茶色の髪を振り乱しながら玲奈が喘いだ。玲奈の白い太股を両手で抱えながら、純一郎が猛りきった男で最奥まで貫いたのだ。
「<西新宿の女豹>が肩入れするほど優秀だったんだな?」
「そう……あッ、待ってッ……話せなく……なるッ……だめッ……いやぁあッ……!」
純一郎が熱い火柱を入口まで引き抜き、粒だった天井部分を三度擦り上げた。そして、グイッと肉襞を抉りながら一気に子宮口まで貫いた。女を狂わせる三浅一深の動きだった。その悪魔の律動を、純一郎は何度も繰り返し始めた。
「あッ、あッ、だめッ……! それッ、いやッ……!」
硬く熱い火柱で天井部分を擦られると、腰骨を灼き溶かすような愉悦が背筋を舐め上げた。そして、肉襞を抉られながら最奥まで貫かれると、壮絶な雷撃が脳天を直撃し、真っ白な閃光が意識を包み込んだ。
(だめッ、こんなの……我慢できないッ! 気持ちいいッ!)
あまりの快感に涙が溢れるのが自分でも分かった。恥ずかしい声が止まらなくなり、濡れた唇から涎が糸を引いて垂れ落ちた。
「警視庁の警視がヤクザに犯されて、そんな声を上げていいのか?」
「くッ……! ど、奴隷のくせに、生意気……あッ、いやッ……だめッ、それッ……!」
純一郎の言葉に、玲奈はキッと女豹の眼差しで彼を睨みつけた。だが、三浅一深の動きの前に女豹の顔など一瞬で剥がされ、玲奈は快感を求めて腰が淫らに動くことを止められなかった。
「恥ずかしくないのか、そんなにイヤらしく腰を振って……? <西新宿の女豹>のこんな姿を見たら、部下が幻滅するぞ」
「腰なんて……振ってない……あッ、だめッ……! 一緒は、いやぁッ……!」
純一郎が左手で玲奈の左乳房を揉みしだきながら、ツンと突き勃った乳首をコリコリと扱きだした。そして、右手は濡れた叢をかきわけると、慣れた手つきで突起の薄皮をクルンと剥き上げた。
「ひッ……! いやぁああ……だめッ、それぇえッ……!」
純一郎の指先が花唇から溢れ出た蜜液を掬い取ると、真っ赤に充血した真珠粒を転がしながら塗り込んできた。
三浅一深の動きと同時に、乳房を揉みしだかれ、乳首を扱かれ、真珠粒を嬲られては堪ったものではなかった。どこからどんな快感が襲ってくるのかさえも分からずに、玲奈は白いシーツを握り締めながら濃茶色の髪を舞い乱して悶え啼いた。
「あッ、あッ、あぁああッ……! だめッ、イッちゃうッ……! 許してッ! イクぅううッ……!」
大きく裸身を仰け反らせると、ビックンッビックンッと激しく痙攣しながら玲奈は絶頂を極めた。快美の火柱が総身を貫き、凄絶な快感が脳天を直撃した。全身の細胞が灼き溶け、四肢の先端まで甘い痺れが走り抜けた。
(凄……いッ……、気持ち……いいッ……)
焦点を失った瞳から随喜の涙が溢れ、ワナワナと震える唇からトロリと涎が垂れ落ちた。愉悦の硬直から全身を弛緩させると、玲奈は女の悦びを噛みしめながらグッタリとベッドに沈み込んだ。
「そんな蕩けた顔してどうしたんだ、玲奈? お前の奴隷はまだご主人様に奉仕し足りないぞッ!」
ニヤリと笑いながら玲奈を見下ろすと、純一郎が悪魔の律動を再開し始めた。粒だった天井部分を三回擦り上げ、肉襞を抉りながら子宮口まで一気に貫いてきた。女泣かせの三浅一深の動きは、一瞬のうちに玲奈の躰に怒濤の快楽を送り込んできた。
「うそ……待って……まだ、イッてる……あッ、いやッ……やめッ、だめぇえッ!」
絶頂を極めたばかりの女体が、その悪魔の快感に抗うことなど不可能だった。玲奈は瞬く間に快美の炎に包まれ、快絶の業火に灼き尽くされた。腰骨が熱く燃え上がり、凄絶な快感が全身の細胞を灼き溶かした。脳天を何度も雷撃が襲い、真っ白な閃光が視界を覆い尽くした。乳首は痛いほどガチガチに尖りきり、花唇からは蜜液がプシャップシャッと音を立てて飛び散った。
「あッ、あッ、いやぁあッ……! また、イッちゃうッ……! だめッ、イクッ!」
ビクンッビクンッと総身を激しく痙攣させると、玲奈はあっという間に二度目の絶頂を極めた。だが、その歓喜の愉悦を噛みしめる時間さえ、玲奈には与えられなかった。純一郎が三浅一深の動きを止めて、怒濤の如く凄まじい勢いで熱い火柱を抜き挿しし始めたのだ。
「だめぇえッ! 許してぇえッ! イクッ……イクぅううッ!」
二度も絶頂を極めさせられた女体が、その暴虐に耐えることなどできるはずもなかった。玲奈は絶頂している最中にも関わらず、その先にある歓悦の極みへと駆け上らされた。だが、純一郎は玲奈の狂態を見下ろしながら、更に悪辣な所業を始めた。
激しい律動で玲奈を責め続けながら、硬く屹立した乳首を捻りあげ、大きく勃起した真珠粒を摘まんで扱きだしたのだ。
「ひぃいいいッ! だめッ、それぇえッ……!」
「また、イクぅううッ! アッ、アァアア!」
「イクの、止まらないッ……! 許してッ! イクぅううッ!」
イッたと思った瞬間には、次の絶頂を極めさせられた。愉悦に次ぐ絶頂……。絶頂に続く極致感……。
その切れ目のない絶頂地獄に、玲奈は陥った。白い裸身は真っ赤に上気し、深い縦皺を刻んだ美貌は涙と涎に塗れた。乳首は痛いほどそそり勃ち、花唇からは止めどなく愛蜜が迸った。
「お願いッ! もう、許してぇッ! 死んじゃうッ! また、イクッ! イクぅううッ!」
グンッと大きく背中を仰け反らせると、玲奈は凄まじいほどの痙攣を始めた。次の瞬間、シャアーッという音とともに、花唇から黄金の潮流が虚空に弧を描いて迸った。そして、ガクガクと硬直していた裸身を弛緩させると、玲奈はグッタリと寝台に沈み込んだ。
閉じた睫毛はピクピクと震え、真っ赤に染まった目尻からは幾筋もの涙が流れ落ちていた。頬に貼り付いた後れ毛を咥える唇からは、ハァハァと火の吐息がせわしなく漏れていた。濡れた唇の端からはネットリとした涎が垂れ落ち、シーツに染みを描いていた。
それは紛れもなく、壮絶な官能の奔流に翻弄された女の末路そのものだった。
「満足したか、ご主人様……?」
純一郎が玲奈の後れ毛をかき上げながら、優しい口調で訊ねてきた。
「はぁ、はぁ……。死ぬかと……思った……」
官能の愉悦に蕩けきった瞳で純一郎を見つめると、玲奈が荒い息を吐きながら告げた。ビクンッビクンッと全身が痙攣を続けていて、言葉が上手く話せなかった。凄まじい快感で四肢の先端まで甘く痺れて、指一本動かせそうになかった。
「いい女になったな、玲奈……。こんなイヤらしい女が警視とは、部下が知ったら驚くぞ……」
「バカ……そんなこと……、んッ……あッ……」
文句を言おうとした玲奈の唇を純一郎が塞いだ。そして、ネットリと舌を絡めながら、硬く尖った右乳首を摘まんでコリコリと扱きだした。たったそれだけの刺激で、玲奈の躰は再び燃え上がった。
(気持ちいい……感じるッ……! うそッ……! キスと乳首を触られただけで……! あたし、イッちゃうッ……! だめッ、イクッ!)
ビクンッビクンッと痙攣すると、玲奈はあっという間に絶頂を極めた。唾液の糸を引きながら唇を離すと、純一郎がニヤリと笑いながら玲奈の顔を見つめた。
「キスだけでイッたのか? 本当にイヤらしい女だな……」
「ハァ、ハァ……イッてない……」
カアッと顔を赤らめると、玲奈はフイッと顔を逸らせた。それが虚勢であることなど自分でも分かりきっているのだが、感じすぎる自分の躰が恥ずかしかったのだ。玲奈の心の動きなど完全に見通しながら、純一郎が告げた。
「イッてないなら、もう一度ちゃんとイカせてやろうか……?」
「お願い……もう、許して……」
笑いながら告げた純一郎の言葉に、玲奈は本気で哀願した。
(これ以上……続けられたら……あたし、バカになる……)
「だが、嘘つきの女豹には、きっちりとお仕置きしないとな……」
「いやッ……やめッ……んッ……あッ……」
玲奈の拒絶の言葉を無視するように、純一郎が再び唇を塞いできた。ネットリと舌を絡ませながら、純一郎は玲奈の右乳房を左手で揉みしだいた。そして、ツンと突き勃った乳首を指先で摘まみながら、コリコリと扱き上げた。
同時に右手で叢をかきわけると、大きく勃起した真珠粒を指先で転がしながら嬲り始めた。
「んッ……んめッ……あッ、あッ、んあぁああッ……!」
数え切れないほどの絶頂を極めて、玲奈の躰は普段の何倍も敏感になっていた。濃厚な口づけをされながら女の弱点を責められ、玲奈は抗うこともできずにあっという間に歓喜の頂点へと駆け上らされた。
「どうだ、少しは反省したか……?」
「……もう……許して……」
ハア、ハアと火の吐息を漏らしながら、玲奈がコクリと頷いた。全身がビクンッビクンッと痙攣し、凄絶な快感が意識さえも灼き溶かしていた。そこには女豹の面影など欠片もない、愉悦の奔流に支配された女の蕩けた貌があった。
「では、俺は先にいくぞ。動けるようになるまでゆっくりとしていろ」
そう告げると、純一郎は玲奈に背を向けて衣服を身につけだした。その様子を見つめながら、玲奈は自分の中に湧き上がった感情を持て余していた。
(あたし、こいつからもう離れられない……。こいつはヤクザで、あたしは警視なのに……。そして、こいつはあたしのことを愛してさえいない……。きっと、死んだ水島麗華の代わりに、あたしを抱いているだけ……)
切なさ、愛おしさ、悲しさ、嫉妬……様々な感情が玲奈の心を支配した。
(疲れた……。少し眠ろう……)
激しいセックスによる肉体の疲れもあったが、それ以上に精神が疲れていた。玲奈はゆっくりと瞼を閉じた。
長い睫毛に覆われた目尻から涙が溢れて、ツッツゥーと白い頬を伝って流れ落ちた。
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